サステナブルな世界観で、プラスチックの新境地を切り開く




株式会社CHU-PA / 代表取締役 菅野充基氏

                                                            

ハンガーなどのアパレルメーカー向け副資材を販売している株式会社CHU-PA(チューパ)。
その前身である中央パッケージング工業株式会社には経営難の時代があり、2007年、代表取締役に就いた菅野充基氏は、業績回復に全力を尽くした。
ユニクロとの取引が始まったのをきっかけに大きな飛躍を遂げ、その後の一時的な低迷を海外進出やアパレル以外の事業展開で乗り越え、安定した経営基盤をつくりあげている。
今後は、長年培ってきたプラスチック射出成の技術を生かしながら、サステナブル(※1)な価値観に沿うリサイクルなどに力を入れていくという。
そんな菅野氏に、苦しかった頃のこと、社員との向き合い方などを伺った。
(※1)サステナブル:sustain(持続する)とable(〜できる)を合わせた言葉で、「持続可能な」「ずっと続けていける」という意味。

サステナブルな世界観で、プラスチックの新境地を切り開く


債務超過からの経営再建。ユニクロとの取引で飛躍


菅野氏が経営を引き継ぐよう打診された株式会社CHU-PAの前身、中央パッケージング工業株式会社は、債務超過の状態だった。
周囲には「わざわざ火中の栗を拾うようなことをしなくても、儲かっている親会社にいればいいのに。」と心配する人もいたほどだ。

声をかけたのは、親会社である福田工業株式会社(本社八尾市)の福田房雄社長
社長の娘と結婚した菅野氏は義理の息子に当たる。
菅野氏が、そんな会社の経営を引き受けたのには、資産家になっても、贅沢にならず生きたお金の使い方を続ける福田社長を間近で見ていたことが大きいという。

商売で儲かってお金を持つと、ベンツに乗ったり派手な生活をする人が多いですが、福田社長は浪費をせず、射出成型の技術に投資をし続けて仕事を大きくしていかれました。そういった面を真似していけば、会社を変えていけると思ったからです。
会社の体制を整えられれば、長年、光ファイバーの営業をやってきた経験を生かせるので、自信はありました。


昭和生まれ。成果を出すには人の倍働く必要があるという価値観の菅野氏に、当時の社内には危機感がないと映った。

定時になるとタバコを吸って「お疲れ」という感じでした。まるで儲かってる会社かと思える雰囲気。そんな状況を変えて、しんどい(苦しい)ことをやろうとしたので、うるさい(煩わしい)存在だったでしょうね。


社内インフラの整備や業務効率化に取り組む中で、ベテラン社員の反発に遭い、頭がハゲるほどのストレスを抱えながらも、菅野氏は自らの行動を示し続けた。

東京に出張する場合、新幹線に乗って8:45くらいに東京駅に着くように行っていました。東京勤務の社員より早く出社することになって、「あの人早いね」という評価を受けます。「あの人が一番経費を使っている」と経理社員の陰口が耳に入って、2、3度、自腹で出張に行ったこともあります。


しかし、根性論ばかりで数字を劇的に伸ばすのは難しい。転換点になったのはユニクロとの取引が始まったこと。

ユニクロさんのヒートテックの生地は東レさんが製造していて、東レさんの香港の事務所が当社の事務所から歩いて10分ほどの距離にあったんです。それがきっかけでユニクロさんとの取引が始まりました。「やる? やります!」みたいな感じで。
これが成長のエンジンになりました。


サステナブルな世界観で、プラスチックの新境地を切り開く


ユニクロ依存からの脱却。海外展開、アパレル以外の商品を強化


ユニクロとの取引は膨らんでいき、当のユニクロから心配されるほど依存度が高くなった。

一方、5、6年前のその頃には、世界的にサステナブルという言葉が広まっていた。
ユニクロも脱プラスチックを進めていて、「プラスチック製のハンガーやパッケージがなくなるかもしれない」と告げられていた。

そして予想通りの展開になる。ユニクロがプラスチックから紙の資材に切り替えたため取引が急減して、CHU-PAの売上は大幅に落ち込んだ。その穴を埋めるために、海外への展開やアパレル以外の分野に力を注いだ。

タイの製造拠点では、キャットフード用パッケージの販売を大きく伸ばした。
バンングラディシュ、上海でも、ファブレス(※2)方式でビジネスを展開している。
売上に占める海外比率が65%になるなど、活躍のフィールドが大きく変貌した。
(※2 )ファブレス:工場(fabrication facility)を持たない(less)という意味で、製品の企画や開発に特化し、製造は他社に委託するビジネスモデルやそのメーカーを指す。

グローバル展開に合わせて必要となる新たな社員に求めるのは、スキルよりもウィル(やる気)

我々の仕事は、今日学んで明日使えるようなものではなく、知見と経験の積み重ねが必要です。語学力などのスキルも大事ですが、それ以上にウィル(やる気)が大事だと考えています。
自ら進んでやることで結果が出やすくなり、そのことで待遇も良くなります。やる気をもってコツコツ頑張れる人なら、きっと花開きます。そんな人と一緒に小さな成功体験を積んでいければと思います。


サステナブルな世界観で、プラスチックの新境地を切り開く

得意のプラスチック技術を生かしサステナブルなビジネスに着手


菅野氏は「社員が何十人もいるわけではない」と繰り返し口にした。社員との距離感が伺える言葉だ。
毎年、決算が終わると、社員一人ひとりと個人面談を行うのが恒例になっている。

以前の会社で、面談される側を経験して、年に1回自分の意見を経営者に伝えられるのは貴重な機会だと思いました。出してもらった意見に納得できれば、すぐ実行するようにしています。また、面談で個別の事情を聞くからこそできることがあります。
例えばシングルマザーや小さい子供さんのいる家庭の社員は、いくら優秀でも時間の制約があって能力を発揮しづらい。そこで時短勤務ができるように会社が環境を整えます。そうすると、その人が限られた時間内でびっくりするような成果を上げてくれたりするんです。


今後、目指すところは、長らくプラスチックを生業としてやってきたことを生かしながら、リサイクルなど時代に合ったサステナブルなビジネスを育てていくこと。

具体的に進めているのが、単一素材を使用することでリサイクルを容易にするモノマテリアル(※3)の事業だ。海外のペットフードメーカーに提案するなど、前に進みそうな案件も出てきているという。
(※3) モノマテリアル:「ひとつの(mono)」と「原料、素材(material)」を合わせた言葉で、単一の原料や素材で構成されている製品や材料を意味する。

菅野氏は、神様が本当にいると信じている。
努力を積み重ねている人にはチャンスが見えるようになるのだそうだ。
新たな事業を展開していく上で、菅野氏には多くのチャンスが見えていることだろう。

サステナブルな世界観で、プラスチックの新境地を切り開く

株式会社CHU-PA
本社:大阪府八尾市久宝園1-82-2
オフィシャルサイト:https://c-p-k.co.jp/




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