「将棋世界」2013年2月号感想

「将棋世界」2月号を読んでの気ままな雑感をば。
 本誌は、表紙にて【大特集】V9達成!最強竜王・渡辺明が振り返る竜王戦と謳われているように、竜王戦特集となっております。

渡辺明竜王が振り返る第25期竜王戦七番勝負「ぶれずに、地道に、合理的に」

 竜王戦9連覇を達成した渡辺明竜王のインタビュー記事です。人生初の失冠となった王座戦の心境から始まって、そこから竜王戦を迎えるまでの精神状態や2年続けて挑戦者となった対丸山忠久九段戦に向けての準備、角換わりのスペシャリストを迎え撃つに当たっての対策と角換わり将棋についての認識、先手と後手の違いなどなど。とにかく非常に興味深い内容となっております。
 番勝負全体を通してですと、どうしても渡辺竜王の圧勝だったという印象が強いので、読者として一局一局を熱心に振り返るという心境にはなかなかなれないのですが、将棋や対局についての渡辺竜王の現時点での意識や発言はとても興味深いです。「自分はこだわりや信念で戦法を採用しているわけではなく、単純にその時点でいちばん勝率が高そうなものを選んでいるだけです。対戦相手、得意戦法、先後、流行などを総合的に判断します」(p16より)や「いまは将棋に対して『面白い』という概念はあまりないですね」(p26より)などは、まさに渡辺竜王の特徴とされる合理性を端的に表わしているものだといえるでしょう。

第25期竜王戦七番勝負第5局 風物詩となった防衛

 すごいタイトルですね(笑)。いつまで続くのか。それとも、誰がいつ破るのか。どっちも楽しみです。

棋士が聞くプロ対談 第11回 森内俊之名人×上田初美女王「名人という人生、女王の夢」

 男性棋士と女流棋士のタイトルホルダー同士による2012年の将棋界と新年の展望についてです。
 女流棋士としては上田初美女王が最年長タイトルホルダーで(24歳)、他のタイトルホルダーが奨励会では初段、1級という現実にもさらりと触れられていて、それについて「私は私で頑張るしかない」(p101より)のひと言がシンプルながら重いです。また、名人戦第6局で現れた角換わり腰掛け銀が竜王戦第1局にて63手目まで同一手順で再現されたり、あるいは「矢倉91手組」といわれる定跡まで生まれたりといった研究勝負(と呼ぶのには私的には少々異論があって、というのも多分に意地の要素も含まれていると思うのです)についての考え方や、そこから森内名人の趣味であるチェスだとどうですか?という話になって、さらにはコンピュータ将棋についてまで話が及んでいきます。2013年の将棋界の明日はどっちだ!?

突き抜ける!現代将棋 第41回「開拓者たちの軌跡」

 前回に引き続いて「金」にフォーカスを当てた特集ですが、奇しくも2012年「今年の漢字」が「金」となったことで、非常にタイムリーな企画となりましたね(笑)。

「第47回」どっちが勝ち? 〜内藤國雄九段からの挑戦状〜

 なんと今回の出題は「将棋太平記」(倉島竹二郎/河出書房新社)にて出てくる局面から。この局面自体、内藤國雄九段が創作したものなのですが、作中には詳しい説明がなされてなくて、私なりに以前考察記事を書いたことがあるのですが(【参考(ネタバレ注意)】『将棋太平記』(倉島竹二郎/河出書房新社) - 三軒茶屋 別館)、今回ようやく答え合わせをすることができます。来月号がとても楽しみです。

将棋太平記

将棋太平記



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