「放課後プレイ」+「TRPG」=「俺得の極み」 黒咲練導『放課後プレイR』


 黒咲練導『放課後プレイ』は、彼氏さんと彼女さんが二人でゲームしたり駄弁ったりしながらきゃっきゃうふふするいわゆる「ゲームえろ*14コマ」です。(身も蓋もない)
 現在3巻まで刊行されており、3組のカップルのいちゃいちゃで読者を身悶えさせたわけですが、本作『放課後プレイR』はその3組のカップルが一堂に会します。
 しかも遊ぶゲームはTRPG。いきなりのアナログ。
 「放プレ」全作品を読んでいる読者+TRPGを知っている人向けというニッチにも程がある見事なまでの俺得マンガなのですが、予想通り、いや予想以上に面白かったです。
 TRPG(テーブルトークRPG)とは、サイコロと会話のみで進められるアナログなロールプレイングゲームで、メジャーどころとしては「D&D」「ソードワールド」、ややマイナーどころとしては「クトゥルフの呼び声」「ギア・アンティーク」「蓬莱学園の冒険!」などなどなど、さまざまな種類があり、各ゲームごとに舞台背景(ファンタジーから近未来、現代学園ものまで)やシステム、使うサイコロの種類まで異なっています。
 基本的な遊び方としては、プレイヤーが作成した「キャラクター」になりきり(ロールプレイ)、他のプレイヤーと協力しながら冒険をしていきます。
 敵に攻撃をする、罠に気づくなどの成功判定は主にサイコロ(ダイスという)を使います。サイコロの結果によって成功・失敗が決まり、それによって場合によってはストーリーが変わってくる場合もあります。
 サイコロの結果によって流動的にストーリーが変わり、あまつさえプレイヤーキャラクターたちも自由気ままに動きます。自由気ままに依頼人に攻撃する人たちもいれば依頼を断り思ったとおりに動かない人たちもいます。
 そんなプレイヤーたちをコントロールしゲームを支配するのがGM(ゲームマスター)という存在です。つまり、TRPGはGM1人とプレイヤー数人によって、「会話」と「サイコロ」で遊ぶアナログなコミュニケーションゲームなのです。
 『放課後プレイR』では、GMが3の彼女さん、プレイヤーが1と2の彼氏彼女さんで進められます。
 ゲームシステムそのものはオリジナルなのですが、キャラクターメイキングから最初のシナリオ、そして終わった後の反省会(笑)まで、TRPG経験者なら思わず「ニヤリ」としてしまいます。

 こういったTRPGのプレイ風景は、活字では「リプレイ」と言われ、多く書籍化されています。
 『放課後プレイR』はいわばリプレイの漫画化であり(タイトルの”R”はリプレイの”R”だと思います)、キャラクターになりきったプレイ風景と、端々に出るプレイヤーの生の言葉の輻輳を、キャラクターとプレイヤーで描き分けることでテンポよく読ませます。さらに、プレイヤーたちはこれまでの作品で彼氏さん彼女さんたちの関係性などすでに読者は把握しており、キャラクターとしての掛け合い、プレイヤーたちの掛け合いをそれぞれ楽しむことが出来ます。

 『放課後プレイ』+「TRPG」というニッチすぎて俺得の極みなマンガであり、決して万人には進められない一冊ですが、ハマる人は「ド」ストライクなマンガですし、「放プレ」読者がこの作品からTRPGに興味を持っていただけると嬉しいかなぁ、と思います。

*1:どちらかといえばフェチシズム的なエロさですが