少女らの支援団体をめぐる11の書き込みは「デマ」 「女性差別」の意図を認定 東京地裁判決

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少女を性搾取から守る活動をしている団体への攻撃が、「女性差別」と認められたよ

東京・新宿で10代の女の子を暴力や性搾取から守るため伴走支援に取り組む一般社団法人Colabo(仁藤夢乃代表)。この団体に対するX(旧ツイッター)上での書き込みをめぐり、東京地裁(本多智子裁判長)は9月26日、書き込みを「大量のデマ」「サイバーハラスメント」「女性差別」「ミソジニー(女性嫌悪)」などとした弁護士の発言は侮辱であるとの暇空茜(本名・水原清晃)氏の訴えを退けました。暇空氏は今年7月の東京都知事選に出馬し、11万票を獲得しています。

7件の裁判で暇空氏側が敗訴

Colaboについては、2022年以降のX上での攻撃的な書き込みや、実際の活動場所での妨害行為が相次いでいます。この間、暇空氏の書き込みがデマや名誉毀損、侮辱にあたるかなどをめぐって7件の裁判が争われ、いずれも暇空氏側が敗訴しています。

Colaboは10月2日、東京都内で裁判の報告会を開き、判決の評価と妨害活動によって、10代の少女たちがどのような影響を受けているかについて、訴えました。

Colaboが暇空氏を訴えた裁判は7月18日、東京地裁(西村康一郎裁判長)が暇空氏の投稿サイトnoteでの書き込みを名誉毀損であると認め、賠償金として220万円の支払いを命じる判決を出しました。(暇空氏は控訴)

また、Colaboについて「大量脱税」「詐欺罪が成立」などとし、代表の仁藤夢乃さんの画像に性行為を類推させる写真説明をつけて投稿したエコーニュースの音無ほむら(本名・江藤貴紀)氏に対しても、東京地裁(片山健裁判長)は9月24日、書き込みを名誉毀損、侮辱にあたるとし、385万円の賠償と投稿の削除を命じる判決を出しています。

「デマ」「女性差別」との発言に「真実相当性」

「大量のデマ」「女性差別」などを認めた判決は、Colabo弁護団の神原元弁護士の発言をめぐって争われました。神原弁護士はColaboが暇空氏を訴えた訴訟の記者会見で、暇空氏のColaboをめぐる書き込みが「大量のデマ」にあたり、その動機に「女性差別」「ミソジニー」があるとし、暇空氏による住民監査請求や情報開示請求を「サイバーハラスメント」と発言しました。暇空氏はこれを侮辱であり、社会的信用を低下させられたとして、神原弁護士を訴えていました。

神原元弁護士(右から2人目)=東京都内

神原弁護士は、判決の意義について、次のように話しました。

「判決は暇空氏が『大量のデマ』を流したことを認定した。暇空氏の発信がColaboや仁藤さんに『意図的に相当な精神的苦痛を与えた』ことも認めた。暇空氏が嫌がらせ目的でデマを流した、と認定したといえる。情報公開請求、住民監査請求を『リーガルハラスメントで合法的な嫌がらせだ』という私の発言にも真実相当性があると認められた。暇空氏の発信が『女性差別』『女性蔑視』に基づくという私の論評も、真実相当だと認定している」

神原氏はまた、Colaboが提訴し、1審の東京地裁が暇空氏に対し220万円の賠償を命じた裁判の控訴審で、今回の判決の認定を用いて、賠償額の上乗せを求めて行く方針を明らかにしました。

判決が認定した11のデマ

判決が認定した11のデマは次の通りです。

・Colaboが少女たちに生活保護を受給させ、狭い部屋で共同生活をさせていた。
・Colaboが少女たちに活動を手伝わせる対価として旅行に連れて行き、旅行先で政治活動に参加させた
・Colaboが東京都に支援対象の少女にかかる医療費を請求する一方で、同額の寄付を医療機関から受けて、同額を不正に取得した。
・Colaboが2019年から3年間、東京都にタイヤ代及び交換費用として合計132万7282円を架空に請求し、不正に金員を領得した。
・Colaboが架空の宿泊支援費を経費として東京都に請求して、不正に金員を両得した。
・Colaboが現預金を積立金とすることによって、助成金を不正な手段によって取得した。
・Colaboが東京都に領収書を提出していない理由はコラボにおいて、宿泊費の架空請求をしている点にある。
・仁藤が(活動拠点の)バスに2021年11月から付いていた傷を新たにつけられたと虚偽の申告をして、被害者のふりをしている。
・Colaboが2021年度に実際に活動していないにもかかわらず、架空の費用を計上し、不正に委託料を取得している。
・Colaboが実際に提供した食事より過大な給食費を計上し、その差額を不正に領得した。
・Colaboの中長期シェルターが共産党活動家の女性寮になっている。

自分が願うストーリーを事実と決めつける

Colabo弁護団の太田啓子弁護士は、Colaboへの攻撃が社会に与える影響について、3点指摘しました。

太田啓子弁護士=東京都内

①デマをデマであるということは非常に困難。

判決でデマと認定されたことについて、Colaboは2022年11月から、詳しい資料を公表して、ずっと「これはデマである」と説明を続けてきました。それにもかかわらず資料を見ることもしない、見てもなおデマを信じる人が攻撃に加担をし続けた。いまも攻撃は続いていますし、Colaboと女性たちに与えるダメージは回復していない。事実とは何かということよりも、自分が「こうであってほしい」と願うストーリーを事実と決めつけるという感覚が社会に蔓延していることが恐ろしい。

Colabo攻撃に限らず、デマが暴力に結びつく、特にマイノリティーに対するデマの深刻さに強い警戒を抱きます。

②Colabo攻撃は女性差別に基づくものである。

女性差別に根ざした攻撃で、暇空氏らはカンパを集め、かなりもうけてしまっている。判決が認める損害額よりはるかに大きい金額のカンパを集めている。

差別が蔓延する社会では、差別はお金になる。

もの言う女性への強い反発が後押しになり、差別に基づく攻撃がエスカレートしていく。こうした誹謗中傷ビジネスというべき現状について問題意識がある報道が増えてほしいと思います。

③弁護士への攻撃の影響が深刻である

私自身も2件提訴されています。誹謗中傷を受けた側の代理人になって、差別を差別であると批判し、デマをデマであると指摘すると、提訴される。ネットでも弁護士が延々と誹謗中傷され続けています。本来、異常なことであると思う。

これでは差別やデマを指摘する言動、差別を許さないということ自体が萎縮させられてしまう。弁護士や支援者への攻撃というのは、それ自体がマイノリティを孤立させる悪質な行為である。この問題にも、もっと注目が集まってほしい。

政治家も攻撃に加担

Colaboへの攻撃には政治家も加担しました。

暇空氏と同じく東京都知事選に立候補した、埼玉県草加市の元市議、河合悠祐氏はコラボが活動拠点としていた新宿・歌舞伎町のバスカフェを訪れ、フェミニストを攻撃する暴言を吐き、活動を妨害しました。

川崎市議の浅野文直氏は2022年12月〜2023年2月にかけ、自身のYouTubeチャンネルで「Colabo調査」のタイトルで17本の動画を上げました。Colabo側はうち14本に「Colaboが行政からの委託費を重複受領したり、裏帳簿を作成したりしている」などの虚偽の事実が含まれているとして、23年4月に名誉毀損で浅野市議を提訴しました。この訴訟も継続中です。


【仁藤夢乃さんの話】

Colabo代表の仁藤夢乃さんは一連の攻撃がColaboにつながる少女たちに与えた影響についてスライドを使って説明しました。

仁藤夢乃さん=東京都内

私たちは虐待や性搾取の被害に遭うなどした10代の少女たちを支える活動を2011年から行ってきました。

バスカフェもシェルターも移転

バスカフェは今も新宿区内で開催していますが、妨害がひどくなった影響で、歌舞伎町からは追い出されてしまいました。夜20時から24時まで開いています。まちの状況に応じて早朝5時まで開くこともあります。10代を中心に、ひと晩40人が利用していたのですが、今は25人ぐらいになっています。12〜18歳の子が多く、赤ちゃんを連れた10代の少女が来ることもあります。飲み物や食べ物があって、携帯も充電できるという中で、私たちが力になれるよ、相談に一緒に行ってあげるよと、公的機関と連携しながら少女たちを支える活動をしてきました。これまでに4000人以上が利用しています。路上でのアウトリーチ活動も行っています。これまで2万人以上に「休めるところがあるよ」「お弁当を食べに来ない?」と声をかけてきました。

緊急に泊まれる場所を、とシェルターの運営も2015年からしてきました。ここにも場所を特定されてさらされるなどの攻撃がありました。複数のシェルターを閉鎖、もしくは移転せざるを得なくなっています。緊急避難の後、中長期的に生活を支える活動もしています。特に性暴力にあって、路上で暮らす中で、妊娠する子も多いので、病院に一緒に行ったり、出産後の生活を支えたりしています。

女性支援法成立を契機に激化した攻撃

2022年5月に困難女性支援法が成立しました。

その頃から、性売買業者や少女たちを性搾取して楽しんできた側の男たちからデマを拡散されるようになりました。

デマの中心にいたのが暇空茜氏です。40代男性ですが、顔を見たことはありません。裁判にも一度も来たことがありません。

Colaboに会計の不正があるなどのデマをたくさん流した。そこに政党を超えた多数のアンチフェミニズムの議員が参加しました。

私に対する殺害予告やレイプ予告は日常茶飯事で、事務所に張り付いて、どんな人が出入りしているとか、電気が何時に消えたとかSNSで「報告」する人もいました。性被害を受けた人は、どこにいるかが加害者にバレたらまずい。そういうことをわかっていて、Colaboに近づくと晒されるという恐怖を少女たちに与える嫌がらせを続けたのです。

公的機関への報告書に嫌がらせ目的で情報公開請求をかけ、それをもとに住民監査請求をすることも行われました。

妨害に議員が加担すると行政職員も疲弊してしまう。担当者も見るからにボロボロになっていきました。新宿区もColaboのバスカフェの開催は危ないから、と区役所前での活動を中止させてしまいました。

つながりにくくなった少女たち

新宿・歌舞伎町は、家に帰れない子どもや公的支援で不適切な対応をされた子どもが全国から集まってきています。以前はその子たちがいる場所にバスがあった。今は少し離れた場所にあって、「ご飯食べにおいでよ」「あのピンクのバスね」と言えなくなってしまった。つながりにくくなっています。

複数のシェルターが特定されてネットに拡散され、閉めたり、移転をしたりしています。少女たちにとっては「帰ってこられる場所」だったんです。

いつどんな子を保護したかを情報公開請求に応じて出してしまった自治体もあった。それがネットで拡散されたり、販売されたりしている。危険を冒すわけにはいかないので、私たちは公的資金を使わず自主事業でやっています。

業者と買春者が堂々としている

最近、歌舞伎町がどうなっているかというと、業者と買春者が今まで以上に堂々とするようになりました。ゴジラの横の通りなんですが、女の子が通りの両側にならんで、首から自分と一緒に過ごすのはいくらかと書いた札を下げていて、それを男性たちが買いに来ています。大久保公園の周辺では毎晩100人から200人の男性が待っていますし、海外からも円安の影響でかなりの男性が来るようになっています。

妨害前は、私たちが行くと業者や男たちが逃げることがよくあったんですが、最近は私たちが行っても、「公金チューチュー」などのデマを投げつけてくる。あざ笑ったり、叩かれたりする。

日中でも少女や女性たちを買いに来る男達が増え、立っている女性たちも低年齢化しています。支援を受けられないまま買春の被害にあうことが続いています。少女たちの多くは虐待を受けて、家に帰れない状況だけど、公的機関では非行少女として扱われてしまって支援されない。奨学金が払えず体を売る大学生も多くなっています。ホストやメンズコンカフェが、少女や女性たちに高額の支払いをさせて、カップルのように振る舞いながらだましてお金を取るという手口が広がっています。性売買の業者は家を借りて上げるとか、整形をすればもっと高く売れるよとか、色んな理由をつけて借金させて売春させる。そこから抜け出せなくなってしまう。

12〜14歳の被害も深刻になっています。私たちと先に出会うか、業者と先に出会うかで本当に人生が変わってしまうんですね。特に中学生ぐらいの子は危険がわかっていないので、優しくしてご飯をくれる大人を信じてしまう。

警備員や警察は女性たちを排除

新宿区は年間1億7000万円の予算を付けて、警備員を雇いました。警備員は歌舞伎町の中心部でスカウトしたり、客引きをしたりしている業者には何もせず、公園に立っている女性たちを排除するというやり方を続けています。

昨年末は警視総監が歌舞伎町を巡視しました。たくさんのおえらいさんを連れて、「男社会の闘い」のようだと思った。実際に何をしたかというと、家に帰れない少女たちを警察に一斉補導させたんですね。多くの少女たちは家に戻されてしまう。少女たちはそれを「強制送還」と呼んでいます。でも、しばらくするとまた路上に戻ってくる。子どもをそういうところに追いやる社会を変えなければいけないし、子どもに悪いことをする大人をなんとかしなきゃいけないのに、ホストに売春させられていた少女たちの方が非行少女として少年院に入れられてしまう。

2024年4月、売春防止法の運用が女性に厳しく改められました。実際には男性側から「いくら?」と聞いてくるにもかかわらず、勧誘罪で女性ばかりがつかまる。これまで現行犯だけだったのが、前にやってたよね、と捕まることも増えています。

女性に売春させたホストクラブがつかまることもありますが、数店だけで見せしめ的な逮捕にすぎません。

都の青少年支援施設でスタッフが性加害

東京都がつくった青少年支援施設「きみまも」内で性加害があったというニュースもありました。私は今年1月のプレオープン初日に見に行ったんですが、そのときから業者や少女をねらう男たちがたむろする場所になっていました。それを都にも伝えてきましたが、放置されてしまって、今になってこういうことが明らかになった。

https://www.yomiuri.co.jp/yomidr/article/20240910-OYT1T50082

歌舞伎町のビルから飛び降りる少年少女も相次いでいます。歌舞伎町で活動を続けられていたら、出会えたかもしれない。飛び降りる前にバスに立ち寄ってくれたかもしれない。そういうことが難しくなってしまった。Colaboに対する攻撃の深刻な影響ですし、少女たちの命を脅かす攻撃になっていると思っています

被災地でも少女や女性とつながる活動

Colaboは能登の支援に入っているんですが、それは困っているところに性売買業者が入り込むからです。生活をどうしよう、稼ぎ頭が亡くなったと言うときに、女性や少女たちをねらって性売買にあっせんするということがこれまでの被災地でもありました。被災地でも少女や女性たちと繋がる活動をし、女性差別の中で苦しんでいる思い、痛みを話せる場を作ってきました。

そういう私達だからこそ、今回の攻撃があったと思います。女性たちが繋がって自分たちで力を取り戻していく、そして女性を抑圧する社会に立ち向かっていく。そういう横の繋がりをつくることに対する妨害、攻撃なんですね。

そんな中でもColaboの活動を支えて一緒に声を上げ続けてくれた人たちの存在に励まされています。歌舞伎町は深刻な状況が続いています。デマだと認定されるのに2年もかかりましたが、多くの人から支援を取り戻し、性搾取の状況と闘って少女たちを支えて行く社会にしたいと思っています。


Colaboの理事2人も発言しました。

【角田由紀子理事の話】

角田由紀子理事=東京都内

裁判所が「女性差別」をはっきり認めた

今日は弁護士ではなくて、理事の一人としてお話しようと思います。判決の内容の報告、仁藤さんの力のこもった報告を聞きながら、裁判に勝ってよかったと思った。当たり前なんですけど、だんだん胸が熱くなってきて、涙が出そうになった。

仁藤さんがすごく頑張ったことを近いところで見てきた。ここで見えていない少女たちのことを思うし、浮かんでくるんですね。裁判に勝ったことで彼女たちにも少しはいい状態が提供できるんじゃないかなと希望が見えてきた気がします。

今度のことがとてもうれしいのは、裁判所が「女性差別」であるということをはっきり認めたということなんですね。私は弁護士として女性差別にかかわる裁判をたくさんやってきたが、日本の裁判所は「女性差別」を認めたがらないんです。

明々白々な医大受験での女性差別も正面から認めなかった。ずっとそのことに怒ってきた。裁判所がようやく「女性差別」を認めたということは、日本の女性の権利を守っていくためにも非常に大きいことだと思う。見えなかったのか、見えていたのだけど認めたくなかったのか。今回は認めざるを得ないくらいまで事態が悪かった。そして、認めさせる立証活動を弁護団がしたことは賞賛されるべきだと思います。

少女たちの苦難は日本の政治の問題

若い少女たちがどうして町にさまよい出るのか。ここに社会が対応してこなかった。彼女たちは今の日本社会の中では未来が見えない。満たされない状況に置かれている。そこでホストに関わって偽の愛情、偽の恋愛という幻想にとらわれて性売買の道に引きずり込まれていく。そういう事実を私たちはきちんと見なければいけない。Colaboへの一連の攻撃はとても重大なことだと思っている。

Colaboが、少女たちが弾圧されたということを超えて、声を上げること自体が非常に難しい社会になってきている。日本の民主主義がどうなっているかという問題だ。民主主義の崩壊を促進することになっているんじゃないかと思います。

日本の社会が性売買にどういう法的対応をしてきたか。売春防止法だけでなく、法的に人権の問題としてどう対応すべきかを考え直さなければいけない。そういうきっかけとしてとらえたい。

少女たちの苦難は、日本の政治の問題に決まっている。それを個人の責任の問題のように軽くあしらわれているんですが、最も弱い立場に置かれている女性、子どもの性、人権、尊厳を尊重して、その人たちが安心して生きられる社会をどう作っていくかということが問われている。

もうすぐ選挙ですが、女性や子どもの人権、尊厳が守られる社会に変えて行くために、私たちは責任を果たさなければいけないと思います。そのために私たちの一票はあると肝に銘じて、この判決の内容をもう一度よく振り返ってみたいと思っています。

【田中優子理事の話】

田中優子理事=東京都内

「言葉を失っている」という問題

この2年の間、様々な妨害が起こってから、一番大きな被害を受けたのは10代の若い女性たちです。彼女たちが行くところがなく、どんな思いで日々を暮らし、どういうことを体験してしまったのかを考えるだけで悲しいです。

暇空裁判では、自分の好きな作品を批判されたからという理由が述べられました。だったら出てきて堂々と議論すればいいのに、今の社会は批判を受け止めて対話をすることができなくなっている。隠れて攻撃をするということがしばしば起きています。民主主義の問題の中でも、「言葉を失っている」という問題がすごく大きいと思っています。

民間と連携がなければ支援できない

この間、買われる、搾取を受ける女性たちが救われなくなった。性搾取は日本では400年以上続いているから、当たり前になってしまっている。これは、法律を整えていくことによってなくせるんです。その一歩が今年4月施行の困難女性支援法ですが、現在、これが本当に有効に働いているのかどうか疑問があります。

自治体は民間と連携がなければ支援できない。民間というのはColaboのような組織のことです。まず困難に陥っている女性と出会い、関わりを持つことが第一歩です。そのために多くの協力できる民間の人に呼びかけて、実現しなければならないはず。それがされていない現状であることに失望しています。

買春禁止法は北欧で実施され、少しずつ全世界で広がっていっています。日本では女性だけが差別され、性被害にあって搾取され、自己責任であるかのように言われることが続いているが、社会が法整備を意識していかなければならないと思う。今回の勝訴は非常に大きい。勝訴に終わったということだけではなくて、マイナスイメージを払拭し、Colaboの支援が少女たちにいかに必要なものであるかを認識していくことが必要になってくると思う。

性売買で莫大なお金が動く

性売買が400年も続いているということは、お金を動かすことができるからなんですね。女性を利用することによって莫大なお金が動く。その構造が何百年も変わらない。政権側も放置している。日本の社会構造を変えるのは非常に困難なことだが、いま私はチャンスだと思っている。そのことに多くの女性が気づき、その女性を攻撃する男性がいることにも気づいた。

攻撃を始めた男性は女性問題に関心がないと言い訳をするわけですが、自分だけの恨みで始めたとしても、エンジンはミソジニーです。彼は女性に差別感や恨みを持っている男性たちをエンジンに使い、カンパ袋として使った。自分が利用されないように、自分で考え、自分で情報を得ることが今ほど必要な時はないと思う。

10代の子どもたちがこれから生きていくことを支援するために、情報交換して連携し合いながら、二度とこういうことが起こらないようにすることを意識していきたい。Colaboが従来のように活動できる社会にする、二度とこういう馬鹿げた妨害が起こらないようにする社会を作っていかなければならないと思っています。


意識を改め、買春者処罰法を

Colaboの仁藤夢乃代表、田中優子理事、角田由紀子理事(左から)=東京都内

角田理事は、質疑応答の中で売買春にかかわる法律をどのように整備していったらいいかについて、次のように話しました。

売春防止法の第1条は、要約すると「売春の原因は女にあり」と書いてある。「女性に責任がある」というのが第5条。改正前は、女性が逮捕され裁判で執行猶予が付くと、出入り自由ではない婦人補導院という施設に6ヶ月間収容されて、花嫁修業のようなカリキュラムで女性の生活の仕方をたたき直すという仕組みだった。女として「できていない」から売春するんだ、だから作り直すという恐るべき発想だったんです。女性支援法で「保護更生」がなくなったので、第5条から女性に責任があると読める文言は削られました。しかし、もともとの法律がそういう発想でできていることは検討し直されていない。

日本は400年来、男が買うのは当たり前という社会なので、売春防止法ができた時にも買春者を処罰すべきだという議論が一切されていないんです。でも、買春する人を処罰するのは世界ではもう当たり前。北欧ではほとんどそうです。イスラエルでも買春者は処罰されています。

売春防止法の売春の定義には3つの要件がある。お金を払う。性交をする。相手が不特定。風俗営業法はこのうちの「性交」を「性交類似行為」だとして、売春防止法にはひっかからないとしています。性交と性交類似行為を区別しているのは日本だけ。売春を犯罪にしている他の国ではどこでも、性交の中に性交類似行為が入っているんです。いったい誰がそんなことを区別できるのかと思いますが、日本ではそこが売防法の抜け穴になっている。

売春防止法と風俗営業法。二つの法律を合わせて、私たちは買春行為をとらえ、買春者を処罰することができるようにするべきです。さらに、買われた女性をどう保護し、支援して、新しい仕事に就いて社会で生きていけるようにするのか。ここをきちんとやらないといけないと思うんです。

買春者が処罰されるのは世界の常識だと日本社会は認識を改めなければならない。法律がやりたい放題にしているということが、Colaboの少女たちの問題の大元になっている。意識を改めて、早急に新しい法体系を作らなければいけないと思っています。

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