2023/10/30 2024/11/20
外国人ビザ
経営管理ビザが緩和される?2024年改正後の要件と法改正情報を詳しく解説
外国人が日本国内で会社を設立し、会社経営するためには、経営管理ビザが必要です。これまでは、ビザ取得にあたって、資本金500万円以上の用意や独立した事業所の確保など要件が厳しく、外国人が日本国内で起業するにはハードルが高い状態でした。
そこで、2024年3月に経営管理ビザのガイドラインが改訂され、資本金の基準として有償型の新株予約権の払込金を計上することが認められるようになりました。また、外国人の起業を増やすために出入国在留管理庁は2024年度中に、「経営・管理」在留資格の要件に関する省令を改正する予定です。
今回の記事のポイントは以下のとおりです。
✓経営管理ビザとは、外国人が日本で会社経営や管理職として勤務ができる就労ビザである
✓経営管理ビザの在留期間は原則1年、更新により2年や3年に延長できることもある ✓経営管理ビザの取得要件として、①独立した事業所の確保、②500万円以上の出資金又は2名以上の常勤職員の雇用、③事業の安定性・継続性が求められる ✓2024年3月から、有償型の新株予約権の払込金も一定の要件を満たせば、出資金500万円として認められる ✓2024年度に独立した事業所の確保及び500万円以上の出資金の要件の緩和、在留期間の1年から2年への延長が予定されている |
経営管理ビザの取得要件・在留期間と法改正情報について解説します。
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1.経営管理ビザとは
経営管理ビザ(経営・管理在留資格)は、外国人が日本で会社経営や管理職として勤務するために必要な一種の就労ビザです。以前は「投資・経営ビザ」として知られていましたが、現在では外国の資本が関与していなくても取得が可能となったため、名称が「経営・管理ビザ」に変更されています。
日本国民や永住権を持つ人、日本人の配偶者などの在留資格があれば、国内で自由に会社の経営や役員職につくことができますが、外国人は在留資格に応じてこれらの職に就くことについて制限されています。しかし、経営管理ビザを取得することで、外国人も日本国内で企業の経営者や管理職として働くことが可能になります。
1-1.経営管理ビザの最初の在留期間は原則1年
通常、経営管理ビザの在留期間としては3ヶ月から5年の間の複数の期間が設定されています。申請者の提出した計画や状況により在留期間は決定されますが、初回では1年間が標準的な期間です。
また、ビザの更新に際しても、一般的には毎年の更新が見込まれますが、運営する事業経営状況や経営者の在留履歴、事業の規模などに応じて、更新期間を2年や3年と延長することが許されるケースも存在します。
1-2.経営管理ビザは原則、毎年更新が求められる
外国人が経営管理ビザ取得した場合、基本的には1年更新のビザであるため1年ごとに在留期間の更新手続きが必要になります。更新の都度、書類を用意し提出が必要など、外国人経営者には手続き負担が重い状態となっていました。
2.経営管理ビザ取得の要件
経営管理ビザの取得要件は下記の通りです。
- 独立した事業所が日本国内で確保されている
- 500万円以上の出資、もしくは2名以上日本に居住する常勤職員を雇用すること
- 事業の適正性・安定性・継続性を示せること
日本で会社を経営するために取得する経営管理ビザでは、学歴や職歴要件は要求されていません。そのため、誰でも申請ができる反面、日本で会社経営ができるのかという、事業規模と事業計画の面が厳しく審査されます。日本で外国人が会社を設立し経営するためには、上記の3つの要件を満たす必要があります。
以下、各要件について解説します。
2-1.独立した事業所が日本国内で確保されている
経営管理ビザを取得して日本で会社を設立するためには、事務所を確保する必要があります。また、経営管理ビザを取得するには、独立した事務所が必要です。
事務所ごとに明確な仕切りがないバーチャルオフィスやレンタルオフィスでは事務所としては認められません。また、原則として、自宅として利用しているアパート、マンションなどを事務所とすることもできません。
2-2.500万円以上の出資、もしくは2名以上日本に居住する常勤職員を雇用すること
経営管理ビザを取得するためには、経営管理ビザを取得する外国人本人による500万円の出資金又は日本に居住する常勤職員(日本人、特別永住者、日本人の配偶者、永住者等)を雇用するなどの事業規模が必要です。
資本金もどのように資本金500万円を用意したのか、という出所を証明する必要があります。
2-3.事業の適正性・安定性・継続性を示せること
設立する会社の事業に適正性、継続性と安定性があることも求められます。
事業内容や収支見込み、事業計画書などを提出して、適正性、継続性と安定性を示します。ビジネスの実体があり、利益をだし事業継続できるのかという点について出入国在留管理局は審査します。何年にもわたって赤字を出し続けることが想定される会社は認められません。
500万円以上の出資があればインターネット関連や貿易などのビジネスでは経営者1人での会社運営も可能です。しかし、飲食店、マッサージ店や小売店などの店舗系ビジネスでは、経営管理ビザにおける経営者は基本的に経営業務を担うことを求められるため、調理や接客対応などの現場労働をすることを想定していません。そのため、店舗系ビジネスでは、現場スタッフを採用する必要があります。
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3.2024年3月から有償型の新株予約権の払込金も資本金として認められる
2024年3月に経営管理ビザのガイドラインが改訂され、有償のJ-KISS型新株予約権を利用した資金調達についても、資本金500万円の出資として認められるようになりました。有償型のJ-KISS型新新株予約権が経営管理ビザの要件緩和にどのように影響するかを説明しています。
3-1.有償型新株予約権(J-KISS型)とは
経営管理ビザの取得を目指す外国人起業家にとって、500 万円の資金調達は一つの大きなハードルです。
特に日本において事業を行うためには、資本金の調達の他、事業所の確保など、事業規模が一定の基準を満たす必要があります。この点で、有償型の新株予約権であるJ-KISS型が重要な役割を果たします。J-KISS型は、スタートアップ企業が投資家から資金を調達する際に利用される手法で、株式を直接発行する代わりに、将来株式に転換される権利(新株予約権)を有償で提供します。
これにより、スタートアップ企業は厳格な企業価値評価をした上での普通株や優先株といった具体的な株式を直接発行することなく、新株予約権の発行時に資金を調達することができます。投資契約に基づき、特定の条件が満たされた場合(例えば、追加の資金調達が行われるなど)に、この権利が株式に転換されます。
J-KISSは、投資家が将来的に企業の株式を保有する可能性を持つ一方で、初期段階では株式ではなく「権利」としての性質を持つため、企業の資本構成を複雑にしないという利点があり、スタートアップ企業はより柔軟に、そして簡潔に資金調達を行うことが可能となります。
3-2.経営管理ビザの資本金500万円に有償型の新株予約権の払込金が認められる
経営管理ビザを取得するための経営管理ビザの基準には、事業の資本金または出資総額が500万円以上であることが求められます。
有償型新株予約権が資本金として認められる要件
株式を発行することなく、J-KISS型新株予約権によって調達された払込金は、次の2つの条件を満たす場合に限り、資本金としての計上が認められます。
- 新株予約権の発行によって得られた払込金が返済義務のないものであること
- 新株予約権が将来権利行使される際に払込資本となる場合及び権利行使されずに失効し利益となる場合のいずれであっても、資本金として計上されること
有償型新株予約権の払込金を資本金とするための必要書類
有償型型新株予約権を利用した資金調達で経営管理ビザの要件を満たすためには、以下の書類が必要とされます。
- 新株予約権の発行に際して締結された投資契約書(J-KISS型新株予約権契約書など)
- 払込金額を証明する資料(通帳の写しや取引明細書の写し)
- 払込金額のうち、経営管理ビザの資本金500万円として計上して申請しようとする額について、将来、新株予約権が権利行使された際に資本金として計上することの誓約書等
このように、J-KISS型新株予約権を活用することで、スタートアップ企業は経営管理ビザの資金調達要件をクリアしやすくなるとともに、より柔軟な資金調達が可能となります。
4.2024年度の改正により経営管理ビザの取得の要件が緩和される
2023年10月20日の日本経済新聞によると、2024年度中に「政府は、政府は起業を志す外国人が事業所や出資金なしでも全国で2年間滞在できるようにする。」と報道しています。
経営管理ビザの在留期間、取得要件について下記の通り改正がされる予定です。
- 原則1年の在留期間→2年間に延長
- 日本国内の独立した事業所の確保→大学の研究室の一部などに拠点設置可能
- 500万円の出資金又は2名以上の常勤職員の採用→出資金なし
改正が実現されれば、大学の研究室のほか、今まで認められてこなかった、共同事務所での間借りや市シェアオフィスでの事業所利用のほか、外国人起業家による少額の自己資金起業でもビジネスプラン次第では、社外からの資金調達による事業拡大も可能となります。
4-1.経営管理ビザの要件緩和の今後の影響
今後の法改正についての詳しい情報は待たれますが、外国人が起業しやすい環境をつくることで、外国人起業家を増やしていく方向性が示されました。
特に、経営管理ビザ取得の要件である独立した事業所の確保と出資金などの事業規模のハードル緩和から、経営管理ビザの取得がしやすくなることは確かです。また、更新の手続き負担も原則1年から2年へと軽くなります。
ただし、経営管理ビザ取得のハードルである、外国人の銀行口座開設と事業所賃貸契約という課題もあります。事前に中長期滞在ができる在留カードを入手し住民票登録しないと実印、印鑑証明書を入手できず、必要な契約などの手続きができません。これらの開業準備手続きには、日本国内の協力者がいないと、手続きが難しいという問題があり、これらの手当についても法改正がなされることが期待されます。
5.まとめ
✓経営管理ビザとは、外国人が日本で会社経営や管理職として勤務ができる就労ビザである
✓経営管理ビザの在留期間は原則1年、更新により2年や3年に延長できることもある ✓経営管理ビザの取得要件として、①独立した事業所の確保、②500万円以上の出資金又は2名以上の常勤職員の雇用、③事業の安定性・継続性が求められる ✓2024年3月から、有償型の新株予約権の払込金も一定の要件を満たせば、出資金500万円として認められる ✓2024年度に独立した事業所の確保及び500万円以上の出資金の要件の緩和、在留期間の1年から2年への延長が予定されている |
法改正により、外国人起業家の起業しやすい環境が整備されていきます。
ただし、経営管理ビザ取得の要件として、「事業の安定性・継続性を示せること」については、これまでと同様に事業計画書を作成し、日本国内での事業を説明できるようにすることが継続して求められます。経営管理ビザは一度不許可となると、再申請するためのハードルが高くなります。
そのため、経営管理ビザについて詳しい専門家と相談しながら、確実な経営管理ビザ取得ができるように進めていきましょう。
この記事の監修
司法書士・行政書士事務所リーガルエステート 代表司法書士
斎藤 竜(さいとうりょう)
相談実績5000件超、実務経験10年以上の経験を持つ司法書士。
海外にまつわる相続やビジネスに関する法律、契約書作成、コンプライアンスに関するアドバイスなど、幅広い分野に対応。近年は、当事者の一部が海外に居住するケースなど国際相続の相談が多く、精力的に取り組んでいる。