この記事には広告を含む場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。
警官も汚職したくてしてるわけじゃない。マフィアとか上からの命令で仕方なく悪事を働いてしまうのだ。そんな感じのゲーム『This Is the Police』の感想や評価を。プレイ感はゆったりしていて少し退屈だが、リスクを回避していく内に自分が悪になってしまう所が面白い。開発元は独立系開発会社のWeappy Studio。
悪徳警官になってみたい? それならこのゲームがうってつけだ。『This Is the Police』(ディス イズ ザ ポリス)は悪徳警察署長である「ジャック・ボイド(Jack Boyd)」となって、退職するまでの180日間のあいだに50万ドルを稼ぐことを目的としたストラテジー&アドベンチャーゲームだ。プレイヤーは街にはびこる犯罪に対処しつつ、マフィアや市長の協力要請に応えながら、警察を去るその日まで部下を管理していくことになる。
公式サイトやSteamストアページの紹介には「180日で50万ドル稼ぐこと」をプレイヤーの目的として挙げているが、これが思ったよりも難しい。というか、初回プレイでは20日間も生きていられない。マフィアから反感を買って死んでしまうのだ。
しかし悪徳警官としての人生を3回破滅させる頃には、部下の育て方や、事件の危なさを嗅ぎ分ける嗅覚が身についてくる。『This Is the Police』はあらゆるリスクを管理するゲームだ。リスクマネジメントゲームと言ってもいい。警官の死、マフィアの脅し、人員削減、部下の裏切り…様々なリスクがプレイヤーに降りかかる。
『This Is the Police』の面白いところは、マフィアや市長の頼みをこなしていく内に、自分自身が悪に染まっていくところだ。市民を見殺しにしてでもマフィアと協力して稼ぐか、市長を援助して警官の雇用枠を増やしてもらうか…はすべて自分次第。そんなジレンマの中で部下である警官たちを事件現場へ出動させていく。
このゲームに慣れてきたら「社員は深夜まで連日働かせて当たり前」という、冷徹な考えをもったブラック企業の社長みたいな思考になると思う。僕はそうなった。なぜならそれが一番効率のいいやり方だからだ。
エンディングを見たいのであれば、人の心は捨てろ。
考え方が汚職警官になっていくところが面白い
『This Is the Police』のゲーム内容は、「警官の出動管理」と「アドベンチャー形式のストーリー」とに大別される。
「警官の出動管理」とは事件現場へ一人、あるいは二人以上の警官を送り込むというものだ。待機している警官の中から事件を解決できそうな人を選ぶだけなのだが、事件によっては送り出した警官が全員死ぬ場合もある。警官が殺されてしまうとその日に起きる事件は残りの人員だけで対処していかなければならない。
事件は突発的に発生する。もしもタイムリミット(10〜30秒ほど)が過ぎれば犯人は逃げてしまい、その事件には警官を送り込めなくなる。そうなると市長に嫌われて警官の定員を減らされてしまい、余計に事件を解決できなくなる。
プレイヤーはある程度の人員を確保するために、任務を終えた警官が帰ってくるまで数秒ほど待ったり、警官が死ぬリスクを回避できるような構成で人員を出動させたり、複数の事件に対応できるよう前日のシフトに入っている警官を連続で勤務させたりする必要があるのだ。
本当に危険な事件ではSWATを出動させることができる。しかしSWATは一日に一回しか使えない。危険な事件は一日のうちに何回か起きるので、SWATは事件の危険性を見極めて賢く使っていきたい。
事件以外にも、市長の要望や一般市民からの依頼、マフィアから頼まれるサポート要請に応える時にも警官を送り込める。依頼などのイベントは突然発生するが、別に報酬がいらなければ断ってもいいし、ちゃんと街を守っているのであれば市長の命令を拒否しても問題ない。ただしマフィアの要請を断ったら…どうなるかは想像に難くないはずだ。
このゲームの面白い部分は、気付かぬ内にプレイヤー自身が「悪」に染まっていくところだ。むしろ悪になるように作られている。もしも警官の定員を減らされて困っているところにお金持ちがやってきて、「人員の枠を増やしてあげるから、私の方から1人雇ってくれんかね?」と頼まれたらどうする? はい、と頷くしかないだろ?
「黒人を全員クビにすれば今後の待遇が良くなる? やりますとも!」となっていく自分が怖い。解雇理由を作るために、わざと黒人警官を危険度の高い事件に送り込んでいる自分がいた。そいつがその事件で殉職してくれればわざわざ解雇しなくてすむし、犯人を3回つかまえ損ねたら合法的に解雇できるのだ。違法な手段でクビにしてしまったら労働組合がうるさいしね…。
そんな風に、僕は打算的な考え方になっていった。警官を「モノ」として扱うようになったのである。能力の低い高齢な警官は、連日勤務させて当たり前。マフィアや市長からの急な依頼に関しては警官の能力は関係なく大抵達成できるので、「使えない部下」は緊急要員として待機させておくに限る。もしも高齢警官が辞職したら? それはそれで人員の枠が増えてラッキー。また新しい「キカイ」を雇えばいい…。
ただし、部下をなめすぎていると痛い目にあう。警官や刑事を理由も無く解雇したり、彼らの休暇願いを無視して無理やり働かせたりしていると、労働組合がらみの問題に発展する。最悪の場合は自身の給料が90%もカットされたり、優秀な人材が大量に解雇されることもある。
大丈夫。密告者を雇えば問題ない。信頼できそうな部下を選び、お金を渡すのだ。そうすれば不平不満をもらしている警官や刑事を突き止められる。彼らに法的手段をとらせないためには? お分かりのとおり、カネだ。
これも大丈夫。現場で押収した武器やコカインをマフィアに売りさばけばそこそこのお金になるし、マフィア絡みの事件を二つ三つ見逃せば大金が手に入る。マフィアに協力しすぎると市長から怒られて人員の枠が減らされちゃうこともあるけど、ほどほどにやっていけばいい…。
このようにして、悪になっていく。
社会問題と真っ向勝負する姿勢を評価したい
アドベンチャー形式で送られるストーリーは、デフォルト設定では英語字幕とシブい声の英語音声、適度に簡略化されつつも味のあるグラフィック、そしてマンガのようなカット割りを駆使して語られる。英語を理解するのは難しく、細かい部分については分からなかった。
しかし主人公の「ジャック・ボイド」はどこにでもいるようなオジサンであることは分かった。毎日けだるく生きていて、私生活はうまくいっていない様子だ。
プレイヤーはそんなジャックの運命を、時おり出現する選択肢から何か一つ選んで決めていく。選択肢によってストーリーが変わる、といったありがちなアドベンチャーだ。しかし、『This Is the Police』がかもしだす雰囲気は、随所にオトナを感じさせてくれる。黒人差別やフェミニストの抗議など、扱う問題はどれもシリアスで誰も口に出したがらないものばかりだ。
黒人がプレイしたら気分を悪くしてしまう(あるいは猛烈に批判する)かもしれないけど、社会問題を真正面から取り扱っているところは賞賛したい。非常に刺激的だ!
だからこそ、公式に日本語化された状態で物語を堪能したかったという思いもある。難しい英単語があって、そこそこの頻度で単語の意味を調べる必要があった。(resignやcorruptionの意味はギリギリ分かったけど、rosterとかは分からなかった)
2017年4月5日に日本語字幕と日本語UIに対応した。
最後に:頑張れば正義として生きていけるが、きっと君も悪になる
警官の二面性を表したロゴとか、ジャズを聞きながら事件をさばいていけるところとか、UIが今どきのフラットデザインなところとか、全体的にセンスが高い。プレイ中は自分自身がセンスのいい人間になったかのような感覚になる。
ただし実際のプレイは「ゆったり」している。基本的に事件が起きるのを待つゲームなので、退屈に感じることもあるだろう。僕はそれをラジオを聞きながらプレイすることで解決した。『This Is the Police』は、録音して貯めこんだラジオ音源を聞きながらプレイするぐらいがちょうどいい。
最後に言っておきたいのは、別に悪徳警官になる必要はないということだ。たとえ市長の要望を拒否しても、街をしっかり守っていればその仕事はちゃんと評価される。
でも君は…悪魔のささやきを聞き流せるかな? 絶対無理だね!
(以下、アフィリエイトと関連記事)