北朝鮮の核実験を理由に朝鮮学校に圧力をかけないでください

社会

埼玉県は１３日発表した平成２５年度当初予算案に、埼玉朝鮮初中級学校（さいたま市大宮区）への補助金を計上しなかった。上田清司知事は「日本人拉致事件が一向に解決に向けて進展せず、核実験やミサイル発射など、もう我慢できないという県民感情もある」と理由を説明した。
【北核実験】「もう我慢できない…」埼玉県、朝鮮学校への補助金計上せず - MSN産経ニュース

北朝鮮が核実験を実施したことを受け、神奈川県は１３日、県内の朝鮮学校５校を運営する学校法人「神奈川朝鮮学園」への２０１３年度の補助金約６３００万円を予算案計上しないことを決め、学校側に通知した。 　黒岩祐治知事が同日、記者会見し、「北朝鮮の強い影響力の中にある朝鮮学校への補助継続は、県民の理解を得られない」と説明した。県によると、補助金は１９７７年度から交付。２０１０年度以降は、学校が北朝鮮の拉致問題を適切に教えているかを確認したうえで交付していた。
朝鮮学校への補助金計上せず…神奈川と埼玉 : 社会 : YOMIURI ONLINE（読売新聞）

最初埼玉のニュースを見て埼玉県民なんとかしろよって思ってたら、神奈川もだった。。。

「県民の理解が得られない」とか言ってるけど、そっちの方が理解できない。神奈川県民として県のホームページにある投書欄から意見を送った。

神奈川県民の読者の方は各々意見を送るといいと思う。

以下は僕が送った文面。かなりイライラしながら急いで書いたので多少乱れてるけど。。。

北朝鮮の核実験を理由に朝鮮学校に圧力をかけないでください

北朝鮮の核実験に伴い朝鮮学校への補助金を見送る方針と報道で知りました。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130213/kor13021314290011-n1.htm

「県民の理解が得られない」とのことですが、私にはその方針の方が理解できません。私は一県民として朝鮮学校への補助金今まで通りの方針で交付されることを希望します。

北朝鮮の核実験に対して日本の朝鮮学校には何の影響力もありません。朝鮮学校の関係者や生徒が何かすることで核実験を回避できたとは思えません。力も権限もない者に責任があるわけがありません。

それなのに北朝鮮政府の行動を理由に朝鮮学校に圧力をかけるのは、責任能力のない者への罰であり、平たく言えばただの弱い者いじめです。県では「いじめを絶対に許さない」という緊急アピールを出していたはずなのに、これは一体どういうことでしょうか。

ただでさえ在日コリアンに対する差別が懸念される情勢です。つい先日も新大久保で「韓国人を殺せ」というプラカードを掲げた右翼団体のデモが行われました。

http://getnews.jp/archives/289322

県の方針はこのような情勢を追認するものと受け止められかねません。「県民の理解が得られない」などと頼りないことを言うのではなく、在日コリアンの被害者も日本人の加害者も出さないよう、冷静になるよう県民に訴えるのが県の役目のはずです。

朝鮮学校の教育内容には問題もあるのかもしれません。しかしそれは北朝鮮政府の動きとは別問題ですし、補助金を出さないならそのままでよいというものでもないはずです。我が国が批准している国際人権規約に基づく民族教育の権利を尊重しつつ日本社会との融和を図るよう働きかけるべきでしょう。

補助金はそのような働きかけの一環でもあったはずですが、朝鮮学校自身ではどうすることもできない北朝鮮政府の行動を理由にそれを止めるとなると、その効力も失われてしまいます。

どうか再考してくださるようお願いします。

追記(1): 「融和を図る」について

はてブコメントより。

TakamoriTarou [論説][社会] 日本社会へ融和のため民族教育に金をとか賛成できない。金を武器に民族教育を歪めろってか。それ本当に民族教育尊重してる? 韓国学校の様に一条高化の道もあったのにこの形に拘る人々を尊重するのならこの論法は駄目

条件付きで補助金を出す、というのは今まで実際に神奈川県がとってきた政策です。これまでの政策に意味があるとしたら、今回の決定はそれをぶちこわしにするものですよ、というのが意見の後半の趣旨です。

朝鮮学校での教育内容についてはあまりよく知りません。なので「あるのかもしれません」と書きました。ただ、原理原則として、いくら民族教育の権利があると言っても限度はあると思います。

例えば日本人にだって民族教育の権利はありますが、その内容に歴史修正主義や人種差別があるなら、国際的な非難に晒されることでしょうし、それを単に民族教育を歪めようとする内政干渉だ、と拒絶すればよいというものでもないと思います。

ですから、教育内容を理由とした補助金の減額や打ち切りは、その内容によっては否定しきれない、というのが僕の正直な気持ちです。

現在の「拉致問題を適切に教えているかを確認したうえで交付」というのがどこまで妥当なのか僕は知りません。具体的に内容を検討すればそこにも批判すべき点はあるのかもしれません。僕の無知故にそこまで踏み込んだことは書けなかったということです。

追記(2): そもそも補助金を出す理由は? ということ

はてブコメントでも複数ありましたが、そもそもなんで補助金を出すのか? ということについて。一言で言うと、国際人権規約には内外人平等主義という原則があり、教育や社会保障のような政策では外国人も平等に扱うべき、ということになっているからだと思います。*1

これはいわゆる高校無償化についても同じことです。そもそも高校無償化というのも、国際人権規約のうち高等教育の無償化の条項を留保していたのを、留保撤回するという方針に基づくものです。

国際人権規約は日本国が締結した条約ですから憲法と同等、あるいはそれに次ぐ効力があります。朝鮮学校に対する補助金打ち切りも無償化除外も裁判沙汰になれば国や自治体が負ける可能性もあるということです。


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*1:最初断言してたけど、補助金の方はちゃんと調べたわけではないので表現を変えました…