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2010.12.21
人から本を奪う者はどんな報いを受けるか/当世米国「禁書」目録
またしても大きな勘違いをしていた。
断食のやり方には大きく分けて二つあって、ひとつは断食する前にご馳走を食べる(キリスト教徒の謝肉祭がそうだ)、もうひとつは断食が終わった後ご馳走を食べる(イスラム教徒がする)。
いずれにしろご馳走は食べるのだが、アメリカで毎年やってる「禁書週間(Banned Books Week)」を、何かそういった類のものだと長らく思い込んでいた。
つまりたらふく読んでから本を絶つのか、1週間何も読まずに耐えてその後がっつり本を読むのか、そのいずれかだろうと踏んでいた。
なんのために?
多分、好き勝手に本が読める有難さを思い出すために。
「禁書週間」の主宰のひとつであるALA(American Library Association;アメリカ図書館協会)は、毎年「週間」にあわせてchallenged books listを発表している。すなわち、「こんな本を読ますな、見せるな、図書館に置くな」とやり玉にあがった本のリストだ。
Books Challenged and/or Banned - 2009-2010 (PDF)
Books Challenged and/or Banned - 2008-2009 (PDF)
Books Challenged and/or Banned - 2007-2008 (PDF)
Books Challenged and/or Banned - 2006-2007 (PDF)
Books Challenged and/or Banned - 2005-2006 (PDF)
Books Challenged and/or Banned - 2004-2005 (PDF)
他にも、閲覧制限の申し立て(challenge)の事例があった場所をgoogle mapで示している。
View Book Bans and Challenges, 2007-2010 in a larger map
図書館が読書の自由を守ることは、今では当然のようだが、必然的なものではない。いつの世にも、たとえばサリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を、鍵付き書庫に放り込んで隠してしまう誘惑に駆られた図書館員はいた。
最近でも、ケンタッキー州ジェサミン郡の図書館の貸出担当職員2人が、性的な表現が含まれるグラフィック・ノベル(マンガと似て非なるが子供の人気と大人の扱いは似たようなものがある)を子供たちが読むことに心痛め、ずっと自分たちで借りっぱなしにしていたことでクビになっている。
http://www.schoollibraryjournal.com/article/CA6705443.html
http://www.schoollibraryjournal.com/article/CA6710782.html
図書館からどんな本を借りたか記録に残すことのできる条項を含む「愛国者法」のような悪法が10年たってもなくならないあの国ですら、人の手から本を奪う者は、こうした報いを受ける。「こんな本を読ますな」という声は消えることはないが、そうした声が聞き入れられることはめったにない。
やり玉にあげられる本の定番(Banned and Challenged Classics)がリストになっているので紹介しておこう(くどいが名著リストでも推薦書リストでもない)。D.H.ロレンスの“Women in Love”以外はすべて邦訳がある。
1. The Great Gatsby, by F. Scott Fitzgerald
2. The Catcher in the Rye, by J.D. Salinger
3. The Grapes of Wrath, by John Steinbeck
4. To Kill a Mockingbird, by Harper Lee
5. The Color Purple, by Alice Walker
6. Ulysses, by James Joyce
7. Beloved, by Toni Morrison
8. The Lord of the Flies, by William Golding
9. 1984, by George Orwell
11. Lolita, by Vladmir Nabokov
12. Of Mice and Men, by John Steinbeck
15. Catch-22, by Joseph Heller
16. Brave New World, by Aldous Huxley
17. Animal Farm, by George Orwell
18. The Sun Also Rises, by Ernest Hemingway
19. As I Lay Dying, by William Faulkner
20. A Farewell to Arms, by Ernest Hemingway
23. Their Eyes Were Watching God, by Zora Neale Hurston
24. Invisible Man, by Ralph Ellison
25. Song of Solomon, by Toni Morrison
26. Gone with the Wind, by Margaret Mitchell
27. Native Son, by Richard Wright
28. One Flew Over the Cuckoo's Nest, by Ken Kesey
29. Slaughterhouse-Five, by Kurt Vonnegut
30. For Whom the Bell Tolls, by Ernest Hemingway
33. The Call of the Wild, by Jack London
野生の呼び声 / ジャック・ロンドン
36. Go Tell it on the Mountain, by James Baldwin
山にのぼりて告げよ / ボールドウィン
38. All the King's Men, by Robert Penn Warren
すべて王の臣 / ロバート・ペン・ウォーレン
40. The Lord of the Rings, by J.R.R. Tolkien
指輪物語 / J.R.R.トールキン
45. The Jungle, by Upton Sinclair
ジャングル / アプトン・シンクレア
48. Lady Chatterley's Lover, by D.H. Lawrence
チャタレイ夫人の恋人 / D.H.ローレンス
49. A Clockwork Orange, by Anthony Burgess
時計じかけのオレンジ / アンソニイ・バージェス
50. The Awakening, by Kate Chopin
目覚め / ケイト・ショパン
53. In Cold Blood, by Truman Capote
冷血 / トルーマン・カポーティ
55. The Satanic Verses, by Salman Rushdie
悪魔の詩 / サルマン・ラシュディ
57. Sophie's Choice, by William Styron
ソフィーの選択 / ウィリアム・スタイロン
64. Sons and Lovers, by D.H. Lawrence
息子と恋人 / D.H.ロレンス
66. Cat's Cradle, by Kurt Vonnegut
猫のゆりかご / カート・ヴォネガット・ジュニア
67. A Separate Peace, by John Knowles
友だち / ジョン・ノールズ
73. Naked Lunch, by William S. Burroughs
裸のランチ / ウィリアム・バロウズ
74. Brideshead Revisited, by Evelyn Waugh
ブライヅヘッドふたたび / イーヴリン・ウォー
75. Women in Love, by D.H. Lawrence
80. The Naked and the Dead, by Norman Mailer
裸者と死者 / ノーマン・メイラー
84. Tropic of Cancer, by Henry Miller
北回帰線 / ヘンリ・ミラー
88. An American Tragedy, by Theodore Dreiser
アメリカの悲劇 / セオドア・ドライザー
97. Rabbit, Run, by John Updike
走れウサギ / ジョン・アップダイク
断食のやり方には大きく分けて二つあって、ひとつは断食する前にご馳走を食べる(キリスト教徒の謝肉祭がそうだ)、もうひとつは断食が終わった後ご馳走を食べる(イスラム教徒がする)。
いずれにしろご馳走は食べるのだが、アメリカで毎年やってる「禁書週間(Banned Books Week)」を、何かそういった類のものだと長らく思い込んでいた。
つまりたらふく読んでから本を絶つのか、1週間何も読まずに耐えてその後がっつり本を読むのか、そのいずれかだろうと踏んでいた。
なんのために?
多分、好き勝手に本が読める有難さを思い出すために。
「禁書週間」の主宰のひとつであるALA(American Library Association;アメリカ図書館協会)は、毎年「週間」にあわせてchallenged books listを発表している。すなわち、「こんな本を読ますな、見せるな、図書館に置くな」とやり玉にあがった本のリストだ。
Books Challenged and/or Banned - 2009-2010 (PDF)
Books Challenged and/or Banned - 2008-2009 (PDF)
Books Challenged and/or Banned - 2007-2008 (PDF)
Books Challenged and/or Banned - 2006-2007 (PDF)
Books Challenged and/or Banned - 2005-2006 (PDF)
Books Challenged and/or Banned - 2004-2005 (PDF)
他にも、閲覧制限の申し立て(challenge)の事例があった場所をgoogle mapで示している。
View Book Bans and Challenges, 2007-2010 in a larger map
図書館が読書の自由を守ることは、今では当然のようだが、必然的なものではない。いつの世にも、たとえばサリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」を、鍵付き書庫に放り込んで隠してしまう誘惑に駆られた図書館員はいた。
最近でも、ケンタッキー州ジェサミン郡の図書館の貸出担当職員2人が、性的な表現が含まれるグラフィック・ノベル(マンガと似て非なるが子供の人気と大人の扱いは似たようなものがある)を子供たちが読むことに心痛め、ずっと自分たちで借りっぱなしにしていたことでクビになっている。
http://www.schoollibraryjournal.com/article/CA6705443.html
http://www.schoollibraryjournal.com/article/CA6710782.html
図書館からどんな本を借りたか記録に残すことのできる条項を含む「愛国者法」のような悪法が10年たってもなくならないあの国ですら、人の手から本を奪う者は、こうした報いを受ける。「こんな本を読ますな」という声は消えることはないが、そうした声が聞き入れられることはめったにない。
やり玉にあげられる本の定番(Banned and Challenged Classics)がリストになっているので紹介しておこう(くどいが名著リストでも推薦書リストでもない)。D.H.ロレンスの“Women in Love”以外はすべて邦訳がある。
1. The Great Gatsby, by F. Scott Fitzgerald
グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー) (2006/11) スコット フィッツジェラルド、村上春樹 他 商品詳細を見る |
2. The Catcher in the Rye, by J.D. Salinger
キャッチャー・イン・ザ・ライ (ペーパーバック・エディション) (2006/04) J.D. サリンジャー 商品詳細を見る |
3. The Grapes of Wrath, by John Steinbeck
怒りの葡萄 (上巻) (新潮文庫) (1967/05) スタインベック 商品詳細を見る |
4. To Kill a Mockingbird, by Harper Lee
アラバマ物語 (1984/05) ハーパー・リー、菊池 重三郎 他 商品詳細を見る |
5. The Color Purple, by Alice Walker
カラーパープル (集英社文庫) (1986/04/04) アリス ウォーカー、柳沢 由実子 他 商品詳細を見る |
6. Ulysses, by James Joyce
ユリシーズ 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ) (2003/09/19) ジェイムズ・ジョイス 商品詳細を見る |
7. Beloved, by Toni Morrison
ビラヴド (集英社文庫) (1998/12/15) トニ モリスン 商品詳細を見る |
8. The Lord of the Flies, by William Golding
蠅の王 (新潮文庫) (1975/03) ウィリアム・ゴールディング、平井 正穂 他 商品詳細を見る |
9. 1984, by George Orwell
一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫) (2009/07/18) ジョージ・オーウェル 商品詳細を見る |
11. Lolita, by Vladmir Nabokov
ロリータ (新潮文庫) (2006/10) ウラジーミル ナボコフ 商品詳細を見る |
12. Of Mice and Men, by John Steinbeck
ハツカネズミと人間 (新潮文庫) (1994/07) ジョン スタインベック 商品詳細を見る |
15. Catch-22, by Joseph Heller
キャッチ=22 上 (ハヤカワ文庫 NV 133) (1977/03) ジョーゼフ・ヘラー 商品詳細を見る |
16. Brave New World, by Aldous Huxley
すばらしい新世界 (講談社文庫 は 20-1) (1974/11/27) ハックスリー 商品詳細を見る |
17. Animal Farm, by George Orwell
動物農場―おとぎばなし (岩波文庫) (2009/07/16) ジョージ オーウェル 商品詳細を見る |
18. The Sun Also Rises, by Ernest Hemingway
日はまた昇る (新潮文庫) (2003/06) アーネスト ヘミングウェイ 商品詳細を見る |
19. As I Lay Dying, by William Faulkner
死の床に横たわりて (講談社文芸文庫) (2000/12) ウィリアム フォークナー 商品詳細を見る |
20. A Farewell to Arms, by Ernest Hemingway
武器よさらば(上) (光文社古典新訳文庫 Aヘ 1-1) (2007/08) アーネスト ヘミングウェイ 商品詳細を見る |
23. Their Eyes Were Watching God, by Zora Neale Hurston
彼らの目は神を見ていた (ハーストン作品集) (1995/04) ゾラ・ニール ハーストン 商品詳細を見る |
24. Invisible Man, by Ralph Ellison
見えない人間 (1) (2004/10) ラルフ・エリスン、松本 昇 他 商品詳細を見る |
25. Song of Solomon, by Toni Morrison
ソロモンの歌 (ハヤカワepi文庫) (2009/07/05) トニ モリスン 商品詳細を見る |
26. Gone with the Wind, by Margaret Mitchell
風と共に去りぬ (1) (新潮文庫) (1977/06) マーガレット・ミッチェル 商品詳細を見る |
27. Native Son, by Richard Wright
アメリカの息子 1 (ハヤカワ文庫 NV 9) (1972) リチャード・ライト 商品詳細を見る |
28. One Flew Over the Cuckoo's Nest, by Ken Kesey
カッコーの巣の上で (1996/06/22) ケン キージー 商品詳細を見る |
29. Slaughterhouse-Five, by Kurt Vonnegut
スローターハウス5 (ハヤカワ文庫 SF 302) (1978/12) カート・ヴォネガット・ジュニア 商品詳細を見る |
30. For Whom the Bell Tolls, by Ernest Hemingway
誰がために鐘は鳴る〈上〉 (新潮文庫) (2007/11) アーネスト ヘミングウェイ 商品詳細を見る |
33. The Call of the Wild, by Jack London
野生の呼び声 / ジャック・ロンドン
36. Go Tell it on the Mountain, by James Baldwin
山にのぼりて告げよ / ボールドウィン
38. All the King's Men, by Robert Penn Warren
すべて王の臣 / ロバート・ペン・ウォーレン
40. The Lord of the Rings, by J.R.R. Tolkien
指輪物語 / J.R.R.トールキン
45. The Jungle, by Upton Sinclair
ジャングル / アプトン・シンクレア
48. Lady Chatterley's Lover, by D.H. Lawrence
チャタレイ夫人の恋人 / D.H.ローレンス
49. A Clockwork Orange, by Anthony Burgess
時計じかけのオレンジ / アンソニイ・バージェス
50. The Awakening, by Kate Chopin
目覚め / ケイト・ショパン
53. In Cold Blood, by Truman Capote
冷血 / トルーマン・カポーティ
55. The Satanic Verses, by Salman Rushdie
悪魔の詩 / サルマン・ラシュディ
57. Sophie's Choice, by William Styron
ソフィーの選択 / ウィリアム・スタイロン
64. Sons and Lovers, by D.H. Lawrence
息子と恋人 / D.H.ロレンス
66. Cat's Cradle, by Kurt Vonnegut
猫のゆりかご / カート・ヴォネガット・ジュニア
67. A Separate Peace, by John Knowles
友だち / ジョン・ノールズ
73. Naked Lunch, by William S. Burroughs
裸のランチ / ウィリアム・バロウズ
74. Brideshead Revisited, by Evelyn Waugh
ブライヅヘッドふたたび / イーヴリン・ウォー
75. Women in Love, by D.H. Lawrence
80. The Naked and the Dead, by Norman Mailer
裸者と死者 / ノーマン・メイラー
84. Tropic of Cancer, by Henry Miller
北回帰線 / ヘンリ・ミラー
88. An American Tragedy, by Theodore Dreiser
アメリカの悲劇 / セオドア・ドライザー
97. Rabbit, Run, by John Updike
走れウサギ / ジョン・アップダイク
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