ビジネスパーソンインタビュー
ダメダメだった新人時代を経て。20代で上場企業経営者になった男が語る「伸び悩み脱出術」

「SNSでアウトプットしてるだけじゃ、現実は変わらない」

ダメダメだった新人時代を経て。20代で上場企業経営者になった男が語る「伸び悩み脱出術」

新R25編集部

2019/03/11

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若手ビジネスパーソンのほとんどが抱える悩みが「伸び悩み」。

今回取材した福山敦士さんもそう。慶應義塾高校で甲子園出場、新卒でサイバーエージェントに入社し25歳でグループ会社の取締役に就任、2度のM&A(売却)を経て、29歳で上場企業の役員に就任するなど、輝かしい経歴のウラで「めちゃくちゃ伸び悩んでいた」といいます。

そんな伸び悩みから脱出したメソッドを書いたのが、今年2月に発売された『マンガでわかる! 入社2年目の教科書』(ぱる出版)。

本の内容に沿いつつ、R25世代のヒントになる「伸び悩み脱出法」を聞いてきました。

ちなみに、「この本どっかで見たことあるタイトルだな…」と思った方、その疑問も最後にぶつけてます!

〈聞き手:天野俊吉(新R25編集部)〉

【福山敦士(ふくやま・あつし)】慶應義塾高校では硬式野球部に所属し、第77回全国選抜高校野球大会に出場(ベスト8)。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後は、新卒でサイバーエージェントに入社。25歳でグループ会社の取締役に就任。27歳で独立、株式会社レーザービームを創業。28歳で東証一部上場企業である株式会社ショーケースにM&A(売却)し、現在は株式会社ショーケース・ティービー執行役員

知ったかぶり、確認不足…ミスがミスを生む最悪のスパイラル

天野

キラキラした経歴のように見えますが…福山さん自身も伸び悩んだ経験があるんですよね?

福山さん

そうですね…入社1年目、2年目は、同期が次々と抜擢されて活躍していくなかで、とんでもない失敗ばっかりしてました。

プライドだけ高くて、すぐ知ったかぶりするようなダメ若手でしたね。

天野

どんな仕事をしてたんですか?

福山さん

たとえば営業に行っても、取引先の言ってるワードが全然わからない。それをひたすら知ったかぶりしてたんですよ。

ああリスティングですね」「ああSEM。はいはい」みたいな感じで、ただ話を合わせてた。

メモるのも追いつかないから、わからないまま時間が過ぎていって。

天野

そのままいくとどうなっちゃうんだろう…

福山さん

会社に帰って、先輩に「どんな話もらった?」ってきかれても「別にあんまり困ってないみたいでした!」みたいな(笑)。

それじゃ営業にならないから、「この項目埋めてこい!」ってフォーマットを用意されて、それの通り先方の話をきいてくる…っていうことをやってました。

普通にけっこうダメなヤツである

福山さん

スマホアプリのプロモーションの仕事も担当してたんですけど、ある企業から「麻雀アプリのプロモーション」の案件が来てたんです。

OKOK、余裕だろと思って、システムにアプリを登録して家に帰ったら、電話が鳴って。

天野

福山さん

間違えて、競合他社の麻雀ゲームをプロモーションしてたんです

天野

こっわ…

福山さん

それでウン百万円の損害を会社に与えまして。「次は慎重にやります! すみませんでした!」ってめちゃくちゃ謝ったんです。でも…

天野

でも

福山さん

翌週同じことをしたんですよ。また違うアプリ紹介してた。

ほんとうにあった怖い話…

福山さん

そのときはオフィスにいたんですけど、冷や汗が止まらなくなりまして

天野

でしょうね。今聞いてるこっちも冷や汗かきますね。

福山さん

またウン百万円の損害です。

当時住んでた部屋が14階だったんで、ここから飛び降りてしまえば楽になるかなと。でもちゃんと謝ってからじゃないとダメだと思い直して…

そんな1年目でした

この人、伸び悩みのケタがハンパじゃない

福山さん

2年目は、僕は「敗戦処理」って言ってたんですけど、いわゆる、サービスが終了するアプリを担当してたんです。

たとえば「お小遣いアプリ」とか。「今月で終わります」みたいな案内を出して、ユーザーからの問い合わせに対応する。

あるとき、すごいお怒りのユーザーから電話がきて、「運営ふざけんな!」と言われたんです。

天野

サービス終了は決まってるから、矢面に立つのはつらい役目ですね…

福山さん

お前名前なんて言うんだよ!」ってきかれたんで、「福山と申します!」みたいに全部正直に答えてたんです。

なんか嫌な予感しかしないな

福山さん

そのうち「金返せ! 3000円払えよ!」と。

もうパニックだから「どのようにすればよろしいでしょうか…?」「じゃあamazonギフトカード買って、今から言うアドレスに送れ!」「わかりました」みたいな流れになってて。

天野

え、自腹で…?

福山さん

そうです。コンビニ行って自分のサイフから3000円払って、「ふう、対応できたぜ」みたいな。

あとで上司に報告したらボロクソに怒られて「何勝手にやってんだ!」って言われました。

でしょうね

福山さん

今考えたらすぐに上司に相談すべきなんですけど、その当時、僕の頭のなかには「また失敗したと思われたくない」「これ以上怒られたくない」っていうことしかなかったんです。

「ミスを隠そう」という気持ちが、さらに次のミスを生む。もう最悪のスパイラルでした…

伸び悩み脱出法1「成果に素直になる」

福山さん

自分がそんなことしてる間に、同期はどんどん成果を出してる

表面上は「おめでとう! すごいな!」とか言ってましたけど、心のなかでは「クソ! ちょっとはペース落とせよ!」って焦りまくってました。

天野

ご自身と、まわりの同期たちの違いは何だったと思いますか?

福山さん

一番大きいのは「成果に素直かどうか」ってことでしょうね。

天野

成果に素直…

福山さん

僕は「自分の力で成果を出したい」「使えないヤツって思われたくない」っていう気持ちが大きくて、先輩に質問したり、頼ったりすることができなかった。

それって、責任感があるように見えて全然ない行為だなと。

本当の責任感とは1人で背負い込むことではなく、上司や先輩をうまく使うとか、どんな手段を使ってでも自分に課された責任を果たすことなんだと学びました。それが「成果に素直」ってことです。

伸び悩み脱出法2「“いい話”で終わらせずにアクションする」

天野

だいぶ激しい伸び悩みエピソードでしたが、そんな状態からどうやって脱出できたんですか?

福山さん

ノロウイルスにかかって、10連休ぐらいしたときがあったんですね。

仕事でも全然ダメでノロって…オレはマジで何なんだ?」と自問自答し、あと1年で結果が出せなければ仕事自体やめようと決心し、ある種吹っ切れてしまったんです。

福山さん

そんな状況で、たまたま本屋で『至高の営業』(幻冬舎)という本が目に入ったんです。

読んでみたら、「営業とは、お客様のもとに足を運ぶことだ」という意味のことが書いてある。

それが正しいのかどうかはわからなかったんですけど、何しろ吹っ切れちゃってたんで、「もういいや、とりあえずこの通りにやってみよう」と思ったんです。間違ってたらこの著者に文句言えばいいやって。

天野

とにかくお客さんのところに行くと。

福山さん

「売る」ってことを完全に忘れて、1カ月に100アポ(訪問)したんですよ。

最初は訪問数も数えてなかった。経費精算してたら「なんで交通費こんなにかかってるんだろう?」って思って、計算したら月に100件以上アポしてたと。

僕が変われたのはそこからですね。訪問しまくってると、予想もしていなかったような仕事をいろいろもらえるようになりだしたんです。

天野

ほう~。つまり、福山さんが「伸び悩み」から抜け出せたのは、営業先に足しげく顔を出したからってことでしょうか?

福山さん

厳密に言うとちょっと違います

福山さん

本に書いてあったことが合ってたかどうかはよくわからないんです。ただ、それを信じて動いたのがよかったんじゃないかと

急にイチロー選手の話をしたいんですが…

天野

イチロー?

福山さん

僕が少年野球をやってたころ、イチロー選手のエピソードを聞いたんです。イチロー選手は、子どものころから毎日バッティングセンターに通っていたという話。

僕の幼なじみの福田くんっていうヤツは、その話を聞いた日から、毎日バッティングセンターに通ったんですよ。練習後でも試合後でも、雨の日でも。

福山さん

その福田永将くんは、横浜高校からプロ入り(中日)して、今プロで活躍してるんです

中日ドラゴンズ 公式サイト - 選手名鑑 福田 永将(内野手)

2006年に、高校生ドラフト3巡目で中日ドラゴンズに入団。2018年から選手会長を務めるなど、チームに貴重な和製大砲として活躍中

福山さん

僕は「イチロー選手はすごいな~」と思ったけど、バッティングセンターには通わなかった

エピソードを聞いて、とりあえずすぐ真似したヤツと、動かなかったヤツ。その差って明確に出るんですよ。

天野

なるほど!!

福山さん

よく「インプットしたらアウトプットしないとダメ」とか言われると思うんですけど、デキる人は「インプット、アウトプット、アクション」。つまり、行動までをやっている。

ツイッターで名言めいたことつぶやいてる人いるじゃないですか。それはアウトプットとしてはOKですけど、それだけじゃ何も変わらないですよね。

アクションまでできると、はじめて現実が変わると思うんです。

伸び悩み脱出法3「若手のころほど、エライ人になんでも提案する」

福山さん

ほかにオススメしたいのが、エライ人に自分の案をガンガン提案すること。抜擢される同期を見てると、社長とかエライ人に直接Facebookメッセージを送ってたんですよ。

えっ、社長ってメッセしていいの?」ってそのときに気付いて(笑)。提案すると、だいたいちゃんと時間をつくってくれて、フィードバックももらえる。

天野

しょうもない質問なんですが…そういうエライ人に直接会うのってビビりませんか?

たぶん大半の若手は、そこでビビッて結局行動できないと思うんです。

福山さん

ビビりますよ(笑)。「こんな自分が会ってもらっていいのか」「まだ何の結果も出してないのに」って思いますよね。

それに対してあえて言うなら、若い人は有利だと思います。

なぜなら、若ければ若いほど期待値は低いし、結果を出してなくて当たり前だから

天野

たしかに…!

ちなみに、中堅クラスになってきたら…?

福山さん

何か提案したいんだったら、成果を出したり、表彰されたりしたタイミングで行くべきですよね。

どうも、ノリにノってる福山です!」って。

福山さん

ビジネスパーソンとしての信頼を銀行の残高のように表現した「信頼残高」って言葉があるんですけど。

「信頼」って貯めていくこともできるけど、やっぱり上がり下がりがあるもの。だから、残高が増えたタイミングで行ったほうがいいですね。

天野

序盤のエピソードからは信じられないぐらいの変わりようだ…!

「伸び悩み」期は“ちゃんと学べる”時期

天野

今伸び悩みの真っ最中にいる人に向けて、「伸び悩むことのメリット」みたいなものがあれば教えてほしいんですが…!

福山さん

伸び悩んで、苦手なことのカベにぶつかったほうが、そのやり方をちゃんと学べると思います。

天野

やり方を学べる?

福山さん

たとえば、僕「企画をつくる」のがめちゃくちゃ苦手で。

新卒のころ、「新しいアプリの企画をつくって」って言われたんですけど、野球の企画しか出てこなかったんですよ。

自分なりの経験から企画を立てようと思うんですけど、野球しかやってきてないから、「懐かしの助っ人外国人列伝」とかしか出てこない。

天野

野球ファンには刺さりますけど…求められてるものではなかったでしょうね。

福山さん

ツッコまれながら教わったのが、「まずは流行ってるものに触れろ、それを完コピしろ」と。その仕組みを分析して構造を可視化して、自分のエッセンスを1割足せばいいんだと言われたんですね。

そうやって、論理的に考える方法を学べるのは「伸び悩んでいる時期」だからこそですよね。

天野

福山さんが言うとめちゃくちゃ説得力がある…!

福山さん

今回上梓した『入社2年目の教科書』は、今日お話したような僕の苦い経験をもとに、すべての若手ビジネスパーソンに向けて書いた本です。

R25世代の皆さんにはぜひ読んでほしいですね!

天野

リアルすぎるお話、ありがとうございました!

最後にひとつだけツッコませてください

岩瀬大輔さんが書いた『入社1年目の教科書』(ダイヤモンド社)という超有名なビジネス書があると思うんですが…ぶっちゃけパクってません?

福山さん

そうですね!

書店で隣に置いてくれればいいな、あわよくば間違えて買ってくれないかな…と思ってこのタイトルになりました。

天野

成果に素直に向き合ってる!!!!

〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=宮内麻希(@haribo1126)〉

福山さんの著書『マンガでわかる! 入社2年目の教科書』はこちら!

圧倒的「伸び悩み」のあと、上場企業の役員に抜擢された福山さん。

本書では、独自の「成長メソッド」がマンガでわかりやすく解説されています。

・PDCAは最初のPを抜いてみる

・ホウレンソウは進捗2割の時点が一番大切

とはどういうことか…!?

「このままこの会社で、この仕事をしてても成長できない気がする」と悩むすべての若手ビジネスパーソンにオススメの1冊です。

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