ビジネスパーソンインタビュー
人事のプロが「今が不満でも、転職すべきではない」と主張する理由

職場の不満の多くは成果を出せてないのが原因

人事のプロが「今が不満でも、転職すべきではない」と主張する理由

新R25編集部

2019/06/27

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今は転職サイトエージェントの広告・SNSでも「転職」を後押しされる時代。誰しも一度は「転職しようかな…」と、悩んだ経験はあるでしょう。

ですが、安易に転職をするのも、それはそれで怖いもの。「自分の甘えで逃げようとしてるだけなのかも」とか、「転職先でも今の不満が解消されなかったらどうしよう」など悩みは尽きません。

自分が転職すべきかどうか、はっきり分かったらいいのに…なんて思ったことはありませんか?

そこで専門家に「転職すべきでない人」について、ズバッと斬っていただきました。今回お話を聞いたのは、ビジネスパーソン向けのメディア「Books&Apps」の管理人であり、数多くの企業の採用支援を手がけた経験を持つ安達裕哉さん。

この記事を読むと、転職に対する考え方がガラッと変わるはず。

〈聞き手=水玉綾〉

【安達裕哉(あだち・ゆうや)】経営・人事・ITコンサルタント。ティネクト株式会社代表取締役。1975年東京都生まれ。世界四大会計事務所であるDeloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。現在は仕事、マネジメントに関するメディア「Books&Apps」を運営する一方で、企業の現場でコンサルティング活動をおこなう。著書に『「仕事ができるやつ」になる最短の道』(日本実業出版社)などがある

実は、ほとんどの人は転職すべきではない

水玉

最近は若いうちに転職することが一般的になりつつありますが、なかには安易に転職してしまって逆に苦しむ人もいる気がするんです。

「こういう人は転職するな!」みたいなパターンってあるんでしょうか?

安達さん

逆に、ほとんどの人は転職すべきではないでしょうね。

水玉

えっ!? それはなぜですか?

安達さん

どこに行っても状況は大して変わらないからです。

待遇や人間関係など、職場に対する不満はどこでも生まれます。くわえて、それらの多くの原因は成果を出せていないことに帰結します

なので成果の出し方を知らないと、転職しても近いうちに行き詰まってしまうでしょうね。

水玉

つまり不満を解消するには、成果を出すしかないと。じゃあ職場を変えたうえで成果を出すのが理想では…?

安達さん

それができればいいんですが、職場を変えないほうが圧倒的にラクです

水玉

…そうなんですか?

安達さん

そもそも転職すること自体に時間も手間もかかりますよね。

さらには新しい職場では人間関係をゼロから築かないといけなかったり、業務内容が変わったりするので、ちゃんとした成果を出すのに平気で1~2年はかかります。

一方で、今いる職場なら知っている人が多いし、仕事も分かっているから成果を出すのはよっぽど簡単。それならまずは今の職場で頑張るべきだと思いませんか?

水玉

そう言われればそうかもしれません…

安達さん

それに日本は、いまだに転職回数が多い人に厳しい。安易に転職するほど、受け入れ先はどんどん減っていきます。

それでも本当に、転職することに価値があると思います?

水玉

うっ…

安達さん

とまあここまで転職を否定してきましたが、転職したいと思ってしまうのは普通です。私も最初に入った会社では500回ぐらい思いました(笑)。

水玉

だいぶ多いですね(笑)。なぜ踏みとどまれたんですか?

安達さん

職場環境はすぐに変化することがわかったからです。会社は思ってるほど安定した存在じゃなくて、市場などの影響を受けてどんどん変わっていきます。

私の場合は「仕事がつまらない」と思ってましたが、上司に直訴したら意外とうまいこと状況が変わりました。イヤな同僚がいたとしても、1年ぐらいしたらいなくなるなんてこともよくあります。

水玉

たしかに。

安達さん

むしろずっと同じ状況が続くことのほうが珍しいので、実は職場を変えなきゃいけないケースってそんなに多くないんだと思います。

今の職場の不満を解消するには、身近な人に欠点を指摘してもらおう

水玉

ほとんどの人は今の職場で頑張るべきとのことですが、不満があるから職場を変えたいわけですよね。

その不満を転職以外の方法でどうやって解消していけばいいんでしょう?

安達さん

超基本的ですが、まずはトラブルシューティングをすべきです。

仕事をするうえでの欠点って、何らかの形で指摘されているはずなんですよ。それをちゃんと受け入れて、改善する努力をしましょう。

もちろん100%自分が悪いなんてことは絶対にない。ただ、「自分にも悪い部分が大いにある」という前提に立ったほうが、いろんな環境に対応できるようになるので自分のためになります。

水玉

なるほど。そうはいっても、常に指摘されてるわけじゃないので、改めて欠点を知るのって難しくないですか?

安達さん

そうですね。だから人を頼りましょう。社外でも、先輩でも、ちゃんと見てくれている人に話を聞く。

いいところも悪いところも、自分ではなかなか分かりません。ひとりで考えるだけだと、検討はずれの努力をすることになってしまいますよ。

水玉

先入観のせいか、上司など身近な人が敵に見えてしまい、相談できないこともありそうですが…

安達さん

勝手に敵にしてるだけですよ。たぶん上司は「お前のこと、そこまで気にしたことないよ」っていうのが本音。

よっぽどのことをしてない限り、たいていは無関心。嫌われることのほうが珍しいです。なので、構わず指摘をもらったほうがいいと思いますよ。

転職すべきは「成果を出した人」と「評価をリセットしたい人」

水玉

逆に「こういう人は転職すべきだ」ってパターンはありますか?

安達さん

転職すべき人は2つのパターンに分けられます。1つは成果を出して、やれることをやり尽くしたパターン

もっと大きくておもしろい仕事を求めて転職する、勝ち組パターンです。これはまったく問題ない。

水玉

そうですよね。

安達さん

もう1つは、評価をリセットしたいパターン。こちらは言ってしまえば、“負け組”です。

たとえば“ヘマ”をやらかしつづけて、「仕事ができない人」と評価が固定されてしまったとします。多少頑張っても挽回できないなら、評価をリセットするために転職するしかない。

人間関係も同じで、小さな会社でギスギスした関係が続き、どうしようもなければリセットせざるを得ません。

水玉

なるほど。職場に対する不満を抱いてる人たちは、こちらのパターンが大半な印象です。

安達さん

この場合に気をつけなきゃいけないのは、転職をゴールにしないこと

不満があると、どうしても新しい会社に入ることが目的になりがちですが、転職自体は勝負ではありません。むしろ転職後が勝負。

同じような不満を抱かず済むように、評価をリセットしてからのことを真剣に考えなきゃいけません。

成果を出すには、「マーケティング的発想」で相手が求めるものを提供すべき

水玉

それってトラブルシューティングするのにくわえて、どうすれば成果を出せるかを考えなきゃいけないということですよね。

もちろんシチュエーションによって違うとは思うんですが、「成果を出す秘訣」みたいなものがあれば、教えてほしいです。

安達さん

すべてをマーケティング的発想で考えること。これに尽きます。

水玉

具体的には…?

安達さん

相手が求めていることを見抜いて、それを提供すればいいんですよ。この原理はお客さんにも上司にも当てはまります。

水玉

つまり“ゴマをすれ”と。

安達さん

そうですね。もちろんただ媚びるだけじゃダメですが、相手に何をしたら喜んでもらえるかを考えて行動するのは、成果を出すための最短ルートです。

社内の権力者に対して“ゴマをする”的なことを嫌う人もいますが、そういう人は苦労するでしょうね。

集団で評価されるための本質は、誰かの役に立つことなので。

水玉

それは分かる気がします。ただ、何が求められているか分かりづらいこともありますよね。

安達さん

身近な人なら、まずは率直に聞けばいいと思いますよ。「今、課題に思っていることってありますか?」みたいに。

水玉

安達さんはそういったことをされてたんですか?

安達さん

そうですね。直接聞くこともありましたし、組織の新しい動きにも注目してました。たとえば、年初に発表される経営計画から自分のやれそうなことを拾ったり、新しい試みをしてる部署の手伝いをしたり。

ほかにも、前にいた会社では、社員の評価項目がちょっとずつ変わるんです。新しく追加された項目って、いうなれば「今はこれを重視してほしい」という会社からのサイン。なのでそこを最優先して取り組んで、表彰してもらえました。

水玉

おー、さすがですね!

安達さん

でもこれって、“お客さんの声を聞く”っていう、超ベーシックなことをやったまでです。みんな難しいことを考えすぎなんですよ。

身近な人に何をしたら喜んでもらえるかを考えて行動すれば、自然と成果は付いてくるはずです!

安易に「転職」という選択肢を選ぶよりも、今いる環境で課題と向き合ったほうが、圧倒的にコスパがいいのかもしれないと気付かされた取材でした。

実は安達さんには、もうひとつ気になるテーマをぶつけています! それは「転職を成功させる秘訣」。

転職を選択肢に入れている若手ビジネスパーソン向けに、どうすれば自分に合った会社が見つけられるかなど、転職の際に参考になる考え方をお伝えします。

〈取材・文=水玉綾(@maya_mip)/撮影・編集=葛上洋平(@s1greg0k0t1)〉

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