角換わりの銀の行き場のナッシュ均衡

本稿はQhapaq Research Labの棋譜検索ツールの宣伝記事です。

 

今では序盤研究のお供としても活用されるようになったコンピュータ将棋ですが、コンピュータ将棋同士の対局での序盤研究では長らく勝率ベースの定跡作成が用いられています。高精度な昨今の評価関数でも序盤の評価値の微妙な差は見分け難いので、沢山戦わせて勝ちやすい戦型を選ぼうというわけです。

ではここで問題、居飛車角換わりには棒銀、腰掛け銀、早繰り銀がありますが、一番勝率が高いのはどれでしょう.....?

 

というわけで実際に検索してみましょう。QRLでは将棋ソフトのレート測定に用いた棋譜のデータベースがあります。そしてそのデータベースでは様々な戦型を検索することが出来ます。角換わりの棋譜数を戦型別に検索することで勝率の高い戦型を探すことが可能です。

 

QRLの棋譜検索エンジン(正式名称:棋譜の名は)

Qhapaq Research Lab kifu_no_na wa

検索できるタグ一覧

コンピュータ将棋の棋譜検索 in Qhapaq Research Lab - django-\/\/ i K |

 

 【解析結果】

 

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角換わりの銀の行き場別勝率

 

この表において特筆すべき点は3つです。

1.後手腰掛け銀(特に相腰掛け銀)の引き分け率が高い

2.相早繰り銀の先手勝率が低い(こちらは統計誤差的にちと怪しいが)

3.腰掛け銀 vs 棒銀も引き分け率が高い(これも統計誤差的に怪しいが)

 

表を眺めながら角換わりの銀のナッシュ均衡を考えると恐らく以下のようになります。

 

1.先手は腰掛け銀にする

先手は銀の態度を先に決めることになりがち故に、相早繰り銀になるリスクを考えると腰掛け銀。相早繰り銀で後手腰掛け銀への勝率を上げる、引き分け率を下げるという手もあるが、どちらも増分は微々たるもの。

 

2.後手は引き分けを狙いたければ腰掛け銀か棒銀、引き分けを避けたいなら早繰り銀

引き分けを勝ちと考えるか負けと考えるかで最適解が変わります。角換わりの銀は三すくみなどと言われてましたが今の将棋ソフトにとってはどれも大差ないようです。実戦的には先手は腰掛け銀、後手は自分の研究手をぶつけるといった形になりそうです。先手のほうが対策しなければならない手が広い分、事前研究コスト的な意味ではしんどいと思われます。

 

 

というわけで、角換わりの銀ですが、先手はとりあえず腰掛けましょう。後手は好きにしてくださいでFA。

 

【追記:本研究の課題】

この研究ではどのソフトの棋譜であるかは加味していません。QRLの棋譜データに入ってるソフトは新しめのものが多く、人間よりは強いだろうとは思います。が、強いソフトと弱いソフトのレート差は数百程度あるので、特定の強いソフトが特定の戦略を取りやすい場合、勝率にブレが生じる可能性が有ります。

気になる人はソフト名も含めて絞り込み検索をしてみると良いでしょう(読者の課題とするってやつです。言ってみたかったんだ

 

【追記2:個人的な疑問】

人間視点で見た角換わりの戦型ってどうなってるんでしょう。最近は角換わりブームも少し落ち着いた気がしますが、先手側で対応しなければならないことが増えすぎて、角換わりを先手が拒否する傾向が出てきた......とか?