
提供:野村證券
★座談会★
決勝大会が今週行われる第4回スタ★アトピッチJapan。今年も熱いプレゼンテーションが期待される。
また惜しくも決勝進出がかなわなかった出場者にとっても、大会を通じて得たものは今後の事業の糧となるだろう。
そこで今回は過去大会に出場したエイターリンクの岩佐凌氏、山口第一交通グループの坂田敬次郎氏、宗重商店の宗守重泰氏に、大会に向けて準備したことやそこで得たもの、その後のビジネスへの影響などについて話を聞いた。
大会に参加した理由を教えてください。
岩佐 スタートアップ企業にとって、ピッチイベントで結果を残すことは一つの目標です。スタ★アトピッチは、事業のステージを進めるチャンスだと思い、出場を決めました。
宗守 当社では解体や不要品回収をはじめとする事業を展開しています。私たちのような世の中を支える職に就く人々に、自身の仕事の社会的意義と価値を感じてもらいたい、と思ったのが参加したきっかけです。
坂田 当社は山口県にある会社ですが、「地方の企業でもイノベーションを実現できる」ことを発信したかった。全国のアトツギにとってのモチベーションにもなるのかな、と。
宗守 アトツギが一歩を踏み出す勇気につながれば、という思いは僕もありました。北陸の人は遠慮がちな傾向がありますが、その突破口になりたかった。
大会出場にあたり、どんな準備をされましたか。
坂田 事業内容を簡潔に伝えるため、コアメンバーと議論をしながら頭の中の棚卸しをしました。そうすると、普段は気づかなかった市場の将来性や、競合優位性、新たなアイデアなど事業発展に必要なポイントを整理でき、10年後、20年後にどういう企業に成長させるかが非常にクリアになりました。
アナログ産業といわれるタクシー業界に、AI乗合配車システムを持ち込むことで、デジタル型乗合タクシーという新サービスを生み出したアトツギベンチャー。「移動で人々を幸せにする」というミッションを掲げ、ITを活用し山口県からタクシー業界を変革する。
岩佐 社内で何度もミーティングを重ね、100回以上はプレゼンの練習をしました。スタートアップは目まぐるしく企業のステージが変わっていきます。スピード感は必須ですが、改めてコアメンバーとこれまでの事業を振り返る時間を作れたことは、次のフェーズに進むうえでも重要だったと思います。また、大会では他業種の参加者のピッチを通じて、見識が広まりました。なかなか会うことがない他の出場者や審査員と、対面でお話できる貴重な機会でもありました。
宗守 発表や質疑応答の準備を通して、事業を高い視座から見つめ直すことができました。その中で、当たり前と思っていたことが、実は自社の優位性であることにも気づけました。現場で目の前のことに一生懸命になるだけでなく、改めてそれぞれの事業のシナジーや社会とのつながりなどを意識できたのは大きな収穫です。この大会は、異種格闘技戦のような印象があります。スタートアップとアトツギベンチャーが同じ舞台で戦える機会は他にないので、すごく刺激的でした。
独自の特許技術、完全ワイヤレス給電によって“配線のないデジタル世界”を実現する、スタンフォード大学発のスタートアップ企業。ペースメーカーなど埋め込み型医療機器を扱うメディカル分野をはじめ、工場やビルなど様々な場所でのワイヤレス化を可能に。
大会後の反響はいかがでしたか?
坂田 採用の効果が大きいです。県外、特に東京・名古屋など大都市圏から、ご家族と一緒に引っ越してまで働きたいと言ってくれる方が増えたことが一番うれしかった。既存社員の意識も変化し、組織が活性化しています。
宗守 社員のエンゲージメント向上にも役立ちました。全社集会でピッチ映像を流したのですが、一人ひとりが会社の社会的使命を改めて感じることで、仕事に対する自信やプロ意識の向上にもつながったと思います。
坂田 このような全国大会に出ることで、社員やそのご家族にも改めて会社を知ってもらう良い機会になりました。「移動で人々を幸せにする」というミッションに共感してくれる方も増えています。
岩佐 取引先が注目してくれて、「見たよ」と声をかけてもらったこともありました。我々のプロダクト作りには、多くの方の協力が必要です。大会から2年経ち、サプライチェーンの構築やブランディング、信頼性などの様々な面で波及効果を感じています。
宗守 大会を通じて、大きな夢を語り、実現させていくことの大切さを痛感しました。我々も一層の使命感を持って、事業に取り組んでいきたいです。
解体事業・リサイクル事業を中心に9つの事業を営む、創業84年目を迎える金沢の老舗の3代目。家庭で不要になったモノの分別・処分・買い取りなどをワンストップで行うサービスを展開。回収した不要品はなるべく廃棄せず、店頭・EC・海外などで販売している。
★……決勝大会の出場者へのメッセージ……★
「事業がしっかり収益を上げられるのか、投資家目線で考えることが必要です」(坂田氏)
「発表の練習は、分析と実行をバランスよくやるのが重要だと思います」(岩佐氏)
「ビジネスモデルも大切ですが、熱量のあるメッセージが審査員の心を動かします」(宗守氏)