前回まで2回にわたり、香港在住者からの視点で、日本と香港の社会制度の違いから来る新型コロナウイルス感染症への対応策の違いなどをレポートした。
3月9日には、日本政府がついに中国、韓国からの入国制限を開始。その際、他の多くの国では中国とは分けて扱われている香港とマカオが、今回「中国」の枠に含まれてしまい、2週間の隔離措置だけならまだしも、発行済みのビザの効力停止までが実施されるため、4月からの長期留学やワーキングホリデーなどを予定していた学生が行き場を失う事態が続出。日本からの食品輸入量が14年連続世界一である香港では、供給不足を懸念する声が、日本全国津々浦々の食材を使っている多数のレストランから上がっているほか、日本食スーパーには一般市民の行列ができている。
既にお伝えしたように、香港の対応は日本より徹底していて結果も出ているし、マカオでは1カ月以上新規感染者が出ていないのにも関わらずの今回の措置。香港で当惑と失望を持って受け止められていて、筆者にとっても残念でならない。
今回は、新型コロナウィルス対策の中でも、香港らしい実用性と効率、積極性が表れていて、日本の皆さんにとってもすぐに役立つプロジェクトを紹介しよう。
2月21日に香港で発表された「HK Mask」
新型コロナウィルス感染症の流行で国際問題になっているマスク不足を、再利用可能な手作りマスクで解消するというアイデアはあちこちで出始めている。そんな中、2月21日に香港で発表された「HK Mask」は、手作りマスクでありながらフィルター次第で現在医療用マスクの標準である「N95マスク」に近い機能性を発揮できる上に、作り方やメンテナンスが簡単で、品質と企画力が群を抜いている。
それもそのはず、発案者は長年香港の一流大学で教鞭を執っていた鄺士山(クウォン・シーサン)化学博士。彼の専門知識とアイデアをベースにデザインされているのだ。わずか2週間弱で「HK Mask」を世に出した鄺博士とボランティアチームの機動力には、香港の底力を改めて感じないではいられなかった。
マスク製作に協力した縫製工場「Sew on Studio」を訪ねて、鄺博士が「HK Mask」を誕生させるまでの驚きのストーリーと、その考え抜かれた仕様を紹介する。最後に型紙のダウンロードリンクもご紹介するので、ぜひご自分でも作ってみてほしい。