遊具・玩具の輸入販売や遊び場の設計・運営などを手掛けるボーネルンドは、自治体の遊び場の設置・運営に数多く携わっている。遊具の提供や遊び場の設計、運営人材の育成、運営の受託など多様な関わり方で、全国約60カ所(2022年4月時点)の実績を持つ。自治体遊び場の最近の傾向や先進的な取り組みについて、同社遊環境事業部の美和竜秀本部長に聞いた。

ボーネルンド遊環境事業部の美和竜秀部長(写真:北山宏一)
ボーネルンド遊環境事業部の美和竜秀部長(写真:北山宏一)

自治体とのタッグ、利点は地域の団体や人材とつないでもらえること

――玩具・遊具の輸入・販売を手掛けていたボーネルンドでは、2004年から直営の室内遊び場「キドキド」を展開しています。こうした遊び場づくり・運営の取り組みが自治体との公民連携事業へと広がっていった経緯を教えてください。

 2011年に東日本大震災があり、被災地の復興を支援しようと自治体の遊び場づくりに協力したのがきっかけです。それまでにも、自治体の遊び場づくりに関わった例はありましたが、遊具の販売と環境整備(遊び場の設計、遊具の設置)までが主でした。被災地(主に福島県)での事業を通じて、遊び場の持続的な運営をするには、人材育成と遊具・玩具のメンテナンスが重要だと分かりました。以来、スタッフの育成やメンテナンスもパッケージでご提案するようになり、今ではそれが多くの自治体に受け入れられています。

福島県郡山市の屋内遊び場「ペップキッズこおりやま」(2011年12月オープン)。写真は同施設内の砂場。東日本大震災の被災地の復興を支援しようとボーネルンドが自治体の遊び場づくりに協力した一例だ(写真:ボーネルンド)
福島県郡山市の屋内遊び場「ペップキッズこおりやま」(2011年12月オープン)。写真は同施設内の砂場。東日本大震災の被災地の復興を支援しようとボーネルンドが自治体の遊び場づくりに協力した一例だ(写真:ボーネルンド)
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 今では自治体から直接お話をいただくこともあります。最近では自治体の側でも、公園や図書館を整備する際にPark-PFI(公募設置管理制度)やコンパクトシティの考え方などを念頭におきながら、ありがたいことに当社と組んで何か実現できないかと想起していただけるようになってきました。

 我々としても常に自治体の遊び場事業にはアンテナを張っていて、遊環境事業部の中に、自治体とのコラボレーションをほぼ専門に手掛けるチームを設置しています。

――遊び場事業で自治体と組むメリットはどこにあるのですか?

 ボーネルンドは、できるだけ多くの子どもたちがのびのびと遊び育つことのできる環境を全国につくりたいと考えています。でも我々は民間企業なので、自社だけで全国に自分たちの遊び場を届けることは難しいんです。自治体の(遊び場の)環境づくりや人づくりをお手伝いさせていただくことで、日本中に遊び場の概念や遊びの有益性などを広めていけると考えています。

遊び場づくりにおける自治体と企業の連携(図:ボーネルンド)
遊び場づくりにおける自治体と企業の連携(図:ボーネルンド)
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 また、仲間づくりがしやすくなるのも自治体と連携するメリットです。遊び場を地域に根付かせていくには、一緒に施設運営を請け負ったり、施設にコンテンツを提供したりしてくれる地域の団体、人材が必要です。そうした意欲がある団体との顔つなぎを、自治体がしてくれることがあります。

 それから、自治体の方々は地域の資源が何なのか、どこにあるのか、よくご存じです。その街らしい遊び場、より魅力的な遊び場を作ろうというとき、相談すると貴重な情報をもらえます。

――自治体が運営する遊び場は無料というイメージが強いですが、利用料を設定するケースも増えてきました。その点についてはどうお考えですか。

 そうですね。自治体とのコラボ事業を始めた頃は、利用料が無料という施設が多かった。ただ、施設を持続していくこと、“いい状態で”続けていくことを思うと、一部でも受益者にご負担いただくほうがいいというのが当社の考えです。

 実際に、10年ほど前から、たとえわずかでも市民の皆さまにもご負担いただく形を当社から自治体へ積極的に提案しています。最初は抵抗感を持たれる自治体も多かったですが、最近では少額の利用料を設定するのが一般的になってきました。しっかりとしたサービス、環境を提供し続けるために、必要なことだと思います。