※本稿は、『医学部進学大百科2025完全保存版』(プレジデントムック)の一部を再編集したものです。
「自分らしく生きる」とは、自分らしく最期を迎えること
東京都板橋区に、一風変わった名称の病院がある。
「おうちにかえろう。病院」だ。
退院したら家に帰るのは当たり前ではない人たちがいる。在宅医療を受けている人たちだ。老々介護や認知症を抱えている状態でもなんとか自宅で生活していた人たちが、肺炎や骨折をきっかけに入院すると、もともとの病気が治ったとしても、「もうこの状態で自宅での生活は無理だろう」という医療者の判断で、自宅に帰れなくなってしまうことが多いのだという。たとえ「最期は自宅で」と願っていたとしても。
厚生労働省の調査によると、約7割の人が「最期を迎えるなら自宅がいい」と考えているというが、2021年の統計では「在宅死」の割合はわずか17%。この中には、自宅での事故死や死後に発見された数も含まれていて、実際に在宅医療を受けての看取りはその半分程度だという。
「70年には日本の人口は9000万人を割り込むといわれていて、その4割ほどが高齢者になります。何かしらの体の不具合を抱えながら生きる人が増えていく中、これまでの『病を治す』医療だけでは立ちいかなくなる。当院では、退院後は自宅で生活することを前提に、入院中から食事の準備や片付け、着替えなども自分でできるよう練習してもらいます」
そう話すのは、「おうちにかえろう。病院」を運営する医療法人社団焔の理事長・安井佑さんだ。
安井さんは語る。
「『自分らしく生きる』ことの大切さは、皆さんよくおっしゃいます。『自分らしい最期』を迎えることも、『自分らしく生きる』ことの一つではないでしょうか」
在宅医療を行う「やまと診療所」、訪問看護を行う「おうちでよかった。訪看」、訪問歯科の「ごはんがたべたい。歯科」、そして全床地域包括ケア病棟の「おうちにかえろう。病院」。これら四つの事業全体をまとめて「TEAM BLUE」と名乗っている。
TEAM BLUEが自分たちの「使命」として掲げているのが「温かい死」だ。残された時間を住み慣れた家で温かく過ごしてほしい、家族や友人に囲まれて感謝と愛に満ちた最期を迎えてほしい、「温かい死」にはそんな思いが込められている。
『医学部進学大百科2025完全保存版』(プレジデントムック)は医療で貢献する夢を応援し、医学部志望のみなさん、ご家庭を応援する一冊です。例えば、「教えて!医学部生ライフ 輝き続ける5人の24時間」「医学部に強い高校ランキング 偏差値・倍率・試験科目すべて公開! 全国82医学部 最新データ」「逆転合格した先輩は何をやったのか」「共通テスト・ 次選抜倍率に注目 偏差値・倍率・試験科目すべて公開! 全国82医学部 最新データ」「東大生クイズプレーヤー河野ゆかりインタビュー/家では勉強ゼロ時間! “超効率”勉強法」などの記事を掲載しています。どうぞ、お手に取ってご覧ください。