WinMXとかWinnyとか、日本ではろくな扱いを受けていないP2Pですが、海外ではけっこう真面目に議論されてるんですよというブログ。
以下の文章は、TorrentFreakの「Mininova Deletes All Infringing Torrents and Goes ‘Legal’」という記事を翻訳したものである。
原典:TorrentFreak
原題:Mininova Deletes All Infringing Torrents and Goes ‘Legal’
著者:Ernesto
日付:Novemer 26, 2009
ライセンス:CC
by-sa
世界最大のBitTorrentサイト Mininovaは、同サイトが提供するコンテンツ・ディストリビューション・サービスを通じてアップロードされたTorrent以外のすべてのTorrentを削除した。Mininova設立者らのこのドラスティックな決断は、オランダのアンチパイラシー団体BREINとの民事訴訟に敗訴し、同サイトからすべての著作権侵害Torrentを削除するよう命じられたことが背景にある。
Mininovaのインデックスからすべての著作権侵害Torrentを削除するという決断は、5年前に始まった同サイトの1つの歴史が幕を閉じたことを意味している。
2004年12月、当時最大手であったSuprnovaの終焉は、BitTorrentコミュニティに大きな空白地帯をもたらした。この巨大な空白地帯は、高まるTorrentへの需要を満たさんとする多数の新規サイトの登場によってすぐさま埋められた。その中でもMininovaは最も成功したサイトとなった。
Mininovaは2005年初頭、5人のオランダ人学生によって設立された。Suprnovaの閉鎖から1ヶ月足らずのことであった。サイトはテクノロジー好きのメンバーによる趣味のプロジェクトとして始まったが、その後数年をかけて、設立者たちはこれを数百万ドルを稼ぎ出すビジネスに変えた。
人気の上昇とともに、同サイトユーザによって自らの知財権が侵害されていることを目にした権利者たちは、多数のクレームを寄せた。Mininovaは長らくこうした削除通知には応じてきたが、今年初め、オランダのアンチパイラシー団体 BREINはMininovaに対して訴訟を起こし、違法に共有されているコンテンツに接続するtorrentを積極的に削除するよう求めた。
この裁判は6月に開始され、数週間を経て判決が下された。裁判官は、Mininovaはいかなる著作権侵害に対しても直接的責任を負うものではないとしながらも、3ヶ月のうちに、違法に共有されているコンテンツに接続するすべてのtorrentを削除するよう命じた。また、これに応じなければ、最大500万ユーロの罰金が科されることにもなっていた。
Mininovaチームがこの罰金の支払いを回避するためには、同サイトが提供するコンテンツ・ディストリビューション・プラットフォーム経由でアップロードされたコンテンツを除いた、すべてのtorrentへのアクセスを遮断するより他に選択肢はなかった。つまり、現在、同サイトに承認されたアップローダ以外に、torrentをアップロードすることはできない、ということである。
この数ヶ月間、Mininovaは広範囲、複数回にわたってフィルタリング技術をテストしてきたが、そのいずれも100%の効果が期待できるものではなかった。「こうした措置をとらされたことは非常に残念なことではありますが、私たちにはそれ以外の選択肢がありませんでした。」とMininovaの共同設立者NeikはTorrentFreakに語った。
Neikはさらに、Mininovaが判決を上訴するかどうかの判断は保留している、とTorrentFreakに語っている。Mininovaは現在、形式上は上訴しているものの、それは同社が本当に上訴するかどうかを決断するための時間を作るためであるという。今のところ、Mininovaがすべてのtorrentを元に戻すための唯一の選択肢は、上訴し、かつ勝利を収めることである。
このMininovaの決断は、BitTorrentコミュニティに大きな影響をもたらすことになるだろう。数百万人のMininovaユーザ、アップローダたちは新たなホームを探さなければならないだろう。しかし、さらに重要なのは、Mininovaが、多数の小規模Torrentインデックスサイトからのユーザ承認Torrentを集約した最大規模の集積所となったということだろう。
Mininovaの決断がもたらす影響とその背景についての詳細がわかり次第、続報をお伝えする。
人によって反応は違うだろうけれど、Mininovaのこの決断は結果的によかったと思っているし、非常に嬉しく思ってもいる(サービスプロバイダの負う責任の範囲については、まだ議論の余地があるとは思うが。)。Mininovaのコンテンツ・ディストリビューション・サービスは、これを利用するコンテンツ制作者から多くの支持を集めている。Mininovaのような大手サイトが、どのようなプロセスであれ、最終的に合法的な方向に舵を切り、そうした人々を支える、それによって持続可能なサイクルが生まれることを期待したい。なので、Mininovaに著作権侵害コンテンツにリンクするTorrentを再び、とは思わないのよね。
以前にも書いたが、むしろMininovaには、「合法的かつ魅力的なコンテンツを提供するプラットフォームになって欲しい」と思っている。ユーザもそれを支えるべき時期を迎えているのかもしれない。もちろん、違法なファイルに繋がるTorrentがなくなったことで、多くのユーザがMininovaを去るのは避けられないだろう。でも、そうした人々もいずれ変わってくれるといいんだけどね。
ちなみに、タイトルに「違法Torrent」と書いてますが、Torrentそのものが違法であるということはなく、「違法に配信されているコンテンツにリンクするTorrentファイル」のことです。
コメント
ひとつだけはっきりしている事は、今後、ユーザー数は激減して
最終的には閉鎖の道を辿るであろうということです。
MININOVAがここまで巨大な「サイト」に成長した背景として
違法トレントの存在が多分にあったわけで
その成長の源泉を断ち切るということは、衰退を意味します。
非常に残念なことではありますが、恐らく第2のMININOVAが出現し、歴史は繰り返すので、このたびの合法化はさほどのインパクトはないのでは無いではないでしょうか?
Re: タイトルなし
正直なところ、私もこの件の善し悪しがよくわかりません。ただ、世界で最も人気のTorrentサイト(既にそうではなくなっているのでしょうが)が合法的なTorrentサイトへの移行を果たすという点のみを持ってしても、私は評価できると思っています。
ぬ さんのおっしゃるとおり、違法もののTorrentが集積されたMininovaがなくなったとして、次のMininova、現在ではおそらく世界第2位だったThe Pirate Bayがその後を継ぐだけのことだと思います。もちろん、The Pirate Bayがつぶれれば次のTPBへ。違法ファイル共有コミュニティは結局、あれげなTorrentサイトをオルタナティブに選ぶでしょう。
ただ、こうした動きに全く意味がないとは思っていません。閉鎖ではなく、合法化へと舵を切ったことで、そこで扱われているコンテンツが少なからぬ露出を得ていることに期待したいんです。多くの人が利用しないことを選択したとしても、その中の一握りでも、露出がたりないがために、自分の手元まで情報が届かなかったコンテンツであっても、素晴らしいものが多数存在しているということを知ってくれれば、それはとても価値あることだと思っています。
今、Mininovaに課せられた使命は、過去の威光が失われるまでの間に、彼らの提供するコンテンツ/ディストリビューション・サービスのすばらしさを知ってもらうことに尽きるでしょう。過去の人気を引き続き保ち続けることは不可能でしょうが、これまでのファンのごく一部でも新たなMininovaにとどめ、さらに新たなファンを獲得し、そして新たなエコシステムを構築することが彼らの唯一の生き残る道でしょう。
しかし、そうした方向性はMininovaだけが掲げるべきものではなく、我々もまた、Mininovaのような存在をこそ、必要としているのだと思います。多くの人にとって、Mininovaの合法化は違法ファイル共有コミュニティの一瞬の揺らぎに過ぎないのかもしれませんが、その中で、ただの揺らぎを越えて、一部の個人にとっては大きなうねりとなるかもしれません。
私はJamendoに出会ったことで、創作とのつきあい方が大きく変わりました。もちろん、それが全てとは思っていませんが、しかし大きな変化をもたらしたと思っています。そうした人が一人でも多くなって欲しいと思って、折を見て紹介したり、プッシュしたりしています。その貢献度は微々たるものかもしれません。それでも、あなたのおかげでJamendoを知った、素晴らしいサービスだ、といったコメントをいただくこともあり、全く無駄ではないのだということも実感しています。そうした繋がりが徐々にでも広がることが、新たな可能性を生み出すのではないかとも思っています。
その意味で、私は今回のMininovaの合法化を支持し、サポートしたいと思っています。BitTorrentの利用をハードルと感じる人も少なくないのでしょうが、Mininovaの提供するコンテンツ・ディストリビューション・サービスは非常に高速かつ快適なものだったりもするので、こうしたサービスには生き残って欲しいと思っています。今あるリソースを最大限活用し、創作者たちのプロモーションを助ける存在として、これからのMininovaに期待したいと思います。
今日はだいぶ酔ってしまっているので、乱筆乱文となっておりますが、平にご容赦を。