山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ
BLUEDOT「BNT-1061W」
~10.6型、フルHDながら1万円台半ばで購入できるAndroidタブレット
2017年10月24日 11:30
BLUEDOT「BNT-1061W」は、10.6型のAndroidタブレットだ。フルHD(1,920×1,080ドット)のIPS液晶を搭載しながら、実売15,980円というコストパフォーマンスの高さが特徴だ。
同じBLUEDOTのタブレットとしては、7.9型ながら1万円を切る「BNT-791W」が今年(2017年)夏に話題になったが、今回新たに登場したこの10.6型モデルは、「BNT-791W」のようにアスペクト比は4:3ではなく一般的なワイド比率で、フルHD対応ながら1万円台半ばという価格を実現している。
もっとも、本製品の発表後に登場したAmazonの「Fire HD 10」は、やはり10型クラス、かつフルHDより若干天地が広い1,920×1,200ドットで1万円台という価格を実現しており、強力なライバルとなるのは明らかだ。また本製品はCPUなどはあくまでエントリークラスで、かつAndroidのバージョンもやや古い6.0ということで、その実用性は気になるところだ。
今回はメーカーから量産モデルを借用したので、Fire HD 10との比較を中心に製品をチェックしていきたい。
Fire HD 10に近い仕様と価格
まずはFire HD 10、および同社の7.9型モデル「BNT-791W」との比較から。
BNT-1061W | Fire HD 10(第7世代) | BNT-791W(2G) | |
---|---|---|---|
発売 | 2017年10月 | 2017年10月 | 2017年6月 |
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部) | 268×168×9.6mm | 262×159×9.8mm | 195.7×137.2×9.1mm |
重量 | 約598g | 約500g | 約337g |
CPU | MT8163(ARM Cortex-A53 64bit 1.3GHz クアッドコアプロセッサ) | クアッドコア 1.8GHz×2、1.4GHz×2 | MT8163(ARM Cortex-A53 64bit 1.3GHz クアッドコアプロセッサ) |
メモリ | 2GB | 2GB | 2GB |
OS | Android 6.0 | Fire OS 5 | Android 6.0 |
画面サイズ/解像度 | 10.6型/1,920×1,080ドット(208ppi) | 10.1型/1,920×1,200ドット (224ppi) | 7.9型/1,024×768ドット(163ppi) |
通信方式 | 802.11a/b/g/n/ac | 802.11a/b/g/n/ac | 802.11a/b/g/n |
バッテリ持続時間(メーカー公称値) | 非公開(6,000mAh) | 10時間 | 非公開(3,500mAh) |
microSDカードスロット | ○(200GBまで) | ○(最大256GB) | ○(200GBまで) |
その他 | Micro HDMI | - | Micro HDMI |
価格(発売時) | 15,980円(32GB) | 18,980円(32GB) 22,980円(64GB) | 9,980円(16GB) |
本製品は9月中旬に発表され、約1カ月後の10月中旬に発売されたわけだが、ちょうどその空白期間にFire HD 10が発表、発売された。Fire HD 10自体、本製品とかなり特徴がかぶることから、発表時点のインパクトがやや薄れる形となったのは否定できない。
上記の表を見るとそのことは明らかだ。どちらも10型クラスで解像度もフルHDクラス、メモリの容量も同じ2GBだ。11acに対応している点や、microSDが使える点もよく似ている。価格は、一見すると本製品のほうが安価に見えるが、Fire HD 10はプライム会員であればクーポン利用でさらに4,000円安くなるので、32GBモデルだと価格が逆転してしまう。
本製品は純粋なAndroidタブレットであり、Fire OSを搭載し実質Amazonのコンテンツ専用であるFire HD 10に比べると汎用性の高さが売りだが、Androidのバージョンが6.0であることは注意すべきだろう。今はまだ大きな問題はないが、今後Android 7.0以降へのバージョンアップが行なわれない場合、アプリの互換性にはやや不安が残る。
CPUはMediaTekのMT8163で、これはFire HD 10が採用しているMT8173よりも1つ下のグレードだ。クロック数も本製品のほうが低く、処理能力はFire HD 10よりも落ちることになる。
また、筐体サイズはほぼ同等である一方、重量が598gと、同クラスのタブレットと比べてかなり重い点は要注意だろう。Fire HD 10の500gですら重く感じるところに、本製品はそこからさらに約100gプラスと、かなりのヘビー級だ。iPadシリーズで言うと2011年発売のiPad 2(610g)とそう変わらない。
一方で、8型モデルの「BNT-791W」と同様にMicro HDMI端子を搭載しており、有線での外部出力が可能な点は、本製品のメリットだ。また国内メーカーの製造ということで、取扱説明書がきちんと日本語で用意されており、かつ内容が充実しているのも、7.9型モデルの「BNT-791W」と同じく、初心者にとっては利点となるだろう。
気になるのは、バッテリの持ちがかなり悪かった「BNT-791W」と同じく、バッテリ持続時間が非公開であること。またアスペクト比が4:3ではなく16:9であり、これは一般的なワイド比率のタブレット(16:10)よりさらに天地が切り詰められた比率であることから、表示するコンテンツによっては余白とのバランスも気になるところだ。
購入時点ですでにセットアップ済み
本製品は前回紹介した7.9型モデル「BNT-791W」と同様、各部名称からセットアップ、操作方法、トラブルシューティングまでしっかり記された約30ページほどの日本語の取扱説明書が付属する。国内メーカーの製品ということで、こうした丁寧さは変わっておらず、初心者でも安心だろう。付属品はUSBケーブル、AC変換アダプタと一般的だ。
筐体は正面が樹脂、背面が金属となっている。金属といってもかなり薄いようで、あまり剛性は期待できそうにないが、背面も含めてオール樹脂製だった「BNT-791W」に比べると、チープに見えないだけの質感は保っている。
正面から見ると、液晶画面がベゼルから少し奥まった位置にあるため、視差のズレがやや気になる。また画面を覆うパネルはプラスチック素材で、ゴリラガラスなどと違って傷にはあまり強くはなさそうな上、指紋もつきやすい。強い光沢があることも合わせて考えると、反射防止の保護シートなどを組み合わせるとよいかもしれない。
さて、本製品の特徴として、最初に電源を入れた時点で、すでにAndroidのセットアップが完了していることが挙げられる。これは7.9型モデル「BNT-791W」と共通する仕様で、いきなりホーム画面が表示されるので、仮にWi-Fiに接続せず、またGoogleの機能を利用しないのであれば、そのまますぐに使えてしまう(もちろんほとんどのケースではそれらの登録が必要になるのだが)。
この仕様は、Androidの設定経験が豊富な人は戸惑うかもしれないが、本製品の主要ターゲット層と考えられる初心者には親切な仕様と言えるだろう。ちなみにプリインストールされているアプリはGoogleの標準アプリがほとんどを占めており、非常にすっきりとしている。ちなみに電子書籍関連では唯一、Google Play ブックスがプリインストールされている。
アスペクト比16:9ゆえコミックでは天地が圧迫される
従来の7.9型モデル「BNT-791W」は、紙の書籍を見開きにした場合の比率に近い、4:3というアスペクト比が特徴だったが、一方で解像度は1,024×768ドット(163ppi)と低めだった。本製品はアスペクト比は16:9とかなり横長なので、電子書籍を見開き表示すると左右の余白が目立つが、解像度については1,920×1,080ドット(208ppi)と、実用的なレベルを維持している。
ただしそのアスペクト比ゆえ、固定レイアウトのページはどうしても表示サイズ自体が小さくなる。本製品の競合になるFire HD 10もワイド画面だが、解像度は1,920×1,200ドット(224ppi)と本製品よりも天地に余裕がある。アスペクト比も16:9ではなく16:10だ。つまり本製品のほうが上下が圧迫され、ページサイズが小さく表示されてしまう。
こうしたことから、本製品をアスペクト比4:3の7.9型モデル「BNT-791W」と並べた場合、コミックのページサイズはそう極端には違わない。せいぜいひとまわり大きいくらいだ。また同じ10型クラスでアスペクト比4:3の10.5インチiPad Proと並べると、ページサイズはひとまわりどころかふたまわりは小さい。
また同じ理屈で、本体を縦向きにして雑誌など大判サイズのコンテンツを表示する場合も、アスペクト比が仇となって左右幅が圧迫され、ページが極端に縮小されてしまう。コミックや雑誌など固定レイアウトのコンテンツを表示することを目的に本製品の購入を考えている場合、10.6型という数値から想像できるほどページサイズは大きく表示できないことは、認識しておいたほうがよいだろう。
以上のように表示サイズについては若干マイナス要素もあるのだが、解像度については200ppiオーバーということで、細かい文字もしっかりと表示できる。250~300ppiクラスのiPadシリーズと並べるとさすがに差はあるが、200ppi未満の製品のように密集した線がつぶれてしまうこともないので、7.9型モデル「BNT-791W」と比べても圧倒的な優位性がある。詳しくは以下の写真で確認してほしい。
比較写真での各製品の並び順は以下のとおり。なおサンプルは、コミックはうめ著「大東京トイボックス 1巻」、テキストは太宰治著「グッド・バイ」を用いている。
上段左: 本製品(10.6型/1,920×1,080ドット/208ppi)
上段右: BNT-791W(7.9型/1,024×768ドット/163ppi)
下段左: Fire HD 10(第7世代)(10.1型/1,920×1,200ドット/224ppi)
下段右: 10.5インチiPad Pro(10.5型/2,224×1,668ドット/264ppi)
バッテリの持ち時間は実質5時間程度と短め
続いて、バッテリの持ち時間および性能について見ていこう。
本製品の発売元であるBLUEDOTの製品ページは、製品の詳細について他社とは比べ物にならないほどの多くの情報が掲載されており(液晶パネルやタッチパネル、バッテリの部材なども明記されている)、ユーザーからすると非常に有益なのだが、唯一はっきりと記載されていないのがバッテリの駆動時間だ。6,000mAhという容量は記載されているものの、特定の条件下で何時間使用できるのか記述がない。
これは前回紹介した7.9型モデル「BNT-791W」も同様なのだが、実際に測定してみると、iPad mini 4の3分の1程度にあたる、実質5時間程度しか使えないという結果が出た経緯がある。今回のモデルはバッテリ容量自体は増えているものの、やはりどのくらい持つのか気になるところだ。
そこで前回と同様、「AbemaTV」でAbemaニュースを表示した状態で放置し、バッテリが残り15%を切ってバッテリセーバーがオンになるまでの時間を測定してみたが、結果は4時間持たず、3時間50分を経過したところで15%を切った。電子書籍ユースでは常時Wi-Fi通信を行なうわけではないので、もう少し長持ちするはずだが、iPad mini 4は同じテストで5時間経過後もバッテリは62%残っていたので、短いことに変わりはない。実質5時間程度といったところだろう。
本製品はラインナップはWi-Fiモデルのみで、また気軽に持ち歩ける重量ではないため、おもに家庭内で使用することを考えれば、こまめな充電を心がければ問題はない。ただ、上記の実験は音量をミュートにした状態での測定結果なので、動画コンテンツを視聴する場合は、バッテリ持続時間はさらに短くなる可能性もある。使っていないときはつねに充電する習慣は必須となりそうだ。
もう1つ、ベンチマークの結果も掲載しておこう。ベンチマークアプリ「Ice Storm Extreme」による比較は以下のとおりで、Fire HD 10の半分以下だ。メモリは2GBあるためか、電子書籍を表示してページをめくったり、動画コンテンツをネットワーク経由で再生するなどの操作でもたつくことはなく、このベンチマークの数値ほどの極端な差は感じないのだが、上下に長いWebページをスクロールしたり、動画をシークするような用途では、ひっかかりを感じることは確かにある。
汎用性の高い10型タブレットを探しているユーザー向け
以上のように、7.9型モデルの弱点だった解像度については向上しているものの、画面の天地がかなり狭いこと、また端末の重量がかなりあることから、電子書籍の表示にはそこまで向いた製品とは言いにくい。電子書籍端末として使うならば、ソファに座って膝の上に置いて使うなど、かぎられたスタイルでの利用になるだろう。前述のように重量があるため、外出先に持ち出しての利用もあまりおすすめしない。
では動画再生用の端末としてはどうかということだが、本製品は横向きにしたさいにスピーカーが右側に来る配置であるため、イヤフォンなり外部スピーカーなりは別途用意しなくてはいけない。このように、決定的なマイナスこそないものの、どの用途で使う場合も、どこかしらツッコミどころがあるのが悩ましいところだ。
ただ、電子書籍端末として使う場合、CPUのパワーはそれほど必要なく、解像度が実用レベルであることのほうが重要であるため、それら条件をクリアしたIPS液晶採用の10型クラスのタブレットを1万円台半ばで買えるというのは、人によっては刺さるはずだ。以前紹介したファーウェイの「MediaPad T3 10」のように、1万円台ながら解像度は1,280×800ドット止まりの製品よりは、満足度は高いことだろう。
Android 6.0からバージョンアップの保証がないのは少々引っかかるが、Fire HD 10と違って素のAndroidであることから、汎用性の高いタブレットを探しているユーザーには向くだろう。スタンド機能を備えた専用ケースはラインナップされているようだが、個人的には反射防止のシートも用意してほしいところだ。