会社員が「経営者意識を持つ」とはどういうことか

4月1日。
日経新聞の1面の「一歩踏み出すあなたに」という記事で、ファーストリテイリングの柳井正会長が

「自分が経営者になったつもりで仕事をしてみてはどうだろう」

と述べていた。

「経営者意識を持て」は僕が大学生の頃からずっと言われてきていることだ。

「経営者意識を持て」という教訓は耳にタコができるくらい聞かされてきたが、「経営者意識」が何かは実は明確に定義されてこなかった。

「会社員であっても経営者のような視点を持て」という意味だと解釈し、会社はどうあるべきだとか、会社の取るべき戦略はどのようなものかと考えたこともあったが、大きな組織の場合、そんな経営者意識は全く活かすことができない。

経営者意識を実現するのは経営者であって、末端の会社員ではないのだ。

「経営者意識を持って働くことがビジネス感覚を鍛える」という主張には一理ある。

現ファミリーマート社長の澤田貴司さんがファーストリテイリングにいた頃、販売店の問題点を詳細に洗い出し、柳井正社長に直談判して改善を促したと聞いたことがある。

そんな澤田さんの情熱と問題意識が柳井社長の目に止まり、1年後にはファーストリテイリング副社長に抜擢された。

彼の道を拓いたのは間違いなく「経営者意識」だっただろう。

会社員の美味しいところは結局、失敗の金銭的な責任は会社が取ってくれて、チャレンジしたいときは会社の資産を使ってレバレッジを効かせることができる点だ。

特に、よほどのことがない限りクビにならない日本企業では、本来であればチャレンジのために会社を利用して、問題点は社長に直接言う覚悟を持ち、失敗に対する恐怖を麻痺させてレバレッジMAXでチャレンジするのが出世戦略としては最適解である。

もちろん、そんなことができるのは5000人に一人くらいの「王の器」の持ち主だけで、僕も含め99.9%の会社員はそんな真似はできない。

恐怖のリミッターを外し、レバレッジを効かせて勝負することができた人だけが、ビジネスの世界で名を残すことができるのだろう。

自分の人生を合理的に運営する

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以前、「サウザーラジオ 〜富者の聖杯〜」で会社員にとっての経営者意識とは、自分の気力・体力・時間をできる限り温存し、会社に搾取されず、自分の資産を大きく育てていくことだ、と話していたことがある。

出世ではなく、将来の独立を目指す会社員にとっての合理的な戦略は、会社の給料をベーシックインカムとして使って、残った時間を自分の仕事に投入することだろう。

経営者にとっては会社は目的だが、会社員にとっての会社は幸福になるための手段に過ぎない。

経営者は会社の利益が最大になるように会社の舵を取っていけばいいし、会社員は自分の利益が最大になるように人生の舵を取ればいい。

そういうことを考えると「お前はそれでいいかもしれないが、周りの人への迷惑はどうするんだ」と言われるかもしれない。

しかし「自分の利益を考えること」は、サボりまくることとは限らない。

「周りに迷惑をかけず、軋轢を生まずに会社員生活を過ごす」のも将来の自分の利益になり得るのだ。

私利私欲を貪り金をかすめ取ることだけが「利益」ではない。
表現としては「利益を得る」というより「資産を築く」に近いかもしれない。

人間関係も未来の資産だ。
それに新卒の会社員にとっては、会社でダラダラとサボって副業するよりも目の前の仕事を一生懸命こなして、仕事の進め方を覚えたほうが利が大きい。

良くも悪くも日本企業は何もできない新卒を大量に採用し、10年先に花開く才能に期待して育てようとしてくれる。
終身雇用が前提となっているからだ。

そして才能が花開き、育ったところでGAFAにかっさらわれるのが大きな問題になっているのだが、そんな日本の雇用形態については今は触れない。


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経営者が言う「経営者意識を持て」はさすがにポジショントーク

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「経営者意識を持て」と強調する人のほとんどは経営者で、末端の従業員ではない。
経営者にとっては経営者意識を持って会社の課題を解決しようと奮闘してくれる社員は非常に使い勝手がいいだろう。

経営者意識を持って、会社の経営を自分事として考えて、身を粉にして働いてくれる従業員はコストがかからず金を生んでくれる貴重な存在だ。
ブラック企業経営者の多くが「経営者意識」を強調するのは、そういう従業員が会社の利益を生み出し、自分の利益になるからである。

経営者意識を持って会社で働いて、経営者のように労働時間を気にせず働いても、経営者のように自分の報酬を決められるわけでもなく、上がった株価の恩恵を得られるわけでもない。

経営者が語る「経営者意識」とは、経営者のように身を粉にして働いて、経営者のように会社の運営に責任を持って、経営者のように当事者意識を持って労働してほしいが、
決して経営はさせず、給料は上げず、株も渡さないというものなのだ。

かといって、このように斜に構えて「じゃあできるだけ労働力を投入せずにお金もらえばいいんデショ」という意識でいると、今度は仕事が恐ろしくつまらなくなる。
会社に搾取されながら日々労働力を投入するよりも、実際は退屈な毎日の方がよっぽど辛いのだ。

なんだかんだで我々は、他者に貢献し、誰かの役に立っていることにやりがいを感じるようにできているのである。


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会社員の経営者意識とは

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これまで書いてきたことを踏まえて、会社員としてどう生きるのが将来の期待値が大きくなるかを考える。

会社員としては、ポジショントークに踊らされて下手な経営者意識を持つのではなく、

「会社の資本を利用して、自分の成果をできる限り効率よく最大化すること」

に注力するのが良いのではないだろうか。

時間は有限なので、どこまでも労働力を投入していたらキリがない。
短い時間で最大限の成果を上げ、無駄なことはしないでさっさと帰る。

斜に構えてサボるわけではなく、効率よく終わらせる。
慣れないうちや若いうちは無駄も多いかもしれないが、無駄に対して思考停止しない。
(驚くべきことに、無駄を無駄と感じる感覚が麻痺してしまっている会社員は多い)

自分が持つ資源を効率よく運用して成果を上げるのも立派な経営者意識で、会社員にとっての最大の資源は時間である。

その時間を無駄にせず、時間に対して最大の成果を上げるように常に努力する。
成果を出すことで自分に経験が溜まり、より大きな成果を生み出す土壌となる。

会社で得られた経験は人的資本として自分に蓄積され、転職市場での評価につながり、将来の自分を助けてくれる保険にもなるはずだ。

まとめると、会社の経営者にとっての経営者意識はヒト・モノ・カネを活用して利益を生み出すことだが、
いち会社員にとってはヒト・モノ・カネではなく、「時間」こそが活用すべき資本なので、時間を最大限有効に使うことを真剣に考えて行動するのが

「会社員にとっての経営者意識」

だということだ。

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