ハコ企業には手を出すな!不公正ファイナンスを知ると投資力が格段に上がる理由
執筆者:川原裕也
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今日は、ハコ企業と不公正ファイナンスについてのお話をわかりやすく解説します。
私自身、かつては「仕手株」、「ボロ株」といった株価が極端に低い銘柄に投資をしていたことがありました。
仕手化した銘柄をデイトレードなどの短期売買で取引するケースもありましたし、決算資料などを見て「この会社は連続赤字だけど、大きく化けそうな夢がある」と中長期投資をしたこともあります。
なぜなら、株価が極端に低い「仕手株」や「ボロ株」には、一発逆転の大儲けができるチャンスが眠っているような感じがするからです。
この記事を読んでいる人の中にも、低位株を売買したことがある人は思い当たる節があるかもしれません。
しかし、株価が極端に低く業績もふるわない株は、ハコ企業となり「不公正ファイナンス」によって、反社会勢力や反市場勢力にお金が流れていることが少なくありません。
そうした企業は「夢」を売って投資家からお金を吸い上げます。お金を失った投資家は、下がった株価を見て「ただ運が悪かっただけ」だと思うかもしれませんが、実はそれは最初から仕組まれている可能性すらあるのです。
私は、こうした事実があることを知ってから、ハコ企業に手を付けるのはやめました。
自分が大好きな株式投資で、反社会勢力や反市場勢力を儲けさせるような行為はすべきではないと思ったし、それは自分自身の資産を防衛する「株式市場で生き抜くための手段の一つ」でもあると思ったからです。
ハコ企業とは
「ハコ企業」というのは証券業界で一般的に使われている言葉です。あの企業が「ハコ化した」といったような使い方をします。
こう呼ばれる理由は、上場企業の中身が「空っぽの箱」のようになっており、その中身がころころ入れ替わることに由来していると思われます。
仕手筋やいかがわしい投資ファンドに乗っ取られ、資産を食い散らかされたり、一般投資家からカネを巻き上げたりする、「器」として使われる上場企業
ハコ企業とは、業績不振で株価が低迷し、無名のファンドや仕手筋などに株式を買い占められてマネーゲームの道具に使われる上場企業のことをいいます。
上場企業というブランド、器(=ハコ)だけが残り、上場時の主力事業は大幅に縮小または撤退したり、経営陣や株主が頻繁に入れ替わったりする事例が多いといわれています。
ハコ企業の経営権を奪った大株主や新経営陣が利益を上げる手法として、ハコ企業に新規事業用資金などの名目で私募債などを発行させ仲間の投資家が有利な条件で引き受ける、本業とは関係の薄いM&Aを繰り返し株価をつり上げて売り逃げる、などがあります。
わかりやすく言うとこのような感じです。
1.業績が悪化する(資金繰りが厳しくなる)
2.株価が低迷する(買収されやすくなる)
3.資金繰りの改善や株価低迷の解消を餌に、「怪しい人達」の資本が入る
4.上場企業が乗っ取られる(当初の経営陣が追い出され「ハコ化」する)
5.株式市場を利用して、一般の投資家からお金を吸い上げたり、企業の保有資産を吸い上げる
上場企業という体裁をとっていても、すでに中身が入れ替わっているわけですから、当初の経営陣は面影もなく、新しく乗っ取ってきた「怪しい人たち」があの手この手でお金を搾取します。
当然、「上場している」ことを利用しているので、わかりやすい犯罪は行わず、知識のない一般の投資家にはわからないようにうまく立ち回ります。
こうした企業は
- 仕手化という「値上がり」
- 新規事業という「夢」
を餌として与え、(一儲けしたいと考えて)この餌に飛びついた一般投資家からお金を吸い上げるのです。(一般投資家からお金を吸い上げる = 株価下落と思ってください)
株式市場にも「ハコ化した企業」がいくつも上場しています。
こうした銘柄には反社会勢力や反市場勢力がかかわっていることも少なくありません。
この記事では具体的な銘柄に対する言及を避けますが、ネットで探せばハコ企業として扱われている銘柄はたくさん見つかります。
ハコ企業を見抜く方法
ハコ企業には「共通点」があります。
こうした共通点にあてはまるすべての銘柄がハコ企業とは言えませんが、ハコ企業を見つける上での指標になることは事実です。
業績が悪く株価が低迷している
まず、ハコ企業として乗っ取りのターゲットになりやすい銘柄は、
- 業績が悪い
- 株価が低迷している
ということです。
業績が悪い企業というのは、資金繰りに困っていることが少なくありません。手元資金がなくなってしまうと会社は倒産してしまいますから、どうにかしてお金を集めなくてはなりません。
企業がお金を集める方法は大きく2つあります。
- 銀行からお金を借りる
- 増資する(新しい株主を見つける)
しかし、業績が低迷しており資金繰りが危うい(倒産リスクが大きい)企業には、銀行は積極的な融資を行いません。また、公募増資をおこなっても多くの投資家は応じてくれないため、新しい株主を見つけることも困難です。
そこに「救済者」の顔をして現れるのが、「乗っ取り屋」です。(もちろん、当初の経営陣は彼らが乗っ取り屋であることを知りません)
こうした怪しい人たちに対して「第三者割当増資」を行うと、彼らが大株主の一覧に名前を刻むことになり、実質的な実権を握られることになります。
不公正ファイナンスには、経営不振で資金繰りが困難になった上場企業が狙われます。
ビジネス環境が変わって経営不振になり、株価が大幅に下落したり、債務超過に陥ったりして上場廃止基準に抵触するような状況になると、銀行の融資が受けられませんので、経営者は上場を維持するために第三者割当増資を行わざるを得ないと考えるようになります。
しかし、まともな投資家は増資に応じてくれませんので、アレンジャーが甘言を弄して近づき、前述のような第三者割当増資を用いた不公正ファイナンスに引き込むのです。
出典:証券取引等監視委員会
また、ハコ企業は業績が悪いために株価が低迷していることも珍しくありません。いわゆる「ボロ株」のようになっていることも多いです。
こうした企業がハコ化しやすい理由は、業績が低迷していることもありますが、単純に「乗っ取り屋」にとって小さな会社の方が仕掛けやすいからです。
例えば、時価総額が数兆円のトヨタ自動車が連続赤字を出していても、トヨタ自動車を買収するにはケタ違いのお金が必要ですから、簡単には手出しできません。
しかし、ボロ株化した企業の場合、時価総額が数十億円になっていますから、たった数億円の増資を引き受けるだけで、会社の実権を握れるほどの株式比率を取得できるのです。
これが、株価が低迷している企業がハコ化しやすい理由です。
営業キャッシュフローが連続でマイナス
ハコ化した企業は、M&Aなどによって一時的に業績が黒字になることもあります。連続赤字だった企業が黒字化するというサプライズを実現することで、株価が大きく上昇することも多いです。
しかし、これは一時的な黒字であることが多く、実態はすでにその企業は「怪しい人たち」に乗っ取られているわけですから、会社の資金は少しずつ「怪しい人たち」の元へと流出していきます。
このような場合、業績が黒字であっても「営業キャッシュフローがマイナス」の状態が続きます。
よく、「営業キャッシュフローが3期連続でマイナスの会社には手を出すな」などと言われますが、営業キャッシュフローのマイナスが続くと、いずれ手元資金が枯渇します。
手元資金がなくなると、前述のように「銀行借り入れ」または「増資(新しい株主を見つけてくる)」方法によって外部から資金を調達しなければなりません。
- 見せかけの営業利益が黒字
- 営業キャッシュフローがマイナス(資金が外部に流出しているため)
- 流出した資金を補うために「怪しい人たち」から増資を受ける
このような流れで、少しずつ「怪しい人たち」に会社が侵食されていきます。
第三者割当増資が頻繁に行われる
ハコ企業は、実権を握った人たちによって、さまざまな方法で企業内の資金を外部に流出させられます。
そして、企業内部の資金が枯渇するとまた新しく「第三者割当増資」を行うため、IRニュースを見ていると「第三者割当増資」が頻繁に行われているケースがとても多いです。
(第三者割当増資は)公募増資に比べて第三者のチェックが入りにくく、不適切な行為や、その隠蔽が発生する恐れがあります。例えば、第三者割当増資の払込原資をたどりますと、その会社が別の目的で支出した資金が回流してきていたり、現物出資に当たって財産評価が水増しされていたりします。
また、大幅なディスカウント率で大量の新株式が発行されますと、既存株主の権利が希薄化して会社の支配権に異動が生じ、会社の役職員や既存株主にとって好ましくない者が支配権を握って、会社の資金を不適切な投融資により社外に流出させることもあり得ます。
出典:証券取引等監視委員会
こうした企業が公表する「第三者割当増資」や「M&A」の資料を見ると、以下のようなことが散見されます。
・設立したばかりの会社が第三者割当増資に応じている(どこの誰かわからない人がいきなり大株主に)
・設立して間もない実績のない会社(または連続赤字の会社)を、新規事業参入などの名目で、ありえないほどの高値で買収する(実権を握った人の力によって、変な会社を買わされている)
※当然、変な会社を高値で買わされるということは、その買収資金は変な会社を保有していた人の元へ流出します
大株主が頻繁に入れ替わる
ハコ企業でよく見かける内容として、大株主が頻繁に入れ替わるというものがあります。
これは、第三者割当増資に応じて大株主となった人物が、短期間で市場で持ち株を売り抜けてしまうからです。
「第三者割当増資に応じて大株主になる → 売り抜けて利益を得る → 別の人物が第三者割当増資に応じて大株主になる → 売り抜けて利益を得る」ということが繰り返されるので、頻繁に大株主の名前が入れ替わります。
ここで言う、第三者割当増資の引受人は、個人であることもあれば、企業であることもあります。
会社四季報などをチェックしていると、「大株主一覧」を見ただけでハコ企業であることがなんとなくわかるようになります。
大株主の一覧に、「銀行や大企業などの安定株主」が存在していない場合、このような事態になっていることも少なくありません。
架空増資や水増し現物出資、不適切な資金の社外流出にもかかわらず、十分な資本増強ができたとする虚偽の情報を開示(IR)して株価を上昇・維持させ、不正に取得した新株式を流通市場で売却することによって、売却代金を搾取するわけです。
出典:証券取引等監視委員会
少し極端な例ですが、わかりやすいストーリーを示します。
1.介入
資金繰りに困っている会社につけこんで「救済者」として第三者割当増資に応じる。
時価総額の小さな会社なので、「救済者」とよばれるA氏が大株主に名前を連ねることになる。
このA氏は、第三者割当増資によって一定のディスカウント(割引価格)で株式を取得している。
2.乗っ取り
すでに大株主として実権を握っているのはA氏なので、会社はA氏の言うことに従わなくてはならない。
A氏は他にも「(事業内容は先進的だが)赤字続きで未来のない会社」をたくさん保有している。この赤字続きの会社を、乗っ取った企業にM&Aで取得させる。
3.株価上昇
乗っ取られた企業は、A氏の指示によって「(事業内容は先進的だが)赤字続きで未来のない会社」を高値で買収し、新規事業に参入すると発表。
「(事業内容は先進的だが)赤字続きで未来のない会社」はA氏が関わっている会社なので、買収資金は事実上、A氏の元へと流れる。
ボロ株が「(事業内容は先進的な会社)」を買収して新規事業に参入したと聞いて、株価は急騰する。
3.売り抜け
株価が急騰したところを見計らって、A氏は第三者割当増資によって引受けた株を売り抜けて市場から売却益を得る。
4.株価暴落
M&Aした会社はそもそも「未来のない会社」なので、化けの皮が剥がれると再び赤字となり株価は下がる。
株価急騰と新規事業という「夢」を掴まされた一般の投資家は、株価下落によって損失を被る。(事実上、株価を売り抜けたA氏の元へ資金が流れたことになる)
「未来のない会社」を高値でM&Aした乗っ取られた企業も、M&Aで資金を使い果たしているため、再び手元資金に困ることになる。
5.ループ
手元資金に困っている会社に新たな「救済者」が現れる。以下ループ。
さいごに
ハコ企業を見抜く一番の方法は、その企業に投資する前にホームページの「IRニュース」一覧を数年分、さかのぼって見ることです。
慣れていない人にとっては、骨の折れる作業ではありますが「正常だった企業が徐々に乗っ取られハコ化していくストーリー」をリアルに体験することができます。
また、本記事でも何度か引用しましたが、証券取引等監視委員会の「不公正ファイナンスについて」というページは一見の価値があるので、ぜひ読んでみてください。
不公正ファイナンス(ハコ化で使われる手口)についてとてもわかりやすく解説されています。
最後まで読んでいただきありがとうございました
こちらの記事にコメントが投稿されました
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ゆずっこ さんがコメントしました - 2024年12月2日
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No Name さんがコメントしました - 2023年10月8日
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1件のコメント
はじめまして!将来が不安になり、投資をやると決めて、やり始めたばかりで、コロナショックの影響で、右往左往してました笑。まだまだメンタル的に弱く、やってはいけない所に飛びついてしまう傾向があるので気をつけています。仕手株は聞いた事がありましたが、ハコっていうのがあるのは初めてです!知らなかったら、まさしくギャンブル投資をしてたかもしれなかったです。勉強になりました。サイト内色々読ませていただきますね!