時刻は深夜2時。

私たち、いま….

 

 

本屋にいます。

 

 

遡ること4時間前…

 

ライターの岡田悠です。閉店間際の「ジュンク堂書店池袋本店」にいます。

40~50分の制限時間内で、人が本屋を歩く様子を観察する「本屋ダンジョン」。過去2回開催しましたが、めちゃくちゃ楽しかった。
ただ……

時間が足りない!!

この店に並ぶ本は約150万冊。ダンジョンのような深さを誇る巨大書店において、そんな時間ではとても足りない!
しかし毎回オープン前の、限られた朝の時間帯を使わせてもらっていたので、仕方なかったのです。

そこで3度目となる今回は、こう考えました。

 

ということで、第3回本屋ダンジョン「真夜中の本屋ダンジョン」を開催します!

 

こちらが4人の参加ライターたちです。

ダ・ヴィンチ・恐山:真夜中に活動する
みくのしん:文字を苦手とする
マンスーン:もうすぐ本が出る
原宿:毎日、23時には寝る

そして今回も、ジュンク堂書店の皆様にご協力いただきます!

多い。

こんな時間に、大人が何人動いてんだ。

怖くなるので、深く考えないようにしています。

こんなことして、本当にいいんですか?

店舗で一夜を過ごす機会なんて、私たちもなかなか無いので楽しみです!

さっき蛍の光が流れていたので、そろそろ閉店ですよね。

はい。お客様が全員お帰りになったことを確認してから、全館消灯となります。

今いる最上階の9階イベントスペースだけは明るいままなので、ここを待機所としましょう!

待機所に本を持ってきて、読んでもらっても構いません。


待機所の9階イベントスペース

真っ暗になったらどうなるんだ?

眠くなっちゃうかも。

すでにちょっと眠い。

全館消灯したら、みなさんには自分の拠点となる寝床を作ってもらいます。眠くなったら寝てください。床に。

本屋に寝床を作るって、すごいことだ。

やっぱり好きな本のエリアで寝たい。どこにするか迷うな。

文字の本は苦手だからな…地下の漫画エリアとかいいかも。でも上階の方が景色が良さそうだし迷っちゃうな。

景色って観点もあったのか。

あ!

 

消えた!!

これで全館消灯されました。

ワクワクしてきた。

全館消灯したので、これでもう朝まで外には出られません。

本屋に幽閉されるとは…

まずは下見も兼ねて、全員で真夜中の本屋を歩いてみましょうか。各自ランタンを持ってください!

 

 

9階:「芸術・イベントスペース」

暗っ!!!

マジのダンジョン探検じゃん。ポケモンの洞窟を思い出すわ。

非常灯の近くの棚や、窓ガラス付近はまだ明るいですね。

たしかに、正面のカラオケ館の青い灯りが入ってくる。

 

どこで寝るか、考えながら下見しないとな….

今いる9階は「芸術」のフロアで、たとえば写真集や音楽に関する本が置いてあります。

順番に下まで降りてみましょう。

ちなみにエスカレーターも停止済みです。

止まってるエスカレーター、なんか気持ち悪っ!!

ドキドキすんなあ!

 

8階:「語学・学参・児童書」

8階は児童書等のフロアです。

絵本もここですよね?俺、絵本に囲まれて寝たいかも….

あれ、あそこになんかいる…?

なんか動いた!?

 

販促パネルか…

動いた!?

動いてません。

人型のパネルはびっくりしますね…

奥に怖そうなコーナーがあるぞ。

 

ちょうど絵本エリアで、「大人でも怖い絵本特集」を開催中です。

あ、この絵本…

 

『いるの いないの』
(京極夏彦, 町田尚子・岩崎書店)
家の暗がりに、だれかがいるような気がしてしかたない。京極夏彦と町田尚子が描き出す、空間の「こわさ」。

これ、本当に怖いんですよね。京極夏彦先生の本なんですが、ちょっと別格の怖さで。

うわああ…

余白がすごいんですよ。

これ怖…

絵本がこんな怖くていいの!?

絵本の怖さもすごいけど、

 

この光景もすごい。

ランタンで本を囲んで読んでるの、初めて見ました。

古代の知識人は、きっとこうやって本を読んでたんじゃないですかね。

でもいま全員メガネだよ。

また目が悪くなっちゃう。

 

壁に食べ物の絵がいっぱい飾ってある!

絵本『パンどうぞ』10周年記念原画展を開催中です。木版作家である彦坂有紀さんと、もりといずみさんの原画を展示しています。

お腹がすいたらここに来よう。

このペースだと下見だけで朝になっちゃうので、一度下まで降りてみましょうか。

 

降りていくの、毎回怖え〜

 

7階:「理工」・7階:「医学・コンピュータ」

7階は理工系のフロアですね。

涼しそうで、寝るにはいいかも。

気温違います?

理工って涼しそうだから。

なんかわかる。

 

5階:「ビジネス・法律・経済」

僕、このエリアは寝床候補なんですよね。

ビジネス本のエリアが?

お金持ちになった夢を見られそうで。

うわ!!!!

 

『図解 源泉所得税(令和6年版)』
(一般財団法人 大蔵財務協会)
源泉所得税に関する基本的事項をわかりやすく解説。

源泉所得税だけの本が現れた…!

その辺りは税関連の本ですね。

ランタンを向けたら、いきなり出てたからびっくりした。

棚全体が見えないから、急に本が飛び込んできますよね。

源泉所得税だけで本があるのか。令和6年版、ってことは毎年出てるんですか?

法律や制度が変わるので、それに合わせて発行されます。

税金を払う夢を見られそう。

 

4階:「人文・教育・心理」

この階、いい匂いがする!

匂い?

日中は、奥で喫茶店が営業しているからかもしれません。

暗いと匂いに敏感になる。

 

夜の哲学書の棚は、迫力あるなあ。

私、ここを寝床にしようと思ってるんですよね。

哲学書に囲まれて寝たら、いい夢が見られそうで。

そうかな。

うなされそう。

 

3階:「文芸・文庫・新書」・2階:「趣味・暮らし」

やはり文芸はいいですね。まるで古の図書館を歩き回っているみたいだ。

 

「日本幻想文学」の棚も夜に合うな…

ん?

うわああああ!

 

自分じゃん。

小説『ストーナー』の特集に、原宿さんの紹介パネルを置かせてもらっています。前回の本屋ダンジョンでのストーナー紹介が、好評だったので…

まさかパネルになるとは。

そしてパネルの眼差しの先には…

うわあああ!

 

『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む』
(かまど,みくのしん・大和書房)
1人の男が人生で初めて本を読む。

『納税、のち、ヘラクレスメス』
 (品田遊 ・朝日新聞出版)
ダ・ヴィンチ・恐山こと品田遊による【2000日超】×1500字の脳内記録!

自分らの本じゃん。

これ別に知り合いだから褒めるわけじゃないんですが、どちらもめちゃくちゃ面白かったです。

お客様にも大人気です!

 

1階:「雑誌・新刊話題書」

やっと下まで降りてきた。

楽しい…

ワクワクするね。

この夜のツアー、きっと需要ありますよ。

 

僕、この1階のレジ前で寝ようと思ってるんですよね。

本屋に来て、レジ前に…?

スペースが広いなって。

広いですけど、かなり明るいですよ。

外からめっちゃ見える位置にある。

そこで寝転がってる人いたら、通報されるでしょ。

あと、レジ前は一番床が硬いです。

悪い情報しかない。

ていうかこの階、すごい本の匂いがしない!?

また匂い?

 

ここは雑誌が多いからだと思います。新しい紙を使ってるので…

本屋も場所によって匂いが違うんですね。

夜通しクロスワードをやるのもありだな。

 

『美的GRAND2024秋号』
(小学館)
この秋、大人肌は逆転勝利する!

この雑誌、化粧水が付録についてる!

寝る前に使えるじゃん。

やっぱいい場所かも。

 

B1階:コミック・ゲーム攻略本

最後は、地下の漫画エリアもぜひみていただきたいです!

階段が雰囲気ある…

 

暗っ!!!!!!

地下は窓がないので、一番暗いですね。

 

サイン色紙がめちゃくちゃある。

洞窟で古代の壁画を見てるみたいだ。

あれ、恐山さんどこいきました?

奥の暗い方に走っていきましたよ。

奥からなんか叫んでるな。

 


/ここが一番暗い!\

ランタンでチラチラ仮面が映る。

本屋に棲む怪人?

このフロアで漫画をたくさん読むっていうのもありだなあ。

 

『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』
(魚豊 ・小学館)
『チ。』の魚豊が描く、恋と陰謀ーー!!

最近読んだこれ、「陰謀論と恋愛は近い」っていう感覚が「まさに!」という感じで面白かったです。

「チ。」の作者の方ですよね。

終わり方も最高だったんだよなぁ……

 

『レッツゴー怪奇組』
(ビュー・小学館)
幽霊や妖怪の元締め「怪奇組」組長メチャ子と、無類の怖がり男子が繰り広げる怪異コメディ!

夜といえば、やっぱ怪奇組でしょう!

オモコロで読むのと本で読むのと感覚が違うので、もう読んだ人にも買って欲しいぜ。

 

『ドラえもん 50周年記念スペシャル版』
(藤子・F・ 不二雄 ・小学館)
発刊50周年!ダブルカバー&別冊付き!

表紙がキラキラ光ってる!

50周年記念の特装版で、ダブルカバーになっているんです。

欲しい…

(みんな好き勝手に動き始めた…)

下見はこのへんにしましょう。いよいよ各自が自由に歩き回る「本屋ダンジョン」を始めます!

そういえばまだ下見だった。
もうおしまいの気分になってた。

ここからが本番です。今回のレギュレーションはこちら!

120分!

今回はたっぷり時間がありますね。

本屋でやってみたかったこと、早くやりたい。

ランタンだけだとかなり暗いエリアもあったので、暗がりで使えるお助けアイテムもそれぞれ支給します。

これで本を見やすくなるってことね!


くじの結果、お助けアイテムが各自に行き渡りました

恐山:①レトロな懐中電灯
マンスーン:②高輝度LEDライト
みくのしん:③100均のライト
原宿:④?????

 

それではいよいよ…

 

僕はまず9階を見ようかな。

俺も一番上からいこっと!

私は逆に地下から始めます。

俺も地下の漫画を見たいなあ。

 

地下から行くグループと、最上階から行くグループに別れました。各プレイヤーに書店員さんがついていただきます。

まずは地下の恐山の行動を観察してみましょう。

 

岡田さん、ちょっと早足で行きましょう。

 

いきなり「本屋でやってみたかったこと」をやろうかなと…

なにをやるんですか?

地下の最も暗いエリアに、家から持ってきた…

 

ドクロを設置します。

 

なんで?

みんなをビビらせたくて。

本屋に罠を仕掛けないでください。

 

怖すぎ。

さて、これで落ち着いて本を見られる。

 

マインクラフトの攻略本がめちゃくちゃありますね。

棚全部がマインクラフトだ….

ただでさえ広い本屋なのに、一部しか見えないと、余計に巨大に感じます。

いま照らした棚が、ずっと広がっているかもしれない…という想像が湧きますね。

この先も全部マインクラフトだったらどうしよう。

 

あ!

 

『あっかんべェ一休』
(坂口尚 ・KADOKAWA)
とんち、破戒、悟り。ただひたすらに懸命に生きる一休宗純、その一生。世界からの評価が高まる坂口尚の遺作。

『あっかんべェ一休』の愛蔵版が出てる!

どんな本なんですか?

一休さんの一生を描いた漫画なんですけど、とにかく絵がめちゃくちゃうまい。大判だと絵のうまさがさらに際立ちますね…暗がりでもわかるこの繊細さ…

今回も、気になった本はどんどんカゴにキープしていきましょう!

この漫画はみんなにもみて欲しいので、入れたいと思います。

 

でもみんなどこにいるんだろ。

ダンジョンで宝の地図をみてるみたいだ。

 

その頃、マンスーンとみくのしんは、二人とも9階を歩き回っていました。

そして偶然にも……

 

『喰寝(くっちゃね)2』
(金子山)
2013年の年末から2021年クリスマスまでの街の写真。全1000ページ、フルカラー。

このぶっとい本、フォントがめっちゃかっこいいんですけど!!!何語!?

金子山さんという方の写真集です。日本語で「くっちゃね」と書かれていますね。

 

『BACON ICE CREAM』
(奥山由之・パルコ)
この世界の色、かたち、光、ぜんぶ。奥山由之のデビューから現在に至るまでの写真集。

この本、カバーがめっちゃかっこいいんですけど!!!

奥山由之さんの写真集です。ポカリのCMの監督などもやられている方ですね。

 

時間差で同じ写真集の棚を見ていました。この棚には人を惹きつける力があるんでしょうか。

 

『男子部屋の記録』
(小野啓・玄光社)
都会の男子とその部屋、そこに在る物たちのなるべく詳細な記録。

この写真集も良いなあ!

どこが気になられたんですか?

最近引っ越したんですけど、部屋のセンスないな〜と自分でも思ってるんです。

それで部屋づくりの参考に?

参考というよりは…この本を開いたら、おしゃれにしてる人もいれば、むしろ汚くしてる人もいるみたいで。おしゃれ気にしなくてもいいんじゃないかな!?って思えるかもしれないなって。

良いですね!入れましょうか。

でも正直言うと、最初に全員で下見した時に、この本を恐山さんが良いねって言ってたんです。そのまま真似しました。

それでも良いと思いますよ。

でも自分で見つけたやつで、「いいの見つけたなあ!」って言われたい。そんな本を見つけたい。

 

2人が写真集に夢中になっている頃…

最後の原宿は、恐山と同様に、地下の漫画コーナーをゆっくり見ていました。

 

『痩我慢の説』
(川勝徳重, 藤枝静男・リイド社)
手をふって、いい気分で、進まねばならぬ。苦しんで生き生きと暮らすのだ —— 無冠の傑作が稀代の劇画家ののびやかな筆致を得て、今ふたたび輝く!

痩我慢の説。なんて気になるタイトルなんだ!

原作は、藤枝静男さんという私小説家の方なんです。著者が藤枝さんの作品を好きで、漫画化したとか…

どんな説か気になりすぎるので、これは読んでみたい。

 

『生きのびるための事務』
(坂口恭平,道草晴子・マガジンハウス)
芸術家でも誰でも、事務作業を疎かにしては何も成し遂げられない。夢を現実にするたった一つの技術、それが《事務》です。

あ〜!坂口恭平さんの『生きのびるための事務』! これめちゃくちゃ好きなんですよね…

芸術や表現で食べていく、という時に、みんなまず「どんなすごい作品を作って売れるか」ってことを考えがちじゃないですか。でもそれよりも、実は「自分はそれを続けられるか?」という視点が重要になってくる。そこでポイントになるのが「事務作業」なんです。成功したら安定する、ではなくて、事務の力で、最初から「どうしたら自分は安定して創作活動を続けられるか?」ということを思い描いておく。とにかく自分に無理をさせずに好きなことを続けられる態勢を作るのに集中して、他人や世間の評価なんかは一旦どこかに置いておこうって考え方が好きで。人はその気になれば、今この瞬間からでも理想の生活を送れるかもしれないっていう前向きさに溢れた良い本でした。

あと、これ…

 

『路傍のフジイ』
(鍋倉夫・小学館)
まだ誰の眼中にもない真ヒーロー、フジイ!職場では空気みたいな存在感の独身男性。なのに、その生き方は破格の格好良さ!我々の価値観の外側で生きる男がここにいる!

路傍のフジイ。これも傑作!

原宿さん、帯コメントも書かれてますよね。

そうなんです。鍋倉夫先生は、前作の『リボーンの棋士』がとにかくアツすぎて最高で……。「フジイ」はまた題材の違う、何ならめちゃくちゃ地味な作品なんですが、とろ火なのに心の深いところに届いてくる。一見社会性のない、冴えない会社員が主人公なんですが、実はフジイの感じているものってめちゃくちゃ面白いし豊かじゃない?っていう。仕事や社会に自分を奪われすぎなくても、他人の評価に合わせすぎなくても、自分だけが味わえる固有の面白い人生というのはすぐ側にあるんじゃないかと、そんな気持ちにさせてくれる作品です。SNSと戦う時に持っておきたい漫画です。

好きなポイントが、『ストーナー』や『生きのびるための事務』と似ていますね。

結局、僕は「人生」というもののファンなのかなと最近思いました。道に迷ったと感じた夜には、是非セットで読んでみてください!

 

いやあ、コミックフロアだけで一晩いけるな。

コミック担当として嬉しいです!

 

いやあ楽し…

ん?

 

うえ!?!!!

!?

おい!!!

 

誰だよドクロ置いたやつ!!!!

よし….

こんなこと許されないぞ!!

 

1階へ逃げましょう!

やってくれたなあ!!

なんの攻防だ。

うわっ!

 

ドラえもんか……

びっくりし返されてる。

 

写真集を楽しむ9階組と、ドクロに翻弄される地下組。ダンジョンの最上層と最下層で、熱い探検が繰り広げられます。

 

次はマンスーンさんの様子を観察しようかな。3階に降りてきたって連絡がきたけど…

 

あ、いましたね。

…え!?

 


これって…

 


もしかして…

 

本屋でキャンプしてる。

我が拠点に、ようこそ。

めちゃくちゃいいですね…!

こんなことしていいんですか!?

はい!火じゃなくてライトですし、商品を傷つけてるわけでもないですし。詩集の棚なのも最高です。

めちゃくちゃ落ち着きます。

ここかなり静かでいいですね。「し〜ん」って聴こえるくらい静か。

本が音を吸収してるからかな….実際のキャンプより静かな気がします。

マンスーンさんってキャンプ好きなんですか?

いや、特に….

そうなんだ。

それより、最近、詩集にハマってるんですよ。だから一度、詩集に囲まれて眠ってみたいなって。

いまのところどんな本を入れました?

 

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