*nixで過ごす日々

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去年注目されたLinuxディストリビューション(2024年版)

2024年になったので2023年のdistrowatchのページヒットランキング(ページ右側のランキング)の上位10件と個人的に注目しているものを2つ見ていこうと思う。
また、今回は「なぜ世界中の人々はそのディストリビューションを注目しているのか?」私の個人的な分析・感想を述べていく。
そして日本では「Linuxはどんな用途でもUbuntuを使っておけばベスト何でしょ?」と思っている人が多い気がするが、かなり前から違うということも含めて解説していきたい。

1. MX Linux

数年前からdistrowatchのページヒットランキング1を独占しているディストリビューション。
antiXとMEPISがくっついたものらしい。
antiXはもともと軽量級のディストリビューションとして開発されており、古くなったPCにLinuxをインストールして再利用するという多くの人が思いつくLinuxの使い方にマッチしたディストリビューションだった。
その後継として見ることができるMX Linuxも同じ界隈の人々から注目されるのも至極当然である。
また、多くのLinuxディストリビューションは32bit CPUのサポートを次々と打ち切っているが、MX Linuxは32bit CPU対応を続けている。
おそらく数年1位を維持しているのはここが非常に大きいウェイトを担っていると考えられる。
古いPC=低スペック=32bit CPUで使えるLinuxはMX Linuxしか残っていないという状況になりつつあるのである。
私の分析としてはMX Linuxがなにか優れているわけではなく、MX Linuxしか使えないから注目しているだけということだ。
Debian stableベースで開発されているが、個人的にはDebian stableなんてパッケージのバージョンが周回遅れのものばかりなので普段使いするには辛いと思うのだが、そこまでして古いPCを再生したいのだろうか?

2. Linux Mint

2006年にリリースされ、2007年にはランキング6位まで躍進し、その後2011年~2017年まで1位に君臨し続けたディストリビューション。
新しくWindowsを買うのではなくMintに乗り換えませんか?と言う感じで開発が進められていたと記憶している。
Linux Mintプロジェクトはオリジナルのデスクトップ環境(DE)を2つ作っている。
Windows XPやVistaに近いルック&フィールとなっているcinnamonとgnome2の使い勝手をそのままに改善を施したmateの2つである。
開発初期はどちらもgnomeに依存していたが、現在は独立したDEとなっている。
Mintが注目されている理由は多くあり

  1. インストールしてすぐに使える
  2. 極力コマンドを使わずにOSの管理ができるように作られている
  3. ルック&フィールがWindows XPやVistaに近く、多くの人にとって馴染みやすい
  4. GUIのテーマが非常に美麗に整えられており、Linuxによくあるチープさがない
  5. Ubuntuベースであり、既存の多くの資産を利用できる

といった感じだろうか。
近年、1位の座は明け渡してしまっているが、2023年でも2位に入っている。
それなりのスペックのマシンをLinuxデスクトップとして使うときには候補の第1位として検討すべきディストリビューションなのは間違いない。

3. EndeavourOS

AntergosというArch Linuxベースのディストリビューションの後継として開発がスタートした。
Arch Linuxは自分でコマンドを入力してインストールする必要があり、多くの人にとって困難なものとなっていたが、AntergosプロジェクトはGUIのインストーラを提供し、そのインストーラを実行するとAntergosのテーマ等以外は素のArchとなるようにOSがインストールされるというものだった。
EndeavourOSもこの考えを受け継いでおり、GUIのインストーラでArchをインストールでき、テーマ等のわずかな要素を除いて素のArch Linuxがインストールされる。
2019年に登場し2021年には2位になるまで注目されている。
おそらく普段使いするためではなく、開発環境のためのOSとして注目されていると思う。
Archベースなのでパッケージはなるべく迅速に最新バージョンを追従するし、それでも遅いと言うときはAURから開発バージョンをインストールできる。
これは開発者にとって痒い所に手が届く気持ちの良い状態である。
また、開発中に色々とOSを弄くっているとシステムが壊れることが良くある。
Archだとコマンドを打ち直す必要があるため萎えるのだが、EndeavourOSならGUIでポチポチするだけでOSのインストールが完了するため、コマンドを恐れすぎず作業できる。
正直EndeavourOSのテーマ(特にロゴ)はダサいと思うし、Linux Mintに比べたらDEがチラついたりすることも多い気がする。
開発用としてVMにインストールして、用が済んだら削除するという感じの使い方にもってこいのディストリビューションだと思う。

4. Debian

パッケージマネージャーaptを作ったディストリビューション。
Debianがなければ今のLinuxはなかっただろう。
MX Linuxの所でも少し述べたが、stableリポジトリはパッケージのバージョンが普段使いするには古すぎる。
しかし、サーバーとしてなら別で、動作検証が十分に済んだパッケージのみを使うことができる状態となる。
安定稼働が最重視されるサーバー環境ならもってこいのディストリビューションとなっている。
testingリポジトリはUbuntuが使っているリポジトリなので普段使いするにはこちらを使うと良いだろう。
また、Debianプロジェクトは良くも悪くもFREEであることを重視している。
Debianをインストールする際にはプロプライエタリなアプリやドライバーがインストールされない。(インストールできるメディアも有志により作成されていたりする)

5. Manjaro

早い段階でArchをGUIインストールできるようにしたディストリビューションの一つ。
Debianを使いやすくしたのがUbuntuと説明するのならば、Archを使いやすくしたのがManjaroと言えよう。
Archはなるべく早く最新バージョンに追従することを目指しているが、Manjaroはパッケージのバージョンを上げる前にテストしてからパッケージのバージョンが上がる。
そのため、Archよりも安定して稼働させることができるとされている。
2024/1/1現在、私が使っているディストリビューションはこれ。

6. Ubuntu

Debian stableとか普段使いするにはパッケージ古いし、プロプライエタリなドライバーとかデフォルトでインストールできないからインストール直後に音とかならないし不便じゃね?もっと皆が使いやすいものを作ろうよ!という感じで作られたディストリビューション。
Debianのtestingリポジトリを使っている。
2010年位までは確かにデスクトップディストリビューションの王様であったが、今はもう過去の話。
最新のPCに対応するのではなく安定して動くことを目標に方向転換している。
つまり昔のDebian的ポジションになっている。
新しくディストリビューションを作るためにUbuntuをベースにしたり、サーバーとして運用したり、Windowsの中でWSLで動いたり、とバックグラウンドで世界を支える存在へと姿を変えていっている。
言葉を変えて何度も言ったが、最後に明確に言っておく。
素のUbuntuを使う時代は終わった。
目的に合わせてカスタマイズされた派生ディストリビューションを使うべき。
デスクトップ用途なら今はLinux MintやPop!_OSがオススメ。

7. Fedora

Red Hatの開発用ディストリビューション。
リポジトリにあるパッケージは、Arch程ではないが、新しいものが揃っており、最初に述べた通り開発用に向いている。
他のディストリビューションと大きく違う点としては、年2回のアップグレードがあることが挙げられる。
ただし、コマンドによるアップグレードに対応しているため、ドキュメント等をしっかり読み対応すれば問題ないと言われている。
Archがいなければもっと注目されていたのかもしれない。
インストール直後にプロプライエタリなパッケージが入っていないため、普段使いするには少しハードルが高い。

8. Pop!_OS

Ubuntuの項目で述べた通り、Ubuntuは最新のPCでデスクトップ用として使うには不適合なディストリビューションになってしまった。
しかし、Pop!_OSは最新のPCを普段使いするために開発されている。そう昔のUbuntuのように。
Pop!_OSの特徴としてインストールするときにNvidiaのドライバーをインストールすることができることが挙げられる。
また、最新のGPUに不具合があった場合はいち早くパッチを作り、Ubuntuプロジェクトにそのパッチを提供していたりする。
今最新のGPUがLinuxで問題なく使えているのはPop!_OSがあったおかげかもしれない。
Linuxでは珍しくゲーミングにも力を入れている。
この先、目が離せないディストリビューションの1つと言えるだろう。

9. openSUSE

Red Hatと並ぶ商用Linuxの無料開発版。
ヨーロッパで人気があるとか聞いたことがあるが、本当なのだろうか?
YaSTというWinodwsでいうコントロールパネルのような設定ツールがあり、YaSTを使えば全てのOSの設定ができると考えて良い。
デスクトップ用途と言うよりは、本番環境でSUSEを使っているのでその検証用や操作の練習用として使われているのではないかと思っている。
カメレオンのマスコットキャラ、ギーコがかわいい。

10. Zorin

昔からデスクトップ用として商用展開しているディストリビューション。
GnomeをカスタマイズしたDEを提供しており、設定でWindowsっぽくしたり、macOSっぽくしたりできる。
おそらく有償機能の「複数のマシンの管理」機能が一定層にウケているんだと思う。
個人利用の観点で見ると、見た目がかっこいい以外に利点を見いだせない。

13. elementary OS

番外編その1。
elementary OSはwindowsやmacOSからの乗り換え先になるように開発されている。
見た目がmacOSに影響を受けたものとなっている。
インストール直後に不要なパッケージがほぼ入っていないところが評価高い。
Ubuntuベースなのでaptが使えるが、基本的にはソフトウェアセンターからインストールすることを推奨している…はず。
使ってみるとUXについて熟考されていることがわかる。
apt等のパッケージマネージャよりもflatpakを推している珍しいディストリビューションだと思う。
OSのアップグレードのときはクリーンインストールしないといけないところがマイナスポイント。

16. Nobara

番外編その2。
Fedoraをユーザーフレンドリーにしたディストリビューション。
ゲーム、ストリーミング、マルチメディア再生等にフォーカスしている。
Pop!_OS的な存在になっていくかもしれない。