Nov 30, 2022

大田区の自殺対策・職員研修について質問しました。

こんばんは。大田区議会議員のおぎの稔です。

本日、行われました令和4年第4回定例会において、私は今まで取り組んできたテーマでもある自殺対策について質問させて頂きました。自殺対策や関連事業は私が1期目の時から取り組んできたテーマであり、コロナ禍で状況が変化したことや国の自殺総合対策大綱が令和4年10月に改訂されたこともあり、改めて質問させていただきました。また、再質問では特に最近は若者の自殺、若い女性の自殺が目立っていますが、依然として高いままである中高年。特に男性の自殺。女性の自殺が急増した今でも女性の自殺の倍近く男性が自殺をしていることも指摘しました。自死遺族の一人として、自殺対策をメインテーマにする議員の一人として引き続き、大田区に提言していきます。

答弁や詳細はまた改めて行います。

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2022年第4回定例会 フォーラム 荻野稔 一般質問

質問時間 20分 (質問のみ12分 答弁8分)

(健康医療)

東京政策フォーラムのおぎの稔です。今回は、昨日も公明党の椿慎一議員が触れていました大田区の自殺対策や教育現場での自殺対策について質問をさせていただきます。

国において自殺総合対策大綱が令和410月に改訂されました。自殺対策は、自殺対策基本法によって行われているもので、自殺対策基本法が成立したのが平成18年(2006年)、10年後の2016年には法改正が行われ、生きることの総合的な支援と位置付けられました。自殺対策基本法には、誰もが自殺に追い込まれることのない社会の実現が法律の目的であることが記載されており、そのためには住民に身近な自治体である、大田区の役割も大切です。私も自死遺族の一人として、大田区議会で自殺対策について触れてきました。改めて、今回はこの間の大田区の取り組みや、コロナ禍で大きく変化した状況への認識、今後の方針について大田区の見解を伺っていきます。

 

まず、インターネット及SNSを活用した自殺防止対策について伺います。今回の改定では若者や子供、女性の自殺対策などについての取り組み、専門家や外部機関、地域も巻き込んだ体制づくり。また、インターネットを活用した自殺対策のさらなる支援などについて触れられています。私が以前、他自治体で先行して実施していたこともあり、区議会で提案したインターネット広告を活用した自殺対策。大田区も令和元年からこの「インターネットGK」を活用し、若年層を中心とした自殺対策に努めてきました。ざっくりというと、例えば自殺、死にたいなどのワードを入れて検索を入れると自治体やNPO、支援団体などのページが広告としてトップに表示されるものがあります。ああ言ったものがインターネット広告を通じた自殺対策になります。検索ワードは編集、加えたり減らしたりすることもでき、例えば「メンヘラ」というスラングのような言葉でも検索に反映されたりします。また、自殺対策について調べている際も頻繁に表示されてしまい、これはこれで広告の表示回数を消費してしまっているのではないかと少し申し訳ない気もしてしまいます。

さて、この大綱の改定にはコロナ禍における国民の動き、自殺対策の変化も反映されていると考えられます。特に若者の自殺が減らず、また大田区では男性の自殺は高い水準ではあるものの、同様の水準を維持していることに比べて、若い女性の自殺がこの間、急増した点が特徴としてあげられます。新しい大綱で地域自殺対策強化事業として自殺対策強化交付金が示されました。SNS地域連携包括支援事業や居場所づくり、精神科との連携、自殺未遂者支援といったモデル事業に対して、国が補助を出すものです。こうした国の制度はすでに大田区や東京都がやっている事業との重なりもあり、すぐに全部を導入できるわけではなく検証も必要になってくると思いますが、是非、進めていただきたいと思います。

特にコロナ禍においてより重要性が高まった大田区のインターネットおよびSNSを活用した自殺防止対策についてその取り組みや見解をお答えください。(1)

 

続いて、職員研修、ゲートキーパー研修について伺います。自殺対策には受け手、相談を受ける立場にある区職員の心構え、理解も大切であると考えます。自殺対策に取り組むNPO法人ライフリンクの調べによると自殺を行った人、未遂になった人も含めて自殺を企図した人の72%は何らかの機関に事前に相談していたことが明らかになっております。医療や行政といった機関が自殺リスクをキャッチできるかどうかと言うのは、とても重要なことだと考えます。

平成30年の決算特別委員会において、私は大田区の職員の方のゲートキーパー研修の履修率について質問しました。その際の平成3041日現在の大田区の職員の履修率は職員の人口に対して9.4%と回答がありました。当時、私は議会事務局を通じて23区の他の区にも同じことを聞いていただいましたが、その際、他の区はどうだったでしょうか。港区は73.4%、人口規模の近い足立区は82.5%、江戸川区が 40%、練馬区も21.2%でした。大田区より少ない自治体もありましたが、他の自治体と比較して低い数字であったことは否めません。当時の答弁では区の職員の研修の中で、GK研修についても力を入れていく旨の回答がありました。その結果について、お聞きしたいと思います。あれから4年が経ちましたが、94%だった当時と比べて大田区の取り組みはどう変化したでしょうか?

現在のゲートキーパー研修の大田区の状況、実績について伺います。(2)

 

次に、つなぎ支援について伺います。今回の自殺対策大綱の改正で、連携自治体のつなぎ支援という項目が示されました。自治体と自殺対策に取り組むNPO法人ライフリンクが協定を結び、専門家などの支援、助言などを行い自治体と共に、自治体の中での自殺対策について取り組みを行うものです。自治体と外部のNPOなどが一緒に自殺対策に取り組む仕組みに国から予算がつく形になりました。自殺対策に取り組むと言う意味では別の機関も今後増えるのかもしれませんが、このライフリンクのつなぎ支援は、令和4年度101日現在で都道府県が3、基礎自治体が12、締結をしており東京都内では江戸川区、足立区、港区などが締結を行っています。いのちSOSというこの事業、一方で東京都や既に大田区が行っている取り組みとの競合もあるとは思います、まずどう言った事業が行われているのか把握するのも大切ですが、その上で大田区として締結をするべきではないかと考えます。大田区の見解を伺います。(3)

 

次に、心の健康について伺います。自殺の大きなリスクとして精神疾患があり、精神疾患を抱えるまでの理由は様々ですが、うつ病などは大きな理由の一つであると言われています。一方で、言語化され理解や啓発が進んだことで心療内科などの受診は以前に比べてやりやすくなったのではないかとは思います。また、精神障害についても一定の理解が以前に比べて進んだものと思いますし、様々な事情があって、働けない方、引きこもる方がいることも、社会で認知されてきましたが、まだ偏見もあります。

さて、先日インターネットで話題になった言葉があります。

レイブルとこもりびとという単語です。皆様はご存知でしょうか?

大阪府では2011年からニートをレイブル。これは遅咲き、大器晩成という意味だと聞いています。神奈川県大和市では2019年にひきこもりを「こもりびと」と呼ぶことが決定したとのことでした。大和市は条例でこもりびとと呼ぶように決めたとのことです。名前を変えたことで相談件数は増加したとこのことで、それ自体はいいことなのかなとは思います。

ひきこもりは自宅警備員と一部で呼ばれていたりしましたが、ただ問題なのは名称ではなく実態でありその解決策、改善策です。

正しい理解を得るためにも啓発や相談などの取り組みは必要であると考えますが、大田区として心療内科の受診や精神疾患などの心の健康に関する啓発についての見解を伺います。(4)

 

(教育)

最後に学校での自殺対策について伺います。昨日の公明党の椿議員からも質問がありましたが、私からも触れさせていただきます。コロナ禍前から若者の自殺の数が高水準だった長野県自殺危機対応チームが発足しました。新型コロナウイルス流行下で国の自殺者は20歳未満は横ばい、また、令和二年には小中学校の生徒の自殺は過去最多となり、令和3年も依然として高い状況にありますが、長野県では様々な専門家を交えたコアチーム、地域の方々で編成した地区チームを編成し対応にあたる形を作りました。子どもは感受性も高く敏感であり、大人であれば何だそんなことか、と思えるような事でも深刻に捉え時に、命を絶ってしまう事もあります。大人にとってはただのゴミにしか見えない紙切れも子供にとっては大切なお守りかもしれません。

自殺対策を含め、子どもの心の変化をキャッチすることが大切であり、自分の力だけでは生きられない子どもの自殺対策も学校だけで先生やカウンセラーだけで抱えるのは難しいため、子供に対しては様々な専門家や大人の協力が不可欠ではないかと考えます。

さて、この取り組みを行った長野県のでは、本年は2022107日時点で今年度は自殺者0相談30件となっています。子どもの自殺対策危機対応チームについては、2022年秋改定の自殺総合対策大綱では、設置が盛り込まれた。国の地域自殺対策強化交付金において、補助も行われると聞いています。

こうした取り組みを早期に大田区も導入すべきと考えます。

また、子どもや若者の自殺リスクを早期に発見する為には、精神疾患や精神的不調にかかる状況把握のためのITツールの活用も大切です。例えばアンケート形式でリスクのある精神状態を把握出来る精神不調アセスメントツール、RAMPS指標を学校や、大田区の支援の中で活用しやすい。直接聞きづらい質問にも回答出来ることもあり、状況を把握しやすく自覚しやすいと思います。若者ほど、電話や対面のコミュニケーションを拒む傾向にもあり、ITツールの活用は福祉の面でも必要だと思う。こうした時代の変化に応じた体制づくりやツールの活用が、子供の自殺対策の上で必要ではないでしょうか?大田区の見解を伺う。(5)

 

以上で、全項目終了しました。生きることの包括的な支援を通じた生き心地の良い社会の実現を大田区からも実施していくことを願い質問を終えます。

 

(再質問)

現在、若者や女性の自殺が増え課題となっておりますが、全体として大きいのは中年の男性などの自殺です。対策がされ、減りましたが、以前として高い水準です。大田区としてのこの層への自殺対策についての見解を伺います。

 

 

<答弁> 健康政策部 自殺対策関連

○森岡健康政策部長 私からは、自殺対策に関する四つのご質問に順次お答えいたします。
初めに、インターネット及びSNSを活用した自殺防止対策についてのご質問です。区は、若者の自殺対策を強化するため、インターネットを活用した自殺防止相談事業を令和元年度に開始いたしました。本事業は、若い女性の利用割合が高く、現在増加している若い女性の自殺防止に有効な取組であると捉えております。本人の状
況に応じて必要な支援機関を紹介しており、令和3年度は相談者全体の20.4%の方が医療機関や生活福祉課、大田区生活再建・就労サポートセンターJOBOTAなどの関係機関へつながりました。
一方、SNSの活用については、LINEによる自殺防止相談事業を東京都やNPO法人などが実施しており、大田区が作成しているリーフレットでも周知しております。引き続き、東京都や他自治体におけるSNSの取組を注視してまいります。また、本年10月に開設し、若者のチャット相談も行っている大田区若者サポートセンターフラットおおたとも連携するなど、今後もICTを活用した自殺防止対策を推進してまいります。
次に、職員のゲートキーパー研修の履修状況に関するご質問です。職員のゲートキーパー研修は、職員一人ひとりがゲートキーパーとして、全ての窓口において、区民の自殺の兆候に気づき、速やかに適切な支援につなぐため大変重要であると考えております。このため、全職員を受講対象と捉え、職員研修プログラムにゲートキーパー研修を組み込む形で徐々に拡大し実施しております。令和元年度は、各職場のメンタルヘルス推進員を対象とする研修に組み込んだほか、管理職向けに講演会を開催し、令和2年度は新型コロナウイルス感染症の影響により職員研修が中止となりましたが、令和3年度は新人研修にも組み込み、年間の受講者は198人となりました。今年度は、さらに係長昇任準備研修、主任昇任準備研修にも組み込む予定であり、年間の受講者は350人を超え、職員の研修履修率は、今年度末には20%を上回る予定でございます。全ての職員が自殺防止の視点を持って職務に当たることで全庁的に自殺対策を推進できるよう、職員研修を担当する総務部と連携し、ゲートキーパー研修履修率の向上に努めてまいります。
次に、いのちSOSに関するご質問です。いのちSOSは、NPO法人が実施する主に電話による自殺防止相談事業です。事業実施主体であるNPO法人が協定を締結している自治体に対して、当該自治体の居住者からの相談について、本人の同意を得て情報を提供し、自治体が支援を実施する仕組みとなっております。特別区では
3区が協定を締結していますが、これまでにつながった人数は各区1名から4名と伺っております。大田区では、インターネットを活用した自殺防止相談事業において、相談者の悩みに応じて関係機関へつないでおりますが、令和3年度は相談者全体の約2割に当たる23名の方が関係機関へつながったことから、具体的な支援へつなぐという点で一定の効果が出ていると考えております。いのちSOSについては、今後も実施している自治体の実績、事業効果などを注視してまいります。
最後に、精神疾患などの啓発に関するご質問です。自殺は、その多くが追い込まれた末の死であり、自殺に至る前に様々な悩みからうつ状態になる方が多いとされております。このため、精神的な不調を早期に発見し、できるだけ速やかに治療を開始することが重要です。精神疾患に関する相談は、各地域健康課において電話や面接などで実施しております。相談内容は、うつ病やひきこもり、自殺に関するものなど様々であり、相談者の状況に応じて医療機関の受診などを促しております。また、年間を通じて区ホームページや区報、ツイッターなどで
悩みや不調が深刻化する前に区や専門機関へ相談するよう呼びかけるほか、ストレスサインの自覚やリラックスの方法など、メンタルセルフケアの普及啓発を行っております。区民の皆様が心の健康を保てるよう、今後も効果的な取組を進めてまいります。私からは以上でございます。

 

<答弁>教育委員会 自殺対策関連

○今井教育総務部長 私からは、学校における子どもの自殺防止対策に関するご質問にお答えいたします。
教育委員会及び各学校では、かけがえのない存在である子どもが自ら命を絶つことがないよう、あらゆる手だてを講じて子どもの自殺を防止するべく取り組んでおります。子どもの自殺を防ぐためには、子どもの小さな変化を見逃さず、僅かなサインにも気づき、表にはなかなか見えにくい子どもの悩みや不安を見つけていくことが極めて重要です。そのため、子どものアンケート調査は有効な手だての一つであると考えています。
本区では、子どもたちのメンタル面の状況把握のために、一人ひとりに学校生活調査、メンタルヘルスチェックと学級集団調査を年2回ずつ実施しています。学校生活調査では、頭痛、腹痛、だるさなどの身体反応や、抑うつ、不安、無力感などのストレス症状が見られた特別な注意が必要な子どもに対し、担任教員が面談を行っています。さらに、職員会議などで子どもの情報を教員間で共有し、組織的に取り組むとともに、必要に応じて保護者との面談や関係機関との連携を図っています。また、学級集団調査では、子どもの学校生活における満足度
や意欲を把握することにより、集団の中で個人の居場所がどこにあるかを知ることができることから、子ども一人ひとりのメンタル面の不調や、深刻化する前の心の状態の早期発見に役立てています。学級全体に対しては、親和的な学級づくりのため、子どもたち同士の温かい交流の機会を増やしたり、集団生活を行うルールやマナーを定着させたりするなどの働きかけを行っています。学級集団調査は、今年度より、児童・生徒の学習者用タブレット端末を活用するWEB-QUの形式でアセスメントを実施しており、子どもが抱える悩みや困難の早期発
見、早期対応に効果を発揮しています。他にも、学校生活に関する悩み、生活面での悩みに関するメールでの相談窓口「こころの輪メール相談」を設けたり、東京都教育委員会の相談ほっとLINE@東京などのSNS相談窓口を児童・生徒に周知しています。また、スクールカウンセラーによる児童・生徒の全員面接も行っています。東京大学相談支援研究開発センター
で開発されたRAMPSも、個人面接を中心とした子どもが抱える悩みや困難の早期発見のための手法の一つであると思いますので、その有効性について研究してまいります。今後とも、子ども一人ひとりがかけがえのない存在であるという認識に立ち、自ら命を絶つことがないよう、あらゆる手だてを講じ、自殺防止対策に全力で取
り組んでまいります。私からは以上です。

 

 

<再質問への答弁>

ただいまのご質問ですけれども、国の大綱に基づいて、様々な角度から、若者だけでなく幅広い世代で自殺対策を進めてまいりたいと考えております。以上でございます。

 

<参考ブログ>

おぎの稔政策マンガ第8弾 自死遺族支援編

孤独な男性はなぜ死を選ぶのか?大田区の男性の自殺リスクについて

ゆりかごから墓場まで!?子供や若者への自殺対策について

もっと個人を大切に!自殺対策から見る大田区の課題!

 

大田区で自死遺族支援の予算化、インターネットGKも導入されました。

若者のSOSに効果的?インターネット広告を活用した自殺対策について

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