〈順天堂大学〉復活のエース・浅井皓貴（4年）を中心に、狙うは箱根駅伝予選会10位からの下剋上

　10月の箱根駅伝予選会、順天堂大学はボーダーラインギリギリの10位で本選出場を決めた。11位の東京農業大学とはわずか1秒差だった。

　薄氷を踏む思いだったものの、箱根路への切符をつかむことができたのは、エースの復活が大きかった。

「いやあ、もうさすがですね。ずっとケガをしていたのに、よくここまで戻ってきてくれた。やっぱりエースの力は大きいなと思います」

　長門俊介駅伝監督が「エース」と称えたのが4年の浅井皓貴だ。

　浅井にとって昨季は飛躍を遂げたシーズンだった。

　その前年、2年時の第99回箱根駅伝で7区3位と上々の大学駅伝デビューを果たすと、3年生になった浅井は主力に定着する。関東インカレでは10000mで4位入賞。出雲駅伝、全日本大学駅伝では主要区間で安定した走りを見せた。さらに飛躍を遂げたのが同じ年の12月に行われた熊本甲佐10マイル公認ロードレースだ。46分05秒の日本人学生最高記録を打ち立てて、実業団勢をも破って優勝を遂げた。

　そして迎えた第100回箱根駅伝。それまで順大の2区は2年連続でオリンピアンの三浦龍司（現・SUBARU）が担っていたが、浅井が花の2区に抜擢された。それは決してサプライズなどではなく、この年の活躍を見れば当然の起用だっただろう。

エースの思わぬ不振

　しかし、2度目の箱根駅伝で浅井は思わぬ苦戦を強いられる。体調不良があり、まさかの区間19位と力を発揮できずに終わったのだ。1区の三浦から10位で受けたたすきを15位まで落とした。

　チームは往路で10位まで盛り返したものの、復路で巻き返せず総合17位に終わり、4年ぶりにシード権を逃した。

「前回の箱根駅伝は、自分の走りで終わらせてしまったというか……自分がチームの流れを崩してしまった」

　浅井にはそんな後悔の念がつきまとった。

　不本意に終わった箱根駅伝の1か月後。浅井は香川丸亀国際ハーフマラソンで、順大記録となる1時間1分09秒の好記録で走った（9位、日本人学生2位）。

　やはり力はある。大学ラストイヤーは、その勢いのまま、チームの先頭を走り続けるはずだった。

　しかし5月、練習中に右足首をケガしてしまう。全日本大学駅伝関東学連推薦校選考会にも出場は叶わなかった。エース不在で臨んだチームは17位と惨敗した。

「自分が引っ張らなければいけない時にケガをしてしまい、全日本の選考会では何もできなくて悔しかったです。走りたい気持ちと、ケガを治さないといけないという焦りと、そのどっちもあった。その後も焦って走ってしまい、ケガが長引きました」

　雪辱を誓ったシーズンのはずが、走れない日々が続いた。

【次ページ】　下剋上へ虎視眈々