高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。

(=`ω´=)

読了目安時間:5分

エピソード:10 / 34

超大型モンスター

 一日目、AM10:51。  背後から爆音が迫ってくる。  つまりは、遥がもうすぐそこまで来ている、ということだな。  と、馬酔木恭介は、そう判断する。  恭介は、殲滅戦を指向した遥とは違い、小型モンスターのことは無視していた。  結界術レベル1程度のバリヤーを突破できないくらいのモンスターならば、無理して倒してもたいしたポイントにはならない。  かといって、倒すべき努力を怠っていてた、ということでもないのだが。  現在、恭介はグレネードランチャーなる装備を多用していた。  使い勝手のいい武器を探してシステムのマーケット情報を見回ったとき、たまたま目についたからだ。  結構重たく、総点数は六発と少ない。  それに、一発撃つごとに手動でシリンダーを操作しなければいけないし、再装填も、全部自分の手でやる必要がある。  なかなかに手間がかかり、鈍重というかお世辞にもスマートとはいえない武器だったが、現在のような状況ではかなり有用でもあった。  このグレネードランチャーは、要するに手榴弾みたいな榴弾を発射する仕組みだ。  引き金を引くと、発射された弾丸の軌道が肉眼で目視出来るほどの低初速。  放物線を描いて、空中で爆発して破片をばら撒く。  回転弾倉すべて、六発分を撃ち尽くせば、たいていのモンスターは消え失せていた。  つまり、今までは。  ということだが。 「なんだか、しぶとい大型のが増えてきているなあ」  恭介は、ひとりごちる。  グレネードランチャー六発斉射を耐えきるほどタフなモンスターに対して、恭介はアサルトライフルの連射で対応していた。  取り回しがしやすく、口径が小さいかわり連射性能に優れ、弾倉の交換も容易。  あらかじめグレネードランチャーの洗礼を浴びせていることもあって、さらにアサルトライフルの斉射まで受けて生き残るモンスターは、今のところ、出現していない。  銃器を操作しながら、恭介は横目でマップを確認する。  恭介の現在地は、円形の町の中心部にほど近い。  この中心部の広場から、モンスターが沸いている感じかな。  恭介は、そんな風に予測した。  最初は小型から。  時間が経つにつれて、大型で、タフなモンスターが沸くようになっている。  そして、その中心部にほど近い場所に居る恭介は、無限湧きモンスターの最前線で戦っている。  ということになる。  マップで確認すると、他のプレイヤーたちはどうやら、中心部から町の外側へ方面へと移動しつつあるようだった。  倒しにくいモンスターを相手にするよりも、数だけは多くて倒しやすいモンスターでポイントを稼ぐ方が、容易ではあった。  つまりは、町の外部へと移動している他のプレイヤーたちは、相応に合理的に動いている、ともいえた。 「この黄色いのが、彼方の落とし穴か」  黄色い部分は、恭介が居る大通りの左右、かなり広い範囲に及んでいる。  左右からモンスターに挟撃される、ということは、どうやらなさそうだった。  相変わらずやることがえげつねえな、あいつ。  恭介は、そう思わずにはいられなかった。  落とし穴を示す黄色う部分は、この町の通路、四分の一近くを占めているのではないか。  モンスターを示すマップ上の赤い光点は、落とし穴の部分に到達した途端に消えている。  一度設置してしまえば確実に仕留め、そこから出ることはかなわない落とし穴に、モンスターの方が勝手に殺到している形だった。  トランデントというパーティが獲得しているポイントも、その半分以上は彼方一人の働きによるものだろう。 「おっと、これは」  恭介は前方に姿を現したモンスターをみて、のんびりとした口調で呟いた。  まだ距離があったが、そこに姿を現したモンスターは、強いていうなら超大型。 「バスか、10トントラックくらいはあるんじゃね?」  それくらい、大きかった。  一応、グレネードランチャー、アサルトライフルの斉射を試してみたが、ダメージを受けている様子はなく、それまでと同じ歩調でこちらに進んでくる。  恭介はまず結界術のレベルを5まであげ、ついで、回復術のスキルも取得し、これもすぐにレベル5まであげた。  次いで、マーケットの画面を開いて、なにか有用な武器はないかと検索をかける。 「貫通力と破壊力重視、っていうと」  これになるのかなあ。  半信半疑で、恭介はマーケットからアンチマテリアルライフルを購入し、取り出した。  銃身はちょうだいで、手で持つとずしりと重い。  恭介は、一高校生だった。  いうまでもなく、射撃訓練を受けたおぼえもないし、間違ってもプロフェッショナルではない。  これまで、いくつかの銃器を扱ってはいたが、それも精密射撃とかを必要としない使用法だった。  まずは、徹甲弾ってやつかな。  そんなことを思いつつ、マーケット経由で弾丸を購入。  取り出した弾丸を、アンチマテリアルライフルに装填する。  これまで扱ってきた弾丸と比較すると、長くて重い。  次に、恭介は、ジョブ変更の画面を開き、ざっと見渡してから、「狩人」のジョブを取る。  現在恭介が変更可能なジョブの中で、このジョブだけが狙撃スキルを取得可能であったからだ。  自身のジョブをノービスから狩人に変え、狙撃のスキルをレベル5まであげる。 「準備OK、かな」  いいつつ、恭介はずしりと重いアンチマテリアルライフルを構える。  それはいいが。 「銃口が、震えている」  やはり、素人が手を出す代物ではなかったか。  そう思わないでもなかったが、かといって、このままなにもせずに引き揚げる手もなかった。  やるだけやってみるさ。  そう思い、恭介は引き金を引く。 「おわっ!」  想像していたよりもずっと大きな反動が来て、アンチマテリアルライフルの銃身が大きく跳ねあがった。  当然、発射した弾丸はあさっての方向に飛んで行き、モンスターにはかすりもしていない。 「ってぇー」  恭介は、呟く。  ストックを当てていた肩の部分が、ひどく痛んだ。  おそらくは、打ち身。  その程度で済んでよかった、ということでもある。  痣になっているかも知れない。  構えが、安定していないからだな。  恭介は一人で、そう判断する。  まあ、いい。  続けよう。  再び恭介は、アンチマテリアルライフルを構える。  超大型モンスターは、正面、つまり恭介の方に向けて、大きく口を開いていた。  彼我の距離は、まだ五十メートル以上ある。  なにごと?  モンスターの意図を疑問に思いつつ、恭介は再度、引き金を引く。  ストックを押しあてている肩の部分に、馬にでも蹴られたかのような大きな衝撃。  かろうじて銃身が跳ねるのを押さえつけることに成功したのか、モンスターの口の中に着弾。  超大型モンスターは、大きく首をのけぞらせた。  と、同時に、上を向いた口から長大な火炎が伸びる。  ……あ、あっぶねえ。  ブレス、だよなあ、あれ。  もしも口の中に着弾していなかったら、あの炎はこちらまで届いたかも知れない。

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