Ogaki Mini Maker Faire 2018を終えて
12月1日・2日に開催されたOgaki Mini Maker Faire 2018(以下、OMMF2018)が無事に終了しました。
これまで私は主に写真を撮る側として活動していましたが、撮影に使用している機材そのものも作品の一部だと考えていました。さらに、夏に開催されたMaker Faire Tokyoの影響を大きく受けたこと、そして尊敬する自作カメラの師匠であるからあげさんの紹介があったこともあり、意を決して今回初めて展示に挑戦してみました。ちなみに、からあげさんには会期中も多大なサポートをいただきました。この場を借りて、改めてお礼申し上げます。
さて、結論から言うと、OMMF2018は非常に素晴らしいイベントでした。今回は、このイベントで受けた(良い意味での)カルチャーショックと、今後の展望について書き記してみたいと思います。
OMMF2018に出して良かった点、素晴らしかった点、カルチャーショックを受けた点
まず、「Maker Faire」とは何か。ここでは、主催者である小林様の言葉をお借りしてご説明したいと思います。
結果的には「ものづくりの発表会」ではあるのですが、その多彩さがこのイベントの魅力です。主催者のツイートにもあるように、分野や表現方法が非常に幅広く、まるで写真展のように「壁面に写真が展示されている」といった予想は全く通じません。まさにカオスともいえるイベントです。
そんな中で私も、写真そのものではなく、自作の撮影機材や展示物(Blightroom)を出展しました。
これまで写真展ばかりに出展してきた私にとって、Maker Faireは出展前にはまさに「魔窟」のように思える場所でした。しかし、OMMF2018に出展してみて、自分の価値観が大きく変わったと実感しています。その中で特に印象的だったことをご紹介します。
①出展料が無料
物販がない限り、出展料が無料。これが一番のカルチャーショックでした。写真展の場合、百人以上が集まる展示となれば、数万円の出展料を支払うのが当たり前。それが無料だなんて驚きです!
さらに、懇親会の費用も立食形式で2000円と非常に良心的。しかも、よくあるような【途中で料理やお酒がなくなる】ということも一切なく、常に十分な料理が提供されている状態でした…。こんなの、まさに神対応ではないでしょうか。
これには、運営の渉外活動の素晴らしさがあるのかもしれません。また、Makerの方々は自分の作品に多大な労力や金額を注ぎ込むため、出展料まで取るのは過剰と考えられているのかもしれません(もちろん、写真制作も時間や手間がかかるものですが)。
②展示に対する対応が素晴らしい
これもひとえにスタッフの皆様のおかげです。出展者には電気や電波を駆使する方々が多く、さらには大掛かりな展示ではバスを持ち込む方もいるほど。そんな多様で大変そうな環境を見事に整理し、円滑に運営してくださいました。
さらに、展示に関するTwitterやホームページでの情報発信も非常に積極的でした。しっかりと機能する告知のおかげで、「見に行きたい!」と思わせる魅力的な宣伝が随所にありました。また、ライブや宣伝タイムといった、出展者が「展示物を見てほしい!」という想いを伝える場もたくさん用意されており、出展者にとって非常に心強い環境が整えられていました。
スタッフの皆様、本当にありがとうございました。
③【作品】をしっかり見てもらえた
これまでにも写真展で自作の機材を展示したことはありました。しかしそのたびに、機材だけを作っている人だと思われたり、機材の話をすると「写真は機材じゃない」とお叱りを受けることが多かったのです。なぜだ?写真は機材で撮るものだろう?「これじゃないと撮れない」と思い、その機材を作り上げる過程を含めて私の作品であるはずなのに!(まあ、写真展なので仕方ないのかもしれませんが……)
しかし、OMMFは違いました。機材をしっかり見てもらえただけでなく、技術的な会話も成立しました。そしてそれだけではなく、写真もたくさんの方に見てもらえたのです。むしろ、今まで参加したどの写真展よりも多くの人に写真を見てもらえたかもしれません。しかも、写真に興味がない人や老若男女問わず幅広い方々に伝わったと感じました。これは通常の写真展では考えられない、非常に貴重な体験でした。
この理由の一つは、OMMFの展示環境にあると思います。写真展で100人以上が集まる展示の場合、パーテーションを多く並べて通路が狭くなり、立ち止まってじっくり見てもらいにくい環境が出来上がってしまうことが多いのです。むしろ、そんな展示ばかりでした。それに比べ、OMMFはスペースがしっかり確保され、【展示物を見るための体制作り】がなされていました。
これは先に書いたスタッフの対応とも重なる部分がありますが、ただ人数を増やすことに注力している展示とは大きく異なり、出展者として「見てもらう」という目的をしっかりサポートしていただける環境でした。見やすい展示であるほど、作品もしっかりと見てもらえる。この配慮がどれだけありがたいことか。出展者として本当に嬉しかったです。
④出展者がみんな別方向にカオス
確かにジャンル分けとしては、音楽、ロボット、カメラ……といった分類があります。しかし、それぞれの分野に尖った人たちがいるため、見ていて飽きることがありません。また、前回まで出展していた人たちも確実に進化を遂げており、変化点が分かりやすいので話が弾むことも多いです。
ステレオタイプな考え方で作品作りをしている人が少ないからか、作品から作者自身の生き様が強く感じられるものが多いのも印象的でした。そういう意味では、Maker Faireは極めてアート性の高いイベントなのかもしれません。
少し話が脱線しますが、上の写真は出展者「ゆるつく」サークルのメンバーとコラボして撮らせてもらったものです。特に光るメガネのアイデアが秀逸で、とても印象的でした。
次回への反省点と意気込み
まず反省点として、もっと説明を紙にまとめて、誰にでも分かりやすい内容にするべきだったと感じました。予想以上に興味を持ってくださる方が多く、延々と説明し続けた結果、今でも喉が痛いくらいです(笑)。
また、写真ももっと用意すれば良かったと思います。最初は「機材しか見てもらえないのでは?」と思っていましたが、スリットスキャンの写真集を多くの方に見ていただけたことで、それぞれの機材で撮影した写真をまとめたブックや作例集を用意しておけば、さらに楽しんでいただけたのではないかと感じました。
さらに、他にも展示したかった物がいくつかありましたが、スペースや時間の関係で断念しました。このあたりは、次回以降の展示で工夫して改善していきたいと思っています。
一方で、自作カメラの出展が思った以上に少なかったことに衝撃を受けました。音楽では自作で新しい音を追求する人たちが多い一方で、写真分野ではそのような活動がまだ少ないと感じます。これは、まだまだ新しい表現の可能性が広がっている証拠でもあると考えています。
ここから一歩ずつでも良いから、新しい波を作り出したいと思っています。写真業界の常識を少しずつ変えていきたい。みんなで新しい可能性を切り開けたら、それほど嬉しいことはありません。
話を脱線しますが、上の写真は、今回特に影響を受けた出展者である【世紀マ3】さんのゲームボーイ(の一部)と、【Kaseo】さんのピカルミン(の一部)です。
おわりに
最後に、再び主催者である小林様の言葉を借りて、この文章を締めたいと思います。
サブタイトルの「つくることからはじめよう。もの/あそび/ぶんか」。
この言葉通り、さまざまな作り手から影響を受けて、新しい【なにか】が生まれていく――まさにそれを体現したようなイベントでした。そして、その新しい何かが、次のイノベーションにつながる。「ものづくり」の本質を感じられる素晴らしい体験でした。
本当に出展してよかったです。予定では再来年に再び大垣で開催されるでしょうし、来年には東京で日本最大規模のMaker Faireも行われるでしょう。今後も機会があれば、これまで以上に「影響を与え、影響を受ける」展示を実現したいと考えています。
最後になりますが、一緒に出展した皆様、精一杯対応してくださったスタッフの皆様、そしてご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました!
また大垣でお会いできる日を楽しみにしています。