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会社員の年収と「嫁ブロック」について

採用面談をしていて思ったことなどを少し。

弊社のような極めて小さな会社の場合、言わずもがな一番苦労するのは人の採用である。最近の私の主な仕事はもっぱら採用絡みだ。ありがたいことに応募はたくさんあるのだけど、なかなかホイホイと人は採れない。

決して「いい人がいない」というわけではなく、いい人がいてもタイミングが合わなかったり、条件が折り合わなかったりで、こちらからお見送りすることもあれば、先方からお断りされることもある。

お見送り&お断りで一番多いのは、年収レンジが合わないケースだ。そして噂には聞いていたが「嫁ブロック」も存在する。最初は嫁を盾にとった年収交渉なのかなと思っていたのだが、本当に嫁が条件を一歩も譲らなくて泣きそうになっている人もいるのだ。

会社員の年収はスキル・経験だけでは決まらない

私自身も嫁の立場なので、夫に少しでもたくさん稼いできてもらいたいという気持ちは理解できる。ましてや自分が子育てなどで思うように働けなかったりすれば、夫の収入がほんの少し下がっても困るだろう。

だから、基本的に夫の転職時に「現年収維持(あわよくばアップ)」を希望するのは、家庭を守る主婦としては当然の心理だと思う。

ただ、その「現年収」がたまに市場相場より異様に高いケースがある。その人のスキルや経験に応じた年収というよりは、所属企業の年収レンジが高いというだけで高給取りになってしまったような場合だ。

たとえば少し前のソシャゲ業界に高給で引き抜かれた人や外資系企業を経た人などがこれに該当する。「人などが」と、他人ごとのように言っているが、私と夫はまさにこれに該当する”当事者”でもある。

高すぎる年収から生まれる不幸

実際に自分と夫の給料は、転職を経て大きく上がった。二人でいっぺんに外資とソシャゲ会社に転職したときは、世帯収入がそれまでの倍以上になった。

いったん年収が上がると、最初のうちは「うわー、ラッキー」と思うのだが、だんだんそれが当たり前になっていき、生活レベルもそれに合わせてあがっていく。そうすると、なかなか元のような質素な生活に戻れなくなる。

ところが、給料の高い仕事というのは、なぜかなかなか続かないのだ

私の周囲を見ていても、外資系やソシャゲ会社で高給を貰っていた人が長く安定的に勤めているというケースは極めて稀で、大抵の人は数年で転職することになる。リストラされたり、体を壊してしまったりする人も多い。

そのときに「現年収」に執着するとどうなるか。

「今までとは違った環境に身を置きたい」と思って転職を考えているのに、結局のところ今の環境と大して変わらないようなところしか選択肢がなくなってしまうのだ。

こんな不幸なことがあるだろうか。

年収レンジの上限をもらうとどうなるか

一方で、雇用する側としては、ときどきこういった素晴らしい経歴の人を高給で雇いたくなることもある。もちろんそういう人を雇わなければならないフェーズもあるので一概にそれがダメとは思わないが、おそらく弊社のような小さなスタートアップが無理して高給を払っても、うまくいかないと思う。

というのも、年収レンジが「〜800万円」の会社と「〜1500万円」の会社では、年収800万円の人に対する期待値がぜんぜん違うからだ。

たとえば平均年収が1,000万円くらいの会社の年収800万円は、決してスター社員の年収ではない。むしろあまり期待されていない部類に入るだろう。ところが、年収800万円が天井の会社では、800万円の人は間違いなくスター社員でなくてはならない。エンジニアならただコードが書けるだけではなく、統率力や発信力なども求められるレベルだし、営業マンなら常に成績はトップでなければならないだろう。

そのように考えると、年収レンジが高い会社でぼちぼち貰っていましたという人が、小さな会社で給料を下げずに期待値以上の働きが出来る可能性はあまり高くないのではないだろうか。

”嫁ブロック”を解除するには

話は元に戻るが、”嫁ブロック”である。

実は私、この”嫁ブロック”というのは、単なる対話不足、説明不足のケースが一番多いのではないかと思っている。というのも、うちの夫が私に転職先について説明するときも、まったくといっていいほど「なぜその会社に行きたいのか」「なぜ年収が下がっても行くのか」という話をしないからだ。

そのくせ私が「大丈夫なの?」と言うと「嫁ブロックだ」と言う。いやいや、私はブロックしたつもりは毛頭ない。ただ、「そんなんで大丈夫なのか?」と思ったからその不安を口にしただけだ。

嫁を代表して言わせてもらうならば、まず家族にも負担を強いるような選択をするのであれば、その道を選択しても長期的に見れば大丈夫だということをきちんと説明してもらいたい。そこに納得がいけば、8割くらいの嫁はブツブツ言いながらも反対はしないのではないかと思う。

ちなみに、普段は比較的物分かりの良い嫁なのにどれだけ理路整然と説明しても嫁ブロックが解除されない場合は、その意見も一考の価値があるのかもしれない。というのも、女性は自分が絡む損得勘定に対しては恐ろしいほどの嗅覚を持っているからだ。おそらく本能的なものだろう。

…あ、なんかちょっとだけ書くつもりが長くなってしまった。仕事に戻ります。

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えとみほ
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