ゲーム大会・景表法・JeSU: 論点はどこにあるのか、包括的に整理する
1. はじめに
今から1ヶ月ほど前、「ゲームと金」座談会で、日本eスポーツ連合(以下、JeSU)の実際の意向が初めて表出し、このたびそれが文字起こしされました。実にめでたい。そこで、いちど賞金制ゲーム大会に関わる法律問題と、JeSUの立ち位置を整理してみたいと思います。
まずは座談会の文字起こしから。こちらです。
非常に分量がありますが、今回重要なのは、2ページ目だけです。それでも多いので、都度参照してくだされば十分だと思います。いちおう、当記事中で浜村弘一氏の見解を参照する際は、必要に応じて上記の文字起こしから発言を引用します。もちろん、興味がおありの方はすべて読まれたほうが理解が進むでしょう。
ちなみにこの文字起こしは、ぼくも中途半端に試みたのち、挫折しました。3時間もあるんだもの。それをぜんぶ文字起こしした電ファミのナカニシさんはマジでえらく、多方面から拝みが発生すると予想されます。
ではやっていきましょう。
前段として、賞金制ゲーム大会というものについて、景品表示法上、許されるものとそうでないものを区別します。後段では、その中でJeSUがどのような役割を果たすのか考察していきます。そして結びに、JeSUに対する様々な懸念や批判について、外部から分かる範囲で整理します。
2. 賞金制ゲーム大会と、景品表示法
初めに、法律について踏まえておきましょう。景品表示法ならびに消費者庁が言っているのは、つまるところ「販促はダメだよ!」ということです。この「販促」という観点から、問題領域を区切って整理していきたいと思います。
まず、賞金制ゲーム大会という領域があります。一口に大会と言っても様々な形態があり、混在していてハッキリしたところのない、グレーの領域です。法的に問題がないと示せる領域から、緑に塗っていくことにしましょう。
第一に、基本無料(F2P: Free to Play)のゲームの大会、という領域(A)を緑で塗ることができます。
国内では、Riot Gamesが主催する『League of Legends』の「LJL」や、Cygamesの主催する『Shadowverse』の「RAGE」などが該当します。無論、これらと課金システム上近しい『Dota2』『Hearthstone』『クラッシュ・ロワイヤル』などでの賞金制ゲーム大会も、この領域(A)と認められるでしょう。(元祖の作品を後に並べていることをお許し下さい)
領域(A)のケースでは、ゲーム自体は無料であり、誰でもプレイできるので「販促」にはならない、という捉え方がなされます。このことは、木曽崇氏による、消費者庁に対しての法令適用確認によって示されています。
参考資料(1): カジノ合法化に関する100の質問 : 総括:賞金制ゲーム大会を巡る法的論争
厳密には、F2PであってもP2W(Pay to Win: 課金でゲーム上の優位を得られる)であってはならないのですが、これについては後ほどまた詳しく述べたいと思います。
第二に、有料販売作品であるが第三者が賞金を拠出するゲーム大会、という領域(B)を緑で塗ることができます。日清食品とレッドブル・ジャパンの協賛による「EVO Japan 2018」は記憶に新しいところでしょう。また、先ほど例示したCygamesの「RAGE」は自社以外のゲームも扱っており、それらの部門の大会もまた、この領域のものと見なせます。
領域(B)のケースでは、お金を出すのが第三者なので、もちろん「販促」とは見なされません。景表法での専門的な言い方をすると「取引付随性がない」ということになります。この論拠もまた、資料(1)に示されています。
ここまでが資料(1)に端を発した景表法問題で、ここ1年以上ずっと取り沙汰されていた議論です。有料販売のゲームにおいて、販売元がお金を出す賞金制ゲーム大会はアブい。整理してみると簡単な話です。
さて、実はもう一段さらに塗ることができます。最近、言葉として取り上げられるようになってきた「労務報酬」に係る部分です。
第三に、販売作品であり販売元が賞金を拠出するが、招待制のゲーム大会、という領域(C)を緑で塗ることができます。この領域では、大会を仕事として扱うことができ、そのようにすれば「販促」とは見なされません。
そして最後に、販売作品であり販売元が賞金を拠出する、自由参加のゲーム大会、という領域(D)があります。この領域はもはや曖昧なグレーではなく、完全に「販促」と見なされるため、赤で塗ることができます。
招待制か自由参加かで、ハッキリ明暗が分かれるのはなぜでしょう。この辺から話が複雑になってくるので、詳しく説明していきます。
3. 賞金制ゲーム大会と、労務報酬
まず、領域(C)の、招待制の大会というものについて考えてみます。
招待制の大会とは、文字通り、参加するプレイヤーを主催者が招待する大会です。この形態の大会は、ショウとして、予め決められたプレイヤーを一種のタレントとして招致する催しとして企画することができます。大会側が出場(出演)するプレイヤーやチームを任意に決定し、かつ予選枠もない場合は、この領域(C)の大会として認められる公算が大きいでしょう。
具体例として、例えば東京ゲームショウでカプコンが、4人のプレイヤーを招待して『ストリートファイターV』のトーナメントを開催し、順位に応じて賞金を出すとします。これは成立します。なぜならば、「ハイレベルなプレイの見世物」を企画し、それを遂行できるスキル(まさしくタレント)を持った人材を雇い入れる、という形態を取っているためです。キャスターや配信者を呼んでイベントを行うのと同じで、お仕事の対価として、また成果に応じた差のある報酬を、賞金として出すことができます。
普通は、こういうのは「エキシビジョンマッチ」と呼ばれると思いますが、ではこれが大会かそうでないかと言えば大会になるでしょうし、もっと規模を拡張すれば、さらに大会っぽくなるはずです。(あまり広げすぎると自由参加と区別がつきにくくなり、難しいかもしれませんが)
次に、領域(D)の、自由参加の大会というものについて考えてみましょう。
まずは明確にアウトな例を示します。同じく『ストリートファイターV』で、128名までの参加を一般に募るオンライン大会を企画し、上位8名までに賞金を出すとします。これは確実に販促と見なされます。資料(1)で示されている事例です。
それでは、上位8名が決定した時点でそれぞれと労務契約を結んでみたら、どうでしょうか。これは賞金じゃないんですよ、労務報酬なんです。お仕事ということにしたら、いいんじゃないでしょうか。はい、ダメです。
なぜなら、自由参加という形態で、成績に応じて金銭を供与するとした時点で、それは有料ゲームの販促と見なされてしまうからです。このケースでは、催しの形態そのものが販促と見なされており、その判断において、労務契約の有無はまったく関係がないことに留意する必要があります。
こうした法的解釈については、Twitterにて山本一郎氏にご教示願えました。スレッドを開いてご覧いただくと、話の流れが分かりやすいかと思います。
参考資料(2): https://twitter.com/kirik/status/967716926771392513
ここで一旦、言葉の整理が必要でしょう。「労務報酬」という言葉ばかりが先行していますが、これは「賞金」と排他の概念ではありません。賞金とは「成績に応じて差のあるお金を供与すること」という概念にすぎず、これこれこういうものだ、という定義は(景品表示法上は)ありません。
かみ砕いて言えば、もしあなたがeスポーツプレイヤーであり、何かの大会みたいなものに出て優勝し、参加者の中でいちばん大きな額のお金をもらえたとしたら、それが労務報酬であろうとプレゼントであろうと、あなたにとってそれは「優勝賞金」ですよね。それが賞金という概念です。
領域(A)(B)では、「ただ単にお金をあげる」ことで、賞金を与えています。領域(C)では、「労務報酬」として、賞金を与えています。なんにせよ、販促の結果として供与されるもの(「景品類」と呼ばれます)と見なされたらダメで、そうでなければセーフです。
さて、例え話をすこし複雑にしていきましょう。
それならば、先ほどのオンライン大会は上位8名を決めるだけで終了とし、その後、その8名を招待した賞金制オフライン大会を「先のオンライン大会と無関係という建前で」開くとします。どうでしょう。三店方式みたいですね。キナ臭くなってきました。
この場合、少なくとも現行法上では、明確なことは言えないと思われます。大会を個別に見ればセーフですが、総体として見た場合、実態は販促であると見なされる可能性も低くないはずです。どうなるかは、実際の運用を見てから消費者庁が判断することになるでしょう。
座談会で浜村弘一氏が「法の抜け道」と表現していたのは、特にこのような事例のことだと思われます。
浜村氏:
労務契約を結べば、それは景品表示表と関係ないんですっていう話は、通らないと思ってるんですよ。ゲームメーカーにしてみれば。
それはあくまで法の抜け道しかならないから、いやいやそれは景品表示法だろうと言われてしまう。メーカーにしてみれば、そのリスクはとても怖いわけですよ。だから大会開けない。
氏もこう述べている通り、こうした労務契約の濫用は、非常にリスキーだと考えられています。見えている地雷を踏み行く販売元はいません。ですので、事実上、この領域(D)の大会は「開けない」と言えます。
以上が、現状でできることと、できないことの区分です。今できないのは、一般参加可能で、販売元が賞金を拠出する、有料ゲームの大会です。そうではない緑の領域の賞金制ゲーム大会は、昔からもこれからも、問題なく開催することができます。
4. 賞金制ゲーム大会と、JeSU
次に後段として、JeSUの役割について考えていきます。JeSUの目的とは、この領域(D)を緑に塗り、いかなる形態の賞金制ゲーム大会も、問題なく開催できるようにすること、のはずです。実際そのように自称しているし、そうでなければ存在意義がありません。この点を踏まえて進みましょう。
では、JeSUはどのようなスキームで領域(D)の大会を開催可能にするつもりなのでしょうか。ここでようやく「プロライセンス」が関わってきます。まずは、いちど領域(D)のオンライン大会の例に立ち戻りましょう。
領域(D)においては、労務契約をいかに駆使しようと、賞金制ゲーム大会はアウトないしリスキーであると述べました。オンライン大会の例で、上位8名と労務契約を結んでも無駄だと述べました。
なぜここでは、領域(C)のスキームが適用できないのでしょうか。先ほどは三店方式などと揶揄した例ですが、実はこれが「オンライン大会は採用試験のようなもので、ハイレベルなオフラインのショウを企図して行ったものだ」ということだったら、どうでしょう。
重要なのは、客観的に見てどうであるか、という点であると考えられます。三店方式だろうが採用試験だろうが、外部(消費者庁)から見た場合、それは販促大会とまったく同一の形態をしているようにしか見えないわけです。労務契約というものを持ち出したとしても、実質的に「賞金を労務契約と言い換えただけ」と見られてしまいます。
また、どれだけ主催者が大会や契約の正当性を主張したとしても、その内容の客観的な根拠や、第三者的な証明がありません。「そう自称しているだけ」であり、真実を語っているのか、虚偽を騙っているのか、消費者庁からは区別することができないのです。
そう、根拠……証明……そろそろ言いたいことが分かってきたと思います。
その根拠、「この人はプロであり、雇うに値する人材なのだ」と、第三者が外部から保証することが「プロライセンス」の役割であろうと考えられます。「大会とは関係なく、プロだから労務契約を結ぶのだ」という理論です。
浜村氏:
プロライセンスなら、わかりやすくその人が高度のパフォーマンスを出せるっていうことを言えるので、報酬として払う整理がしっかりできます、という言い方を(消費者庁から)されたんですね。
JeSUはこのスキームを用いることによって、領域(D)においても、労務報酬による賞金を供与できるようにするのだと考えられます。
したがって、資料(2)で山本一郎氏も認めている通り、これがJeSUの法的な存在意義であると言えます。JeSUが介在することによって開催が可能になる、賞金制ゲーム大会の領域が、間違いなく存在するということです。
また、こうした消費者庁との相談の事実や真偽を怪しむ声も見られますが、官庁を相手にしてそんなバレたら一発で死ぬようなウソをつくということは、正直とても考えにくく、ひとまず「消費者庁と相談してオッケーを貰った」という点に関しては信用してよいと思われます。
以上が、JeSUの役割です。現行法上では難しい領域(D)が確かにあり、JeSUはそこを緑に塗れる、ということを示しました。
浜村氏:
いまも賞金がつく大会もありますし、それはそれでぜんぜん問題ないと思ってるんですけども、さらにIPホルダーがお金を出して大会をやることも可能にしたいという中で出来たのが、今回のライセンスなんですよ。
なお、先ごろ消費者庁から「JeSUがなくてもプロ・アマ問わず大会の賞金を支払うことができる」と読めるコメントが出されて話題になっておりますが、これはたぶん誤読です。続く項目にて詳しく述べます。
5. JeSUに対する、その他の懸念や批判
続いて、JeSUに対しての様々な懸念や批判などを、外部から分かる範囲で、懸念すべき点とそうでない点に整理していきたいと思います。
① JeSUがなくても、プロ・アマ問わず大会で賞金を出すことができる
参考資料(3): カジノ合法化に関する100の質問 : JeSUのオワコン化が止まらない:もはやファミ通すら擁護できず
この見解は、先ごろ木曽崇氏から提示されたもので、消費者庁表示対策課長の大元慎二氏のコメントに基づいています。まず、どのようなコメントが提出されたのか見てみましょう。
消費者庁表示対策課長 大元慎二氏:
esports大会出場者が優れた技術によって観客を魅了する仕事をし、その報酬として賞金を得る場合、その賞金はプロ・アマを問わず、景表法で言う"景品類"には該当しない。
これをもって木曽崇氏は、JeSUの主張との食い違いを指摘しておられます。しかし、ぼくはちょっと疑問に思いました。これはJeSU云々以前に、資料(1)で示されている、消費者庁自身の見解と矛盾しているからです。
消費者庁が内部矛盾した見解を述べてしまった、という間の抜けたオチは、ひとまず考えないことにしましょう。ここでの注目点は「優れた技術によって観客を魅了する仕事をし、その報酬として賞金を得る」という部分です。
わざわざ「観客を魅了する仕事」という言葉を用いていることから、これは領域(C)のことを述べているように、ぼくには読み取れます。それならば確かにプロもアマもなく、ライセンスも必要なく、見解に矛盾も生じません。これが正しい理解ではないでしょうか。
よって、領域(D)を開拓するJeSUの存在意義を、このコメントを論拠として疑っても、それは議論として噛み合いません。
また、記事中で「JeSUに依拠しないプロ制度」の例として挙げられている『Shadowverse』と『クラッシュ・ロワイヤル』ですが、これらは前述の通り領域(A)の話であり、やはりJeSU不要論には繋がらないように思われます。(吉本はよくわかりませんが、ぜんぜん文脈が違う気がします)
② JeSUによるソシャゲのタイトル認定は、課金誘導につながる
参考資料(4): 日本eスポーツ連合(JeSU)、高額賞金問題に関するまとめ(木曽崇) - 個人 - Yahoo!ニュース
同じく木曽崇氏による提言で、これは個人的にぼくも懸念しています。F2Pのソシャゲは領域(A)に当たり、JeSUを通さずとも賞金制大会を開けるため、直接は関係のない問題にも思えます。しかし、話はそう簡単ではありません。
当記事の最初の方で、P2Wの話をしたことを覚えていますでしょうか。F2Pのゲームの賞金制大会は領域(A)と認められますが、消費者庁の表現によれば「有料プレイヤーが有利になる要素」があってはいけないわけです。当記事でP2Wと呼んでいるのは、便宜上このことを指しています。しかし、何をもってP2Wとするかは非常に曖昧です。
資料(1)で許可されている例の場合、課金によってゲーム上の性能差を得ることはないが、スタミナを買うことができる、とあります。「時間を買う」と言い換えることもできるでしょう。厳密には、これも有料プレイヤーが有利になる要素だと思いますが、少なくとも消費者庁にはP2Wと見なされないことが分かります。
現状、国内で領域(A)として認められている実例からも考えてみましょう。『League of Legends』では衣装(スキン)が課金対象である他、使用キャラクターを購入、またはゲーム内通貨でアンロックする必要があります。『Hearthstone』を始めとするCCG(Collectable Card Game)もカードパックが同様の扱いです。ゲーム内通貨というのは、ゲームを遊べばそれだけ貰えるものなので、これらのゲームにも時間を買う要素があると言えます。一方で、直接的に性能を買う要素はないため、資料(1)の例と同様に、P2Wではないと見なされているのだと思われます。
また、『クラッシュ・ロワイヤル』では、実際に無課金のプレイヤーが国内大会で優勝している事例もあり、これらのゲームがP2Wではない傍証を与えていると言えるでしょう。
参考資料(5): 【ランキングの日】無課金フチさんが優勝するなんて夢があるじゃない [ファミ通App]
しかし、時間を買うと言っても、程度問題はあるはずです。もし時間買いに強く依存するゲームがあったとして、それがP2Wと見なされる可能性はあるのではないかと思います。
そして、ソシャゲ一般で見れば、もっとずっとP2Wに寄ったゲームは枚挙に暇がなく、JeSU公認タイトルの『パズドラ』や、『モンスターストライク』も同様です。ぼくはこれらのゲームにはあまり詳しくないのですが、課金通貨、いわゆる「石」がないと手に入らないキャラクターとかが、いたりするのではないでしょうか。「石」は必ずしも買わなければ手に入らないわけではありませんが、それらは販売元が任意に配布しているもので、時間と等価であるとは見なせないはずです。よって、これらのゲームは、もしかすると領域(A)では通らない可能性があります。(もちろん通る可能性もあります)
いずれにせよ「F2PだけどP2Wと見なされるゲーム」があったとしても、JeSUを通せば販売元が賞金制大会を開けることになります。そして、これが「賞金で釣った顧客誘引・課金誘導」に当たるとするのが木曽崇氏の指摘するところであり、妥当性のある懸念だと思います。
一方で、こうしたP2W問題の責任はJeSUにあるのか、という点については、疑問に思うところもあります。これはゲーム大会の問題というより、以前から議論され続けてきているガチャ問題の延長にあるように思われるからです。
このような可能性が本当に問題であるなら、動くべきは消費者庁でしょう。個人的には、こうした行政の動きのほうに注視していきたいと考えています。諸外国でも「ルートボックス問題」などと呼ばれるガチャ規制の議論が進んでおり、日本を含め、今後より先鋭的な議論が展開される可能性があります。
③ JeSU非公認の賞金制大会に出場すると、罰せられることがある
参考資料(6): 認定プロゲーマーは「賞金付きの非公認大会」に出ると処分?新団体に未公表の規約について聞いた
これについては、心配ないと思います。だいたい回答が出揃っているので、引用主体でいきます。上記資料(6)の時点で、大部分の疑念については回答が出ていますので、そちらにも目を通していただけるとよいと思います。
まず領域(D)以外の(JeSUとして管轄しない)大会への出場について、これは座談会で肯定的な回答があり、また判断の主体はJeSUではなく販売元の側にあることが示されています。
アカホシ氏:
JeSUが認定している賞金付きの大会以外の大会に出た場合に、なにか処罰というか(中略)そこに出ていいんですかね
浜村氏:
結論から言うと、ぜんぜん問題ないです。あそこでそういう文言を入れていたのは(中略:メーカー側が承認しない大会について)そういう大会は出ないでほしいっていう風に思われてるだけで、実に例外的なパターンだと思っています。
また、資料(6)中では「レギュレーション」というものについて疑義が提示されていますが、これについても座談会で触れられています。
浜村氏:
これあくまで、連合が公認大会のレギュレーションの中でやっていく大会だけなので、それ以外については全然別な話なんですけども
いい感じの引用箇所がなかったのですが、要するにJeSUのレギュレーションとは、領域(D)においてJeSUの賞金供与スキームを適用できるように、細かい点を調整するためにあり、他領域の大会については関係ないもののようです。
JeSL(日本eスポーツリーグ)のような、大会運営を主軸に据えた組織とは異なり、JeSUは大会を主導したり主催する立場にはなく、あくまでスキームを提供する中間組織であると捉えるのが妥当です。そのため、大会の内容や開催を過度に不安視しなくてもよいと思います。
JeSU自身が言ったことを信用するのか、言った通りにするとは限らない、というツッコミもないではないと思いますが、基本的にJeSUが障害になって損をするのは販売元なので、それはまず「できない」でしょう。
また、販売元が第三者大会を認めないという方針を取り、JeSU経由で厳しく管理するというパターンもあるかもしれませんが、その場合は販売元に対して反発するのが適正な反応のはずです。
以上から、JeSUの規約が、ライセンス所持者の大会参加に際して障害となる可能性は、まずないと思われます。
④ 公認タイトルの競合には、適切に対応できるのか
これはぼく個人が勝手に疑義を抱いている問題で、今のところ明確な回答や反例はありません。
どういうことかというと、例えばコナミの『ウイニングイレブン 2018』が現状でJeSUの公認タイトルとなっています。では、ここで完全な競合タイトルである、EAスポーツの『FIFA 18』から認定の申請があった場合に、滞りなく審査ができるのでしょうか。
これについて、JeSUは公平性を明らかにすべきであると考えます。「既存の公認タイトルが新たなタイトルの審査に影響を与えることない」といった類の声明が出されるのが望ましいと思います。
⑤ プロライセンスの取得が、副業に当たるのではないか
これは正直、知らんがなと思うところがあり、というのも「副業」は明確に定義の決まったものではないからです。「個別に会社へ問い合わせて下さい」という浜村弘一氏の回答は極めて妥当で、それこそ領域(A)の大会とかに出て賞金を貰うことも、会社によっては副業と見なされる場合があるでしょう。
ただ、強いて言えば、ライセンスが労務契約を伴うものである以上、より「副業として認められやすくなる」ことは否定できないはずです。
しかしながら、労務契約が問題であるなら、そもそもライセンスを取らなくても領域(C)の大会には出られないことになります。企業からのスポンサード等も断らざるを得ないでしょう。
すると、副業化を問題視している人というのは、スポンサードも不要だし、招待制の大会には出られなくても構わないけど、自由参加の大会の賞金だけは欲しい、と主張していることになります。
それはちょっと一貫性がないというか、本当にそんな人いるんでしょうか。どうなんでしょう。
⑥ オリンピックのなんか
これは個人的にぜんぜん興味がなく、ずいぶん記事も長くなってきたので、あんまりやる気がないです、すみません。JeSUは発足したばかりだし、現時点でJOC加盟とかそういうのが達成できてなくても仕方ないんじゃない、と思うくらいです。誇大広告ではなく、ちゃんと話を進める気があるならいいんじゃないでしょうか。
というわけで、興味のある方は独自に調べていただければと思います。
6. おわりに
ここまでの論旨をまとめます。
まず、賞金制ゲーム大会というものについて、JeSUによって拓かれる領域が確かにある、という結論を示しました。よって今後焦点となるのは、そもそもその領域を開拓するべきなのか、しないほうが業界として健全ではないのか、といった議論になると思われます。
また、それとは別に、JeSUの体制や公平性について疑義の残る部分もあり、それらは今後なるべく早期に解消されることが望ましいと考えます。
いずれにしても、今後はゲーム大会やJeSUというものについて、今回ここで整理された内容を踏まえた、より進んだ議論がなされることを望みます。
以上です。ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
x. 免責事項
法律周りのことについてはがんばって調べたつもりですが、なにぶん門外漢ですので、間違っている箇所もあるかもしれません。あれば、遠慮なくご指摘いただければと思います。
それと「有料販売」という言葉は畳語なのですが、分かりやすさを優先し、敢えてそのように記しています。日本語警察の方、許してください。
いらすとやさんのイラストには、大変お世話になりました。初めて利用したんですが、実に使いやすかったです、ありがとうございます。
ヘッダ画像は、Soumil KumarさんのCC0のフリー写真を利用させていただきました。カッコイイ画像が見つかってよかった。ありがとうございます。