しなくていいUX
サービス開発において「ユーザーがしたいことをできるようにさせてあげる」という議論は活発だが、いっぽうで「しなくていいことをしないようにさせてあげる」分野はまだまだ発展途上だと思う。なのでここで思っていることを書いてみる。
赤信号に突っ込んで行くバス
ある日、私は近所でバスに乗っていた。
進む道の信号は赤であり、私はてっきりバスは速度を落として止まるだろうと考えた。
ところがバスは速度を落とさずそのまま赤信号に突っ込んで行くのだ。
私は仰天して、
わあ、なんということだ、交差点で車にぶつかってしまう…
そう考えた瞬間、信号が青に変わった。
これが「公共車両優先システム」か...とその時に理解した。
確かに、これならバスの定時性を確保できる。
さらに、道路の利用効率を現実的に考えれば、ただでさえ速度が遅いバスを優先して通すことは、社会の生産性の面でも至極妥当なシステムである。
止まらなくていいものは止まらなくていい。
その例は他にもある。
商品を持って出るだけのコンビニ
例えばコンビニなら、我々は本当はレジに並ぶ必要などない。
客が何も持たない状態で入店し、どの商品を持って店を出たかが分かれば、自動で金額を計算して後日クレジットカードに請求すればよいのだ。
さらに客の年齢や好みのデータなどが得られれば、紐付けして分析し、店舗改善の根拠にできる。
ボタンを押さなくていいエレベーター
例えば毎日使うオフィスのエレベーターなら、我々はボタンを押す必要などない。自分のIDカードが情報を保持していてくれれば、乗った瞬間に自動で13階のランプが点灯してくれるはずだ。
見知らぬ人混みに声をかけて自分の階のボタンを押してもらわなくていい。
冬場にインフルエンザウイルスがいるかもしれないボタンを触る必要もない。
しなくていいことはもっと色々
ユーザーの位置情報がシステムで把握できれば、改札で定期を出す必要もない。計算して自動で課金すれば良い。
自動翻訳システムが発達すれば、高い月謝を払って、子供を幼児英語教室に通わせる必要も無い。
病院会計やカルテなどの記入効率を上げたり、予約システムを改善したりすれば、患者は具合の悪い時に病院で1時間も待たなくていい。
オンライン診療が発達すれば、病院にすら行かなくていい。
身体情報をモニターすれば、死にそうな時に自分で119を押さなくてもいい。
119を押したあとに、這って玄関の鍵を開けに行く必要も無い。
このように、システムで吸収してあげれば、人間がしなくていいことはまだまだある。
これからの労働人口減少社会に対しては、「できるUX」と同時に「しなくていいUX」も、私はさらに考えていきたい。
あらゆる店舗を「レジなし」にするスタートアップが、アマゾンに挑む
https://wired.jp/2018/03/30/aifi-cashier-less-system/