【傍聴メモ】 被告人 田中秀和 (公然わいせつ等)
警告 ※必読
箇条書きでわかりやすく書くので、必ず読んでください。
この記事は、当該事件に係る風説の流布を抑止し、事実ベースで本件について議論する一助になることを期待して公開するものです。決して情報をいたずらに暴露することを目的とはしていません。被害者の個人情報(氏名/住所等)はもちろん、被疑者の個人情報について特定しようとする行為は絶対にやめてください。
特に、前者については例外的に公判においても秘匿する配慮がなされていました。そのため、この記事からは情報を取得できませんし、詮索しても意味がありません。
去年 10 月の報道では伝えられなかった容疑(いわゆる「余罪」)や、公訴事実外の前歴/前科については、原則マスメディアが報じたものに限りこの記事でも取り上げます。ただし、少年法の趣旨に則り、当該時期における前歴については(たとえ存在したとしても)例外なく取り上げません。
この記事は、マスメディアによる報道状況やその他社会情勢を踏まえて適宜更新されることがあります。また、誤謬や指摘がある場合はコメントでお知らせいただければ幸いです(執筆者は法律についての専門的知識がありません)。
この記事の内容を活用したことにより読者に損害が発生したとしても、執筆者はその責を負いません。また、この記事を引用する場合は必ず出典を記載してください(note 公式の機能で URL を共有すれば出典の要件を満たしたものと見なしますが、スクリーンショットを用いる場合は注意してください)。
この記事のうち最後の章「所感」の内容を除いた部分については、すべて執筆者が当該公判を傍聴した際の傍聴メモを元に記述した事実です。この情報をもとにあなたの意見を公表する場合は、論理的に瑕疵のない建設的な議論を期待します。
公判概要
開廷日時 2023-03-15 10:30 ~ 12:00
東京地方裁判所 第 429 法廷
刑事第 3 部 新件(いわゆる「初公判」)
事件番号 令和 4 年 特(わ)第 2523 号
公衆に著しく迷惑を掛ける暴力的不良行為の防止に関する条例違反、公然わいせつ、神奈川県迷惑行為防止条例違反
裁判長裁判官 1 名
被告人 田中秀和
被告人側弁護士 3 名
検察官 1 名
裁判経過
被告人入廷
被告人(田中秀和)が入廷。髪はショートカットで痩せ型。傍聴席に向かって軽く一礼。
人定質問
被告人の氏名/本籍/住所等を確認。
起訴状朗読
起訴→訴因変更→追起訴 の順で経過。この中で検察により摘示された公訴事実は次の通り。
令和 4 年 8 月、被告人は駐輪場で見知らぬ女性に卑わいな言動をはたらきわいせつな行為を求めた
令和 4 年 9 月から常習的に、被告人は鉄道駅において携帯電話を用いてスカート内を撮影した
(追起訴内容)令和 4 年 9 月において、被告人は鉄道車両内でわいせつな行為(単独)に及んだ
黙秘権告知
裁判長から被告人に対し黙秘権について説明。
被告事件に対する陳述
被告人
上記 1 ~ 3 の公訴事実についてすべて認める。
冒頭陳述
被告人側
検察が提示する証拠物件について、一部を除き争わない。
検察官の立証
被害者の母による供述調書
「娘は嫌な経験をしたと思うし、繰り返したくない経験だと思う。私が娘に対して積極的に本件について話すことはないが、娘も本件についての話を意識的に避けていると思う」
被告人による供述調書
「令和 4 年 10 月頃からは仕事のストレスにより、2 週間に 1 回程度盗撮行為に及んでいたと思う」
被告人側の立証
被告人側の状況
依存症治療の専門機関に通院し、依存症対策のプログラムを受講している。
当該機関の専門家による意見
被告人に対し刑罰を課するよりも医学的処置を施す方が、更生を期すにあたって妥当。
証人尋問
被告人の母が証人として入廷。宣誓承認。
被告人側「事件を受けた感想は」
非常にショック。私が見守らないといけないと思った。
被告人側「事件報道後からの経過は」
当時証人は大阪に在住していたが、報道を受けてすぐに被告人の住所地である東京へ移動した。
拘束期間中の面会は 12 回以上。また、当該期間中は被告人の住居において家事を執り行った。
保釈後は被告人の住居(東京)において 2 人で生活し、現在も同居を続けている。
被告人側「被告人にかける言葉はあるか」
被害者を第一に考えてほしい
証人自身も被告人が通所している依存症治療の専門施設に通い、依存症について学んでいる。万が一同じような罪を犯す衝動に駆られたときは、証人の姿勢を思い出してほしい
被告人側「2 人で暮らすようになって変化はあったか」
被告人が就職に伴い上京した後は、証人から被告人に対し積極的に干渉することはなかった。
しかし、2 人で暮らすようになってからは親子間のコミュニケーションの量が増えた。特に、被告人が外出するときは必ず証人に行き先を伝え、かつ帰宅する前には「今から帰る」旨を伝えている。
しばらくは証人も東京に残る予定だが、裁判終結後、相当期間が経過した後は大阪の実家に戻る予定。
被告人側「性犯罪は再犯率が高いとされているが」
証人から被告人に対し積極的に連絡を取る予定。また、帰阪後も施設に引き続き通所し、学習を継続する予定。
検察官「公訴事実外の前歴について」
(この項目はマスメディアによる報道がなされ次第更新する可能性があります)
裁判官「被告人は施設に通所して変化したと思うか」
具体的な話は聞いておらずわからない。
裁判官「証人は、被告人が 2 度と同じ過ちを犯してほしくない考えているか」
その通り。
被告人質問
被告人側弁護士→被告人
公訴事実 1 について(駐輪場におけるわいせつ行為未遂)
事件の経過
被告人が、被害者に対してわいせつな言葉をかけた上で、駐輪場の「少し奥まった場所」に誘導
しかし被害者が応じなかったため、被告人はリュックサックに手を入れ財布を取り出そうとした
すると被害者は拒否してその場を立ち去った
被告人側「どうして奥まった場所に誘導したのか」
人気の少ない場所であれば応じてくれそうと思料したため。
被告人側「強制的に被害者をわいせつな行為に巻き込もうとしたのか」
いいえ。あくまで合意を前提にして行為に及んだ。
被告人側「どうしてこのような行為に及んだと思うか」
被害者の顔や雰囲気が好みであったため。
被告人が前所属会社から独立してから 1 年のタイミングを迎えており、自らのキャパシティを超えた仕事を請け負っておりストレスを抱えていたため。
被告人側「それだと仕事を再開するとまた犯罪を犯すのでは」
そうは思わない。今回身体拘束を受けて自分を見つめ直す機会を得られた。そこで、被害者に対して申し訳ないという気持ちが芽生え、また自らが相手の気持ちを考えない自分本意な考え方をしていたことに気づいた。
被告人側「一般的に見ず知らずの女性に声をかけるにはかなりのハードルがあると思うが」
見ず知らずの女性に対しても、金銭を支払えばわいせつな行為に及べると思っていた。ただし、これを実践に移したのは本件の 1 回のみ。
また、見ず知らずの女性に対して声をかけて遊びに行くこと(いわゆる「ナンパ」/触法行為を伴わない)については経験があるため、特にハードルを感じなかった。
公訴事実 2 について(電車内における盗撮)
被告人側「どうしてこのような行為に及んだのか」
犯罪行為中は「見つかるか、見つからないか」のスリルを感じ、行為後は達成感を感じていたから。
撮影したデータについては他人に見せる目的がなく、完遂したことを確認した後は自らデータを消去していた(当該データについては、警察による復元作業で復元できたため証拠として提出されている)
被告人側「被害者の気持ちは考えたことがあるのか」
当時は「ばれなければ良い」と思っていたが、今考えるとおぞましい、気持ちの悪い行為だと思う。
再犯の可能性について
率直に、またいつか犯罪行為への衝動に駆られることがあると思うが、相手の気持ちを考えれば踏みとどまれる。
また、携帯電話の機能でカメラを無効化し、エスカレーターや階段を利用するときは携帯電話をかばんにしまう対策を実施している。
被害者に対して
大変申し訳なく思い、尊厳を踏みにじったと感じている。
被害者の供述調書を読んで、被害者が男性に対し恐怖心を持ってしまったことを知った。心から申し訳なく思う。
また、被害者が「仮に仕事を再開する場合でも、この事件を忘れないようにしてほしい」と感じていることを知った。
被害者がこのような状況に陥ったことを忘れること無く──(言葉に詰まる)──過ごしていきたい
作曲家としての活動について
再開の目処は立っていない
仕事よりも施設への通所を優先する
最後になにか言いたいことはあるか
被害者に男性への恐怖心を与えた上に、その家族にも苦痛を与えてしまった。大変申し訳ない。
検察官→被告人
公訴事実 1 について(駐輪場におけるわいせつ行為未遂)
検察官「被害者は何歳くらいだと思ったか」
18 歳だと思った(実際には 15 歳)
検察官「被害者を追いかけて、いつもと違う駅で降りたということで間違いないか」
その通り。
検察官「被告人は財布を探すためにリュックサックに手を入れたが、金銭を提示するつもりはあったのか。もしその場合、どの程度金銭を提示する予定だったのか」
10,000 円を提示する予定だった。
検察官「被告人が被害者を駐輪場の奥まった場所に誘導する際に、どのような行動をとったのか」
被害者の移動を促すために、被害者の肩から上腕二頭筋までのうち一部を軽く触れた。
検察官「被害者は『手首を強く引っ張られた』と供述しているが。なぜ両者の意見が食い違うのか」
私の主観では軽く触れただけであるが、被害者の主観において別の態様を感じさせてしまった可能性はあると思う。
(参考:初公判において明示的に示された項目のうち、唯一この点においてのみ被告人弁護士 - 検察官間で争いがある)
検察官「性的要求であれば他の方法で満たせるのでは」
スリルを感じるこの方法が最適だと感じてしまった。
検察官「仕事のストレスを動機の一つに上げているが、そもそも仕事のストレスは突発的なものではなく継続的なものであるはずである。それなのに、なぜ仕事のストレスがこのような衝動的な行動の動機になりえるのか」
追加的に、被害者が魅力的に映ったことが後押ししてしまった。
公訴事実 3 について(鉄道車両における単独わいせつ行為)
事件の経過
深夜の鉄道車両内において、被告人に対し背を向けている女性がいる中で、被告人は単独でわいせつ行為に及んだ。
検察官「女性が振り向いたら大事になると思うが、どのように対処するつもりだったのか」
被告人は自らのリュックサックで陰部を隠していたため、そもそも発覚しないと考えていた
検察官「この様子は撮影したのか。もしその場合、撮影するのは初めてか」
撮影したのは初めて。撮影した理由を特定するのは難しいが、映像を自ら見返すことで、成功体験を追体験しようとしていたかもしれない。
もう絶対にやらないと言えるか
もうやらないという風に──(言葉に詰まる)──自信を持って言うことができる
ただし「犯罪行為をできないようにする」対処も必要だと思う
先述の「カメラ機能の無効化」など
今まで道徳意識の欠如から同じような行為を繰り返してきたが、(涙ぐんで)もう 2 度と同じことをしないように、施設への通所や、犯罪に至った原因の分析と対処を進める。
被害者がいたことを忘れないか。
はい。
裁判官裁判長→被告人
公訴事実 1(駐輪場におけるわいせつ行為未遂)において、被害者を奥まった場所に誘導した態様について整理しておきたい
裁判長「当時被告人は、被害者を奥に連れ込もうと必死でなにか思い違いをしていないか」
少なくとも、部位(被害者主張:手首/被告人主張:肩〜上腕二頭筋)については勘違いしえないはず
強さ(被害者主張:強引/被告人主張:軽い)についても、程度はひどくなかったはず
裁判長「もう少し詳しく教えてほしい。2 人はどのような位置関係だったか」
被害者と被告人は、ほぼ向かい合っていた。
左右どちらの肩〜上腕二頭筋を触れたのかについては記憶がない。
裁判長「生身の人間に(負の)インパクトを与えたことを忘れないようにしてほしい。そして、再犯をしないと誓ってほしい」
はい。
日程確認
次回 2023-04-28 16:00~17:00 東京地裁第 429 法廷
(被害者側の証拠調べ等)
次々回 結審(判決)予定
被告人退廷
被告人が傍聴人に軽く一礼して退廷。
FAQ
不正確な情報の流布を未然に防ぐため、現に発生している、もしくは今後発生しうる疑問に対して事実を摘示して明らかにします。
被害者は未成年ですか?
公訴事実 1(駐輪場におけるわいせつ行為未遂)の被害者は未成年(15歳)です。その他公訴事実については(傍聴人の立場からは)不詳です。
被告人に余罪はありますか?
余罪の定義を「去年 10 月の報道では伝えられなかった容疑」とするならば、あります(当該報道では公訴事実 1 しか取り扱われませんでした)。
被告人に前歴/前科はありますか?
現時点で公表しているマスメディアがないため、冒頭に記載した方針に従い回答を留保します。
被告人は保釈されていますか?
されています。
被告人による作曲家としての作品は今後どうなりますか?
当該公判においては、被告人による見解を含め具体的な情報は提示されていません。
被告人は今後作曲家として再出発する可能性はありますか?
同上です。
作曲家としての重圧が犯罪行為の動機となった可能性はありますか?
被告人は可能性として当該動機を挙げています。
被告人の作品に罪はありますか?
当該公判においては、裁判官/被告人/検察官/被害者いずれの立場からも見解は示されませんでした。
被害者は被告人の作曲家としての活動について意見を表明していますか?
直接的にはしていません。ただし、被害者は供述調書において「仮に仕事を再開する場合でも、この事件を忘れないようにしてほしい」と述べています。
所感
去年 10 月の報道後、執筆者は頻繁に「傍聴券交付情報」を確認して被告人の情報収集に努めていました。その結果、報道から約 5 ヶ月後、遂にいち早く被告人の初公判に係る情報を手に入れることができました。
このように執念深く情報収集を行った背景には、やはり執筆者から被告人の作品に対する思慕の強さが挙げられると言わざるをえません。
改めて、執筆者を含め、サブカルチャーを愛する何百万人もの人々をこの上なく夢中にさせてきたあの被告人が、その裏で何十人もの女性の人生に影を落とし、消えようもない傷を残したことを信じるのは難しく、また大変悲しく思います。
今回傍聴するにあたり、執筆者は被告人がかなり反省しているように見えました。そして一方で、被告人が「もう 2 度としないか」と尋ねられたときに何回も言葉をつまらせていたのが印象的でした。被告人は十分反省していると思われますが、それは「もう 2 度としない」という決意からくる反省ではなく「これから依存症と向き合おう」という覚悟からくる反省のように見えました。
そのため、例えば結審を迎えた後で、かつ仮に執行猶予が与えられた場合であっても、一朝一夕のうちにまた彼が紡ぐ夢のような作品に触れられるようになるとは到底思えません。また、それを期待するべきでもないでしょう。
しかし、被告人から直接活動について言及することはありませんでしたが、被告人が作品作りへの熱意を失った様子もまたありませんでした。従って、執筆者としては、被告人が適切な治療にアクセスし、自らが起こしたすべての事件における被害者への反省の気持ちを決して忘れることなく、それでもまた衝動に駆られそうになったら、類まれなる才能と筆舌に尽くしがたい努力をもって築いた名声を一瞬で失った自分、身を挺して証人を務めた母の姿、そして失意のどん底まで突き落とすことになった何百万人ものファンの声を振り返り、溢れる熱意を再び作品作りに注ぐことを心から願っています。少なくとも執筆者は何年でもその時を待ちます。
あなたは私に数々の見たこともない景色を見せてくれました。誰になんと揶揄されようとも、私はもはやあなたの作品なしでは生きていくのが難しいのです。本当に、本当に、あなたが戻ってくることを、待っています。