
データ分析本を100冊読んで、5冊を厳選してみた
251007追記:なんとnoteの「今日の注目記事」に選ばれました。

会議中、同じデータを見ているはずなのに「このデータって、こういうこと言えませんか」「ここが問題じゃないですかね」と瞬時に示唆を出せる人がいます。
こういった分析上手な人は、センスが優れているとかではなく、分析のお作法とか型とか思考手順をちゃんと徹底しています。
裏を返すと、ちゃんとそういったテクニックさえ知っておけば、誰だって分析上手になれるということ。
しかし、いざ分析上手になろうと思って、Amazonで「データ分析」と検索しても、3000以上もの本がヒットします。
しかも、どの本も、編集者が練りに練ったタイトルだけあって、魅力的に移ります。
いったいどの本を読めばいいやら、さっぱりわからない。
・・・という悩みを解決できるnoteを書いてみました。
なぜ、僕がその悩みの解決をお手伝いできるかというと
僕自身、毎年300冊、合計で数千冊のビジネス書を読んだことがあって、けっこうアタリ本を知っているから(ビジネス書を読むのはシンプルに趣味です)。データ分析系の本も100冊くらい読みました
コンサル時代の先輩や知人、MBAの教授など、データ分析の先駆者からいろいろオススメ本を教えてもらえたから
あと、僕自身、実務でめっちゃ使っているから。営業戦略の意思決定の分析とか、官公庁向けの調査とか。あと、webに事例として出ているやつだと、事業部の経営数値の見える化をやっていたり。
加えて、ビジネススクールや研修で、データ分析の講師としても登壇しているので、それなりに「データ分析」のオススメ本を選ぶくらいは、やってもいいんじゃなかろうかと・・・
本記事の前提
オススメ本の紹介に入る前に、3つ前提を整理しておきます。
本記事で扱う「分析」のスコープは?
今回のオススメ本の対象者は誰か?
オススメ本の基準は?
本記事で扱う「分析」のスコープは?
そもそも分析とは何なのか。
名著『イシューからはじめよ』によると
分析とは、比較である。
この定義が、僕としても一番しっくりきます。
なぜ比較するかというと、因果関係を特定するため。
・売上が下がる前と後で何が起こったかを比較する
・A施策を打つ前と後の数字を比較する
・競合他社のA社と自社の収益構造を比較する
これらは全て、「何をやると、何が起こるのか」の因果関係を見つけるために、あれこれ比較をしている。
別に高度な分析手法とか統計学を使わずとも、電卓とかExcelの関数さえ使えれば、仕事で必要とされる分析≒比較のほとんどは事足ります。
仮に、高度な手法が必要な場合も、分析の根っこの考え方を理解しておけば、分析のスペシャリスト的な人に依頼することも可能です。
ということで、本記事では、Excelの関数とかピボットテーブルの世界までで完結できるような「分析の基礎」をスコープといたします。
この基礎を知っておくだけでも、実務でだいぶ応用が利くので、ご安心ください。
今回のオススメ本の対象者は誰か?
ここまでの話を踏まえまして、
「はじめてデータ分析を学ぶことにしました」
「上司から"このデータ分析しといて"と頼まれたのですが、何からすればいいですか」
「社内のデータ活用を任されたのですが、どうすればいいでしょう…」
・・・といった、初級~中級者向けの本を選んでみました。
なので、
「私、ゴリゴリ、統計のプロなのですが」
みたいなデータアナリストとして最前線で活躍されている方は対象外とさせてください。
むしろ、もっとオススメ本があれば、ぜひコメント欄にお寄せいただけると、大変心強いです!
オススメ本の基準とは?
ただ、いきなり「オススメ本はこの5冊です。ドン」とだけ言われても、イマイチ説得力ないですよね。
なので、オススメ本の選定基準を書いておきます。
僕のnoteの常連さんにとっては「またか」という感じかもしれませんが…大事なことなので、何度も何度も書かせていただきます。
オススメ本の選定基準は、拙著『投資としての読書』で紹介している、「わかりやすさ×深さ」のモノサシです。
わかりやすさを測るためには、以下の2点をチェックしていきます。
本の内容が「体系的」に分解・整理されているか?
中学生や高校生でもわかる表現で書かれているか?
深さを測るためには、以下の3つのツッコミに耐えうるかをチェックします。
他の本に無い「あっと驚く洞察」がなされているか?(So what?)
主張の論拠は十分か?ツッコミどころが多すぎないか?(Why so?)
明日からすぐ実践できるほど具体的な内容か?(How?)
これらのツッコミに耐えうる本を、今回5冊厳選してみました。
先に全体像をお示しすると、次のとおりです。

施策を立案するフェーズでの分析を教えてくれる本
問題解決のプランを示すための分析の手法を学べる本、ということで、基本編と応用編を選んでみました。
①『問題解決――あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術』
1冊目はこちら。
あれ…分析の本じゃなくね?と思われたかもしれません。
でも、分析をやる目的とか、「分析の結果こういうことがわかると問題解決に活かせるよね=分析の成功体験」を学ぶのにうってつけの本なんですよね。
というのが、意外と無いんですよね。
分析した結果どう問題解決につながるかを、実例で示した本って。
グラフの書き方とか、調査の仕方を語った本は山のようにあります。
でも、問題解決のどの場面で、どんな数字を見て、どう分析すると、問題を特定できるのかを示した本は、本当に稀有なんです。
中でも、リアルな演習と解説つきの本は、本書くらいじゃないでしょうか。
本書では、高度な分析とかグラフの作り方は一切解説されていません。
ただ、
・問題を特定するときの仮説をどう立てるか?
・仮説を検証するためにデータをどんな切り口で見ればよいか?
を教えてくれます。
データ分析は「分析の目的設定→仮説づくり→検証するために必要なデータや切り口の設定」までで、6割は決着が着いているといっても過言ではありません。
この前段をミスっていると、いくら高度な分析手法を使おうが、無駄なアウトプットになってしまいます。
むしろ、分析手法にコストを割きすぎると「せっかく苦労して得た分析結果だし」と後に引きづらくなります。
分析の前段の考え方を学ぶという意味でも、『問題解決――あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術』はオススメです。
②『意思決定のための「分析の技術」』
2冊目は、分析の前段である「分析の目的設定→仮説づくり→検証するために必要なデータや切り口の設定」をさらに深く掘り下げる本を選んでみました。
1冊目との違いは、2冊目のほうが
やや概念的。具体的な問題解決のシチュエーションが頭に入っていないとイメージが難しい
「分析のツール・道具箱」を提供してくれる。定量的なデータだけでなく、定性的な情報もふくめ、どう分析して示唆を導くかをディープに解説してくれる。具体的には、次のような切り口で分析ツールが紹介されている
「大きさ」を考える
「分けて考える」
「比較して」考える
「変化/時系列」を考える
「バラツキ」を考える
「過程/プロセス」を考える
「ツリー」で考える
「不確定/あやふやなもの」を考える
「人の行動/ソフトの要素」を考える
こんな感じです。
本書はあくまで「分析するときの頭の使い方」に振り切っているので、具体的な数理モデルや高度な統計手法を扱っているわけではないので、そういったことを学びたい読者との期待値には合わないかと思います。
ただ、頭の使い方にフォーカスしているぶん、出版されて20年以上経っても色あせないロジックが何とも魅力的な一冊です。
実行フェーズ(数字で人を動かす)に役立つ本
お次は、分析結果をわかりやすく関係者に伝えるための本を選んでみました。
③『データ可視化のデザイン』
多くのデータ見える化の本は「こうすれば見やすくなる」「この手法を使う」といったハウツーを示しているものが多いです。
「このグラフ美しいだろ、どやー」みたいなページが多く、
「そのグラフ、いつ使うん?」というツッコミに耐えられないような本。
マジでいっぱいある・・・
ただ本書は「どういう前提をもってこのグラフを選んだか」「なぜグラフのこの部分を削ったか」といった思考手順まで細かく言語化して伝えている稀有な本なんですよね。
分析結果は、人に伝わって、人に動いてもらって初めて意味をなします。
誰もが少ない認知負荷で、分析結果の意味を理解できる。
そのために、情報をどうやって取捨選択するか。
筆者の思考をトレースしながら「人を動かせるデータ可視化の技術」を体得できる本ですので、オススメです。
④『ビジネスパーソンのための使われ続けるダッシュボードづくりの教科書』
データ分析を行って、「この数字は今後も追っていくべきだ」というデータが出てきたとしましょう。
そしたら今度は、経営者・管理職・現場の人間が定常的に見ていくダッシュボードに落とし込まなければなりません。
皆さんの会社にもありますよね、ダッシュボード。
業績に関係する数字がたくさんグラフ化されているやつ。
・・・ぶっちゃけ、ほとんど使われてなくないですか?
僕もいろんな会社で、作って終わりのダッシュボードを見てきました。
で、僕自身、事業会社に移ったあとは、「全員がちゃんと使いながら成果を上げるためのダッシュボード」を作らねばならぬ立場になったことがありまして。
使われないダッシュボードをたくさん見たことあっただけに、「うわ、自分もあんなクソみたいなダッシュボードを量産しないよう気をつけなきゃ」と冷や汗をかきながらプロジェクトを進めてました。
そのときの悩みが・・・参考にできるいい本がない。。。
ダッシュボード系の本を調べると、そのへんのツールベンダーが営業のために書いた本ばっかりなんですよ。
内容は、ツールの細かい使い方ばっかり。
肝心な「どんな座組でプロジェクトを組んで、業績指標をどうやって定義して、どうやって合意を取り、どんな見た目のダッシュボードに落とし込むべきか」という上流工程の話を書いている本がほとんどない。
なので当時は、自分なりに手さぐりで進めざるを得ませんでした。
結果として↓の記事みたいに事例になりましたし、今でも作ったダッシュボードは100人規模でほぼ毎日使われているくらい浸透したので結果オーライなのですが。
https://jp.cdata.com/case-study/globis/
ただ、あまりにちょうどいい本がなくて「自分で本を書きたい」とまで思ったことがあります。
そしたら、ちょうど去年くらいに『ビジネスパーソンのための使われ続けるダッシュボードづくりの教科書』という本が出まして。
本を開くと「当時の自分が知りたかったこと」が、ほぼ全て書かれていました。
まさにダッシュボードを作っていくときの上流工程で何をすればいいのかが解説されていたんですよ。
組織内のデータ見える化を推進することになる人は、人数としては多くないかもですが、もしその立場になった際は、ぜひ↓の本を読んでみてください。僕と同じ思いをせずに済むはずです。
⑤データを見てPDCAを回す方法を教えてくれる本『Lean Analytics』
立案フェーズと実行フェーズにまたがる本として、5冊目がこちら。
PDCAを回すために指標を定義して、計測して、見える化する。
その方法を事例ベースで具体の具体まで教えてくれる本です。
例えば、アプリとかwebサービスを作っていると
・PV(アクセス数)
・ユニークビジター数
・フォロワー数
・ダウンロード数
・Like数
など、いろいろな数字があります。
このなかで、追っても仕方のない「虚構の数字」はどれで、「追うべき数字」はどれなのかを徹底して解説してくれます。
ちなみに本書で示されていた「追うべき数字」の条件は、
比較ができること
わかりやすいこと
比率や割合にできること
その数字を見て何を行動すべきかがわかること
こういった条件を見たす数字が「追うべき数字」だと教えてくれます。
じゃあ、どうやってこういった数字を考え、計測し、PDCAを回していけばよいのか。たくさんの事例とともに解説してくれるので、今でも重宝している一冊です。
唯一この本で不満なのが「スタートアップのための」とタイトルに書いてあること。
これ、全然、企業の規模を問わずに使えますからね。
マジでオススメです。
番外編:Excelの細かい操作を学ぶには
あと、データ分析にあたって万人が一番使うツールがExcelだと思います。
で、よく「Excelのオススメ本を教えて」と言われることがありますが、私、Excelのための本を買ったことがなく。。。
というのも、Excelを学ぶのに、わざわざ本という手段を選ぶメリットが、あんまりないんですよね。
少し前までは、ググればたいてい解決しましたし。
今では生成AIに質問すれば、もっと効率的に解決策を教えてもらえます。
あと、ツールの操作方法って、動画のほうがわかりやすくないですか?
なので、オススメ本ではなく、オススメ動画を貼っておきます。
こちらの方の動画をいくつか見ておけば、Excelの操作は十分じゃないでしょうか。
最後に
最後に、紹介した本をまとめておきます。
『問題解決――あらゆる課題を突破する ビジネスパーソン必須の仕事術』
→問題解決文脈でどうデータを見ればよいかがわかる本『意思決定のための「分析の技術」』
→1冊目の応用編。データ分析の頭の使い方を骨の髄まで教えてくれるディープな本『データ可視化のデザイン』
→分析結果をわかりやすく伝えるための技術がわかる本『ダッシュボードづくりの教科書』
→全社とか事業部で使うダッシュボードをつくるときはこれ『Lean Analytics』
→事業とかサービスのPDCAを回すときに計測する指標のつくり方を大量事例とともに教えてくれる本
以上5冊が、僕が100冊以上、分析関連の本を読んだなかでオススメさいたい本でございます。
他にもオススメ本ありましたら、コメント欄にお寄せください!
最後に「データ分析を学んだけど、実践の場がほしい」という方に向けて、↓のnoteで演習(解説つき)を作っております。
大きく2パターンの演習を用意しています。
演習A:見やすいグラフを作ってみる
演習B:MTS社の問い合わせ対応を改善せよ
演習Aのほうは、Excelデータを用意しました、7つの題材について解いてもらいます。
「こういう分析結果を伝えたいんだけど、どういう見せ方にすればよいか」
「どういう切り口で分析すれば、示唆が得られるか」
・・・これらを、すべて解説つきで書いております。
演習Bのほうは、昔やったプロジェクトを模したケーススタディを用意しています。
↓のようなケーススタディの読み物を5ページぶん。

あと、Excelのデータもセットでお渡ししますので、分析をしたうえで解決策を考えていただきます。

その後、スライドを30ページほど使いながら解説いたします。

この演習の記事以外にも、150記事以上、
社会人の勉強法の記事とか、
初管理職をどうやって乗り越えたか解説した記事とか、
生成AI系の記事も読み放題です。
昔のコロコロコミックと同じ500円で読み放題なので、ぜひ試しに加入いただけると泣いて喜びます!
ここから先は
いまメンバーシップに一番力を入れてますので、よろしかったら覗いていってみてくださいね!