企業を変えていく営み
はじめまして、株式会社10Xの代表・矢本 (yamotty) です。
改めてnoteに発信の場を設け、私の目線で2024年という1年間を振り返りたいと思い筆を執っています。
なお会社のコーポレートブログでもインタビュー形式の記事を発信しているので、合わせて読んでいただくと、より臨場感を感じられるかと思います。
構造変革
昨年秋、10Xの舵取りを根本から変革することを決断しました。
年が明けた、2024年1月、全社オフサイトの場で大きな構造改革を行うことをメンバーに伝えました。
私は間が悪いことにコロナにかかってしまいビデオでの発言に留まったのですが、この前後の緊張感は肌に刺さるものがあったことを覚えています。
こうして幕を開けた2024年。その変革を実行し、事業の成長モデルを変え、事業に準じて組織を整理し、企業として大きな変化を経験した1年となりました。
一連の構造改革は、過去の意思決定や作り上げた仕組みばかりか、創業来あたためてきた価値観・文化すらを自己否定する営みです。
変革を必要とした事自体、私の経営者としての甘さ・未熟さによるものです。
創業者として、仲間と一緒に生み出してきたものを否定し、根本から変化させ、それでも前に進む。これは私にとっても痛みを伴うものでした。
この変化を機に10Xを退職された方がいらっしゃるのも事実です。
その一方で、10Xには No.1と胸を張れるプロダクトと、顧客と作り上げてきた社会性に必要とされる事業があります。構造改革の最中でも、事業については100%信じられるものでした。
そうして磨き続けてきたプロダクト・事業は、過去と比べて全くの別物と言っていいコンディションになってきています。
揺るがない事業資産は、一日(いちじつ)でできるものではありません。過去からの積み上げたものであり、ここまで関わってくれた全てのメンバーの努力によるものです。改めて心から感謝をしています。
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2024年の構造変革のプロセスは、私個人にも多くの内省の時間をもたらしました。その中で再確認できたこともあります。
私にとって、社会に必要とされる10Xなプロダクト・事業を創ることが、この会社を創業するときに抱いた願いであり、そこに変化はないということです。
痛みを伴う変革を経て、「関わった方々が誇りを持てるような事業・企業を創ろう」という想いも強くなりました。
この一年はこの原点に向けて一心不乱に取り組んできた1年でもあります。
パートナーの黒字化
今年の特筆すべき成果の1つは「ネットスーパーは黒字化しない」という定説を打ち破ったことです。
それも決して投資規模の大きくない、地方パートナー複数社において、ネットスーパー事業の店舗利益黒字化を達成しました。
Whole Productを標榜してきたStailerですが、事業を開始して4年、やっとその価値が数値や現実のものとして示せるようになったのではないかと思います。
いまやStailerの伴走領域も、「管理会計の精緻化」「推薦アルゴリズムの最適化」「商品プライシングの最適化」「配達オペレーションの組直し」など多岐にわたります。
私達がここまでやり切るのは、Stailerがネットスーパーのエコシステムと一緒に成長するプロダクト・事業だからです。
エコシステムが拡大再生産されるサイクルにはいれるよう、自社課題として捉えてやり切るアライメントがあります。10Xはこれを磨き続けていきます。
ネットスーパー流通総額の力強い成長
ネットスーパー市場はコロナという追い風を受けて、2020年に入ってから勢いよく成長してきました。
いわば ”特需” ともいえる需要環境が落ち着いたのが2023年。そして2024年は試練の時と構えてのスタートでした。
しかし蓋を開けてみれば、Stailer導入企業の流通総額 (GMV) は引き続き高い成長を示し続けています。市場成長率に対して、Stailer導入企業のGMV成長率は市場成長率の4−5倍と非常に高い+α (アルファ) をマークしています。
先述したパートナーの黒字化も、GMV成長という意味では一見遠回りに見えますが、実は繋がっています。
採算が確認できることで、「新店開店」「キャパシティの増強」といったアクセルを踏み込むことができ、これがさらなるGMVの成長に寄与しています。
Stailer 事業の利益化
パートナーPLの成長のみならず、10X側でもStailer事業を利益体質に変化させつつあります。
Stailerのような「マーケット自体を創り出す」サービスには、深耕するための長い時間が必要です。
長期性を必要とする事業には、それ特有のリスクがあり、跳ね除ける交渉力を要します。そのためにもStailerの事業財務が自立していく必要がありました。
事業財務が整ってきたことに加えて、長年課題を抱えていたプロダクトの保守性についても手応えが得られ始めました。
CTO 石川を中心として土台から技術的変化を生み出していったことで、毎月計測している開発チームのリソースアロケーションが、前向きな開発やリファクタリングに傾いていったのです。
財務とプロダクトの両面で限界が押し上げられた結果、ビジネス面でも積極的な”攻め” ができるようになってきました。
これまでは躊躇していた、よりリスクをとったプライシング提示や、パートナーの収益に直接影響を与える複雑な機能開発へのチャレンジ。大規模な事業開発。こういった挑戦権を得られています。
小売DXへの事業拡大
実はここまでに記載したStailer 事業の実績は、Stailer事業を託した信頼できる経営陣・メンバーが生み出してきた成果です。
その一方で、私は新規事業の探索を行ってきました。
ネットスーパーという新市場の立ち上がりだけに依存せずに、企業の成長を生み出すドライバーとして、複数の柱を立てたいと考えたためです。
事業を探索する中で、「産業データのアクティベーション」という軸に対して、いま機会が開きつつあるのではないか、と見立てました。
クラウドセキュリティの急成長、SaaS全盛による情報システムの負担増、そして生成的AI時代における産業データの重要性など、世界の様々な要素がこの軸に向かって動いている結果のように私には見えました。
ただこうしたデスクトップ的なリサーチでは「顧客の真の課題」には到達できません。
より実践的なアプローチとして、私自身が小売現場でのアルバイトを行ったり、パートナー企業の経営の深部まで立ち入らせていただいたりと生の情報に自らを晒し・対話を重ねる日々が続きました。
経営と現場の両方の視点から課題を理解することで、いくつかのプロダクトの輪郭が浮かび上がり、これを「新規事業室」として開発を進めてきました。
12月には新規プロダクトの正式受注をいただき、2025年にはいくつかのプロダクトがリリースを迎えていく予定です。
スーパーマーケットという産業の魅力
新規事業を探索するプロセスは、スーパーマーケットという産業と向き合う時間となりました。
スーパーマーケットは、一見すると地味な産業に見えるかもしれません。
少なくともエリートの若者が新卒で飛び込みたいような、魅力的な産業ではないでしょう。
一方で、私はスーパーマーケットに、「豊かな地域の食文化を支える重要なインフラ」としての魅力を見出しています。
この価値を将来に必要な形で、漸進的な進化を促すことが、私達にいま求められているように感じるのです。
こういった産業の側面に気づけたり、事業の面白さに気づけたのもこの1年があったからです。
2024年の締めくくりに、「スーパーマーケットのこれまでとこれから」というホワイトペーパーを作成し、公開しました。ぜひ年末年始のお時間があるときに目を通していただけると嬉しいです。
耳で聞きたい方はこちらのPodcastからお聞きいただけます。
10Xでは一緒に働く仲間を募集しています
最後までお読みいただきありがとうございました。
半径1mの人々の生活を支えることができるのが、Stailerというプロダクトや、10Xの仕事の魅力です。
10Xでは、ネットスーパー市場の創造や、スーパーマーケットのDXに挑戦する仲間を募集しています。現在はバックエンドエンジニア、プロダクトデザイナー、事業開発、CorpITのポジションで応募を行っています。