【ポケポケ】最強の遺伝子 見どころ紹介
ピカチュウex
「エレキサークル」はかつてピカチュウVが持っていた技で、その前はライチュウでした。前者はスターター産のピカチュウであるために、後者は強カードであるために、複数回再録されています。
「サークル」と名のつく技には主に2系統があり、一方が「ポイズンサークル」「フレームサークル」という相手をどく・やけどにして逃げられなくする技で、毒や炎で相手を囲んでしまうイメージですね。
(今考えるとポケポケにやけどって無いんですね。理由は紙の最初期に無かったからとか、BWに少なくXYに無かったからとか(ただこれはルール変更の前振りという面もある)、途中でルールが変わっているからとか、どくと近すぎるからとか色々考えられますが、ポケポケならではの事情としては「勝敗を大きく左右しないコイントスが発生するから」があるでしょう)
もう一方がエレキサークルも含まれる、特定の性質を持ったポケモンの数によってダメージが決まる系統です。エレキサークル、サイコサークル、(オカルティックな雰囲気を持つデルタ種の)デルタサークル、(アローラガラガラの)アローラサークル、と全体的に場のポケモン全員で殴るというよりは無形の力を借りてパワーを増幅させているようなフレーバーの傾向があるように思います。
なお、ここまで言っておいてなんですが紙のエレキサークルはベンチのタイプ不問です。自らデッキタイプを形成するカードであるピカチュウexと、MレックウザEX・シェイミEX・スカイフィールドに対するメタカードであるライチュウの違いですね。そもそも雷要求してませんし。
ちなみに変わったサークル技として「コスモサークル」があり、こちらは場のエネを自在に移動させる効果です。この効果にはよく「ミキサー」「サイクロン」「ストーム」といった、場をかき回すようなイメージの命名が行われます。「コスモサークル」は場という領域を宇宙のような無重力にしてエネを動かすという新たなアプローチでこの効果になっていると考えられます。ここまでは別に問題ないのですが、近年になってオーベムが自分の場のポケモンの数でダメージを出すことになり、「コスモサークル」が既に使われていたために「コスモビート」という味方全員で殴る雰囲気が強い命名になってしまいました。「ビート」の起源はゾロアークの「ビートダウン」で、まあほとんど「ふくろだたき」みたいなものです。味方に相手を殴るよう指令を出すオーベム、まあまあ似合ってはいます。
似て非なるようで近い、「味方の力を借りる技」と「味方全員で殴る技」。これが相手のベンチポケモンを参照だと「相手が多いほど奮起する技」と「相手のベンチを操って殴らせる技」に分かれるのですが、その話はまた当該の技がポケポケに来たときにでもすることにするとして、話を「サークル」技に戻します。サークル技はほとんどが味方の力を借りる技という雰囲気を放っていますが、その元祖だけは異なり、明らかに「ふくろだたき」のリメイク……正確には弱体化版の強化版で、味方全員で相手をタコ殴りにする(っぽい)技でした。
そもそも自分のベンチポケモンの数を参照する技は旧裏第2弾「ポケモンジャングル」プクリンの「ともだちのわ」が最初で、次がもうニューラの「ふくろだたき」です。ポケポケと違って非常にレアなテキストだったんですね。「ともだちのわ」はプクリンexにも受け継がれますが、だんだんとプクリンに友達が多いという設定はない点が明らかになってきたのか、このテキストは他のポケモンに渡され、プクリンは真っ当な個性である眠らせる・膨らむといった特徴を活かした性能になっていきます。ポケポケのプクリンもただの眠りキャラですね。
使い手のいなくなった「ともだちのわ」は、個性に悩む、主にノーマルタイプのポケモンたちに配られるようになります。オオタチ、タブンネなどです。特にチラチーノは初出でともだちのわを持っており、我こそが「ビンタ系石進化1進化かわいいノーマル」としてのプクリンの正統後継者であると主張しています。専用技であるはずのスイープビンタが完全におまけになっており、一人で何度も頑張って殴るよりも皆で殴ったほうが安定するし強いという真実を体現しています。
なおチラチーノがともだちのわを大切にするかというと全然そんなことはなく、エコーボイスをしたり、ゾロアークの真似事をしたり、本編に倣ってトリプルアクセルをしたり、本当に好き勝手やっています。近年ではギプスを着込みムキムキになって超火力を放っています。嘘っぽすぎる。
そもそもともだちのわの登場がSM剣盾で一切無く、SVでようやく「おまつりおんど」のカミッチュが使ったぐらいです。楽しいオモテ祭りの場にこれ以上なく合った技のチョイスだといえるでしょう。
こうした歴史を持つともだちのわを、「そのポケモンの初出で持っていた」「他の個性がぼやけている」という点を評価され持つに至ったのがポケポケのチラチーノというわけです。技に歴史ありですね。
波瀾万丈はあったものの、「ともだちのわ」という技の特徴自体はプクリンの頃から(素点の有無により自分も殴ってる感の変化はありますが)変わっていません。
現在ポケポケに存在するベンチポケモン参照技2種は、方や旧裏第2弾の姿を留める生きた化石、方や後発技(ふくろだたき)のリメイク(ダークサークル)の変形(タイプ不問エレキサークル)のアレンジ(雷限定エレキサークル)という、対照的な歴史を辿った存在なのです。
ミュウツーex
4エネ150ダメージの頼もしいポケモンですね。試合展開が一様になりやすく飽きが早く来てしまったので最近は使っていないですが、始めたての頃はお世話になりました。エネは重いけどHPも火力も高くて強いな〜!
……ミュウツーって、そんなポケモンでしたっけ?
最初のミュウツーはサイコキネシスで攻撃、バリアーで防御を行うポケモンでした。共に2エネです。そりゃそうです。技の要求エネルギーとはポケモンが攻撃できるまでの速さであり、素早いミュウツーがメイン技を撃つために4エネも要求するわけがないのです。そして超タイプとはエスパー・ゴースト(後世ではフェアリーも)を内包するテクニカルなタイプであり、雑にエネトラッシュして大火力を放つなんてのは炎タイプや雷タイプのすることだったのです。
ミュウツーはやがて「『エネルギーきゅうしゅう』で自身にエネ加速して『サイコバーン』で殴る」という個性を獲得し、このテキストを引くほど使い倒すようになります。まだサイコドライブの萌芽は見えません。「ギガバーン」という全エネトラッシュの大技はありますが、ポケボディーのインパクトが強すぎてメインのテキストかというと微妙です。ちなみにVUNIONになると「ファイナルバーン」に変化します。キルバーンやミストバーンもいそう。
じゃあポケポケのミュウツーがどこから来たのかというと、
拡張パック「サイコドライブ」の主役、ミュウツーEXです。紙での「サイコドライブ」は現状こいつだけです。パック名になっているならさぞかし強い技なのかというとそんなことはなく「『エックスボール』じゃないほうの技」みたいな扱いだったらしいです。そんな……。ただこれは健全な傾向ではあります。当時のポケカはミュウツーとミュウツーが殴り合うロクでもない魔境だったらしいですが、それでも単純に大ダメージを出す「サイコドライブ」よりは相手の状態にも依存する「エックスボール」の方がまだ深みのある技です。ポケポケのミュウツーexは、ミュウツーEXの面白いほうの技を「ねんどうだん」に変えたカードなのです。
そろそろ全ての前提として、ポケカBWの話をする必要が出てきました。ポケカはBW期において、その低迷(してたらしいです)から抜け出すために数々の変革を行いました。その変革の中でもカードの姿をとっていて分かりやすいのが、露骨に強いテキストで時代を築いた伝説ポケモンたちです。
レシラムはかなりポケポケのミュウツーexに近い性能といえます。ご存じの通りエネルギーを2個トラッシュする技というのは、基本的に連発ができません。レシラムもまたベンチから特性でサポートしてくれる2進化ポケモンと組んで戦っており、「バトル場で2エネトラッシュの大技を撃つ強い伝説ポケモンをベンチの2進化ポケモンがエネ加速で支える」構図はポケカBWもポケポケも変わりません。最近の紙だとパオジアンが近いですが、パオジアンはレシラムやミュウツーexのようにHPまで高かったりはしません。そりゃそうですよ、火力の高いたねポケモンがHPまで高かったら強すぎますよ。逆に「話をシンプルにするための強すぎるたねポケモン」が存在する説得力として伝説ポケモンのブランドが利用されているとも表現できます。
さて、レシラム・ゼクロムは下の技だけでもポケポケの非exミュウツーやウインディexあたりが泡を吹いて倒れるスペックをしていますが、上の技「げきりん」が重要です。例えばレシラム同士が無傷・フルに育った状態で対面してシンプルに殴り合う場合、最初から「あおいほのお」を撃つと返しの「げきりん」で倒されてしまうため、最初は弱めの「げきりん」を撃ったほうが得、ということになります。カードデザインの中にプレイングの介入余地が組み込まれているわけです。つまり、ポケポケのミュウツーは、レシラムの面白いほうの技を取り去ったカードなのです。
違うんです、見どころ紹介と銘打って見どころじゃないところ紹介をしたいわけじゃないんです。むしろこここそが見どころなんです。
さて、ではポケポケは、紙のポケカから……それもその中でも単純なポケカBWから、駆け引き・プレイングの要素を削ったゲームなのでしょうか?これはまあ、いくつかの面でその通りでしょう。レッドカードやナツメを巡った駆け引きこそあれ、「あえてエネルギーをつけないプレイング」と言ったってそもそもex以外技は1つしかないし技2つのexもたいてい上の技が明確に弱いのでルージュラやフーディンを前にしても技が撃てるまではエネをつけていくしかないことが多いし、「あえて殴らないプレイング」と言ったってそもそもポケポケに「げきりん」持ちはいません。「あえて相手のポケモンを倒さない」プレイングはポケポケで発生しうる数少ないうまぶりムーブですが、それはあくまでゲームシステムにより発生するものであり、駆け引きを発生させる個別のカードデザインというものはポケポケに存在しない、と言い切って良いと思います。リリース後1週間までは。
プロモマンキーの登場により、微妙にオコリザルと戦う機会が増えました。自分もちょっと使いました。後攻1ターン目にマンキーが殴って生き残ると全てを破壊する最強のデッキになりますが、その返しに40ダメージが来そうならマンキーにエネだけつけて番を終わり、次ターンにオコリザル進化からの100ダメージを狙う、という場面も発生します。逆にマンキー・オコリザルと対峙する側も、それを見越してマンキーやオコリザルを攻撃しないという択が発生します。一度分かってしまえばなんてことないプレイングですが、そんなプレイングすら排除されていたのが、原初のポケポケだったのです(もちろんオコリザルは前から存在してましたが、戦ったことがあるかというと……)。
そういうわけで、ラプラスexドロップイベントは、わざわざイベントに参加する熱心な層に向けて、最初はカードデザインの段階でできるだけ削っていたプレイングの余地を、ほんの少し与えてくれたのだ……というのが私の考えです。(もちろんマンキーには、ピカチュウを減らしてラプラスexを動きやすくする効果も期待されていたとは思います。実際減ったかは分かりません。)
以上、マンキーとオコリザルでした。
違う、ミュウツーの話をしていたんだ。ともかく、
現代ポケカで最も単純だったBWでも、時代を定義するカードには相手に依存するテキストが存在していた
ミュウツーはエネルギーを大量につけてトラッシュしながら大火力を放つキャラでは決してない
という過去がありながら、ポケポケのミュウツーはエネルギーを大量につけてトラッシュしながら大火力を放つだけのキャラとして環境に存在しているのです。それはそうまでしてゲームを単純にしたかったという証左であり、そしてプロモマンキーはそれでも単純なゲームのままでは終わらせないという意志の結晶のように見えるのです。
「幻のいる島」に相手のポケモンの技を使える実用的なポケモンや、自分のポケモンが倒されることにより強化されるポケモンがいることと、最初のプロモとしてマンキーが追加されたことは、決して無関係ではない、と個人的に思っています。
リザードンex
見出しがピカチュウ・ミュウツー・リザードンのnoteを書くなんて、私もポップになったものですね。「ぐれんのあらし」はリザードンGXだけが持っていた技です。
リザードンは紙での立ち位置がかなりポケポケに近いのですが、その技名が「ぐれんのあらし」であることの裏には、28年にわたる壮絶なマウント合戦、語彙大富豪が存在しているのです。
さて、リザードンの原点は旧裏第1弾です。親のリザードン(※)より見たリザードンです。
※ちょろび
「ほのおのうず」の初代仕様の強さを考えると当時最大の火力であることは納得ですが、問題は特殊能力です。実質的に「ほのおのうず」の要求エネルギーは無無無無であり、これはつまりリザードンによって「エネルギーをトラッシュして大火力を出すのが炎タイプの特徴だが、別にそれをするために炎エネルギーをデッキに入れる必要はない」という事態が発生したということです。第1弾らしいというか、第1弾ですることじゃないというか……。ポケカに対してあまり使われない言葉である「カラーパイ(それぞれの色/タイプに割り当てられた特徴)」を使って表現すると、「炎タイプのフレーバー的カラーパイを確立する一方で、無色タイプのメカニズム的カラーパイが炎タイプのそれをものすごく侵犯した」ということになります。もちろんカラーパイはただ厳格に守ればいいというものではなく、特にレアカードにおいては、多少の逸脱がフレーバー上・ゲームプレイ上の魅力に繋がります。ただしそれは普通、「草タイプは回復やエネルギー加速が得意な一方エネルギートラッシュで火力を出すことはできない、しかしカプ・ブルルは例外的にエネルギートラッシュで大火力を出せるので強く、またその裁きの厳しさの表現にもなっている」とかであって、「どんなタイプのエネルギーでもリザードンにつければ最強の火力を放てる!」は、メカニズム的カラーパイがほとんど形骸化し、個別のカードによって各タイプの特徴を定める現代のポケカから見てもなかなか異様です。そりゃ現代でもバーニングエナジーのバクフーンとかいますけど、だからってこいつの火力が環境最大だったらちょいちょいちょいってなりますからね。
第1弾リザードンは強いカードというわけではなく、リザードンが最大火力の座に君臨しているからといって困ることは特にありませんが、結局、青天井系を除いた最大火力の座は、カツラのウィンディに奪われることになります。
1進化であり、リザードンには屈辱でしょう。真っ当に炎エネルギーを要求しており、デメリットは炎エネルギー3枚のトラッシュとなっています。テキストが「ほのおのうず」とは異なるため新たな技名が必要となり、「ほのおのあらし」と名付けられました。渦から嵐にパワーアップしています。なお、この後のウインディは最大ダメージの争いには参加せず、1進化相応のまあまあのパワーを発揮するに留まります。現在は重めのエネ要求、反動ダメージまたはエネトラッシュのデメリットを伴いながらかなりの火力を出すキャラに仕上がっており、ポケポケでの反動ダメージを持つ性能に繋がっていきます。
最終的に旧裏で最大のダメージを持つのはウィンディということになってしまいましたが、リザードンはeシリーズにて第1弾のリメイクの機会を得ます。エナジーバーンは名前を変え、宣言して発動し、場のポケモン全員にはたらく形になりました。技もダメージが120となり、デメリット部分が地味な変更を受けました。何にせよテキストが変わったので、技名も「しゃくねつのうず」に変わりました。炎が灼熱にパワーアップしています。
時は流れ、PCG期に。スターターの主役は旧裏第1弾のカントー御三家をリメイクしたポケモンexということになりました。カメックスが「あまごい」の亜種を手に入れ活躍する横でリザードンは、
全ての理性をかなぐり捨てていました。バカのコスト、バカのデメリット、バカのダメージです。バカのコストを強調する意味でしょうか、無色エネだけで使える「きりさく」も持っています。炎エネ化は常時発動するポケボディーに変わり名前も「エナジーフレイム」になりました。エナジーバーンとバーニングエナジーとエナジーフレイムがいるの、ややこしいですね。技名は新規路線となり、「ほのおのうず」から始まった単語を凄そうに言い換えていく連鎖を断ち切っています。
その後のリザードンは第1弾そのままのテキストで復刻されたりアカギの手持ちになったり(!?)していましたが、XYでメガシンカとともに最大ダメージを更新します。
当時の最大HPは230、後発カードでもホエルオーEXがやっと250とかなので、完全に過剰火力です。M進化は技一つの縛りがありますが、進化前は技を2つ持てるため、exに連なる無色のみのバニラ技+炎タイプのエネトラッシュ技の構成になっています。なお、「リザードンのきりさく」でピンと来させる時代は終わったということでしょうか、技名は「つばさでうつ」になっています。この路線を引き継いだのが、ポケポケのリザードンexの直接的な元ネタとみられるリザードンGXというわけです。「ぐれんのあらし」は「ほのおのうず」と一見無関係ですが、これまでの歴史を踏まえると「こいつカツラのウィンディの『ほのおのあらし』にもう一段マウントをとってやがる……!」となります。せっかくしばらく「ほのおのうず」から距離置いてたのに……。そりゃ直前にウインディが「ほのおのあらし」を持ってはいましたが、当時からしてカツラのウィンディは18年前のカードですからね。
果たしてリザードンは正常なのだろうか かつて倒したウィンディにおう吐をもよおすようなこの執念
ところでポケポケのリザードンexは、上の技(無色だけで撃てるようにはなっていませんが)がきりさく に戻っています。ポケポケの新規顧客へ向けて初代本編意識を復活させたのか、はたまた剣盾でリザードンへの進化時に覚える技がエアスラッシュに変更された際にはヒトカゲのタマゴ技にしてまで維持していた つばさでうつ を、SVでは覚えられなくなったのが関係しているかもしれません。
剣盾ではVMAXの登場によりHPラインが上昇しましたがリザードンの火力は据え置きで、ダンデと合わせるとVMAXワンパンに届きます。キョダイマックス前後でほのおのうず→キョダイゴクエン と変化しているところに、キョダイゴクエンがほのおのうずの進化版であるというイメージを感じます。ところで上の技が今度は「ツメできりさく」になっています。キョダイリザードンの翼が炎で形成されているので「つばさでうつ」でないのは分かるんですが、なぜ「きりさく」でなく「ツメできりさく」なのでしょうか。
なお、剣盾で最大ダメージの座をザシアンに奪われます。ダンデ+キョダイゴクエンでも届かないムゲンダイナVMAXのHP340を、素点だけで弱点をつかずにワンパンできる唯一のポケモンです。剣盾的にぐうの音も出ないほど正しい。
その後はVSTARパワーの「スターブレイズ」で320、151リザードンexの「ばくえんのうず」で330と、ベストスコアだと報酬が豪華になるミニゲームでも遊んでいるのかってぐらいちまちまと自己ベストを更新しています。「ばくえんのうず」も結局「ほのおのうず」に連なる命名であり、どこまで行ってもほのおのうずから逃れられていません(もちろん炎の技の名称が「炎を表す言葉」+「炎の形態を表す言葉」の組み合わせになりやすいのは確かですが)。
ところで「ばくえんのうず」は炎炎炎炎という懐かしいエネ要求ですが、これは「もえさかる」「れんごくしはい」といった炎エネルギーを加速するリザードンと合わせろということでしょう。
ここまで長々と書いておいて何ですが、現在栄華を極めているリザードンは自身でエネを供給したり、そもそもたねポケモンかつ何もせずとも勝手に要求エネを減らしたり、とむしろ省エネ傾向で、ほのおのうず系のテキストはもはや、環境に影響を与えないままリザードンらしいリザードンを出す便利な手段としてすら見られている感があります。
だからこそ、ポケポケのリザードンが、悠長にベンチに構えて進化しながらエネルギーを溜め、一撃必殺の火力で全てを焼き払う戦術で炎デッキの代表となっているのは、本当に貴重な事態なのです。ポケポケがあと15年ぐらい続き、リザードンが進化時に3エネ加速して2エネで殴る時代が到来する前に、しっかり段階を踏んで進化して4エネで殴るリザードンを味わっておきましょう。
アーボック
アーボックの「おいつめる」ですが、ちょっと違和感があります。アーボックはそこまでにげるを封じるキャラではなく、過去に持ったのはごく最近、151の「しばりつける」だけです(マヒにした結果にげるができなくなるのを除く)。「しばりつける」もおまけのテキストで、メインは「メナスファング」のほうでしょう。
ミュウツーの場合と同様、ここからも製作側の事情を紐解けそうです。まず最初のパックを初代テーマにした時点で、悪と鋼が深刻に枯渇することは目に見えています。剣盾で本編の毒タイプがポケカの悪タイプに移動したため悪タイプの数自体はいますが、初代の毒はメンツが渋く、初代以外のexを出すのは後に取っておきたい。ニド族には流石にラブラブアタックをさせたい。そこで悪タイプを「非exで構成された、玄人好みの渋いが強いデッキを組めるタイプ」に設定し、ボトムアップ的ににげる封じをマタドガス・アーボック・ベトベトン・ゴルバットの4択(他の毒複合は悪タイプのイメージが薄いので……)からアーボックに割り当てた……という経緯だと考えられます。現在のポケポケの悪タイプは実質的に毒タイプなので状態異常のどくをテーマにまとまりそうに見えて、「相手をどくにするカード」同士は単純にアンチシナジーなのが難しいところですが、マタドガス・アーボック・ベトベトンで「相手をどくにする」「相手をどくに保つ」「相手のどくを参照する」といい感じに構成されています。「初代、毒の1進化が多すぎるだろ」というツッコミは、今は我慢しておきましょう。
ナツメ
紙のナツメは色々出ていますが、超能力によってエネルギーやコインを動かしたり、相手のカードを使ったりといった感じで、ポケモンを動かしてはいません。しかしポケポケのナツメにも元ネタと思われるカードがあり、それが「ワープポイント」です。旧裏のジムリーダーを特集していた時期のカードで、収録商品から考えて、ナツメの登場するカードやヤマブキシティジムに並び、ナツメに関連するカードとして扱われています。ヤマブキシティジムのワープパネルがお互いのポケモンを入れ替える効果として表現されているわけです。ワープパネル、超能力イメージにしては色んなところに普及しすぎな気がしますが……。
ワープポイントはその汎用性を買われ、ナツメから独り立ちして何度も再録されますが、BWになり「グッズは基本的に実体のあるアイテムにする」という指針に従って「あなぬけのヒモ」に名前を変えます。確かにどっちも謎の回転をしながらワープするという点では同じかもしれませんが、「うわああ相手があなぬけのヒモを使ったから交換しないといけない!!」ってあまり納得できない気がします。
「あなぬけのヒモ」は剣盾でも再録されており、このタイプの効果は現在だと超能力とは遠い位置にあります。超能力っぽい入れ替えとなると、テキストはやや離れますがシキミにポルターガイスト(原義)っぽさを感じるぐらいですかね?シキミをポルターガイストの表現だとするとライムもそういう霊障方面で考えた方が自然なんですが、でも個人的にライムの効果はラップバトル的な感じで追っ払ってる雰囲気があり……。もう後は個人の問題ですね。
ここからはポケポケのナツメに近い効果を追っていきましょう。LEGENDには「ポケモンサーキュレーター」というのがあり、ポケポケのナツメそのままです。ちなみに最近別の扇風機として「ハンディサーキュレーター」が出ており、こちらはエネルギーをベンチに動かします。ポケモンを動かすのもエネルギーを動かすのも、カードを動かすという点では変わらない、というポケカの少しドライな面が見えます。最近だとテツノツツミもバトルポケモンを吹き飛ばして入れ替えを強制します。ポケポケピジョットの風(「おいはらう」としか言っていませんが)も、テツノツツミの風も、同じ効果をもたらすわけですね。
ぞの後BWにおいてポケモンサーキュレーターの上位互換である「ポケモンキャッチャー」が登場(一応旧裏にも同テキストの「突風」がありました。BW以前のグッズが必ずしも実体を持たない時代の好例です)し、XYでエラッタされ、SMにて「むしよけスプレー」としてポケモンサーキュレーターと同じテキストが登場した……というのがこれまでの強制入れ替えグッズの歴史のごく一部です。バトルポケモンを追い払う効果にむしよけスプレーはぴったりですね。この話がどこに着地するのかというと、相手のポケモンを強制的に入れ替える効果において、入れ替えるベンチポケモンを相手が選ぶ場合は「吹き飛ばす」「追い払う」、自分が選ぶ場合には「捕まえる」「引っ張り出す」というフレーバーになるという傾向です。まあ普通そうなりますよね。
ポケポケでもオトスパスが「なぐりとばす」で相手をベンチまで殴り飛ばしてから、新しく出すポケモンを相手に選ばせています。オトスパスってどちらかというと絞め技で逃げられなくするポケモンなんですが、まあ、適当なポケモンがいなかったんでしょう。自分でベンチポケモンを選べるウツボットは「かおりのわな」とやはり誘引のフレーバーです。「なぐりとばす」はわるいゴーリキー、「かおりのわな」はエリカのウツボットが初出で、こういう区別は昔からちゃんとあるわけです。
さて、話は飛びますがここで「ちょうはつ」という技の歴史を見てみましょう。初出はわるいリングマで、挑発によって互いの手札に抱えたポケモンをベンチに出させます。ベンチにポケモンを出させるのは「より戦いの中心に近い場所へと移動させる」という点においてベンチからバトル場へとポケモンを出させることに極めて近い行為であり、ベンチからポケモンを引っ張り出す際にも用いられる「誘引」「魅惑」などのフレーバーが当てられます。
151ではエリカが両方を同時に行うことで強烈な「招待」を行っています。BWのレパルダスで効果が変わり、シンプルに相手のベンチポケモンを挑発して引きずりだす効果になりました。今に至るまで細々と使われており、個人的にはバチンキーが覚えているのが好きです。
そして長髪のポケモンであるオーロンゲが「ちょうはつ」を発展させた技、「ちょうはつクラッチ」を使います。相手が選んだベンチポケモンをバトル場に出し、ダメージを与える技です。相手が選ぶの!!!?!???!???
ところで、「ひきよせる」という技があります。こちらはカードeのコイルが持っていた技で、SMにてなんと16年ぶりにノズパスの技として登場しました。どちらも磁力で引き寄せているんですね。ちなみにダンバルなどの「ひきつける」だとドローになります。カードを引きつけるとドローになるという、ポケカらしいメタさです。
さて、ノズパス登場の直前にフィオネが「ひきよせのうず」という強力な特性を持っていました。先述のテツノツツミの元ネタで、渦によって自身は山札の下へと沈んでいってしまいますが、相手が選んだベンチポケモンをバトル場へと引き寄せます。相手が選ぶの!!!?!???!???
何が言いたいか。「追い払い」「引き寄せ」のフレーバーと入れ替えるベンチポケモンをどちらのプレイヤーが選ぶかには明確な関連が存在します。ただし長い歴史の中で「引き寄せなのに相手が選ぶ」例外が複数あるため、ポケポケのナツメが超能力によってバトルポケモンをベンチへ追い払っているのか、ベンチポケモンをバトル場に引きずり出しているのか、どちらも操作して入れ替えているのかは、誰にも確信をもって断言できないのです。そのため、ナツメのファンアートを描く際には、自分好みの表現を採用するのが良いでしょう。結論が弱いなあ。
カブトプス
紙にもあるテキストですが、この強さは紙ではありえません。試しに、「与えたダメージ」で検索してみましょう。
「なんか……数値低くね?」と感じるのではないでしょうか。基本的に、与えたダメージ分だけ回復する技は、進化前の取るに足らない技であったり、大技のついでに持っているだけの技でしかありません。なぜか?「与えたダメージ分だけ回復する技」しか持っていないポケモンが強くあってしまうと、ミラーマッチが発生し、
こうなるからです。絵に描いたような千日手です。最強の遺伝子だけのシンプルなカードプール(シンプルなプール、シンプール)でも、千日手が発生してしまうんですね。
一方で紙は千日手や膠着状態の発生に対して極めて神経質で、例えば「特定の相手からダメージを受けない特性を持つポケモン」は高確率で「相手にかかった効果を無視して攻撃する技」をセットで持っています。アローラロコンVSTARはVSTARのフォーマット上「何度も使える技」と「継続的に働く特性」を同時に持つことができず、結果として「相手にかかった効果を無視して攻撃しつつ、特定の相手からダメージを受けなくなる技」を持つという荒技に出ました。
こんな違法建築みたいなテキストをした奴が美しさテーマの「白熱のアルカナ」の主役でいいのか?という気持ちと、貧弱なスタッツのアローラロコンが無敵効果で華麗に戦う姿こそ美しさだろ!という気持ちがあります。Vメタのテキストも持っていて、全体的に「強さ」へのアンチテーゼとしての「美しさ」なんですよね。
ちなみに最近一番面白かったのはミラー専用の対策が施されたヤナッキーです。ヤナッキーでミラーすることないだろ!
今後ポケポケでも特定のポケモンを詰ませる効果が出てくると思いますが、個人的には紙のような安全機構が施される可能性は低いと予想しています。一戦一戦が手軽で短く引き分けへの忌避感が薄く、山札切れで負けないので山札を温存するややこしいプレイングもなく、何よりカブトプスが野放しになっていますからね。それよりはテキストの分量を減らすことを優先するでしょう。この単純なカード一枚から、ゲームの未来を占うことができるんですね。占うだけですが。
ニャース
ポケカGBでいうところのガルーラですね。ガルーラ自体は今でも紙でせっせこドローしていますが、ガルーラの個性として「子供におつかいを頼めるのでドローが得意」はちょっとどうなんだという感じがするので、ポケカを一から再構成するとなると、ドローの役目がニャースに移り、ガルーラがのっぺりとした数値で戦うポケモンになるというのは妥当な判断でしょう。
ニャースも一応ドロー自体はしていたんですが、2エネの上にコインだったんですよね。ネコにこばん はもちろんキョダイコバンまでもドローに捧げたキャリアが評価されてポケポケで抜擢を受けた形です。なんなら「おまもりこばん」も持たせたポケモンをバトル場に出しているとドローができる効果で、お金を手に入れることがドローと強く結びついています。「リッチエネルギー」もそんな感じです。
ちなみに同じくお金に縁のあるポケモンであるサーフゴーは、鋼エネルギーをコインに見立てるという新しい解釈を持つ仲間と独自のフレーバーのネットワークを形成しています。確かに鋼エネルギーって丸く見える金属の塊という点においてコインと同じですからね。ゴールドラッシュの効果そのものはアローラダグトリオのものを持ってきただけなのに、なぜか噛み合っています。
さて、ニャースの面白いところが、進化後のペルシアンがニャースとは逆に相手の手札を減らす技を持っている点です。ヒトカゲ→リザードンのように共通した効果でも、ベトベター→ベトベトンのようにシナジーのある効果でもなく、進化前後で自分に与える恩恵と相手に与える被害が対照的になるというのはポケポケで唯一だと思います(そもそも進化前がだいたいバニラというのもありますが)。紙でのペルシアンはたまにハンデスしていますがそこまで個性のあるポケモンというわけでもなく、バニラでもそう違和感ないと思いますが、そこでハンデスを持ってくるというところに意図を感じます。
ネコにこばん→シャドークローのように対称的なデザインは、テキストの記憶を助け、また印象を良くしてくれます。紙でも一応ありますが数が少なく、「サカキのカリスマ」ぐらいです。
またスタートデッキGenerationsのパルデアデッキも、デッキ単位でこのデザインが行われていると考えています。
スタートデッキGenerationsの各デッキは各地方をフィーチャーするに留まらず明瞭なプレイ上でのコンセプトがあり、パルデアデッキはリククラゲの「もりのぬけみち」やポケモン入れ替えによって傷ついたポケモンをベンチに下げやすくして「リベンジバスター」を強化したり、「ギガインパクト」のデメリットを解除したりして戦います。
ここで注目したいのがパルデアドオーexの「ポイズンサークル」で、ちょうど本記事冒頭で触れた「毒で相手を囲んで逃げられなくするタイプのサークル技」ですが、本商品全体を見渡してみても、スタートデッキという性質上このような複合的な効果を持った技はなかなか存在しません。「どくづき」など単に毒にするだけの技でなく、わざわざ「ポイズンサークル」にした特別な理由があるはずなのです。それが「入れ替えを簡単にして、入れ替えを多用するデッキだからこそ、相手の入れ替えを難しくする効果が際立つから」なのだと思います。
さて、こういったデザインはポケカには少なく、MTGが本場といえます。
「残酷な根本原理」はまさに典型で、テキストは長いですが要は「クリーチャー1体、ライフ5点、カード3枚を相手は失い、自分は得る」という風に圧縮することで容易に理解ができます。
あとは両面カード以外のファイレクシアの法務官サイクルもそうなんですが、個人的に困っていることがあり、この対称的、鏡像のような効果を持ったデザインをスパッと総称する言葉が、あったはずなのに全然思い出せないんですよね。かれこれ1年ぐらい思い出せなくて悩んでいるので、そもそも存在するということ自体が思い違いの可能性もあるんですが、何にせよ皆さんに助けを求めたいと思います。「対称デザイン」とか、「鏡像デザイン」とか、そんな感じだったと思うんですが調べても調べても出てこないんですよ。助けてください。
情けない終わり方ですが、今回の記事は以上です。お疲れ様でした。
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