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エンジニアリングのこだわりの火を紡ぐ

テクノロジーは魅力的だが、 それ以上に魅力的なのがそれを設計した人達の深いこだわりだ。

『Hit Refresh』
サティア・ナデラ,グレッグ・ショー,ジル・トレイシー・ニコルズ
日経BP (2017/11/16)

最近、良いエンジニアリングには「こだわり」が大切だと考える事が多い。

1つの事に執着し、存在しないかもしれない1つの正解を探すかのように深堀り、時に斜に構えた見方をし、否定をしてみたり、過度に表現してみたり、素直にまっすぐ見てみたり、何も考えず手を動かしてみたり、考え学ぶ事に時間を使ってみたり、考え自体を180度変えてみたり、怠惰で傲慢で短期で、平等なんだけど不平等な非対称性を持つ物事をハックするような所作。

そのどれもが実は「こだわり」で繋がっていて、だからこそエンジニアリングの楽しみ方も人それぞれで、広く尊重されて欲しいなとよく思う。

多様なこだわりはイノベーションの源泉

こだわりはぶつかりやすい。

正面から向かう人と斜に構えた人が同じ場に居たら当然だと思う。
でもその中で、いくつかの優れた回答がイノベーションになっていく。

アウトプットは、世の中を変えて便利にするプロダクトかもしれないし、素晴らしいPull Requestかもしれないし、新しいOSや言語、アルゴリズムかもしれないし、面白いハードウェアかもしれないし、新しいエンジニアリングに対する考え方かもしれない。

今までの全く違う考え方を否定する形であったり、他のこだわりを無視してまっすぐ進んだ先にあるのかもしれない。でもそこには、いつだって他のこだわりが存在していて、それらとの比較によって優れたアウトプットに至っていく。

故に多種多様な人がエンジニアリングの場に居るのは大切で、そしてその人達のユニークな「こだわり」1つ1つがイノベーションの源泉だと私は思う。

こだわりの火は消えてしまう

私自身、昔持っていたエンジニアリングに関するこだわりも、歳を重ねるごとに変化している。自身の実力や環境の変化だったり、興味の移り変わりもあると思う。その中で消えていった火もある。

議論していて火がしぼんでしまう事もある。
エンジニアリングに関する議論は、どうしても今のデファクトスタンダードや社会構造、世情の影響が強い。今安定している火を目の前に、小さなこだわりの火を燃やし続ける事が出来る人はそう多くない。誰だって自分のこだわりが否定されるのは怖い。

エンジニアリングは手を動かさないといけない分、個人の中にユニークなこだわりが形成されていったり、一度しぼんでしまったこだわりの火を奮い立たせるにあたって、相応のエネルギーも必要になる。この辺りに、絵や文学のようなクリエイティブな側面での共通項があるようにも思う。

時に無邪気な子どものように見えてしまうかも知れないこだわりも、全てがものづくりのエネルギーだ。これをいかに創り、いかに絶やさず紡いでいくか考える事もまたエンジニアリングだと私は思う。

1つ1つの火がなければイノベーションには辿り着けない。

他者のこだわりをリスペクトする

より良いエンジニアリング、インパクトのあるものづくり、世の中を変えるイノベーションに向き合いたいのであれば、他者が紡いできたこだわりの火を消す行為や、大きな火ばかりを選んでしまう事が、自分の可能性を狭めるということに多くの人に気付いてもらいたい。

自分が何かにこだわって、自分の中でメラメラ燃える熱い火をエンジンにしてエンジニアリングに向かっている時の圧倒的な楽しさを、大小あれど皆知っているはずだ。それがどれだけ、他者と比較して小さい火かもしれなくとも。日夜コードを書いたり唸ったり、コンテストに熱中したり、エンジニアリングに関して熱い議論を交わしたり。

自分はそうでなくても、相手はそういう状態かもしれない。

ただ、何事も全てを受け入れるのは難しい。苦手な人やものはあるし、体調や人生のタイミング、立場によって受け入れられないものもある。そういう時はきっと、他の人や友人、同僚、コミュニティがきっとなんとかしてくれる。少しだけ目をつぶり、多様の価値を受け入れ、他者のこだわりに少しでいいので想いを馳せてみて欲しい。

エンジニアリングはそうやって紡がれていく。

少なくとも私はそう信じているし、もし悩んだら相談して欲しい。

そして、エンジニアリングというこだわりの連続の中で、またその結果生まれたイノベーションを通して、エンジニアリングの楽しさを1人でも多くの人に知ってほしいと、常々思う。

こんなに人生を豊かにしてくれるものはなかなか無い。
そう伝え続けたい。

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ばんくし
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