【UO】オンラインゲームで収集された20年間分の蔵書消滅危機をプレイヤー集団が救った話
ウルティマオンライン(以下UO)の昔話ばかりしている、当アカウントですが久々にホットなニュースが舞い込んできました。オンラインゲーム史においても、ニュースバリューが高い事件ですので本Noteでまとめます。
2020/7/6(月) UO Mizuhoシャードの大型図書館「Now Reading1号館、2号館が」が倒壊し蔵書1000冊以上が風雨にさらされ消滅する危機が発生。急報を受けたAsukaシャードの図書館主Latourさんをはじめ複数のプレイヤーが家屋倒壊に立ち合い、無事に蔵書を確保、安全な場所へ保管したとのこと。
オンラインゲーム内の「無形文化遺産」
マルチプレイオンラインゲームが生まれて20年以上。プレイヤーの高齢化は避けられない問題になっています。プレイヤー自身の環境や生活様式の変更もあり、定額課金モデルも難しくなってきました。
「ハウジングシステム」が存在するUOでは不動産の付加価値が高く*1定額課金を後押ししてきました。家屋を改装してプレイヤーが集う「冒険者の酒場」を開業したり「図書館」や「劇場」を建築することも多く、UOの文化史はハウジングの中で紡がれてきたと断言してもよいでしょう。
*1 UO最盛期では数万円規模(あるいはそれ以上の)のリアルマネーが動いたともされている。家屋保持のために永続課金をしているプレイヤーも少なくないと思われる。(筆者も定期的に私設劇場を保守しています)
今回倒壊したのは、そのようなプレイヤー運営の老舗私営図書館です。大型家屋2軒分の課金が終了(2020年3月末に自動更新終了・あるいは課金停止)約3か月後に家屋倒壊*2 に至りました。
*2 家屋倒壊(家腐り)とは課金を終了したプレイヤーハウスが一定期間後に倒壊すること。この時に大量の荷物が地面にさらけ出され一定期間のうちに回収しない限り風雨にさらされて塵に還り、完全に存在が消滅する。定期的に発生するため腐り待ち専門のプレイヤーも存在するほど。
そこに保管されていたのはUO有史以来プレイヤーが書き記してきた書籍が1000冊以上。小説、随筆、交換日記、手紙、魔導書や暗殺指令書等、プレイヤーの創意工夫と発送が詰め込まれた作品たち*3 です。
*3 UOではテキストデータを「本」の形にしてアイテムとして持ち運び・保管することができる。アイテムとしての同人誌の販売や指令の手渡し、交換日記等に活用されロールプレイの発展に大きく寄与した。
→UOでの本の説明についてはこちらも参照ください。
家屋倒壊を事前察知*4 した有志は「無形文化遺産」である蔵書の確保に殺到しました。回収の難しい時間帯にも関わらず協力して回収することに成功したとのことで近年のUOでは珍しく明るいニュースとなりました。(有力プレイヤーの離脱に伴うものではあるのですが)
*4 近年のシステム更新により、町中に「家屋倒壊予告NPC」が出現するようになりました。彼らのアナウンスにより書籍専門家が集結したことも回収成功に寄与した要素です。(かつての「腐りハウス情報」は専門家により独占される秘伝のタレでした)
なお、通常の「腐り待ち」においては「換金可能なレアアイテム」「強力な装備品」「プレイヤー生涯分の資材」の獲得が重視されます。プレイヤーの日記や書籍については換金不可能であり、ほとんど見向きされることはありません。そういった文化的な資産に対して有志が呼びかけ、救出に動いたことは、UO特有の事件であると思います。
「オンラインゲームはデジタルデータで何も残らない」等と批判されることも多いですが、少なくとも今回に限っては無形文化遺産のために多数のプレイヤーが出動し、その重要性を証明したのではないかと思います。
電子物理書籍依存プレイヤー文化という無形文化遺産が保護される社会が存在する、ウルティマオンラインの世界。一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
いちプレイヤーとして
今回は時間帯的に救出作業に参加できず申し訳ない気持ちでいっぱいです。皆様の忍耐に感謝します。(筆者 お望月さん/Mottie@MZHシャ―ド より)