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「1台27万円」はぼったくりなのか?

週末も社畜よろしく働いています(ちゃんと「勤務」になっているのでホワイト企業!)。
今回は真面目に教育っぽい事でも書いてみようかと思っていたのですが(系統学習と経験学習について考察を書こうかと思っていました)、ネット界隈で「1台27万円」が悪い意味でバズっている感じなので、そっちの考察に切り替えてみました。

学校のパソコンが1台27万円という記事

話題になっている元は以下です。

週刊誌に掲載されたようですが、動画になってからより拡散されている感じ。中身よりタイトル優先で拡散されちゃっている感じです。

「癒着だー」「業者がぼったくってボロ儲け」的な話が大勢に。
本当にPCだけを27万円で売っているならぼったくりですが、元記事や動画にもありますが、保守もソフトウェアも通信環境も設定もサポートもICT支援員も、色々諸々含んだ金額を台数で割っているので、なんとも大雑把な話。
でも、裏事情を推測できる身としては「多分、関わっている会社のほとんどは赤字なんだろうなぁ」が直感の感想です。
直感でモノを言っては一流週刊誌を同じなので、60分一本勝負で超ざっくり試算してみました。

まずは契約に含まれる要件を調べる

まずはググる。
あれ、既に考察記事があった。

これを見つけたときは「もう書かなくて良いじゃん」と思ったが、中身は「色々入ってますね」的なことぐらい。一流週刊誌よりは詳しいけど、まだまだ踏み込みが足りん

調査の基本は一次情報まで遡ること、だと思っているので、渋谷区の予算書を拝見。3年リースらしいので、最初の年である平成29年度予算を見ます。

このなかで「ICT教育の推進」が該当事業の模様。要件を抜き出すと以下の通り。

渋谷区立の全小・中学校において
①児童・生徒・教師にタブレット端末を1to1(1人1台)で配備する。8,600 台
②国内のLTE網を利用した、データ通信用のSIMカードを配備する。8,600 枚
③全普通教室に電子黒板機能付きプロジェクターを配備する。287 台
④プロジェクターの配備にあわせ、協働学習用の画面転送装置を配備する。287 台
⑤国内のLTE網を利用し、いつでもどこでも学習ができるデジタルドリル(小 1~中 3)を導入する。
⑥クラウド基盤を利用した、統合型校務支援システムを導入する。
⑦その他ICT教育を推進していくため、指導者用デジタル教科書や授業支援システムなどを導入し、クラウド基盤で運用する(校務クラウドと教務クラウドは分離する)。
※下線部分については、児童・生徒の家庭における生活習慣を考慮して、利用時間を制限する予定

週刊誌や記事では学習用タブレットの話だけのように見えますが、統合型校務支援システムの導入も含まれている様子。
うぅ、ここまで調べて読み込むだけで30分経過。もうこの文字から分かる要件から、想像力と妄想力を駆使して試算してみよう。

超ざっくり積算

30分で超ざっくり積算してみました。当事者の皆様、的外れ確率かなり高いと思いますが、超一流週刊誌よりはマシなこと書きますのでご容赦いただけたらと。
※こういう積算って晒すのはタブーな感じなので、多方面からお怒りがきたら限定公開に切り替えます。

深く考えない一気書きなので、漏れとかある可能性が高いのはご容赦ください。
自分はいつも、何か案件を見つけたときに「大体どれぐらいの案件なのかをざっくり30分で積算する」ということをやっています。それと同じ感じで、ほぼ原価っぽいものをざっと並べています。
タブレットは27万円、なワケがないので、GIGAスクール基準の4.5万で試算しています(でも、この時分に4.5万円で提供はできないはずです)。
詳細は上記リンクをご覧ください。
細かいところで訳分からんという方は「ふーん、なるほど(分からん)」という感じで見てもらえたらと。
特に辻褄合わせしていなかったのですが、、、報道されている24.7億にほぼぴったりであらびっくり。

超ざっくり積算の結論:ぼったくりではない

契約の範囲が見つけた予算書の範囲、という前提にはなりますが、自分の試算では全くぼったくりでは無さそう、という結論です。
本来なら、企業なのでさらに利益が必要ですし、要件が曖昧であればリスク費用も確保する必要があります。まだ価格的に余力がある部分もあるかもですが、こんな適当試算は抜け漏れ満載なので、余力があっても抜け漏れの方が多い感じです。

LTEでの1人1台全校展開は、全国的にもほぼファーストケースだったので、想定外のことも起こりまくったでしょうし、細目に出ない人件費は莫大にかかったのではないか、と予想できます。(多分、サービスを単純に提供している会社以外は、やっぱり赤字だったんだろうなぁ)

では、GIGAスクールの1人1台ではどうなるのか?

週刊ポストの記事の後半に、以下のような記載があります。

何のためにどう活用するのか、見通しもなく進めば、投じる金は4000億円では済まない。後になって費用が膨張するのは公共発注の常だ。

「なんか悪意のある記事だなぁ」と手前勝手な感想を持ちながら読み進めていましたが「この部分は本当にその通りだな」と。
自分も肝に銘じないといけないです。

ではトータルコストを下げるにはどうすれば良いのか。「何のためにどう活用するのか」の要求定義が一番大事なのは当然として、システム全体のアーキテクチャの設計も大事だと思っています。

シンプルなシステム構成と権限委譲

ポイントは「シンプルなシステム構成」「権限委譲」だと考えています。

「シンプルなシステム構成」は、単純に言えばシステムの階層構造やセグメントを極力少なくすること、です。

今回の渋谷区の例は、LTEを用いたのは「いつでもどこでも」が一番の要因だと思いますが、ネットワークをシンプルにしようという、というチャレンジでもあったと思っています。
従来の「校内Wi-Fi ⇒ 校内ネットワーク機器 ⇒ 校外VPN回線 ⇒ センタシステム(この中で色んな機器) ⇒ 各校集約されたインターネット接続」となるとかなりの多段構成です。「繋がらない」「遅い」の原因切り分けも困難になります。

ただ、今回の要件を見ると

⑦その他ICT教育を推進していくため、指導者用デジタル教科書や授業支援システムなどを導入し、クラウド基盤で運用する(校務クラウドと教務クラウドは分離する)。

とあり、LTEでありながらシステムを分離しているのが見受けられます。
こうなってくると、先生側は専用網で接続するようになるでしょうし(超ざっくり積算でも先生のみ閉域接続で超適当積算しています)、児童生徒のネットワークとの整合・接合でシステムが複雑化していくことになります。
ただ、これも国が提示したガイドラインに則った対応だと思いますので、当然ながら間違った選択ではないのですが、、、

無茶を承知で言うと、LTEでクラウドありきにするのであれば、国が示したガイドラインを自らで更新して規定し直すぐらいが必要です。効果が半減してしまうので。
※ガイドラインの件は以下で記事にしていますので、お暇があればお読みください

「権限委譲」については、学校教育市場ではより壁が大きそうです。
従来は結構ガチガチに管理をして、管理のための管理が必要になるような、まるでNTTみたいなことをやっていることが多かったです(おっと誰か来たようだ)。
1人1台になると、教育委員会側で全て管理するのはまず不可能。また、GIGA = Global and Innovation Gateway for All であるならば、可能な限り制限を小さくし、学校や先生、児童生徒がハンドリングできる範囲を広げる設計にしていくことが重要になってきます。
この辺は塩梅が難しいところですが、思い切った設計にしないと、現場も管理する側も共倒れになってしまいます。

手前味噌な面もありますが、私も関わっている東京都小金井市でも学校のICT環境について、総務省から委託を受けて実証をしています。

まさに「シンプルなシステム構成」「権限委譲」をポイントに進めているので、参考にしてもらえたらと思います。

まとめ

なんか途中から脱線してしまったような、、、でも今後のGIGAスクールでは大事になってくる部分のはず。
ただ、渋谷区の1人1台LTEは1つの選択肢を示してくれたチャレンジなので、こんな叩かれ方はなんとも切ないです。
本当に大事なのは、やってみてダメだったことや後悔したことなんかを共有していくことでしょうか。自分もそういうのをあえて公開して、貢献していこう。

近いうちに、改めて自分なりのシステム構成を図示化してみたいとも思います。

ではまたー。

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