【100均ガジェット分解】(3)ダイソーの「BTスピーカー」
※本記事は月刊I/O 2018年7月号に掲載された記事にページの都合で省略した部分を追加したものです。
はじめに
「ワイヤレス Bluetooth スピーカー」はダイソーで600円(税別)で販売されています。通信仕様はBLE(Bluetooth Low Energy)ではなく、前世代の「Bluetooth version 2.1+EDR」を採用、スピーカーに加えてマイクも内蔵しているのでスマホとペアリングする事で通話も可能です。ダイソーではスマホグッズコーナーで販売されています。
パッケージと外観
本体の分解
同梱物
パッケージの内容は「本体」「USBケーブル(充電専用)」「取り扱い説明書」となります。
本体及びパッケージには「技適マーク」が印刷されています。取り扱い説明書も日本語対応しており、きちんと日本市場向けの仕様となっています。
本体に表示されている技適マーク
BTスピーカー部の分解
防滴用のシリコンカバーを外し底面の4本のビスを外しBTスピーカー部を開封します。
ケース上部にはスピーカーとコンデンサマイクが、ケース下部にはメイン基板とLiPo(リチウムイオンポリマーバッテリー)が格納されています。
BTスピーカー部を開封した状態
電子回路ブロックの確認
Lipoとメインボード
LiPoとメイン基板は両面テープで固定されています。LiPoは容量表示がないのですがサイズから+3.7V 300mAhだと思われます。100円ショップの商品には珍しくLiPo本体に保護回路を内蔵しています。
搭載されているLiPo
メインボードはガラスエポキシ(FR-4)の両面基板です。裏面には製造者と思われる「LBP 68BT-20 V1.0」の表示があります。主要部品は全て表面に実装、BTのアンテナは基板パターンで構成されています。
メインボード(表面)
メインボード(裏面)
搭載部品
次にメインボードに搭載されている主要部品をみていきます。
メインボード上の搭載部品
回路構成
基板パターンからメインボードの回路図を書き起こしたものが以下になります。
回路図
Bluetooth用のアンテナはいわゆる「板状逆Fアンテナ」、オーディオ出力は片チャンネルのみ。キー入力(3個)は抵抗分割された電圧をADCで検出しています。
主要部品の仕様
アプリケーションプロセッサ AC1716AP
"JL"のロゴより中国国内でBluetoothやWiFiのチップセットを提供している「ZhuHai JieLi Technology Co., Ltd. (珠海市杰理科技股份有限公司, http://www.zh-jieli.com/)」製のLSIだとわかります。但し”AC1716AP”という型番は検索でも見つからず詳細不明です。回路図では基板配線を元にピン配置を推測しています。このLSIはBluetooth Audio用のアプリケーションプロセッサで, Audio出力, Mic 入力およびコントロールボタンとLEDの制御を行っています。
2022年6月7日追記
他のタイプで調べたZH-JieLiの型番ルールより、このチップは"AC6916D"であると思われます。
datasheetは中国のソフトウエア開発者のネットワークである「CSND」から入手できます(ダウンロードには会員登録(有料)が必要)。
https://download.csdn.net/download/daoyue/10872819
オーディオアンプ NS8002
オーディオアンプは「SHENZHEN NSIWAY Technplogy Co., Ltd.(深圳市纳芯威科技有限公司, http://www.nsiway.com.cn/)」製のオーディオアンプです。
最大2.4W出力のAB級アンプを1CH内蔵しています。データシートは以下より入手できます。
https://bit.ly/2O3mznd
ショットキーバリアダイオード SS14
本機ではUSBコネクタからLiPoへの簡易充電制御用として逆方向電圧40V、直流順方向電流1Aの汎用ショットキーバリアダイオード(SS14)が使われています。信頼性を考えると充電制御ICを使用するのが望ましいのですが、LiPo側に過充電/過電流保護回路がある事もあり、コストの関係でこの構成を採用したと思われます。
SS14は複数の会社から発売されておりデータシートは「PANJIT International Inc.(強茂股份有限公司, https://www.panjit.com.tw/)」製のものが以下から入手できます。
https://bit.ly/2t6fPhm
PNPトランジスタ S8550
“2TY”のマーキングがあるのは汎用のPNPトランジスタです。エミッタがUSBコネクタのVBUSピンに、コレクタが1kΩの抵抗を介して電源LEDに接続されており、Micro USBコネクタからの充電時にLEDを点灯させるのに使われています。
S8550も複数の会社から発売されておりデータシートはJIANGSU CHANGJIANG Electronics Technology Co.,Ltd (江苏长晶科技股份有限公司, https://www.jscj-elec.com/) のものが以下から入手できます。
https://bit.ly/2O2sGZg
まとめ
メインボードのパターンレイアウトも特におかしいところはなく、LiPoバッテリーの充電制御回路を除けば全体的にきちんと設計されている印象です。
保護回路内蔵のLiPoバッテリー、コンパクトなBT対応メインボード等、電子工作に使えそうなものも多く、600円(税別)はかなりお買い得感が高い製品だと思います。