無印良品のマニュアルMUJIGRAMの知識創造プロセスを分析〜手順共有ではなく知識共有をするためのマニュアル活用について〜
学習力が高く、実行力もあるマーケティング組織のつくり方は、無印良品にヒントがあるかもしれない!
今回は、無印良品のマニュアル活用から、学習するマーケティング組織のつくり方について考えていきたいと思います。
マニュアルってどんなイメージがありますか?
マニュアルと聞いてどんなイメージがありますか?
自分は、マニュアルが機能して企業の競争力が生まれた事例は聞いたことがありませんでした。
無印良品のことを調べていくと、マニュアルが競争力の源泉になっていて驚きです!
無印良品には、下記のボリュームのマニュアルが存在しているようです。
2000ページの「店舗運営マニュアル」と
6600ページの「業務用マニュアル」
この言葉だけ聞くと、よくある形式だけのマニュアル。
みんな大好き、無印良品強さの秘訣はマニュアルに?
みんなに愛され、海外市場含め右肩上がりの成長を続ける無印良品。
この企業の強さの裏にはMUJIGRAMというマニュアルがあるとのこと。
少し前の記事ですが、Newspics・イノベーターズライフの特集にて良品計画の会長である松井さんの記事が組まれ、無印良品のマニュアル活用が話題になっていました。
無印良品のMUJIGRAMの概要を理解するためにはこの2記事を読んで頂きたいです。
無印良品の「自分と組織を急成長させるシンプル仕事術」
視察殺到!無印良品「マニュアル」の中身
現場で知恵を集め、定期的に更新することで「血が通ったマニュアル」を作成する。マニュアルをマネジメントツールとして活用し、社員の学習を促し、競争力を生み出していく。
このマニュアル作成のプロセスが非常に興味深かったです。
マニュアルと知識創造プロセス
知識創造のプロセスがどうなっているのかを分析してみました。
知識創造プロセスに関しては、組織学の名著「知識創造企業」をぜひ読んでみてください!
野中先生のSECIモデルに当て込むとこのようなイメージ。
無印の知識創造プロセスをSECIモデルで分析
SECIモデルの説明と合わせて、無印良品の組織学習プロセスを分析していきます。
共同化Socialization=良品集会
良品集会の場(全国の店長や本部スタッフが集まる)という場があるようです。
マニュアル自体に注目が集まりますが、マニュアルを進化させる・組織の競争力につなげるための 鍵は、この知識共有の場だと思います。
ここで現場リーダーの暗黙知が共有され、知識がブラッシュアップされるための種が蒔かれる。
現場改善のための30%委員会
さらに、店舗の業務改善から調達構造や物流の見直し、店舗の賃料や内装の変更など、あらゆる経費削減をするための議論が行われる場があるそうです。
参考:他社に学び復活、過去最高益に「30%委員会」で販管費を削減
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090715/200157/?rt=nocnt
表出化Externalization=刷新し続けるマニュアル
マニュアルを作成・更新するプロセスにより暗黙知が形式知に変換されます。
無印良品のマニュアルは毎月更新される。
「マニュアルは使うものではなく、つくるもの」と社員の意識には浸透しているようです。 全員がつくるから、現場の暗黙知は共有され、個人の知が組織の知へと変換されます。
マニュアルの更新は、仕組みの仕組みを常に、最新版にするためにも必要不可欠
MUJIGRAMの最大の特徴は、店舗スタッフの改善提案によって内容が更新されることにあるようです。
連結化Combination=リーダーによる落とし込み
リーダーが率先して導入する。現場に物語るプロセスにより、現場に知が浸透します。
無印良品では、リーダーが率先して活用することが推奨されているようです。
マニュアルを一括管理する部署をつくっていることも、形式知を強固なものにするためのポイントだと思います。
組織として血の通ったマニュアルを作成し、現場に浸透させるということが徹底されています。
内面化Internalization=実行
マニュアルを現場が実行することで、組織の文化に知が浸透します。
マニュアルを作成することで、仕事の取り組み方が変わる。このプロセスでは現場での改善を徹底的に進めていきます。
今まで暗黙の了解の上で成り立っていた業務の問題点が見える
習慣化している業務ほど、マニュアルをつくると、問題点や改善点が見えやすくなる
現場だけではない 本部の標準化を進める
現場だけではなく、本部の標準化を進めていることも興味深いです。
業務標準化委員会という仕組みをつくり、販売部や店舗開発部、経理財務担当、総務人事担当いった本部の業務もマニュアルに整理される。
また、WH運動(無駄な業務を一掃しようという全社運動)というものも実行され、不要な業務は徹底的に排除している。
現場だけではなく、本部でも徹底的にマニュアル作成から改善を行うことで、組織文化に根付かせる。
素晴らしいですね!
経理の仕事をすべて覚えるのが15年かかっていたそうですが、松井さんが就任し、マニュアルづくりを進めて2年に短縮したそうです。
参考:15年かかるのは口伝の世界だからbyホリエモン
寿司職人になるのが、10年かかっていたのが、カリキュラムが組まれることで3ヶ月で職人になれるようになっているのも似ていますね。
ホリエモンのこの発言も、形式知化をしっかりして、現場での自己学習をするプロセスの大切さを表していると思います。
「10年修行なんか意味ねーよ!数ヶ月だけ寿司学校で学んで海外に進出しろ」
・ホリエモンチャンネルについての記事
MUJIGRAMから学ぶ知識創造プロセスのまとめ
知識創造プロセスの4ポイントをまとめました。
①現場知識の共有をする場を生成
②マニュアルは「つくる」ものとして社内に浸透
③泥臭いリーダーシップで現場へ浸透
④仕事の見える化、改善を繰り返す
つくって終わりでは、血の通ったマニュアルは生まれません。
無印良品の場合は、社長の松井さんがマニュアルづくりの中心に関わってきたことは成功のポイントとして大きいと思います。
コンサルティング会社がマニュアルつくっても高確率で失敗する気がします。
なんと、松井さんがMUJIGRAMの定着には5年かかったとのこと。
改めて認識する必要があることは、マニュアルは作成して、1ヶ月、2ヶ月で成果が出るものではないということ。
組織文化に根付かせて、知を創出して、競争力を生み出すためには、5年近くの期間が必要。
無印良品では、店舗の通常業務だけではなく、名刺の管理、販売スタッフトレーニングシステム(部下の育て方)までがマニュアル化されているらしいです。
早速、手順共有ではなく知識共有をするためのマニュアル活用を現場でも実践してみようと思います!
マーケティング組織における組織学習プロセス
個人的に、マーケティング組織にもマニュアルが必要だよな・・・と思っています。
なぜかというと、マーケティングの仕事は、人に依存しやすく、組織の中で再現性のある形に落とし込めていないことが多いから。
無印良品はをマーケティング観点で分析すると、標準化を徹底的に図ると同時に、下記記事にあるような、ユーザーへの共感をベースとした商品開発・コミュニケーションがあるから無印は愛されるのだと思います。
「マーケティング組織における組織学習プロセス」というテーマは、今後掘り下げていきたいと考えています。