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第31回電撃大賞 大賞受賞者 電磁幽体先生について


はじめに

はじめまして。ラノベ作家の有象利路と申します。
本記事はデビュー前に惜しくも亡くなられた、第31回電撃大賞 大賞受賞者 電磁幽体先生のことを語る記事です。
私のnoteは基本的にこの記事をヘッダーに固定しますので、彼に興味のあった方は是非一読して頂いた上で、興味がない方もとりあえず読んで、いかに彼が愉快な人間であったかの一端を知って頂ければ嬉しく思います。

令和6年12月27日、このような発表が電撃大賞公式Xよりなされました。
受賞者の電磁幽体先生(以下、電磁くん)がデビュー前に逝去されました。
彼は私の学生時代の後輩であり、旧知の仲でした。

そのあたりの事情は、こちらの私のツイートと添付画像をお読み下さい。

あわせて、この過去記事も読んで下さればと思います。
この記事に出てくる後輩は電磁くんのことです。
これを書いた当初は、まさか彼が電撃大賞で大賞を受賞し、そしてこんな形で居なくなるとは思いもしなかったですね。
今この記事を読み直すと、バカをやっていたあの頃の楽しい自分達を思い出し、胸が苦しくなって記事ごと消したくなりますが、残しておきます。
記事を作り続ける意味は、そういうところにあるのではないかと思うので。

本記事の意義と私の役目

事実は小説より奇なり、とはよく言ったものですが、本当にこの言葉が今もなお存在する意味を痛感します。
彼が何となく声を掛けたノリのいい大学の先輩にラノベを書かせたら何故か文才があり、特に苦労することもなくその先輩があっという間に一撃でプロになって、数年後自分も同じ賞レースで頂点を取った上でプロになり、しかし処女作を刊行する前にこの世を去る。
三文小説ですね。これが私と電磁くんの人生であることを除けば。

電撃大賞ってもっと倍率がやばいくらい高くて、そもそもラノベ作家自体、なることそのものが結構難しい修羅の道のはずなんですけどね。
あの頃の私、そして電磁くんは、あまりそういうことも分かっておらず。
結果、「原稿を書いて送って落ちて、それを肴に酒を飲む」という当初の我々の雑な目的が、私と彼の人生そのものに多大なる影響を与えました。
(まあ彼は当時から本気で作家になりたかったと思いますが)

無論、後悔はありません。私は作家業を今も何故か続けており、しかし自分に向いているとも思い、ともすれば天職だとすら感じています。
電磁くんも、念願だったプロ作家の門扉を開き、荊と宝石が散りばめられたその道を進むことに、きっと最大限の期待と興奮を感じていたと思います。
それでも、私と彼の道が交差することなく、彼の道だけが途絶えてしまったのは、本当に残念ですし、無念ですし、惜しいですし、悔しいです。

だからといって私が悲劇の主人公を気取って、彼の遺志や想いを引き継いで彼の分まで頑張るから、皆様もより一層の応援お願いします……というのも何だかおかしな話です。
私は私で、電磁くんの有無など関係なく頑張ってますから。これまでもこれからも、そこは一切変わりません。単に、有象は電磁幽体と知り合いだった、という背景が一つこれを読んだ皆様の中に増えるだけです。
何よりも、彼をダシにしたいわけじゃない。というか彼が条件を満たさない限り、我々が実は旧知であることを伏せると決めた理由の一つは、お互いの背後にある看板を利用するのはなんか違うな……と、言わずとも両者が思っていたからです。

私は作家として七年先輩になりますし、彼は大賞作家という肩書きがある。
それらをプライベートの関係を引っ張ってきた上で、自分達に都合良くお互い利用することに、私も彼も抵抗がありました。
まあ、他にも伏せる理由は色々あるのですが、それこそプライベートな話なのでやはりここでも省略します。

ともかく、彼が居なくなってもその抵抗は今も私の中にあります。
ただ私は、彼のことを皆様に知って欲しいだけです。彼の作品も、その強烈な人柄も、残った誰かが語らねば絶対に知られない、彼の個性そのものを。
故にこの記事は、その一助となるべく作りました。

私が考える作家にとって本当の死とは、肉体的な消滅ではなく、生み出したものが誰からも記憶されず、忘れ去られていくことだと思っています。
それを私達作家は本能的に察しているから、誰も彼もが必死に新刊を出して、「忘れないでくれ」と言外に叫び続けているのですね。
その叫び声はよくよく聞くと、作者名だったり作品名だったりキャラクター名だったり、作家一人一人で中身が異なる叫びです。

その中で彼は、ただの一度も自分で叫ぶことなく去ってしまった。
肉体の死というどうしようもない必定が、他の人よりも遥かに早く訪れてしまったので。
電撃文庫さんは極めて有情であり、遺稿となった「妖精の物理学」を、どうにか一冊の本にして世に出してくれると思います。
本当に嫌な話ですが、その時はある種これまでの電撃大賞史上、最大の話題性を持って迎えられることが予想されます。

その時、その瞬間、電磁くんは確かに生きていることになる。
ただ、その後はどうでしょうか。
もう彼は叫ぶことが出来ない。少しずつ、或いは急激に、彼の名前も彼の作品も、皆様の記憶から消えていきます。次々と他の作家が、それこそ私だって、死なないためにまた叫んでいくわけですから。
もう二度と新刊が出ない、著作が一冊で終わった作家のことなど、お願いしたところで身内以外は覚えていてはくれないでしょう。

話が長くなりましたが、では翻って私の役割とは、叫べなくなった彼の代わりに己の作品をガンガン宣伝しつつ、その余力で彼の作品や彼そのものもついでに叫んでやるか、みたいな感じです。
私は一応彼の身内みたいなものなので、彼のことは多分一生覚えてますし。
じゃあ私が叫べる立場にある限りは、ついでに皆様の脳裏に電磁幽体のことをちょこちょこと挟んでいきますよ、と。
私の作家生命が続く限り、電磁くんの影がチラついたらもう充分です。逆に私が作家を辞めたら、電磁くんも完全に消え去る。
一蓮托生の関係性を、彼の死後に勝手に構築することにします。

そんな感じです。まずは自分ファーストで、あいつは二の次。
ただ私も叫べなくなったら終わりなので、そうならないようにこれまで以上に努力していきます。その理由が一つ増えただけですね。
なのでこの記事は実のところ、弔文みたいな物悲しい堅苦しいものではなく、もっとラフに読者の方に楽しんでもらいたい、いつもの私のnoteの記事と変わりありません。
次の項目から戻していこうと思います。よろしくお願いします。


彼の人間性

総合して




クズです(直球)



何なら接頭語にゴミをつけてもいいのですが、まあ今回はしゃーなしで彼の顔を立てるという意味で、そこまでの罵倒はしません。
そしてより正確性のある表現をするならば、「クズだけど愛嬌ある善変人」と呼ぶべきでしょうか。少なくとも真っ当ではない男でした。

もうとにかく他人から叱られることを何度も繰り返すやつです。
寝坊遅刻とかシンプルに遅刻とか約束事を忘れるとか他にも多数……。
私は人生においてキレることはあっても、心の底から激怒することは数えるほどもないのですが、あえて数えるなら半分くらいは彼のせいです。

とかく不真面目だったのですね。私も真面目ってわけではないのですが、決まり事や約束は守る信義則にうるさい人間で、逆に彼は自己都合でそれらをぶっちぎるタイプの猛者でした。
過去の記事で触れていますが、そもそも私が電撃大賞に送るのを二年待たされている時点で、彼の猛者っぷりが分かるのではないかと思います。
(待ちたくて待ってたわけじゃないですよ 当然のことながら)

彼のマイナス部分を語ると無限に文字数が膨らむので意図して抑えますが、じゃあ何でそんなやつと私は長年つるんできたのかというと、これもまた不思議な話でして、彼は他の人間には持ち得ない謎の魅力がありました。
ただそれはカリスマ性とか天才性みたいな、煌めくプラス方向の粒子的なものではなく、もっとドス黒くニチャニチャとしたヘドロっぽい負の魅力です。人類が生み出した合成珍獣とのふれあいコーナー的なの……。

その上で彼はマジで正直者なので、嘘が下手というか全くつけません。
社会的に鑑みた際の悪事にも義憤を覚えますし、情に厚いところもある。
いわゆる「悪いやつではない」という評価が当てはまり、更に言うなら「多分いいやつ」と呼ばれることが多いです。
少なくとも彼と接した人間は、彼のことを変人と呼んだ上で、しかし悪いやつじゃないと半端に評するわけですね。ヌメヌメしたマーブル色の人間性は、そんな曖昧な評価しか下せなくなるのです。

彼と類似した人間を私はこれまで人生で一人も見たことがないので、おそらくは彼は絶対的に個性的な人間なのでしょう。
そしてそういうものに魅力を感じる人間は少なくないことも分かるはず。
つまり総じて、正負に振り切れた魅力を持った変人です。
でもそれだと長いので、私はシンプルに「クズ」と呼んでいます。
そんな罵声が飛び交うコミュニティでした。

彼自身がそういう思考の持ち主だったのですが、仮に自分がクズだと知られた場合、それで寄って来ない人間はそもそも彼もノーサンキューで、それを踏まえた上で近寄ってくる人間と仲良くしたがるタイプでした。
すげえ傲慢でわがままな思考ですね。そういうとこやぞ(半ギレ)
おめーは選別される側なんだから選別してる感を出すな(全ギレ)

創作力至上主義

彼はボケかツッコミかで言うとボケ寄りのタイプで、私はどちらかといえばツッコミ寄りのタイプなので、漫才的な相性は良かったと思います。
幾つかの彼の言動やエピソードは、そのまま自著に転用したこともあります。アーデルモーデルの一部の設定とか……。
様々な人との関わり合いこそが、創作における最大の糧であると私は考えており、彼の面倒をよく見ていたのもそのせいだったのでしょう。

一方で彼が私に懐いていた――こんなことを自分で言うとアレですが、彼は割とガチめに私のことが大好きでした――のも、彼は創作とそれに関わるあれこれを己の優先順位の頭に置いていたので、同じく創作に対して真面目かつ本気だった私のことを敬ってくれていたからだと思います。
意外とそういう人間って身近に居ないものですから。

「有象先輩よりすごい人を見たことがない」と、結果的に最後となった彼との会話で、彼は泣きながら私に語っていました。
「お前の交友関係がクソ狭いだけ」「プロの世界は俺以上がごまんといる」「俺もお前よりやべーやつを見たことがない」みたいな感じで、まあいつも通りのノリで私は返したのですが。
あと彼は創作に関してはプライドの塊なので、んなこと言いながらお前はお前がナンバーワンって思っとるやろがい、と考えています。
(創作者ってだいたいみんなそうですから)

さて、彼は二足で歩くタイプの動物なので、彼に言うことを聞かせたければ彼よりも強いことを本能に叩き込んでやらなければなりません。
創作第一で生きる彼にとって、強さとは腕力ではなく創作力です。
釈迦もキリストもマフィアのドンも彼に説法をしたところでガチ無意味ですが、プロ作家の言うことならある程度聞くので。
なので私は彼に言うことを聞かせるため(だけではないのですが)色々と創作そのもので彼をぶん殴ってました。単に大学の先輩ってだけでは奴はマジで何一つ言うことを聞かないので。

彼が私を尊敬したのは、純粋に私が創作で優れていたからではなく、彼に言うことを聞かせるために、徹底的に私が創作力を上げていったからですね。
本末転倒だったわけです。彼が素直だとこうはなっていなかった。
かつて異能バトルものを一切書いてなかった私を、それが得意な彼が若干侮ってきたので、すぐに異能バトルものの長編を書いて叩き付けてやったりしました。(電撃四次で落ちたやつがそれ)
その時彼は「ファ~www」と、汽笛めいて鳴いていました。(彼はよくそんな鳴き声を出す生物)

犬を躾けるには飼い主が握力100kgでぶっ叩く必要があったので、とりあえず飼い主が握力を鍛え続けたら、そのままついでにプロになった感じです。
意味が分からないですね。犬も飼い主も……。
っていうか一番意味が分からないのは、それでもこの犬は最後の最後まであんまり私の言うことを聞かなかったことでしょうけど。
握力10トンくらい必要だったのですかね? すぐには無理やわ。
ホンマもうお前は……。(幾度となく彼との会話でぼやいたやつ)

良くも悪くも人生における己の主観で、ここまで創作を中心に持ってきた上で生きている人間など、プロの世界でもそうは居ないと思います。
誰だって生活があって、そこに関わるあれこれに意識を割かれるので。
そこに創作が絶対混じることは、そんなにない……少なくとも一応プロ作家である私はないですね。創作抜きに楽しんだ方が人生面白いですし。
なのに常に手帳を持ち歩き、面白い設定やら何やらを思いついたらメモをするという行為を、学生の頃から彼はやっていました。
財布や身分証を忘れてもその手帳だけは持ってくるタイプの化け物です。
逆にしろ(当時の本音)

本能で彼は元々プロ作家級だったわけですね。まあ後は意識と努力と実践と反省と改善が足りてなさすぎたから、デビューが遅れたのでしょう。


悪癖の宝庫


悪口しか出てこないのか??

そう思われるかもしれませんが、書いている私も現在進行系で「コイツの悪いとこしか出てこないな……」と驚いています。
空き缶をきちんとゴミ箱に捨てるやつよりも、その辺の道端にポイ捨てするやつの方がどうしても印象に残るではないですか。
それでいくと彼はポイ捨てされた空き缶を拾ってペロペロ舐めるようなやつなので、殊更そういう方面が印象に残るのです。
というわけでそんな印象を皆様に残していきたいと存じます。

まず何度も触れますが、本当にサボり癖のひどいやつでした。
創作を人生の真ん中に置いた生き方をしているのに、その創作をせず(妄想だけする)、創作をやらなかった自分に焦って自己嫌悪するという、一人でSMプレイを完遂するような真似をよくしていました。
その度に私は「書け」と人生百回分くらい彼に言ったのですが、私の握力がまだトン超えしていないからか、あまり響いていなかったです。

じゃあその間何してるかっていうと……スマホゲーとかSNSとかですね。
近年だとVTuberばっか観てました。
その割に私に「VTuber観てる暇あったら原稿やれ」と言われると、「真剣に観ていない、流し見してるだけ」と謎の反論をしてきます。
彼は己のことを論理的かつ客観的な人間と勘違いしていますが、実際はバリバリ本能的で主観的な直情タイプです。
生きていて他者を論破する経験は普通あまりないですが、私は彼との会話でその経験を逆転系弁護士の100倍くらいしています。

サボり癖、逃げ癖、他責思考のクズ三種の神器を彼は立派に携えており、結果として低い方低い方によく流れます。
「有象先輩に書けって言われまくることがプレッシャーで書けない」みたいなことを言われた時は、仕方なく「書け」を「◯ね」に置き換えました。
信じられないことに、度々彼は己の不出来を私のせいにします。
ちなみに「じゃあ書かなくていい」と言うと、本当に書かなくなるので無意味です。そうまでして彼に原稿を書かせる意味が私にはないんですけど、まあ私も良くも悪くも変人というか、面倒見が良すぎると友人によく言われるようなタイプなので……。
心の奥底で、私は常に彼へ期待をしていたのだと、カッコよく言い訳しておきます。

承認欲求もバリバリ強いやつでした。
というよりも、「人からどう見られているのか」をやたらと気にするタイプで、自分でもそれが強いと言うくらいには自覚がありました。
ただそこも彼はズレており、なんていうか他人の目を気にするなら真っ先に改善する箇所を放置して、もうちょっと枝葉の部分に囚われるんですね。
いわゆる見た目とかファッションとか清潔感とかではなく、その時交わした会話のワードセンスだったりとか敬語の使い方だったりとか。
私はそれを踏まえて彼を「全裸になった時真っ先に乳首を隠すタイプの男」と評しました。彼は「流石にち◯ちん隠しますよ」と言っていました。
比喩やバカタレ。

なのでまあ、SNSもかなり依存するというか、彼をフォローしている方は周知だと思いますが、ホント日がな一日Twitter(現X)ばっかりやっていました。そんなにやることあるか? と私は思うのですが。
どう考えても彼が呟いた文字量の方が、一日の執筆量より多いので、そこをよく私に叱られていましたね。「逆やろ」と。
ならばと彼は、今度は一切呟かずリツイートばっかするんですけど。
前世がゴミクズ一休さんだったのかもしれません。

今だからこそ明かしますが、今際の近く――こんな表現本当に使いたくない――つまり2024年11月~12月上旬に彼のTwitter上のつぶやきが減少していたのは、私が数年ぶりに彼へ「Twitterばっかやるな」と叱ったからです。
正確には「やってもいい時とよくない時」を教えたというか。
プロになる以上、読者の方へ物語をお金を頂いた上で届けることになりますが、その過程をSNSは詳らかにしてしまいました。
創作者は誰も彼もが、机にしがみついて歯を食いしばって創作をしている……わけではないのですね。

「担当編集が担当作家のSNSを確認した時、原稿やらず〆切破ってんのにSNSで遊び倒す姿を見たら、その編集者はどう思う?」と彼に訊いたところ、今の自分の状況に重ね合わせて、ようやくSNSの運用について考えを改めたようです。担当編集を読者に置き換えても同様です。
別に彼が何をつぶやこうが、何をRPしようが構いませんが、それを見ている人間のことを考えた上でやれよ、と。
端的に言うなら原稿送ってからSNSやれって話ですね。

彼はそのことに全く意識が向いておらず、「過去の発言を掘り返されて炎上する可能性があるから、過去のツイートは全部手動で消した(のでSNSの運用は問題ない)」と豪語していたので、ズレもここまで来ると天賦の才だな……と思いました。
こういうところに乳首を隠す性分が出てるって話ですね。

プロ作家の方へ


彼の人間性とはちょっと異なる項目となります。
本当に、昔から彼は自分を追い込んで原稿をやるタイプでした。
他の悪癖なんて可愛いものです。
ずっと「そういうことはやめろ」と彼に言っていたのですが。
最後に話した時も、そのことは忠告したのですが。
(具体的に彼が何をしていたのかは、書きたくないので書きません)

もっとキツく、怒鳴ってでもいいから改善させるべきでした。
不摂生や不健康が自分に何をもたらすのかを、創作の技術とか社会常識とかよりも先に、彼へ教え込むべきでした。
ただ、私も過去に似たような感じで創作をしてしまっていたので、その背中を見せてしまったのが良くなかったのかもしれません。
結果、私は死にかけたことがあるのですが、そのエピソードを彼は忘れてしまっていたのでしょう。
武勇伝とか自慢話みたいにしてしまったから、彼へ残るものがなかった。
彼にとって私は、最悪の先輩だったと言えるのは、ただこの一点です。

断言しますが、己を追い込んで創作をすることは、何ら格好良くもないし、作品のクオリティにも直結しません。
単に自分がスケジューリングの出来ないやつだと白状しているだけです。
必死に頑張っていることには繋がりません。
シンプルにダサいですし、それがプロなら尚更失格です。
それでお金を頂こうとする姿勢は、浅ましいことだと思いませんか。

全てのプロ・アマ含む創作者の方が、この記事を今読んでいるのなら、追い込んで創作をするやり方を改めて下さい。
SNSでその姿を発信することすら、出来ればやめて欲しいです。
電磁くんと交流のあったらしい作家の方々の中にも、そういうやり方をしている方がいたようですので。
無論私もですが、そういう先達の間違った姿勢が、結果として後進に対し最悪の事態に繋がるきっかけを作った可能性はゼロではありません。

プロ作家は普通に寝て起きて食べて、普通に〆切を守って下さい。

それがプロです。
この姿勢を見せることがプロ意識です。
追い込まれないと書けないのなら筆を折りましょう。
才能ないので。

きつい言葉ですみません。皆さんを責めているわけではないです。
必死にならないとどうにもならない修羅場は確かにある業界なので。
これは自戒です。
私も無理しないと書けなくなったのなら、素直に引退します。
彼へ合わす顔がありませんから。


彼の作家性 ※後日加筆予定

良いところ

あるのかな……。
(後日加筆予定)

悪いところ

先にここだけ書いてやろうか……。
(後日加筆予定)

凄いところ

探さなくちゃ……。
(後日加筆予定)


電磁幽体エピソード集 ※随時追加予定

説教で号泣編

ちらりと触れたものの詳細となりますが、私が最後に電磁くんと直接会話をしたのは、2024年10月末日です。
11月某日に行われたKADOKAWAの謝恩会に彼も私も行っていたので、そこで会話することは出来たのですが、「約束」があるので我々は一切言葉を交わしませんでした。
(でもお互い姿はちゃんと確認していたりする)

というわけで最後――無論そうなるとは思っていなかった――彼と何を会話したかというと、まあほとんど説教ですね。
数年ぶりに直接話したのに説教がメインイベントになる辺り、最後の最後まで私と彼の関係性はあまり変わりませんでした。
彼はやはり駄目な部分が多くて、私はやたら口うるさい。

というわけで色々言いました。ただ普段の説教とは違って、彼はプロ作家になる以上、プロの世界を数年経験している私から見て、彼に必要なこととかをお節介ながら教えた感じです。
そしたら彼は説教中に大声で泣き出し、何言ってるのか全く分からない人語に近しい何かを、こちらに向けてビービー叫んでいました。

今まで説教中に彼が逆ギレしてくることは数度ありましたが、号泣だけは一度もなかったので驚きました。
いきなり脈絡なく成人男性に泣かれると、ドン引きというか「ええ…」となり、私は言葉を失いました。
皆様も上司や先輩に説教されたのなら、いきなり泣けば相手を黙らせることが可能だと思いますよ。

総合すると「先輩はこんな駄目な僕に優しすぎる」みたいな感じのことを言っていました。あと数年ぶりの説教だったので身に沁みたようです。
「今更気付いたのか」と私はすげなく返しましたが、「今更気付いた」と。
皆さん私は優しい人間ですので、彼のように数年かけてご承知おき下さい。

別に己を優しい人間とは思わないですが、彼の交友関係的に「真っ先に自分の駄目な部分を指摘して改善させようとする」のを、悪意ではなく性分的に言ってくる人間が、やはり後にも先にも私以外居なかったのでしょう。
それを優しさと捉えてくれたのが、彼の善性の現れです。
いやマジで私は全然優しい人間ではないです。
この記事を読んでも明らかなように、どちらかというと悪意に満ちていますし、人並み以上に人並み以下なので。
電磁くんと比べたらマシなだけで、私も立派なダメ人間です。
(どんぐりの背比べでしかない)

あと彼は自罰的なところがあり、それを比喩ではなくリアルで表現するので、泣きながら己をベチベチ叩いていました。
オンライン通話だったのですが、こちらにも打撃音が聞こえるほどに。
一番近しい表現をするならハリポタの屋敷しもべ妖精のドビーです。
よって普通に「ドビーかお前は」と言いました。鼻血出たらしいです。
話盛ってない?と思われるかもしれませんが、こういうことがガチで起こるからこそ、電磁くんは電磁くんなのですね。
(書いていてすごく嘘臭いと自分でも思ってしまう)

他はまあ、以降は書いていて辛くなることになるのですが、彼のプロ作家としての夢……というか目標についても聞きました。
「自分の作品がスマホゲーになってほしい」とのことでした。
彼がスマホゲー大好きなのは承知の上だったので、やっぱり自分の作品がそうなってくれたら嬉しいのでしょう。

もちろんそれは簡単な話ではないですし、むしろ激ムズな夢だと思いますが、語るだけなら自由です。
むしろ私はそういう創作者としての目標とか夢がないので、夢を語る彼のことを眩しく羨ましく思いました。
割と厳しい業界であることはもうすっかり知っているので、夢を見ることなんて出来なくなってしまったというか。ちっぽけですね私は。
でもアニメ化とかコミカライズ化ではなく、真っ先にスマホゲー化を目標に挙げる辺り、やっぱ電磁くんはなんかスケールが違うやつですね……。

彼がプロ作家としてどうなっていくのか、最早誰にも分かりません。
「妖精の物理学」は、もう良くも悪くも正当な評価を受けられないので。
まあ仮に「妖精の物理学」がスマホゲー化した時には、メインシナリオを担当するのは有象利路にしてくれや、とだけ書き記しておきます。

ただ、直近の彼のモチベは、「まずはプロで五冊出すこと」だそうです。
それは我々の「約束」で、これを守らなければ始まらないと。
五冊出さない限り、私は彼とリアル含めてこうしてコンタクトを取る気はないと告げています。何があっても無視すると言っています。
絶対に彼は困ったら私に甘えるので。そして私も何のかんのそれに応えてしまうので。そんなのお互い利なんてないですから。
ただ、こうやって最悪の離れ業で早々に私の歓心を買う辺り、もう本当に最後の最後の最後まで、私の言う事を聞かないやつでしたけど。

そして何故「五冊」なのかというと、結構残酷な話になりますが、私が同じ創作者としてフラットに彼を見た時、現状では五冊も本を出せないと踏んでいたからです。
作家性のところで詳しくは触れますが、やっぱり彼の弱点を一番理解しているのも私だったので。そしてそれが、業界で生き抜くにはかなり致命的であることも分かっていたので。
(あと彼は死ぬほど調子に乗りやすい人間なので、誰かが鼻っ柱を叩き折る必要があった)

ただ逆にそこさえ改善出来れば、普通にラノベ作家として生きていくことは可能であるとも思いました。「五冊」はその見極めのラインです。
受賞作が打ち切られるのなら、大賞ならば最低三冊は出すことが出来る。
ただ次に作品を出すのなら、担当編集に草案を出して、新シリーズの企画をゼロから作り上げていかなければならない。
それは単に書くだけではない、プロ作家特有の辛くて面倒な部分です。
他者とのコミュニケーションが何よりも必要になってくる。文才だけで相手を説き伏せることは、そんなものどんな作家も今は不可能。
しかも表沙汰にはならないので、彼の承認欲求はミリも満たせない。
腐らず、我慢に我慢を重ねられるかどうか。厳しいでしょう。

或いは受賞作が売れたのなら、同じ作品で五冊も話を続けなければならない。そんな経験、彼はワナビ時代から一切ありません。
趣味でシリーズものとかを作ったことがないのは分かっていたので。
それはそれで難しいことです。プレッシャーもすごいはず。
何より定期的に本を出すということ自体、遅筆な彼にとっては地獄であることなど火を見るより明らか。やっぱり厳しいでしょう。

ただ、これらが出来なければそもそもプロ作家としてはやっていけません。
彼の現状の能力では、そういう面でも厳しいだろうと。
改善は彼自身にしか出来ないことです。だから努力の必要がある。
プロ作家になったことはゴールではなくスタートで、スタートライン時点の能力でずっと走り続けられるかというと、今の彼だと絶対に無理ですから。
彼はちゃんと口に出して言わないと分からないので、この「五冊」の理由含めて伝えると、きちんと納得してくれました。

むしろ正々堂々と表舞台で私と絡むために、これをモチベにする、と。
前述の通り彼は嘘がつけない男なので、本心でそう言っていました。
じゃあもう私が言えるのは一つだけです。「頑張れよ」と。
あとは冗談めかして通話の終わり際に「今生の別れやな」と言うと、「今生の別れ(仮)なんで!!頑張るんで!!」とツッコミを入れていました。
まずは今生の別れであることを否定しろよ。(仮)でいいのかよ。
んでそういうところはきちんと実現しなくていいのですが。
天邪鬼なやつですね。

唯一の湿っぽいエピソードを最初に掲載しました。
最後にこうやって彼と話すことが出来て良かったです。結果的には。
次のエピソードは何にするか……また後日書きますが、割とたくさんあるので良いものを選んでおきます。


おわりに

最後に述べておくことがあります。
電磁くんの逝去に関して、私は阿南編集長と話す機会がありました。
責任感の強い方なので。お互い何かしらの責任を感じているというか。
その中で、電磁くんは幸福であったかどうかの話になりました。

彼は幸福であったと思います。

それが私と編集長の総意です。起こったことだけ鑑みれば、絶対にそんなことはないでしょうけど、そもそも他人の死なんて第三者から見れば総じて不幸だろうとしか判断出来ません。
ただ、彼は念願だったプロ作家になるという夢を叶えました。
しかも大賞という、もう上が存在しない最大の栄誉をもって。

更に、まだ改稿途中ではあったものの、担当のイラストレーターの方は決まっており、キャラクターラフはチェックしてもらったとのことです。
私もデビュー作のキャラクターラフをもらった時、死ぬほど嬉しかったです。以降もお仕事の度にキャラ絵は頂いていますが、嬉しくはあってもやはり最初の感動に勝ることはもう絶対にありえない。
そのくらい最初に頂いたキャラクターラフというものは、ラノベ作家にとっては嬉しくて、未だに思い出せる出来事です。

彼がそれを味わうことが出来たと聞いて、本当に嬉しかったです。
SNSを見たら分かるように、イラストにはうるさい男だったので。
もちろんラフだから、完成稿ではないでしょうけど。
自分の脳内にある世界に住むキャラクターに、具体性のあるビジョンがつくという経験をしたいから、おそらく多くの方はラノベ作家を目指します。
じゃあ、あの電磁くんが喜ばないわけがないですね。

なので正確性を加味すれば、彼は幸福の最中で去ったと言うべきでしょう。

辛いことや苦しいことは、むしろ出版後に襲いかかってきます。
彼はジェットコースターが上り詰める途中で止まってしまった。
それは幸せなことです。
なので、過剰に彼が可哀想であるとか悲惨である不幸であるとか、そういう評価を下すこと自体は止めはしませんが、少なくとも彼に近しい人間はそんなことを思っていないことだけは、この記事で伝えさせて下さい。

2024年12月28日現在、「妖精の物理学」は刊行に向けて検討をしているそうです。それがどういう形になるかは私には分かりませんが、彼がアホみたいに依存していたSNSをもってして、皆様が「読みたい」という声を上げて下されば、きっと前向きに企画が進んでいくと思います。
叫べなくなった代わりに叫ぶのは、何も私だけの役割ではありませんので。

というわけで長くなりましたが、ここまでお読み頂きまことにありがとうございました。
今後も有象利路とついでに電磁幽体をよろしくお願い申し上げます……。


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