冷凍食品を使ってつくる、エクストリーム系チャーハンのつくり方
東京で奥さんとマンション暮らしをするようになり、そして娘が生まれた。娘はいま3歳になる。かつては自由気ままに山に登ったりキャンプをしたりするのを趣味にしていたが、今は娘と一緒ということでなかなか自由気ままというわけにも行かなくなった。しかし不自由感はそれほどない。たしかに娘と一緒だと行動範囲に限度があるけれど、娘の成長とともに自分の行動範囲が徐々に広くなっていくのが存外に楽しいことであるからだ。それはまるで失われたかつての自分の能力を少しずつ取り戻していくような感覚だ。娘の成長は己の成長でもある。それが素朴に嬉しい。
最近の娘は体力がついてきたので、俺と二人でBBQに行けるようになった。とはいえ一口にBBQと言っても難易度にはかなりの幅がある。それは一口に富士登山と言っても、五合目から登るのか、ゼロ合目から登るのか、真冬の富士山に登るのか、で難易度が全くことなるのと同じことだ。
俺の言うBBQとはそこそこ難易度が高い方のBBQ、すなわち自力BBQのことである。自力BBQとは耳慣れない言葉かもしれないが(当然だ、俺が勝手に言ってるだけなのだから)、一言でいうと(1)公共交通機関を使って(2)機材持ち込みで行うBBQのことだと思って頂きたい。つまり自分のバックパックに必要最低限の機材を積み、食材も積み、公共交通機関を使ってキャンプ地にたどり着き、足りないものは現地で調達する、というスタイルのBBQのことである。これを3歳の娘とやる場合には、娘の着替えなど余計に積んでいかねばならないし、娘になにかあったときのための余力もキープしておく必要がある。最悪の場合、すべての行程において娘を背負っていかねばならないという事態も想定しなければならないからだ。
そう、これは通常のBBQの概念を越えたエクストリーム系競技としてのBBQである。小さい子と一緒だとなかなか遠出のアウトドアが楽しめない…などと嘆くのは早計である。その辺でできる手軽な野外レクリエーションも難易度を最高レベルに上げれば大自然の脅威に立ち向かう人間の挑戦、という趣になってくる。エベレスト登頂が「冬季無酸素単独」だと最高難度であるように、「3歳児同伴自力BBQ」は数あるBBQの中でもけっこうな難易度ではあるまいか。
今回行くのは赤羽岩淵駅から徒歩15分、荒川のほとりにある荒川岩淵関緑地バーベキュー場である。かまど、水洗い場、トイレ、と必要最低限の施設はそろっている。
まず荷物の選別だ。荷物積み放題のクルマでいくBBQにはこういう苦労は無いが、自分が背負うバックパックにしか機材は積めないので厳選する必要がある。
BBQでは焼き鳥をつくろうと思う。ただし現地で肉を切ると余計に道具が必要になるので、可能な限りの下準備は家で行い、BBQでは焼くだけ、という状態がのぞましい。
塩はすでに振ってある。この状態で持参すれば包丁もまな板もいらない。
冷凍食品のチャーハンである。BBQに冷凍食品なんて…などと思う人は自力BBQというエクストリーム競技の理解度が浅い。みよ、上級登山者の山で食べてる食事を。みなフリーズドライとかフレークみたいな食事をとってるじゃないか。それらは携行性やいかに簡単にエネルギーを摂取できるかという観点から必然として選ばれたものだ。自力BBQでも同じことである。すなわち、冷凍食品は(1)保冷剤の代わりとしても使用できる(2)火が通っているのですぐに調理できる(3)美味しい、という点において優れている。そして我慢のきかない小さい子どもが同伴ともなればなおさら現着してから料理が出来上がるまでの時間短縮が求められる。なによりチャーハンは娘の大好物だ。ゆえに冷食チャーハンは必然である。
すべての荷物に必然がある。いや違うな。必然のない荷物は持っていけない。
荷造りからすでに自力BBQは始まっている。
酒。これもまた必然である。野外で火を起こしながら飲む酒は本当に美味しいし、公共交通機関を使ってわざわざBBQに行くのはBBQで酒が飲みたいせいでもあるからだ。今回は子どもも一緒なので量もアルコール度数も控えめである。
なんとか収まった
娘。冬晴れの寒い日であったが河原でチャーハン焼きに行こうと誘ったらこの時点でテンションマックスである。
わーい、ててってー。娘も本当に楽しんでいるの、伝わっているだろうか…。娘と同じ趣味だと休日が楽しい。
JRで赤羽に着いた。本当は南北線の赤羽岩淵の方が目的地に近いのだが、赤羽を利用したのには理由がある。
赤羽駅のすぐ近くにホームセンターがあるからだ。
燃料を調達。この無駄のないルート選定力も自力BBQの要素に必要である。
赤羽駅からBBQ場まではHPの案内では徒歩22分となっているが、重い荷物を抱え3歳児と一緒だとなんだかんだ40分近くかかる。
赤羽岩淵ロングトレイルを行く。
行き止まりにぶち当たった。
土手だー!
うんせ、うんせ。
着いたぞ!悠久の時を流れる偉大な母なる川、荒川…
テンションがあがりすぎトレイルランナーと化した娘。
バーベキューエリアに着いた。
予約したサイトはここ。かまどがあるので楽勝である。
娘には薪を集めてもらう。重要な任務である。
俺は酒を飲みながら火おこし。バーナーがあるのでわりと力技でも火がつく。酒を飲みながらの焚火は最高である。
チャーハン作るよ!
ほらすぐできた。現着してからチャーハン焼き上がりまでわずか15分という早業である。
とりあえず娘が食べられる食事が確保できれば、あとは酒を飲みながらゆっくりとでいい。
どうですか?
「おいしー!」
よかった、美味しいよね。お父さんもこのチャーハン好きだ。
焚火が熾火(おきび)になったので焼き鳥を焼く。
美味そう。炭火で焼いたらなんでも美味しい。
冷食チャーハンが余ったので娘に「チャーハンつくってみる?」と聞いたら「うん、やる」とのこと。
ちょうへっぴり腰だけどよく頑張った。娘がつくったはじめてのチャーハンである。
おいしいね。
あっちっち。
完食!
洗い物は新聞紙に包んでバックパックに積んで持って帰り家で洗う。
洗い物も無いので撤収時間も極めて短い。
帰りは地下鉄。お疲れ様でした。