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20代がゼロから人脈を作るには?

なぜ「人脈」と聞くと嫌な感じがするのか?

若い人の中には「人脈」と聞いて、嫌なイメージを抱く人もいるかもしれません。

たしかに「俺にはこんな人脈があるんだぞ!」と自慢していたり、社名や肩書きだけで判断するような人には近づきたくないですよね……。

そもそも「人脈」という言葉自体に「利用する/される」というニュアンスが含まれてしまっているのも原因かもしれません。

僕は、そういう「利用する/される」といったような「人脈」には意味がないと思っています。

皮肉なことに人脈作りが目的化した時点で、いい人脈はできないからです。

なぜ人脈を作るのか?

僕は日頃から、さまざまな業界の人とご飯にいったり、勉強会を開いたりしていますが、そうやってネットワークを広げているのは当然「人脈を利用するため」ではありません。

そうやってつながっていると、あるときピピピッとつながって、大きな価値になることがあると思ってやっています。

僕らには「こんな社会課題を解決したい」といった目的があります。

その目的を達成するための「仲間」を集めているわけです。「この人とだったら、こんな大きなビジネスができるかもしれない」というように、目的を一緒に達成するための「仲間作り」をしているのです。

どちらかだけが得するような関係は長続きしません。そうではなく、お互いに「助けたいな」と思える関係を作ること。そうやって「仲間」になって一緒にいろいろやっていきたいなと思える関係じゃないと意味がありません。

「人脈作り」というと、人と人がお互いに向き合っているようなイメージを思い浮かべるかもしれません。でも、僕らの「仲間作り」はそういう図式ではなく、仲間として横に並んで「共通の目的」を見つめるようなイメージです。そうすることで、初めて意味のある関係性が作れると思っています。

ほぼゼロの状態から人脈を作るには?

こうして偉そうに語っている僕ですが、昔から広い人脈を持っていたわけではありません。地方出身ということもあり、就職したばかりのころは、人脈なんてまったくありませんでした。

しかし、そこから約30年。

経産省、A.Tカーニー、ドリームインキュベータで働くなかで「ああ、ネットワークって、こうして広げるんだな」「こうやったら生きるんだな」ということがだいぶ見えてきました。

今回は特に20代の「まだ人脈がほぼゼロの人」向けに、これまでに培った「人脈作り」についてシェアしてみたいと思います。

①まず、社内に目を向けてみる

「人脈作り」と聞くと、いきなり社外を見てしまいがちです。パーティーやイベントに参加して、手当たり次第に名刺を配り歩いたり、Facebookでいきなりメッセージを送ったり……。

でも、そこから「意味のある人脈」ができることはほとんどありません。

大切なのは、まず「社内」に目を向けることです。

僕の体感ですが、どんな会社にも1割くらいは面白い人がいます。そして、その1割の人たちは、会社をまたいで「他社の面白い人」とつながっていることが多いのです。

だから、社内の「面白い人」に信頼されれば、芋づる式に、どんどん外部の面白い人を紹介してもらえるようになるはずです。

大企業の人は「社内にはつまんない人ばっかりだ」と思いがちですが、実はそんなことはありません。気づいていないだけで、実は身近なところに、ものすごい財産があったりします。

まず「社内の1割」に食い込むこと。

そこでネットワークの「土台」を作ることができれば、あとは自然と広がっていきます。

「10頼まれたら、20返す」イメージで

社内の1割に食い込むには「きみ、面白いね」と思われる必要があります。そのためにはやっぱり一生懸命仕事をするしかありません。

僕自身、新卒で入った経産省では死にものぐるいで働きました。

当時の経産省には「東大文一の超エリート」がドサッといました。彼らは同期だけでなく、上下ともに、すごいつながりを持っていました。一方で僕は地方の大学出身でしたし、そもそも何のつながりもない。入省当初は「まったくの別世界だな……」と思っていました。

でも、仕事を一生懸命頑張っているうちに、少しずつ省内のスゴい人たちからかわいがってもらえるようになりました。

心がけていたことはシンプルです。

言われたことは、なるべく早くやる。そして、期待以上のアウトプットを出す。「10頼まれたら、20で返す」くらいのイメージです。さらには、相手の求めていることを察して、先回りして動く。

そうやって必死で仕事をしていると、それがまわりの信頼を得ることになり、一目置いてもらえるようになったのです。(ちなみに当時培われた信頼関係はとても強力で、今でもいろんな場面で助けてもらっています。)

②「ファクト」をお土産にする

よく言われることですが、誰かに近づきたいと思ったときに大切なのは「ギブ」の精神です。

社内であれば、期待以上の仕事をすることが「ギブ」になると思いますが、社外の人に会いに行くとき「手ぶら」で行くのはオススメできません。

別に、手土産を買っていけと言っているわけではありません。いちばんいいのは、ファクトを持っていくことです。

僕も初めての人にアポをとるときは、ただ「会いたいです」というようなことは言いません。必ず「〇〇についてディスカッションさせていただけませんか? 調べて整理したものがあるのでお持ちします」とファクトを提示するようにしています。

かつて、尊敬する先輩が「若い人は哲学を語るな。ファクトを語れ」と言っていましたが、まさにその通り。

ファクトを仕入れることなら、20代の実績や経験がない人でもできるはずです。まずは「うちの業界では、今こんなことが起きています」とか「〇〇さんが、こんなことを言っていました」といった生の情報や、本で勉強した内容や、インタビューで聞いたことでもいいでしょう。

そうやって必ず「ファクト」をお土産として持っていけば、相手も快く会ってくれるはずです。

「相手が知るべきだけど、知らないこと」を語る

これは前社長の山川さんに教えてもらったことなのですが、ファクトを提供するときのコツがあります。

それは、相手が知るべきだけど、まだ知らないことを語るというものです。

相手にとっては専門外で知らないけど、知るべき情報。そこを見極めて「これ、知っておくべきですよ!」と教えてあげると相手は喜んでくれます。

僕も以前から他分野・他業界の情報を提供することはあったのですが「相手が知るべきだけど、知らないことを語れ」という表現はわかりやすく、とてもうまい表現だなと思いました。(詳しくはぜひ山川さんの著書『瞬考』も読んでみてください!)

「相手が知るべきだけど、知らないこと」というのは、

・政府系の人には「技術」の話をする
・技術系の人には「ビジネス」の話をする
・ビジネス系の人には「政策」の話をする

といったことです。それぞれ、なかなかゲットしにくい専門外の情報だけど、知っておくべき情報。知っておくと役立つ情報。そういうものを惜しまずに提供するわけです。

いろんな業界やいろんな立場の人に会っていると、その場その場で情報を得ることができます。そうやって得た情報を別の場所で提供してあげる。

もちろん出してはいけない情報はペラペラ話すべきではありませんが、別に機密情報でなくても、業界や立場が違えば、公開情報であっても価値になるものはたくさんあります。

少し高度かもしれませんが「この人にはどんな情報があると役立つかな?」とつねに想像しながら、人に会いに行くことが大切だと思います。

③「一度会ってそれっきり」を防ぐ魔法のフレーズ

よくあるのが、一度会いに行ったけど、それっきりになって疎遠になるというパターンです。これでは「人脈ができた」とは言えません。

大切なのは「2回目のアポが取れるか」です。

部下にもよく「お客さんやパートナーには何回も会いに行け」と伝えています。何回も会ううちに、だんだんと好きになってもらえて、仲間になってもらえるからです。

ただ、特に若手のうちは次のアポを取り付けるのは難しいもの。僕も若い頃は「どうしたらまた会ってもらえるかな?」と必死に考えていました。

そこで編み出した魔法のフレーズがあります。

それが「宿題にさせてください」というものです。

どういうことかというと、例えばミーティング中、相手の質問に対してうまく答えられない部分があったとします。そのときに「すみません、そこはまだ勉強不足なので、宿題にさせてください」と言うんです。そして会社に戻ったらバーっとそこを調べて、また持っていく。すると自然にまた会うことができます。

宿題は100点で返さなくもOKです。わからないところがあれば、70点、80点でもいい。「ここまではわかりました!」と今の自分ができる精一杯のものを持っていく。

すると相手は「こちらの話にこれだけ興味を持ってくれて、いいやつだな!」と思ってくれます。それだけでもこちらの愛が伝わるので、相手からも好意を持ってもらいやすくなります。

「次回はこの部分を調べてくるので、議論させてください」「この部分はまだ調べてなかったので、宿題にさせてください」といったようにいかに宿題を作ることができるか? を意識してみると関係が続きやすくなります。

④「怖い人」ほど懐に飛び込め

ちなみに怖い人と仲良くなるにはどうすればいいでしょうか?

「この人、怖いな」と思ったら「その場はなんとかやり過ごして、次は会わないようにしよう」と思う人がほとんどだと思います。僕もかつて、初対面のミーティングで、いきなりブチギレられたことがありました。

ただ、そこであえて相手の懐に飛び込んでみるとすごく大きなチャンスに巡り会えることがあったりします。

僕は怖い人でもすぐに見切りをつけず、あえて何度も会いに行くようにしています。「あなたの話を聞きたいんです!」と伝え続ける。そうすると、相手が「ただの怖い人」ではないことが、だんだんわかってきたりします。

少し怖そうでぶっきらぼうに見える人ほど、実はめちゃくちゃ優秀で素晴らしい人だったということはよくあります。初対面で感じが悪いからといって、その人が「悪い人」だとは限らない。こちらのことがよくわからず不信感を抱いていたり、たまたま忙しくて虫の居所が悪いだけだったり……。

だから初対面の印象でその人を遠ざけてしまうのは、少しもったいない。気が乗らなくても、2、3回と会っているうちに、そこで築いた関係が一生の財産になるかもしれません。

怖い人は、他の人が遠ざけがちなので、そこで仲良くなれるとその価値も大きいわけです。それでも、どうしても「この人とは合わないな」と思ったら離れればいい。それくらい粘ってから判断しても、遅くはないと思います。

⑤講演会で真っ先に質問をする

基本的に、講演会やイベントで人脈を広げることは難しいと思ってはいますが、一目置いてもらう方法はあります。

それは質疑応答のときに真っ先に手をあげて質問することです。

僕も先日、経済同友会の3つの講演で立て続けに質問してみました。(ふだんはあまり手を挙げたりしないのですが、たまたまやってみたんです。)どの講演も2〜3人しか質問しなかったので、講演会が終わったときに「ああ、質問してた方ですね!」「いい質問でしたね!」などと言ってもらえました。

質問しなければ、講演が終わったあともなんとなく近くの人としゃべって帰るだけで、お互いに忘れてしまうのがオチです。でも質問すれば「質問した人ですよね?」となって、少し深い話もできる。

できればキレのあるいい質問ができれば最高ですが、大切なのは「いちばんに手をあげる」ということです。3番目とかになると質問のハードルが上がってしまい、どんどんキレのある質問を求められるようになります。

若手で慣れていないときほど、とにかく早めに手をあげる。それだけで勝ちです。最初の発言しにくい空気のときに発言することで「逆張り」できるのです。

⑥「勉強会(という名の飲み会)」をやる

人脈を作るために飲み会を開いている人も多いと思いますが、ただ飲み会をやるだけだと、なかなか続かなかったりするものです。

そこでオススメなのが「勉強会(という名の飲み会)」です。

昔、勉強会のチームを作って2年くらい回したらすごく仲良くなったことがあったのでちょっとご紹介します。

前の社長の山川さんと、僕の経産省時代の先輩と、その友だちの4人で飲んでいるときに「ずっとお付きあいできる人たちを作りたいよね」という話が出て「定期的に勉強会をやりましょうか?」という話になりました。

そこで、4人それぞれが「この人すごいな」と思っている2人を連れてきて計12人の勉強会のチームを作りました。そのメンバーで2ヶ月に1回くらいのペースで勉強会をやることにしたのです。

勉強会のやり方はこうです。

毎回、ひとりの発表者を決めます。その人はコンテンツを1枚の紙にまとめてきて、30分くらい発表します。テーマはなんでもOK。たしか僕は日本経済について話して、山川さんはベンチャーについて話していました。

その後は、そのコンテンツについて話しながら、だんだん「ただの飲み会」になっていきます。いちおう勉強会っぽいんだけど、実は飲み会(笑)。

2ヶ月に1回しかないのですが、発表する人がいるので緊張感がありますし「今回はどんな話が聞けるかな」という具合にみんな集まってくれます。単純な飲み会だと続かないのですが、勉強会にすることで続く。

僕らは12回やったので、トータル2年やったことになります。そうすると、メンバーどうしすごく仲良くなることができました。

面倒くさくても「事務局」をやる

ポイントは、自分が「事務局」をやるということです。つまり、幹事、コーディネーターを自ら進んでやることです。

先述した勉強会のときは、僕がいちばん年下だったので事務局をやっていたのですが、実はこのポジションがいちばん「お得」でした。

事務局は、メンバーのみんなと連絡を取りあって調整します。たしかに面倒ではあるのですが「次の日程、お忙しそうですが大丈夫そうですか?」「ぜひ来てくださいよ!」「次、発表者ですけど、コンテンツ用意できましたか?」などとやっていると、その間にどんどん仲良くなっていくんです。

全員のハブになるから、情報がぜんぶ集まるうえに、いろんな人と仲良くなれる。僕が事務局をやったときは、上司である山川さんの人脈をもらったような感覚にもなりました。自分が若手のときは、上司の勉強会の事務局をやってあげると、その上司の人脈とつながることもできます。

こういう勉強会なら、若い人も同世代でやれるはず。2年くらい回せば一生の財産になるはずです。

情報と愛とお金はばら撒け

人脈の作り方についていろいろお伝えしてきましたが、最後にお伝えしたいのは「愛と情報とお金はばら撒け」という言葉です。

「この人を利用できないかな?」「この人から何かもらえないかな?」という気持ちが根底にあると、それは無意識に相手に伝わります。すると、人は自然と離れていく。打算的な気持ちで近づいてはダメなんです。

何より大切なのは、相手に「与えよう」という意識でいること。

若い人の場合、お金を与えるのは、ちょっと難しい。だから、人一倍「愛」と「情報」を与えるのがいいと思います。

社外の人と勉強会をするときは「こんな情報があるんですよ!」と惜しみなく情報を開示する。自分が持っているコンテンツをフル活用して、相手に「この人、おもしろい人だな!」と思ってもらいましょう。

そこで出し惜しみしたりしてはいけません。変にストッパーをかけて「ここまでは教えるけど……」みたいにしちゃうと、ダメなんです。突き抜けた120%のものをギブすると、ゆくゆくは相手からも、同じくらい大きなものが返ってきます。

そして同時に「愛」を与えること。「あなたに関心がありますよ」ということをできる限り示すんです。

自分が話すよりも、相手の話をたくさん聞く。一度で終わらせず、自分から何度も会いに行く。宿題をすぐに返す。本をおすすめされたら、すぐに読んで、メールで感想を送るのもいいでしょう。

そうするうちに、だんだん相手も、こちらに好感を抱いてくれるようになる。結果的に、それが大切な人脈になっていくはずです。

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