Beyonce「Formation」/ビヨンセは、自分のことを「黒いビル・ゲイツ」と言った 15 柴 那典 2016年2月7日 23:28 2月7日、スーパーボウルのハーフタイムショー出演の前日にビヨンセからサプライズリリースされた新曲「Formation」。ビデオを観ればとても社会的なテーマを持った楽曲であることは一目で伝わってくる。冒頭のリリックはこんな感じ。What happened after New Orleans?Bitch, I'm back by popular demand「ニュー・オーリンズを襲ったハリケーン・カトリーナの後に何が起こった?」という歌い出し。ハリケーンの被害は2005年。その後には大規模な略奪行為が横行した。しかも、こちらのページによると、略奪を働く犯罪者のほぼ100パーセントが黒人だった(http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/06/index.html )。しかし、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどの大手マスコミはそのことを報じなかった。そこには、アメリカが抱える人種差別のジレンマがある。アメリカの長い人種差別の歴史の中で、アフリカ系は常に「被害者」だった。しかしアフリカ系アメリカンが「加害者」側に立ったとき、それはどう扱われるのか。そのことをビヨンセは告発している。ケンドリック・ラマー『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』でもそのことはモチーフになっていた(https://note.mu/shiba710/n/n89140e5f0e6c )。そこへのアンサーにもなっている曲なのだろう。My daddy Alabama, Momma LouisianaYou mix that negro with that Creole make a Texas bammaI like my baby hair, with baby hair and afrosI like my negro nose with Jackson Five nostrilsEarned all this money but they never take the country out meI got hot sauce in my bag, swagここはアフリカ系アメリカ人の父とルイジアナ・クレオールの血をひく母のもとにテキサスで生まれたビヨンセ自身のことを歌い上げるリリック。黒人としてのアイデンティティの誇りを歌うわけで、この曲が「Black Lives Matter」運動ともリンクしていることを示している。Okay, okay, ladies, now let’s get in formation, cause I slayOkay ladies, now let’s get in formation, cause I slayProve to me you got some coordinationSlay trick, or you get eliminatedここは人種差別というより性差別についてのリリックかな。「Slay」というのは「殺す」という意味。かなり物騒な言葉だけれど、「やらなきゃやられる」くらいのニュアンスだろうか。そして女性に対してのエンパワーメントの言葉を歌い上げている。「get infomation」は「教育を受けなさい」ということかな。「coordination」は「対等な立場に立つ」ということ。そうじゃないと「eliminated」=排除される。 そして何よりすごいのは以下のリリック。I might get your song played on the radio station, cause I slayI might get your song played on the radio station, cause I slayYou just might be a black Bill Gates in the making, cause I slayI just might be a black Bill Gates in the making「私は黒いビル・ゲイツになる」と宣言してる。アメリカでは誰もが知るようにJay-Zとビヨンセは最も富豪なカップルだ。そして世界一の富豪であるビル・ゲイツが自分の資金の多くを社会貢献に使っていることも、よく知られたこと。ものすごく社会かつ政治的な「宣言」の曲なのである。こんなものをスーパーボウルのハーフタイムショーにぶっこむのだから今のビヨンセのやってることは相当強力だ。 いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する 15