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予算30万円台の深層学習用PCの買い方

深層学習をまじめにやるなら、どう考えても専用のPCが必要になる。
僕は現在、Memeplexというサービスを運営していて、これはさくらインターネットさんから大量のGPUを借りている。借りたGPUは、さくらインターネットの石狩データセンターで動いている。

さらに、ABCIは企画の段階から立ち会って、実際に仕事ではよく使っている。ABCIは5000以上のGPUを擁するGPUクラウド基盤で、その実態はスーパーコンピュータである。

ABCIを使えば、ほとんどの難しいタスクを恐ろしく安い料金で行うことができる。GoogleやAmazon AWSのようなサービスを展開することができない本邦においては、国家が設立し、民間利用可能なABCIは国民にとっての天叢雲剣あめのむらくものつるぎである。

それでもなお、手元には深層学習用のPCが必要だ。しかも一台では足りない。

ABCIがいかに安くても、PCほどの利便性はない。
さくらの高火力がいかに便利でも、細かな実験をするにはクラウドが不向きな領域もある。

ところが深層学習用のPCは、普通のPCとは違う。
だから、ドスパラに行って、普通のゲーミングPCを買えばいいというものではない。

ちなみにノートPCでやりたい場合、選択肢は一択である。

GALLERIA ZL7C-R38H

https://www.dospara.co.jp/5shopping/detail_prime.php?tg=13&mc=11429&sn=3221

ガレリアの3080 Laptop搭載ノート「GALLERIA ZL7C-R38H」。このスペックで31万円は破格である。安すぎる。ちなみに僕もこれを持っている。もはや手放せない。

けっこう色々調べたのだが他のメーカーだとこのスペックで倍くらいの値段がしてもおかしくない。

ドスパラなら、金利手数料無料で48回払いできる。月々6700円だ。僕が大学生の頃に買ったLet's Noteくらいの値段である。しかも金利無料。金利無料ってのは未来に向かって貯金するのと同じで、人間は常に未来より現在が一番若い。こういうものを貯金してから買ってはダメだ。二年もあれば陳腐化するし、それよりも手元に現金を残し、AIの扱いに習熟した上で稼げば30万どころじゃないスキルを手に入れることができる。

これ、一番重要なポイントは3080 LaptopにVRAMが16GBあることだ。ハッキリ言って深層学習には最低10GBはないとどんなタスクも厳しい。

StableDiffusionの推論だけなら6GBの貧乏GPUでもなんとか動くレベルだが、ちょっと何かを学習させようと思ったら話にならない。あえて言おう、10GB未満のVRAMを持つGPUはシロートさん向けであると。

しかしノートPCはあくまでも緊急用。
僕がガレリアのPCを買ったのは講義で毎週京都に行くときに新幹線の中でAIのプログラミングをするためだ。

最近知ったのだが、Appleの誇大広告を信じてM1/M2プロセッサでAIが実用的に使えると思い込んでる人がいるらしい。ハッキリ言って勘違いであり、そんなもので済むと思ってる人はシロート以下である。

たとえばStableDiffusionをM1/M2プロセッサで推論させると5分くらいかかる。3080なら3秒。時間感覚が100倍違う。徒歩とジェット機くらい違う。

もしも真剣にAIの時代に備えようと思うなら、絶対にNVIDIAのGPUが必要である。

ところが大手メーカーは、NVIDIAのGPUを積んだマシンなんかオタクのくだらない趣味的PCと見下しているのか、ラインナップにまずない。そもそもデスクトップがまずないのだが、欲しいスペックのマシンは作るしかない。

そして例によって再び僕の周りで「StableDiffusionやりたいからPC組もうと思ってるんだけど推奨スペック教えて!」という面倒なリクエストがやたら増えてきた。

そこで僕が推奨構成をここに書くことにする。

まずはGPU。GPUは世代よりVRAMの容量で選ぶべき。
3080は12GB版がある。12GB未満のVRAMのGPUはできるだけ避ける。できれば24GBは欲しい。

また、大前提として、「安いGPUで組んでからあとでいいGPUに変えよう」などと思ってはいけない。シロートさんはここを間違えることがあまりにも多いのだが、AI用途のGPUに限っては、GPUこそが中心であり、CPUなどその他の部品はオマケである。だから、GPUをアップグレードすると他の部品を全てアップグレードしなければならなくなる。特に電源まわりを変えると全てやり直しなので「安いGPUから初めてステップアップ」は考えない方がいい。もしも「後付けでなんとかなる」部分があるとしたら、メモリ(RAM)とストレージ(NVMe接続のSSDやハードディスク)くらいである。10GBイーサネットはあった方がいいがこれは設置する場所によって違う。

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