東映(株)に対し過重労働/セクハラの改善を求めます【仮面ライダープロデューサー補佐が被害を訴え】

はじめまして。
私は東映株式会社に勤めています。

新卒で正社員として東映に入社し、製作部や演出部などを経て、2020年11月からは仮面ライダー50周年記念作品である「仮面ライダー」のプロデューサー補佐(以下、AP)を勤めました。
そして、2021年6月から適応障害で休職しております。
この度、個人加盟の労働組合「総合サポートユニオン」に加入し、東映株式会社へ労働条件に関する要求及び団体交渉をすることになりました。

自分の体調管理が原因で作品から退くことは、とても不甲斐なく思っています。
しかし「仮面ライダー」「スーパー戦隊」という作品は、私だけではなく、近年、APの退社が多く見られます。
人事はこの事態について「他の夢に向かって転職した」と説明していますが、早朝から深夜に渡る撮影が1年間続くという激務の事実を無視することはできないと思います。
(仮面ライダーの現場の大変さについては、詳しい方なら俳優さんのインタビューなどからすでにご存知の方もいらっしゃるかもしれません)

現況や現場から去っていかれた先輩方の話を聞くと、私個人の問題でなく、ずっと会社の中に蔓延し、そのままにしていた問題であることがわかりました。
また、法令遵守意識の低さは作品やヒーローショーでも露呈し、SNSでも疑問の声が上がっています。
自分一人では会社に告発する勇気が持てなかったと思います。


過去に、東映の現状を勇気を持って発信していただいたシアターGロッソのショーのおねえさん(※1)、またガオフェスでSNSで疑問意識を伝えてくださった方々(※2)に、感謝の気持ちを伝えたいと思います。

※1 東京ドームシティの特撮ヒーローショーが行われる劇場「シアターGロッソ」で、ショーの“お姉さん”を務めていた中山愛理さんが男性器のあだ名で呼ばれる、卑猥な質問をされる、すれ違いざまに尻を揉まれる、胸を触られるなどのセクハラ被害や、あいさつを無視されるなどの嫌がらせを受けていたと明かしました。


※2 純烈のリーダーであり牛込草太郎 / ガオブラック役で出演していた酒井一圭さんが2021年8月15日に「ガオフェス」内でガオホワイトの下半身を触り、その様子を#ガオホワイトの尻というハッシュタグと共に投稿しました。
これは「おふざけ」ではなく、犯罪行為であるため、SNSで疑問の声が上がりましたが、依然として東映は何も説明を出していないため、現在署名活動が行われています。

2年前、シアターGロッソで会社の良識を疑う事件があったにも関わらず、社内の対応は「取り急ぎ鎮火をしよう」という態度で、根本から変わっていこうという意識がありませんでした。
今回、私が休職し、申し立てをしてもその態度は同じです。

もちろん、自分自身が半年間関わった作品「仮面ライダー」には愛着がありますし、お世話になった方々もたくさんいます。
特に、キャストの方々は一緒にお仕事をしていながら本当に素晴らしい人柄に救われてきました。もし、そうした方々にも迷惑がかることがあれば、申し訳ないです。
どうか、作品とキャストは切り離して考えていただければと思います。また、現場の過重労働も改善され、キャストにも優しい撮影ができるようになれば、と思います。
労働環境を改善することが、作品自体のクオリティ向上につながると信じております。

長くなりますが、こちらのnoteで経緯を説明し、今後も進捗がありましたら書き留めて行きたいと思います。
よろしくお願いいたします。

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▶︎突然の固定残業制


仮面ライダーのAPを命じられた3ヶ月後(=業務量が増えるタイミング)で一般社員からプロデューサー補佐へ昇進し、給与形態が固定残業制という名目の、どれだけ働いても一律料金制へ変わりました。
このとき、テレビ管理部部長から口頭で給与形態が変わることを説明されましたが、具体的な金額を質問しても「生活に困らないくらいだよ」とはぐらかされました。
のちに、この対応について人事部長は「先輩から聞いているものだと考えていた」と釈明しています。

第一回の団体交渉では、根拠が不明瞭なこの賃金支払いに対して、就業規則、36協定、協定書等を提供してもらい、再度調査しました。

組合との協定書で定められていたみなし残業時間は

平日55時間、休日15時間で計算される時間外手当相当額

であり、残業を月70時間行うことを前提にする、法律を無視した協定が結ばれておりました。

東映が結んでいる36協定は月45時間です。特別条項はありません。協定オーバーの時間の残業を前提とした固定残業制は不当です。
また、東映が固定残業制を導入した理由として「プロデューサーの仕事上、時間を管理できないから」だと人事部部長からは説明を受けました。これは残業代としての性質がありません。

現在、東映にはこの固定残業制が無効だったこと(残業代としての性質を持たないこと)を認めるよう要求しております。
また、この固定残業制が適応されている映画企画部・テレビ企画部従業員に対して、固定残業代を無効と認めて、それを基本給部分として計算し直して、過去2年分に渡る未払残業代を支払うよう交渉しております。

▶︎セクシャルハラスメントへの対応

私は、撮影現場で2名のスタッフからセクハラを受けました。

1人目は、フリースタッフの60代の男性からで、業務上必要で交換したラインにしつこく連絡があり、未読無視をすると電話がかかってきました。冬の寒い日の撮影の日、手を握られたこともありました。
東映社内のホットラインに相談したところ「刑事罰に当たらない」「フリーのスタッフ(東映の社員ではない)」という理由で、社内からの注意はすることができず、スタッフルームに曖昧な注意喚起の文章を貼るという処置で終わりました。

写真

(画像)実際にスタッフから送られてきたLINE。未読無視したら電話がかかってきました


2人目は、フリーの助監督で、指導という名目で二人っきりになるように呼び出されたり、カメラテストで見つめ合う役をスタンドインさせられたり、ロケバスで隣に座るように命じられたりしました。
すぐさま上司から注意をしてもらうと、今度は高圧的な態度に変わりました。その後、別の作品で再会したときも、目を合わせない/必要な情報を伝えてくれない/過度な叱責などの嫌がらせをされました。

「仮面ライダー」のAPになった際、プロデューサーに経緯を説明し、スタッフの選択の余地があるなら外して欲しい旨を伝えましたが、プロデューサーからは「短期間でモテてよかったね」という反応をされ、取り合ってもらえず、その後2名とも同じ現場で働くことになり精神的な苦痛を味わいました。

▶︎労働環境

「仮面ライダー」制作期間では、1日13時間以上働くことが当たり前に行われていました。
残業時間は過労死ラインを超えていました。

出社する前に涙が止まらなくなったり、ストレス性の胃腸炎になるなど、身体にも影響が出てきたため、プロデューサーに相談したことがありました。

私はプロデューサーへ、以下の5つを提案するラインを送りました。

1、 残業時間を気にかける。0時を超えた日は、次の日の労働開始時間は一定の間隔を空ける
2、 人員を増やす
3、 リモート会議を活用する
4、 現場に行く日数を決める
5、 1〜4が難しい場合、別のドラマに配置換えをする

これに関して、プロデューサーからの返信は「4〜5時間寝られるなら許容範囲だと思う」「これくらいは全然ある」「(4、に関して)他の重要な業務が山積みになるからゆくゆく減っていくと思う」「(5、に関して)大人番組を舐めすぎ。特撮よりも胃が痛くなる業務は多い」など、今の状況が変化することはないという返答をされました。
「働き続けて倒れるか、今諦めるかのどちらしかないんだな」と失望し、これまでの労働時間の通りに仕事を続けていましたが、1ヶ月も力が続かずに適応障害で休職することになりました。


ちょうどこの月、東映株式会社では社外向けに健康経営を宣言しました。

従業員の心身の健康の維持向上と働きやすい職場づくりを目的とした健康経営に取り組みます

実情は、制作現場の業務が過酷であることを知った上で、固定残業代を導入し、過労死ラインを超える労働を黙認しております。

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長くなりましたが、このような経緯があり、東映との交渉を進めております。
進捗がありましたらこちらにてお伝えしていきたいと思います。
引き続きよろしくお願いいたします。

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(2021/11/16 18:41追記)

・一部、削除・修正いたしました。

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(2022年6月9日 追記)
この記事の続きはこちらからご覧いただけます。

(2022年8月8日追記)
映画業界の労働問題や性差別の改善・解決に向けて精力的に活動されている Japanese Film Project の皆さんに、本件についてインタビューしていただきました。

(2022年8月22日追記)


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