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よく言われる「日本人のゲーマーはすぐ悪評をつけるし、市場規模も小さいので海外から無視されることが多い」という論説は果たして本当なのかどうか?

「日本人のゲーマーはすぐ悪評をつけるし、市場規模も小さいので海外から無視されることが多い」

これは日本のゲーム業界でまことしやかに語られる論説である。定期的に業界の著名クリエイターがこの論説を持ち出し、バズっているのを見かける。というか今日も見た(2022/9/2追記: コメントでも触れていますが、事の発端はぬまきち氏のツイートとそれに同調する業界関係者のツイートです)。日本のゲーマーはクソだとしたり顔だ。コンシューマかPCかスマートフォンかもごちゃまぜになっている。かなり過激な発言だが、こうした論説を受けて日本製のゲームが日本市場に投入されないということが何度も起こっている。

しかし、これは本当に正しく、日本のゲーマーコミュニティはクソ野郎の巣窟なのか。

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ほとんどの国が同一のプラットフォームで展開されるPCゲーム市場において、日本はかなりの市場規模だ。Steamの2021年5月の調査によれば、Steamの言語設定を日本語に設定しているユーザー数、つまり日本のユーザー人口はSteamユーザー全体の1.94%。少なく感じるが、これは世界9位のユーザー人口だ。(上記SSは同ページにて2021年6月14日に撮影した。)

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時期は少し戻るが2020年のSteamによる総括記事によると、Steam全体の月間アクティブユーザー数は1億2千万人と発表されている。つまり、日本のユーザー人口はおおよそ230万人。世界9位の人口数と考えても、無視できる市場規模ではない。事実、昨今では海外のゲームに日本語を実装することが以前に比べ一般的になってきている。Kakehashi Gamesといったローカライザーチームの活動を見れば、日本市場への海外パブリッシャーの興味を伺い知れるだろう。というか、国外企業のSteam運営であるValveがわざわざ日本語でこうした記事をアップしてくれているのだ。全く無視されてはいない。

加えて日本人ユーザーは悪評を多くつけるという話だが、日本人ユーザーが炎上などにより悪評をたくさんつけるパターンはたしかにあり得る。だが、これは当然のことながら日本人に限った話ではない。Steamでは世界規模の悪評爆撃に対抗する施策を行っているほどであり、これは世界的な問題である。悪評爆撃は組織だって行われることもあり、その数が数百数千に登ることも少なくない。上のツイートは、2019年『Borderlands 3』がEpic Store専売となり、『Borderlands 2』のレビューが荒れた際に行われた「トピックずれのレビューを評価から除外する」という措置の記録だ。悪評爆撃による被害は日本人がどうこうという次元の話ではない。

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では一般的なレビューではどうか。例として特に大きな炎上騒ぎなどがなかった有名作『Death Stranding』のレビュー数を確認する(2021/06/14確認)。

追記: PC版リリースに合わせ悪評爆撃の被害が『Death Stranding』のMetacriticにあったそうだが、現在はその投稿は排除されている。参考記事

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同作はSteamで6万件近いレビューが投稿されてる。そのうち不評は3669件と全体の6.4%ほどである。

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続いて『Death Stranding』は日本語のレビュー数は529件だ。これは人口が全体の1%である日本人ユーザーの数から考えれば、全体の1%程度と妥当なレビュー投稿数であろう。そして不評の数はワタシが直に数えたが86件であった(数え間違ってたらすまん)。これは日本人レビューのうち16%ほどである。

たしかに『Death Stranding』においては全体の割合に比べ、不評レビューの数が多いことが分かる。だが、この16%をもってして、日本人ユーザーが悪評ばかり投稿しているマナーの悪いユーザー層と捉えるのはまた違う。400件を超える好評レビューを無視することになるからだ。また好評がマナーのいいレビュワーで不評がマナーの悪いレビュワーという考えもいかがなものだろう。好評レビューと偽りふざけた下げレビューを行っている方は世界中どこにでもいるだろうし、不評レビューも真面目にゲームと向き合い正しく論評している方も多い。「クソゲー」という言葉と同じように「This is shit」という言葉もまたSteamレビューには並んでいる。

1つのゲームに対しての調査だけでこの「日本人は悪評ばかりをつける」という印象は覆せないだろうし、論拠としてもソースの絶対数が少ない。

そこで後日追加調査を行い、1316作のレビュー状況も確認した。そちらもご確認いただきたい。

「いや!俺はデータを持っている!」「プラットフォームが違うなら結果も違う!」というご意見もあることだろう。なら、そのデータを持ってして日本人ゲーマーのバッドマナーはいかがなものか?と言うべきだし、市場が違うのだから他の市場を含めるような主語の大きい論説で語るべきではない。

「おまえのとこのゲームはクソなのでクソ」みたいなレビューがダメで、「日本のゲーマーはやっぱりダメだよな~」という意見がOKなわけがない。なにかしらコミュニティを批判したいのならば、客観的なソースを用意すべきだ。ソースのない批判はそれこそバッドマナーの感情論である。

追記: 「日本人はレビュー評価で星3など低めにつけやすい傾向にある」というお話が多数リプライなどで飛んできた。たしかにそうした文化圏に日本はあるのかも知れない。だが、ならその星3レビューは日本が評価がちょっとお固い文化圏だというだけではないのか。それをもって日本人ゲーマーがあえて低評価ばかりつけるバッドマナー集団と捉えるのはおかしい。仮に星5をたくさんつける文化圏があったとして、そこには逆に低評価が見えにくい問題が発生するのではないか。

ワタシが言っているのは、日本人ゲーマーコミュニティがクソ野郎のバッドマナー集団扱いをクリエイターから受けているから、ならばバッドマナーのデータを出すべきだろうという話している。ワタシは日本人のバッドマナーが目立っているわけではなく、海外から無視もされていないSteam市場について解説しただけだ。べつにスマホやSteamなどの評価システムの差は関係ない。ワタシは日本人ゲーマーコミュニティがなぜバッドマナー集団扱いされているのか、そのソースが知りたいのだ。また日本は星3レビューに偏るので提供すると全体評価が下がってしまう。全体評価はセールスに直接関係があるので下げられないから日本で配信していない。というのは分かる。が、それは日本人ゲーマーがバッドマナーで避けられているわけではない。ゲーム開発側のマーケティング対策ではないか。

2021/06/15 21:55 追加調査記事について追記しました。

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