電子書籍の取り分についてのお話
コンテンツ制作側は意外と儲からないという話をしておきたい
電子書籍の分配について、作家さんやマンガ家さんからいろいろな論が出ている。出版社が暴利を取っている、搾取しているという論もあるが、割とそんなこともないぞという話。
電子書籍販売のプレイヤーと主な料率
下記料率は主にグロス売上(一般的な小売価格ベース)に対する比率。ただし値引き時などは原資負担を出版社が行うケースもあれば、流通や電子書店が行うケースなど様々なのでそのあたりの特殊事例は考慮してない数字。
もちろん、会社や相手によってさまざまなので、ざっくりこの辺りが多いよねという数字でしかない。
クリエイター(マンガ家、小説家など)
2515%程度(25%は出版社に入ってくる分の25%という契約内容が多いということで、グロス計算では15%程度になることが多い。)編集・出版・制作(おもに出版社とその業務委託先)
1525%程度流通(おもに電子取次、ebookjapanとかメディアドゥとか) 5~10%程度
販売店(電子書店、AmazonとかKoboとか) 20%程度
アプリプラットホーマー(GoogleとかApple) 30%程度
(間違いがあったので修正 2024/2/21)
上記を見てもらうとわかるけど、アプリ販売の場合はアプリプラットホーマーが圧倒的に多くを持っていく。そりゃそうだ、課金の仕組みも回収も集客もやるんだから。財布の根っこを押さえている。強い。
もちろん、販売店が独自課金する場合は、クレジットカード決済なら決済手数料3%とかって数字になるけど、販売店が40%~50%程度持っていくのはあまり変わらない。ので、販売業者は値引きできる原資があるし、それで集客するし、アプリ販売ではなく、独自決済も多いから、同じく財布の根っこを押さ得ている。強い。
流通は、物流コストなんかないじゃないか。といわれるが、かなり手間暇かかることをやっている。
販売店ごとに細かいファイル仕様の違いとかもあるし、書誌情報(本のメタ情報)のフォーマットとか入稿の仕方とか全部違うので、それらを全部整えなきゃならないし、随時新しい販売店はできるし、いろいろな都合で配信停止になったりする作品もあるし。
そして、販売データも各販売店から、これまたバラバラのフォーマットで届く情報をまとめて、コンテンツ提供側に報告する必要もある。お金のやり取りだって中継してる。
出版社はこの率で編集業務から、データ作成までを行っている。もちろん一回やれば後は手放しで売れるじゃんと思うかもしれない。それはその通り。でもごく一部のタイトルを覗いて、大抵は出して半年間ぐらいでほとんど動かなくなっていく。その辺は紙の本とあまり変わらない。
赤字を回収できない7割の本と、大きく黒字になる1割の本で帳尻合わせる感じの商売をしている。
で、作家さんは2515%程度。本来なら最も強い権限を持つ人。実際電子書籍を出す出さないの最終的な決定権はクリエイターの皆さんが持っているし、料率に納得できなければ出さないこともできる。でも上記の率を見てもらうと、出版社側にもあまり交渉の余地が多くないことはわかってもらえるんじゃないかなと思う。
最近の状況
最近は特に販売店間の競争が激化した結果淘汰も進んできて、Amazonやピッコマ、LINEとかの戻し料率のサゲ圧力(彼らの取り分を上げろという圧力)が強い。
特に縦スクロール系はまだ販売店も少なく、ユーザーが特定の店に偏っているので、戻し料率の低いところがピックアップされがちなので、より強い圧力がかかっている。
キツイところになると、販売店から、コンテンツ提供側(出版社)への戻し料率が20%なんてところもある。
実際韓国の状況も聞いてみたことがあるが、NAVERとkakaoの2強で、非常に戻し料率は低く、原作となるWeb小説も連載サイトがNAVER系とkakaoに牛耳られているので、NAVER系のサイトで連載していたもののWebtoonはNAVERにしか出せず、kakao系のサイトで連載していたものはkakaoにしか出せず、あとは欧米亜など海外になるべく販売を広げるしか手はないんだそう。
日本ではなるべく多様な作品が楽しめる市場であってほしいので、販売が一強にならないでほしいとは思う。
マンガでは集英社と講談社が強いから、彼らがそのあたりを意識していてくれればおそらく大丈夫だろうと思うけど…。