「安い日本」が続く理由
日本円は変動相場制なので、他の先進国よりも物価が安いのは為替レートが円安過ぎることを意味する。
相対的な物価水準を示す実質為替レートは変動相場制移行後の最低水準に貼り付いている。
2001年にLars Svenssonは"The Zero Bound in an Open Economy: A Foolproof Way of Escaping from a Liquidity Trap"(和訳はIMES Discussion Paper Series 2001-J-6)で、為替レートを十分な円安水準で固定する→予想インフレ率上昇→景気回復が急起動してデフレ脱却→インフレ率・金利・為替レートが正常な水準に戻る、と論じたが、「安い日本」が長期化しているにもかかわらず、そのような兆候は見られない。
円安→景気回復→円安修正が生じなくなった主因は、為替レートと輸出数量の相関が弱まったことにある。
リーマンショック前の円安期に輸出数量が急増していたのは主として中国の急成長によるもので、米欧向けはそれほど増えていなかった。
企業のグローバル化は、国内の賃金や物価を上昇させる「圧」を抜いてしまうように働くようになってしまった。この構造変化を無視しては、大江千里の問題意識への答えにはならない。