あこがれの、ロイホの厚切りワンポンドステーキ
かのロイヤルホストで一番値段の高いメニューを知っているだろうか?
それは「厚切りワンポンドステーキ」。大きさが3種類あるアンガスサーロインステーキのなかでも450gという重量を誇るメニューで、お値段6,358円(税込)! ロイヤルホストの「黒×黒ハンバーグ」が、1,463円なので、「厚切りワンポンドステーキ」はかなりお高めだ。お肉好きの夫はこのメニューの存在をばっちり認識していて、いつか食べたいなぁと言っていた。
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わたしたち夫婦がロイヤルホストに行くのはいつもたいてい朝。なにも予定がない日の朝は決まって、黄色いバイクに2人乗りしてロイヤルホスト堀川五条店へ行く。ドリンクバーと、その日の気分でモーニングメニューを選ぶ。最も登板が多いのは、パンケーキにソーセージを追加。最初にバンホーテンのココアを飲んで、パンケーキを食べる。ずっと甘いと飽きちゃうけど、ソーセージの塩味がいいリズムを作ってくれるのだ。
食べ終えたらホットコーヒーを飲みながら、気が済むまで本を読んだり、仕事の下調べをしたりして過ごす。パチパチとiPadのキーボードをわたしが叩く横で、夫も本を読むか、パズル雑誌のニコリをもくもくと解いている。西向き一面の窓が開放的で、お客さんたちのざわめきが作業をするのにちょうどいい。ロイヤルホストに行けば穏やかで優雅な朝を過ごせることが約束されていて、ロイホのモーニングに行くのが大好きだ。
いつも我が家がロイヤルホストに行くのは朝9時頃。すると、10時半以降のグランドメニューに掲載されている「厚切りワンポンドステーキ」には紙上ですらなかなか出会えないのだ。
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実は、4年以上働いておらず収入を得ていないわたしの夫。それでも企業へアイデアの売り込みに行っている。いつか仕事の契約が決まったら、その契約書にハンコを押したら「ロイヤルホストの厚切りワンポンドステーキを食べてお祝いをしようね」と話していた。
そしてなんと、ついにその日が来たのだ。
夫のアイデアをとある会社が気に入ってくれて、契約しようという話が進んだ。メールで契約書を確認し、合意の旨を送ったあと、原本が郵送されてくることになった。わたしは、1週間ほど毎朝マンションのポストを覗き込んでは、早く来ないかなと待っていた。くるくる回すタイプのポストの鍵を開けるのが、心なしか速くなったような気さえする。
ようやく届いた契約書にハンコを押すときは、はしゃぎながらその瞬間を動画に撮った。わたしのiPhone 12 miniには、今日び珍しい、電子押印ではなくリアルに捺印をして、契約に同意をする夫の姿が動画で残っている。夫は、先方が丁寧に付箋を貼ってくれた箇所にギューっとハンコを押し、できあがった契約書をこちらに見せて笑った。
捺印した契約書を投函した翌日、13日の金曜日の夜にわたし夫婦はいよいよ、厚切りワンポンドステーキを食べにロイヤルホストへ行くことにした。おしゃれをしていこうかと迷ったけど、夫がジーンズを履いていたので、わたしもジーンズで、ファミレスの気軽さを享受することにした。
いつもとは違うロイヤルホスト北山店へ向かう。今夜はお酒を飲みたいから、電車で行ける店舗を選んだのだ。お店に到着すると、金曜の夜だけあって混んでいて、5組ほど待っている状態だった。受付票を発券し、ケータイをいじったり、おしゃべりしたりしながら待っていると呼ばれて、2人席に案内された。
席に着くと、そこにあるのはグランドメニュー。いつも見ているモーニングメニューとは違う。もちろん厚切りワンポンドステーキが載っている。朝にはない夜のグランドメニューをさんざん楽しみに予習してきたので、注文するメニューはほぼ決まっているが、一応最初から最後までメニューを眺める。メニュー越しに夫をのぞき込むと、夫もしげしげとメニューを見ている。
協議の結果、注文するメニューが決定した。厚切りワンポンドステーキ、ケールサラダ、コスモドリア。乾杯はフレシネ アンジュエール ブリュット375ml(スパークリングワイン)。ロイヤルホストでお祝いの宴をするのに完璧すぎるセレクトだ。
まずスパークリングワインだけが運ばれてきて、「契約に」とグラスを掲げ「契約に」と乾杯した。その後ケールサラダを分け分けして、ついに厚切りワンポンドステーキと、一緒にコスモドリアを白いジャケットをぴしっと着た男性の店員さんが運んできてくれた。厚切りワンポンドステーキの大きいこと! 大きさはわたしの顔くらいあるし、なんてったってぶ厚い。3cmくらいで、厚切りを名乗るだけのことはある。格子状の焼き目がなんともステーキらしさを強調している。お肉の上でとろけているバターのいい香りがして、食欲をそそる。絵に描いたようなステーキだ。
酔っ払いながら、食べて、話して、楽しく厚切りワンポンドステーキを味わった。ミディアムレアで中が赤いお肉は、とろけるようなタイプのお肉ではなく、ぎっちりと詰まっていて、肉食ってる!と実感。だけどこれを450gも食べるなんて正気か?とも思った。185cmある体の大きい夫ならペロリと食べてしまうのかな。付け合わせはケールとマッシュポテトで、これもまたおいしい。ソースはだし醤油と、ドミグラスバターソースを選んだけど、わたしたちは塩こしょうで食べるのがお気に入り。
夫が厚切りワンポンドステーキを食べて、わたしはコスモドリア(ここで書くと脱線するし長くなるので割愛するけど、コスモドリアもずっと食べてみたかったの!ほんのり甘くておいしい)。お互いに味見をした。さすがに夫も、厚切りワンポンドステーキを食べるのには時間がかかり、おかわりにビールを飲みながら、ゆっくり味わった。そのあいだにわたしはホットファッジサンデーを追加で注文して、「ホットって?」と言う夫に溶けたチョコレートソースを見せて、サンデーにとろーっとかけるところを動画に撮ってもらった。
年末も近づくロイヤルホストでは、うっすらクリスマスソングがかかっていて、その音量もうるさすぎず、意識を向ければ聴き取れるくらいのほど大きさで心地よかった。テーブルに敷かれるマットもクリスマスバージョンになっていて、浮かれたわたしたちにはぴったりだった。
多幸感にあふれるロイヤルホストに、また夜来るお祝いごとを作らなくちゃね、と言って店を出た。