
医師が暗記アプリ・手法を使してみて数年後レビュー②
暗記アプリや手法を取り入れてみて数年経っても、すらすら覚えています。使わなかった記憶も覚えていますね。
一方で、デメリットというか限界もありました。
アプリに登録したクイズが自動バックアップしないと一定期間で消去される仕様はさておき、
一つ目は、クイズ自体を作成するのに時間がかかる点です。
学生の時、記憶の手法を毛嫌いしていたのは、
記憶を効率よく行うシステムを作る(暗記カードも然り)のに時間がかかってしまうことです。
つまり、全体として時間は限られている時、作っている時間を含めたら、効率が上がっていたとしても、全体として覚える量はあんまり変わらないか、下手したら減ってしまうのでは、と考えたからです。
テキストベースならPDF化した本をOCR処理して、コピペして作っていくので、まだ比較的簡単にできますが、
写真を提示したり、図を提示したりするときのクイズを作成するのに時間がかかります。
各医学書を丸々クイズを作っていると、1冊で1ヶ月とかかります。
それなら、重要な箇所をすぐに取り出せるようにメモれば、数日でできますし、実際仕事で使う場合は取り出しやすいです。
今はAIが搭載されて、自動で作れる機能もあるらしいのですが、ちょっと未経験です。(4年前は実装されていませんでした)知っている方がいたら教えてください。
二つ目は、覚える知識を継続して入力し、使い続ける場合のスケジュールの問題です。
試験勉強のように覚えなくてはいけない範囲が決まっていたり、覚える本がわかっている場合は、クイズを作ったら、ひたすらチェックしていけばいいので(忘れそうなものを覚える過程が記憶を定着させる)、特に問題ありません。
難しいのは、ライフワークのようにずっとやり続ける勉強に対して、この記憶法を使うと、膨大な数のクイズができることになり、だんだん学ぶよりクイズの方が多くなってきますし、学ぶ時間が減っていきます。
また、仕事で使うような知識は、クイズに収まりくらないくらい多く知っている必要があったりします。
例えば、体の免疫システムがおかしくなって、リンパ節などが勝手に増えてしまう病気というのがあります。有名なのだと、HIV感染リンパ腫などがあり、それぞれに細かい種類があったりしますが、全部並べると何十個にもなります。また、それぞれの病気の検査の特徴や、発症頻度などを入れると、さらに桁が増えます。
この知識は医学の中でも、とても詳しく、細かい知識になります。
医学のように、ライフワークとしての勉強は、新しく目にするものが、どんどん細かい知識になっていきます。すべてアプリでクイズを作成すると、クイズがどんどん増えていくことになります。
三つ目は、クイズを作って、チェックすることで覚えている過程は、そのクイズの内容だけしか覚えられないことです。
つまり、クイズに答えて覚えているかどうかのチェックになるだけで、現実として、その知識にまつわる網の目のような知識のネットワークが必要な場合、クイズに落とし込みにくいんですね。
例えば、ステロイドを内服中の相対的副腎不全といった細かな例外がわからなかったり、肺癌にまつわる患者の記憶がなかったりすると、怖くて実際には使えなかったりします。
クイズでは、答えが限定されていますので、そういう要素を排除してしまうんですね。字面だけ覚えているような感覚ですね。
この三つをまとめると、字面だけ覚えていればよくて、知識がある程度限定されてくるものについては使えます。
ですから、試験勉強には使えると思います。
ただ、いかなる試験勉強もしょうもないです。
試験勉強なんて所詮人間が作った単なるクイズで、
試験に受かると資格が持てて特別な権限を行使できたりしますが、せいぜいそこまでで、
記憶法を試験に受かるために使うと考えていると、上記のように結局永続的に使えないです。
僕にとっては、全然魅力的ではありません。
現実で起こる諸問題は、はるかに複雑で、無数のパラメータ、運、ランダム性などが組み合わさって起こっています。論理的思考法などクソの役にもたたない時もあります。
ライフワークとしての勉強にもこの記憶法を使って、確かに覚えられたのですが、(先の例に挙げた、免疫不全関連リンパ増殖性疾患群)
結局、単純化した知識を闇雲に覚えても意味がありませんでした。
現実世界を生き抜くために、知識が使われるのです。
となると、最小限知っていなきゃいけないとか、ある程度範囲がわかっているが、どうしても覚えられなくて苦労するものなどには使えるかなと思います。たとえ覚えられるといっても全てについて使えるわけでもなく、時間をかけて覚えても、知識を適用できなかったら意味がないので、対象を見極めながら使用していくのがいいと思います。使える範囲は限定的です。
続く