エンジニアは事業を理解すべきか?
最近、エンジニアは事業を理解すべきか?という話題をよく目にします。様々な経験や背景がある中での議論なため、多くの意見があり難しい話題だと思います。
エンジニアの主戦場は技術
私は技術も事業も好きです。でもエンジニアです。
能力を表すのも求められるのも技術です。
まずは頭の中にあるアイデアを実現できる技術力は大前提で、その上で「エンジニアは事業を理解すべきか?」を考えるべきだと思っています。
事業への理解があることは、技術力がないことの免罪符ではありません。
むしろ事業への理解は技術力の一部です。
そもそも良いエンジニアに事業の理解は必要
技術の意思決定において、前提や課題や目的の理解は大切です。仕事においては、事業や市場や顧客のドメインの理解がないと意思決定はできません。
エンジニアが事業をできる必要はありませんが、知識として事業を理解する必要はあります。
ちょっと不思議ですが、良いエンジニアと技術力の要素に事業の理解が含まれています。
なので、技術力 vs 事業理解のような構図は違和感がありますし、もったいないなと思っています。
そこで今回の記事では、私が仕事としてエンジニアリングをする中で技術と事業との向き合い方についてまとめてみました。
エンジニアやエンジニアと関わる方にとって、少しでも参考になれば幸いです。
私は何者か
……本題の前に、冒頭からいきなり持論を語ってしまったので、簡単に自己紹介をさせてください。
私は今、プレックスというベンチャー企業でSaaSを作っています。
新卒ではDeNAに入社し、主にスマホゲーム開発に必要とされるサーバ機能を提供するゲームプラットフォームの開発に関わっていました。その後YOUTRUSTでのサービス開発を経て、今に至ります。
プレックスでは、まだエンジニアが一人もいない時点でSaaSチームに参加し、初期設計の段階から、インフラ、データベース、バックエンド、フロントエンドまで含めた開発をやってきました。
最強の汎用スキルは「事業を伸ばせる」こと
では、本題に入ります。
エンジニア、マーケティング、営業などの仕事は、事業と会社の成長が目的です。資本主義で仕事をする上で「事業を伸ばせる」は最強のスキルです。
「事業を伸ばしたので、年収を上げてください」「事業を伸ばしたので、機会をください」は基本的に通ります。
組織設計や採用方針や福利厚生など、すべては事業と会社の成長に向かっています。エンジニアが技術力を得ることで年収が上がるのも、働き方の多様性をつくるのも、研修を行うのも同じ理由です。
事業と会社の成長は明確なゴールであり、迷ったときは「どっちが事業と会社の成長につながるか?」を考えることをおすすめします。
エンジニアだけが持つ知識や感性から気づく懸念などは理解されないこともありますが「事業と会社の成長に向かっています」という前提を加えることで、理解されやすくなります。
どれだけ技術力があっても事業がなくなると意味がない
組織や技術の意思決定の良し悪しは、数年経ってようやく結果がわかります。どれだけ良いコードやプロダクトでも、事業そのものがなくなってしまえば世の中へ価値を届ける機会を失います。
そのため、どれだけ技術力があって意思決定ができたとしても、事業が続かなければ短期的な成果しか上げられないエンジニアになってしまいます。
事業と会社の成長に向かうことは、キャリアを守ることに繋がります。
また、仕事としてエンジニアリングをする以上は、事業や会社の成長の対価としてお金をいただいている前提を認識すべきです。技術だけに向かうエンジニアは、Geekではあるがビジネスのプロではないというのが私の考えです。
仕事と学習と趣味の技術を切り分ける
技術はお金を稼ぐものではなく、もっと純粋なものなんだ!と思う方もいると思います。
私も昔はそう思っていましたし、いまもちょっとはそう思っている自分がいます。
そこで私は、仕事と学習と趣味の技術を切り分けるようにしています。
目的があり、時間に限りがあり、ゴールがある仕事。
目的があり、時間に限りがなく、ゴールがない学習。
目的がなく、時間に限りがなく、ゴールがない趣味。
この3つを別のものとして捉えることで、プロとGeekを切り替えて技術と向き合っています。
とはいえ、事業やビジネスにはそこまで興味が持てない方もいると思います。
その場合は、技術だけに向かうことが事業や会社への貢献になる整った環境も世の中にはあるので、環境選びが大事だと思います。
もしくは、顧客かメンバーなど身近に感じられる誰かの助けになること、褒められることに向かってみてください。
そして、そのエネルギーを事業と会社の成長に変換してくれるパートナーを見つけてください。多くの場合は、テックリードやエンジニアリングマネージャーが該当すると思います。
事業も組織もソフトウェア
責務を分離して、インターフェースを整えて、依存を切り離して……など、よく見ると事業や組織とソフトウェアの設計は似ている部分があります。
技術の切り口から覗くことで楽しめるきっかけになるかもしれませんし、自分たちを理解をしてもらうためには、まず相手を理解をしないといけません。
なにより、技術に向うための前提として、事業や会社の成長があり、事業と会社の成長に向かうことは、自分のキャリアを守ることに繋がります。
技術が好きで仕事をしているからこそ、事業を理解して事業と会社の成長に向かうことが大切だと思っています。