即決ファンドの出資先募集にあたり、面談で質問する事業チェックシートを公開します。

このシートは、なるがみの過去の経験からサービスを企画・開発・運営する上で必要な思考をまとめたものです。

1. 事業を20文字以内で説明できますか？

経験上、toCサービスは20文字以内で説明できないと流行りません。
専門用語や日本版◯◯といった単語を使ってはいけません。
小難しい事業を口コミやSNSで広げることは困難を極めます。
例えばSkebは「お題の絵を描くとお金がもらえる」です。

2. ペルソナを設定できていますか？

ペルソナとはそのサービスを使う利用者のイメージです。
年齢、性別、収入、その分野に使う年間予算は即答できると良いです。
さらに、ペルソナにマッチする友人が数十人いることも必要です。
ペルソナが周囲に数人しか思いつかない場合、ニッチな分野を攻めすぎているか、あなたがその分野のコミュニティにいないかのどちらかです。いずれにしても利用者が増えることはありません。
即決ファンドの面談では、ペルソナの具体例として友人のTwitterアカウントを聞くかもしれません。

3. マネタイズがしっかり考えられていますか？

世の中の持続可能な事業の大半は、少人数に高価格の商品やサービスを提供する厚利少売型と、大人数に低価格の商品やサービスを提供する薄利多売型のどちらかに分類できます。
失敗する事業は、そのどちらでもない利用者も少なく価格も安い薄利少売型になりがちです。
その事業を持続的に運営可能で、さらに事業を拡大するには何人にいくらで売れば良いのかしっかり考えてください。

4. 売上が営業マンやインフルエンサー頼りになっていませんか？

エンジニア以外の属人性は可能な限り低くしてください。
いもしない優秀な営業マンが案件を獲得することや、インフルエンサーにお金で頼めば何とかなるという考えは危険です。
利用者増の要因は人ではなく仕組みやテクノロジーで作ってください。
営業が0人でも成立する事業である必要があります。

5. 運命を共にしてくれるメインエンジニアはいますか？

代表が非エンジニアの場合、相方に大学生エンジニアを選ぶケースが散見されます。
彼らは卒論や就職を控えており、いつまでも働いてくれる訳ではありません。
会社のビジョンに賛同し、代表と運命を共にしてくれる経営者のメインエンジニアが必要です。

6. ターゲットをシュリンクしている市場にしていませんか？

コロナ禍で落ち込んだ業界を支援したいというのは素晴らしいです。
しかし、新しい生活様式に人々が慣れた結果、コロナ禍が過ぎ去っても元の規模には戻らない市場がたくさんあります。
また、コロナに関係なく慢性的に縮小傾向にあった市場は、起業未経験者や個人開発者の力ではどうにもならない場合が多いです。

7. 先発サービスはありませんか？

自分しか思いついていないと思ったアイデアはとっくの昔に誰もが思いついています。先発サービスがないかよく調べてください。
大企業が社内で検討し、大企業の持つデータやリサーチの結果、成功しないと判明した「デッドアイデア」もたくさんあります。
先発サービスがある場合、画期的な仕組みがない限りは、資本力で手数料バトルに持ち込まれ敗北する可能性が高いです。
面談中に「◯◯で同じことできますよね？」とリサーチ不足が判明し、即面談終了となる案件も少なくありません。

8. 大企業が参入してきた時どうしますか？

一度儲かる事業と判断されると、資本力が自分より数万倍ある企業がクローンを作り安価な価格で提供してきます。
Webサービスの場合は消耗線で無期限で手数料を無料にしてきます。特許はいくらでも回避されてしまいます。
事業を考える段階で、彼らが参入してきた時の対策や優位性を保つための施作、安易なクローンの参入を妨害する仕組みは必要です。

9. 困っている人が救われる事業ですか？

その事業が生まれることによって生活に困る人が増えてはいけません。
利用者が潜在的に抱えている問題を解決したり、利用者の特異な才能を引き出して新たな収入源を与えることが必要です。
無闇に射幸心を煽ったりせず、利用者に適切に還元されることが必要です。

10. あなたにとって事業のゴールはどこですか？

この事業を何年続けたいですか？3年5年10年？それとも生涯を通してやり遂げたいですか？
その事業が目指す世界へ近づくために、莫大な資金を調達できる上場を目指しても良いですし、飽きっぽい性格であればどこかのタイミングで企業に売却しても良いと思います。
ただし、会社や事業は経営者のものではなく株主のものです。出資を受けた後も「引き続きまったりやっていきます」はNGです。
出資者はより熱意のある事業に出資したいです。